1 内政チート研究会にようこそ! ③
「ジャージ持ってきてるよね? ある? ない? ある。よし! なら着替えてからこの場所にきてね!」
さっきぼくが投げかけた問題はイコールこの時のぼく自身に投げつけられた超とんでもない難題であった。そんな超の付く難題をぶん投げるだけぶん投げた花岡先輩は、ささっと書き上げた目的地であろう地図のメモをぼくに渡し、私も急いで準備しなきゃといって部室の奥にルンルンで消えた。バタンっという大きな音をたてて閉まるドア。テンション爆上げだったことだけはわかった。
ぼくは仕方がないので言われたとおりに教室に戻り、教室内に人がいないのを確認後(じゃないと大変なことになる)、着替えをし、そして玄関から外へ出た。
その間も頭の中にあるのは疑問だらけ。まずフィールドワークって何よ? それに内政チートを体験って何よ? である。
特に内政チートを体験ってファンタジーの設定を現実に体験するとかいったいぜんたいどうするのよって話。そんなのはバーチャルリアリティでもなきゃできないでしょって思ったわけだ。
悩んでも考えも答えが出ないそんな時。そんな困ったときには、現代人の強~い味方、教えてグー○ル先生! である。
Q:フィールドワークって何?
A:フィールドワーク(英: field work)は、ある調査対象について学術研究をする際に、そのテーマに即した場所(現地)を実際に訪れ、その対象を直接観察し、関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、そして現地での史料・資料の採取を行うなど、学術的に客観的な成果を挙げるための調査技法である。地学や地理学では巡検ともいう。
難しい。それでも何とかキーワードを探して考えてみた。
なになに? つまり? こういうことか? 自分なりにまとめたフィールドワークとはなにか、はこの時点ではこうなった。
何かを研究するときに、その研究に必要な場所に行って、その場所で実際に色々しながら考えるやり方。
こんなふうになった。うん、フィールドワークが何故そういうやり方をするのかはおいておいて、フィールドワークがそういうものなんだということはなんとなくそのまま飲みこめた。
だが、一つ飲み込むと違う疑問が、しかも特大の疑問がぼくの前に提示される。どうやって行くのか? である。なるほど、遠い外国に行くこともあるのだろうがそれだって飛行機や船、自動車を使えば今の時代世界中で行けない場所はほとんどない。アメリカ大陸も、アフリカ大陸も、東南アジアも、アマゾンの奥地も、エベレストの頂上も、南極だってだって行こうと思えば人間に行けない場所ではない。
けれど、中世ファンタジーの世界や過去の世界は違うだろう? どうやっていくのさ。考えるまでもなく無理だ。
繰り返しになるけど内政チートはあくまで物語の設定である。にもかかわらず必要な場所に実際に行くって……。おいおい、いったいどうやって内政チートが活躍するような中世ファンタジー的な魔法が飛び交う世界とか、過去の世界にタイムスリップするんだよ。あのひと、異世界に行ける不思議な不思議なドアか、それとも時間の流れを自由に移動できるタイムマシンでももってるのか?
と考れば考えるほどに余計に意味が分からない。ぼくはあーでもないこうでもないと頭を悩ませながら、まだ歩きなれない学校の敷地内を奥へ奥へと歩いていった。
さて、ぼくらの学校である桜ヶ丘高校は、この地域一帯を治めていた旧花岡藩の藩校をその始まりとしており、その敷地はいまだ旧花岡藩の居城があった桜ヶ丘城址公園内に隣接、ないし内包される形で存在している。
簡単にいえば昔の城の敷地のなかに学校が立ってるのだ。だから広い。とんでもなく広い。どのくらい広いかというと入学最初のオリエンテーションは丸一日時間を使って校内紹介を兼ねた学校散策であり、その隣接する公園の紹介も兼ねた遠足のようなものである。だからその広い敷地の様々な景色は実に見ごたえのある場所ばかり。歴史が好きな人ならたぶん三日三晩歩いていても飽きがこないんじゃないかと思うほどである。だからそんなに歴史やお城に興味がなかったそのころのぼくにとっても見どころいっぱいでただ歩いているだけでもなんというか、魅力があった。そこかしこに生えている松の木も一本一本やたら見事だし、お堀もでっかくて水をなみなみとたたえている。ちょうど通りがかった時に白い鳥が気持ちよさそうに水面すれすれに飛ぶのをみて思わず小さく声をあげてしまったくらい。そんな景色に目移りしながらゆっくりと歩いて約十分、やがて渡された地図の目的地が見えてきた。
旧御殿跡の脇にあるそこだけ少し不自然に少し開けた場所があった。スペースの半分が立派な畑で、残り半分の半分に屋根だけの建物、あとで聞いたらガゼボという建物らしいがあり残りは土がむき出しのは何もない場所。その何もない場所の方から「お~い、こっちだよ~!」と声が聞こえたので目を向けると、そこにジャンプしながら右手を振る全身ピンクの小柄な女性がいた。ポニーテールがゆれている。間違いない、さっき部室で別れた花岡先輩だ。かわいい。だがあの正体不明の全身ピンクは何だ? うちの高校の女子のジャージは別にピンクじゃないぞ? 全身ピンクとかまさか全身タイツ? と不安だけが募る中、応えないわけにもいかずこちらも手を振り返し近づいていく。
そんな先輩の姿がはっきり姿が見えるほど近づいてからぼくは安堵の息を吐いた。ピンクの正体が分かったからだ。その正体はピンクというには淡い桜色のつなぎ。よかった、全身タイツじゃなくて。さすがに全身タイツはどう反応していいかわからなくて逃げるとこだったわ。それにしても先輩の桜色のこのつなぎ、似合い過ぎじゃない? 背の低い超美少女がポニーテールで桜色のつなぎとかカワイイ要素しかないし、異常にギャップがあってクソカワイイんだけど。
と、ここまで考えてはっとなった。
だが待てぼく。あのクソカワイイにだまされるな。だってつなぎだよ? つなぎってあれだよ? マジで? つなぎってさ、車の整備師さんとか道路工事の人とかとにかくきつめの肉体労働をするひとが着てるイメージしかないつなぎだよ? 学校指定のジャージとか目じゃない、汚れるの前提、泥でも油でも何でも来いって具合の圧倒的作業着だよ? しかも近付いたことで別の物も目に入ってきた。先輩は何か首にでっかいものをぶら下げてた。なんなら先輩のおっきなおっぱいのうえに乗ってる正体不明の透明の眼鏡にしてはデカい何か。それは水泳用のそれがオモチャに思えるような透明でデッカイゴーグルだった。何ならメガネの人でもメガネごとつけれるぐらいでかい。さらに手にはちょっと見たことない厚手の手袋も。え? そんなの着てゴーグルぶら下げて分厚い手袋までしてる完全作業着で今にもあとはヘルメットがあれば工事現場行けますぐらいの人と一緒にぼくこれからなにやらされるの? 車でも組み立てるの? それとも道路作るの? と思い、やはりこの部活に足を突っ込んだのは完全に判断を誤ったかと思ったが後の祭り。
満面の笑みで右手で手を振ったりおいでおいでしてくれている超絶美少女の超かわいい先輩(とかわいい女の子に引き寄せられる男子高校生の本能)に背を向けて今さらどこにいけるというのか。引力がくるってやがるとしか思えない力がぼくの足を先輩の元へと運んだ。そしてひきつった笑いを浮かべながら先輩の前までたどり着いたぼくに対照的に満面の笑みの先輩はこういったのである。
「相内君、よく来たね! 迷わなかったみたいでよかった! さて早速だけど君にはこれからこれを作ってもらいます! それは間違いなく人類が作った最古の道具の一つで、現代人の誰もが作ったことがないけど作り方自体はみんなが理解していると思い込んでるくらい単純な道具!」
ジャーン!! 実際に口に出してそういった先輩がぼくにニコニコ笑顔で見せつけたきたもの。
さっきの問題の答え。
それは、
「石斧だよ!!」
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