2話「精霊」
2話です!
「君達は……誰だ?」
極刑にされ俺は死ぬはずだったのだが、目の前には紅髪の女の子と毛先が緑色の白髪の俺を膝枕してくれてる女の子それに、体が黒いモヤで幽霊のような見た目の男がいた。
「初めまして、私は風の精霊シルフィード。シルフィーって呼んで」
これは驚いた。
なんと言っても精霊の中でも最上位に位置する大精霊の1人である事だ。
伝承ではシルフィード様は風の大精霊、自由の象徴であり、人に気ままに生きる為の加護を与える。
と、言われている。
「おいおい。風の精霊さんよ。本当にこいつが主人でいいのか?」
シルフィードが自己紹介を終えると横から紅髪の筋肉質の女性がシルフィード様に喧嘩腰で話す。
しかも、その女性の言うことには俺が主人?と言うような発言をしていた。
「あら、でしたらあなただけ天界に帰ってもいいですのよ?」
シルフィードは紅髪の女性に嫌味ったらしく言う
「チッ! 気にくわねぇな。」
男勝りに舌打ちをし、俺を睨みつけた。
「俺はサラマンダーって言うんだ。サラって呼べよな!」
俺に睨みつけたかと思えば、男口調で急な自己紹介を始めた。
そして、また大精霊の1人、火の大精霊サラマンダー様なのだ。
伝承では、サラマンダー様は火の大精霊、強さの象徴であり強く気高く生きる為の加護を与える。
と、言われている。
「な、なぜ火の大精霊様と風の大精霊様がここに?」
目の前でシルフィード様とサラマンダー様がいがみ合っている所に俺が質問を問いかける。
「おいおい、俺を忘れられては困るぜ」
俺の質問を遮るように奥にいた幽霊が話しかける。
「なんだよ。俺達は貴様を呼んだ覚えはねぇぜ?」
「野蛮だなぁ。サラマンダーよ。我はこの者に適合したのだよ。あなたに言われる筋合いはないねぇ」
「チッ!」
適合? 俺はあの幽霊と適合したのか?
「正解だよ。主人様」
まるで俺の心を読むかのように話しかけてくる。
「では、私の自己紹介と参りましょうか。私はシュバルト、その者達と同じ部類で言うのであれば、闇の大精霊とでも言いましょうか」
「闇の……大精霊」
魔法学生時代に存在だけ聞いたことがある。
その存在は謎に包まれある時には人を裏切り、ある時にはか弱きものを助けると言う不気味な大精霊であるという事。
「主人様は聡明ですなぁ。ただ、我は忠誠を誓った相手には野暮なことは致しません。」
闇の大精霊シュバルトの顔は笑っているともとれる顔をしていた。
その声はどこか不気味で背筋が凍るような感覚が全身に通った。
『パンッ!!』
音の方を向くとシルフィーが両手を叩いていた。
「話は終わったようなのでこれから主人様と共にこれからの生活のことについて話し合いたいと思います。」
「チッ……」
シュバルトは嫌味ったらしく舌打ちをし、俺のところから少し離れていった。
「では、私が今から主人様に現状を……」
「待て待て! さっきの俺の質問に答えてくれないか?」
俺は咄嗟にシルフィーの話を止め、俺の質問の話題に振り替えた。
「あぁ! 『私達がなぜここにいるか?』でしたね?」
「あぁ、そうだ」
「それはヒ・ミ・ツです。」
人差し指を口に当てウィンクをするシルフィーに俺はトキメキを隠せなくなっていた。
「おいおい、風の大精霊さんよ、さっさと状況確認しろよな!」
「えぇ、わかっていますとも……」
シルフィーとサラはお互いに額を当てバチバチに睨み合ってしまった。
「ま、まぁまぁ落ち着いて……」
「まぁ、主人様が言うなら……」
「はぁ? こいつが言う前からそうすればいいものを」
「何か?」
「いいえ、何も」
俺の一言で一応収まったにせよ2人の関係はしばらく、このまま続きそうだ。
「それでは説明いたします。まずは、主人様は王国の軍に追われる身となっています。」
「やはり……そうか。」
極刑を免れたとはいえ罪自体が帳消しになったわけじゃないからな。
「ん? 待てよ?」
俺は漠然とした疑問に首を傾げる。
「どうされました? 主人様」
それを暗示するようにシルフィーが心配そうな声で俺に問いかけてくる。
「シルフィー、ここは何処だ?」
俺は今更すぎるほど質問をシルフィーに投げかける。
「ここは……」
「いたぞ!!」
声の方角には槍を持った王都の兵が数万人と俺たちに向かってくる。
しかも、空を自由に飛び回る王都最強の竜騎士団が待機していた。
「逃げましょう! 主人様!」
シルフィーは俺に手を差し伸べ俺はその手を強く握りしめた。
「うわっ!」
シルフィーは俺が手を掴んだのを確認すると力一杯に俺を持ち上げた。
俺はあまりのことに目をつぶってしまった。
『風走り!』
『風飛行!』
シルフィーは人間界には存在しないと言う無詠唱で同時詠唱と言う大精霊の力を発揮して俺を空に浮かした。
「さぁ、主人様! 目を開けてください」
俺はシルフィーの優しい声にゆっくりと目を開けた。
「と、飛んでる」
目の前に広がる景色は過去最高に美しかった。
足場のない緊張感と裏腹に昼に浮かぶ月が2つ、それに透き通るほどの空の色。
その景色はまさに絶景。
吸い込まれるように昼の月に向かって俺は飛んでいた。
「危ない!!」
絶景に見惚れていた俺にシルフィーは叫んで俺を抱きしめ森の中へと突っ込んだ。
「いたた……」
シルフィーが風魔法で軽減してくれたとはいえ空中から背中の殴打は痛い。
「大丈夫ですか!?」
俺の上に乗っていたシルフィーは咄嗟に立ち上がり俺を心配そうに言う。
「あぁ、俺は大丈夫だが……この森は……」
「動くな、なのです……」
気弱そうな女声がした。
「今のはシルフィーか?」
「いえ、違います」
「じゃあ、サラ?」
「違うな」
シルフィーもサラも声の主ではないようだ。
ここには俺とシュバルト以外女の子は2人しかいないはずなのに……
「こ、ここです!」
俺の真後ろに涙目になりながら角を立てる一角兎がいた。
最後までお読みいただきありがとうございます!感謝感激雨霰です!