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4話「気配」

敵意を鎮めた魔物たちは、「ヌシ様」と言いながらフェンリルの周りを囲んだ。


「ヌシ様、ヌシ様と一緒に居られるその人族はなんなのですか?」

 フェンリルの周りに集まった中で1番前に立っていた1番老けてるゴブリン・メイジがフェンリルに問いかけた。


「なぜ、お前に話す理由がある? 我が認めた相手ぞ、それ以外理由は無いだろう。」

「ですが、いくらヌシ様が認めたからとはいえ人族は傲慢で怠惰、金の為なら裏切ることだってするのですぞ?」

「それも一理あるな。だったら此奴らをどうすればいいと思う? 言ってみよゴブリン・メイジ」

 フェンリルはゴブリン・メイジに静かな怒りをぶつけるように問い詰めた。


「えっと……それは……」

 殺気立ったフェンリルに口出しするのを恐れたのかゴブリン・メイジはオドオドとし始めた。


「なんだ? 貴様は何も言えぬのか?」

「えぇ、その…ですね…」

 フェンリルはまるで獲物を狩る時のような顔つきになった。


「はい!」

 緊張が走った空気の中、一体陽気に手をあげる魔物がいた。


「ほぅ、なんだね? ゴブリン・ソルジャー?」

 手をあげたのは、赤いターバンに赤いスカーフを巻き、短剣を持ったゴブリン・ソルジャーという魔物だった。


「突然失礼するっす。この集落を抜けた先、自分らの集落から離れ人族が入らない敷地があります。彼らをそこに住まわせるというのはどうっすか?」

 ゴブリンは単体でこそ弱いと知られてる魔物だが、頭がキレることでも有名な頭のいい魔物でもある。

 だから、人の言葉を覚えるゴブリンはいても不思議ではない。

 だが、明らかに頭が良すぎる。

 精々、『背後を狙う』、『茂みに隠れる』ぐらいしかゴブリンは能がないはずなのだが?


「ふむ、なるほど、いい案だ。それで行こう。よくやったゴブリン・ソルジャーよ。礼を言う」

「そんな! 恐れ多いっす!」

 ゴブリン・ソルジャーは「案内するっす」と言いながら俺らの手を引いて行った。

 薮の奥にある木々をも廃れた森に俺らは案内された。


「こんな辺鄙なところでごめんっす」

 ゴブリン・ソルジャーは俺らに謝った。


「ねぇ、君の名前は何て言うの?」

「アルルっす!」

「アルル、いい名前だね。でもなぜ君はそんなに話せるんだ?」

「それは言えませんっす……」

 アルルは少し俯き、険しい顔をした。


「ごめん。無理されるつもりはないから言わなくてもいいよ。道案内ご苦労様。」

「申し訳ないっす」

 そう言ってアルルは集落の方に戻って行った。


「さて、これからここで生活するわけなんだが……これまた酷いな」

 木々が廃れこの辺り一帯に雑草に苔ばかりが生えている。


「なんだ? 主人この草が邪魔なのか?」

 サラは何かやる気満々で首をゴキゴキと鳴らして前に出た。


「サラは黙ってなさい。ここは私が」

「あ? なんだとシルフィー!?」

 サラとシルフィーはまた睨み合い歪みあっている。

 俺も止めようとするが、前みたいに止めることができないほど怒りで魔力を放出していて近づけない。


「じゃあ、勝負だ! どちらが多くこの草を刈れるかな!」

「ふーん、サラにしてはまともな提案ですね」

「ッんだと!! 俺の方がお前より100倍多く刈れる!」

「望むところッ!!」

 サラとシルフィーはそう言って雑草刈を始めた。

 サラは炎で焼き焦がし、シルフィーは風を操り鋭い刃のようにして雑草を刈っている。

 結果は……五分五分と言ったところか。


「俺の方がお前より多いね!」

「違います! 私の方があなたより多いですわ。それにあなたは焼き焦がしてばかりで結果が目に見えて無いじゃない!」

「なんだと!!」

「「んぐぐッ!!」」

 サラとシルフィーはいつも通りに歪みあった。


「主人様」

 サラとシルフィーが歪みあっている最中俺の後ろからシュバルトが話しかけてきた。


「どうしたんだ? シュバルト」

「何やら気配を感じます故、報告したまでですよ」

 シュバルトは、ニタァと笑った。

 その笑みは獲物を狩るような笑みをしていた。


「私が見て来ましょう。」

「待て、俺が行く」

 シュバルトを止め、自分が行く事を提案した。


「…そうですか。では、お気をつけて」

 シュバルトは興がそがれたかの様に一言だけ言ってどこかへ消えて行ってしまった。


 俺はシュバルトが向かって行こうとしていた方角に足を向け歩いた。

 そこは集落への道のりに近い森の中だった。

 草木をかき分け俺はシュバルトの言っていた気配を探した。

 数分後

 そこに居たのは小動物や小さい魔物だった。

 その魔物達の顔は何故か悲しそうに見えてしまった。


「君達、どうしたんだ?」

 俺は思わず話しかけてしまった。


「ヒィ! ぼ、僕たちを食べないでぇ!」

 1匹の犬のような魔物は俺に怯えて頭を抱え全身を丸くした。


「別に食べたりしないさ。それよりも何故集落に行かないんだ?」

「それは……」

「私が話そう」

「ヌシ様!?」

 そこに居た魔物達は一斉に忠誠の構えに入った。


「人間、其奴らはこの集落では1番弱い種族。それ故ここの連中は其奴らを省いているのだ」

「弱肉強食って訳か」

「話がわかるようで助かる。所詮、魔物は弱きものは虐げられ、強きものが頂点に立つ仕組みなのだから」

 フェンリルは少し口調が緩くなりその場を去って行った。


「君達は寝る場所はあるのか?」

「いえ、まだ無いです。」

 俺に対してまだ怯え続けている。


「もしよかったら俺たちの所に来ないか? まだ、家も何も無いけど」

「……」

 魔物達はお互い見つめ合い相談し始めた。


「いいんですか?」

「あぁ、もちろん」

「ありがとうございます!」

 魔物達は喜び帰り道、俺について来てくれた。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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