修行開始
『先生』 と呼んでもらえたことがうれしくなったのか、マリーはふふーんと満足げな顔でクルクルと優雅に回った。
しかし、ハッと私の視線を感じたのか……、満足げな顔が、みるみるうちにリンゴのように真っ赤になっていくと、顔を俯いて
「 今のことは忘れて…… 」
「 ふふっ、はい……ふっふふふ 」
なるべく忘れられるように努力はするけど、流石に先生のあの姿は忘れられないだろうなぁ。
笑われたのが余程嫌だったのか、バッと顔を上げ
「 笑ってられるのは今のうちよ! これから大変になるんだからねっ! 」
おーこわこわ、ちゃんということ聞いて修行しないとナーはははー
「 もう! じゃあ、次は実際にマナの流れを経験してもらうわ、その場に座りなさい 」
言われた通りに体育座りでその場で座ると、先生は私の後ろに回り込み、
「 少し痛いかもしれないけど、踏ん張りなさいよ 」
と、言い終わると背中に手を当て
「 え? それって、どういう……イッッッ!!??!? 」
――自分の体に電流が走った。 音に表すと、バチンってかんじだろう。
「 ッッ!! うッ…… 」
痛い、とんでもなく痛い。 体に熱が籠って、何かがあふれ出すのを必死に止めていないと壊れてしまいそうになる感覚。
息が出来ない。 意識が…………
「 しっかりしなさい! 」
先生の声が聞こえた――。
「 せん、せい…… 」
「 今、体の眠ってたマナを無理に動かしてるから辛いと思うけど、集中してマナの動きを感じなさい! 感じれるようになったら、辛くなくなるから 」
そんなこと言われても、つらいし痛いし。 無理だって!
「 無理です!! 」
「 無理じゃない、やるの!! 」
無理っていってもやめてくれないし、どんどん痛くなるし、このまま意識なくなった方が楽かなと思い始めたところだった。
ガハッ。
血を吐いた、目の前が真っ赤に染まっていく。 何も聞こえない。 顔に何か流れていくのを感じる。
――痛みは……。 もう感じない。 感覚がないんだ。
「 だめっ!! 嫌!! 戻ってきて!!―― 」
――そんな、悲痛の声が聞こえた気がした。
――――――――――――――――――――
「 あーだめだよ、まだ君はまだきちゃだめ。 まだ始まってもないじゃないか。
君たちは、僕が気にかけてあげた子たちなんだから、まだあがいてもらわないと。
しょうがないから、僕が助けてあげる。 ――でも、次はないからね 」
――――――――――――――――――――
――誰かの声が聞こえた気がした――
体が、暖かくなっていく。 痛みが無くなっていき、何かが流れる感覚がある。
――これが、マナが流れる感覚?
全身を隅々まで、暖かい水が流れていくみたい。 不思議と、力が湧いてくる。
さっきまでの辛いのが嘘みたいだ。 そうだ、先生は?
「 先生……? 」
目を開けてみると、また私は膝枕されていたみたいで、すぐに先生の顔が見えた。
ない……てる? どんどん、顔が真っ赤になって……。
「 よ゛か゛った゛よ゛お゛お゛ーー!! もう、目を覚まさないかと思ったよ゛お゛お゛!!
ごめんねぇ゛!! 無理させてごめんねぇ゛!! ゆりねならできるとっ思って、うぐっ…… 無理させちゃってぇ……。 うぅっ……、そしたら倒れてっ、目を覚まさなくなっちゃってッッ 」
「 っ! 先生!! 」
ガバッ!! 先生を抱きしめた。
「 先生……、いいんです泣かないで……。 私、痛くて辛くて、頑張ろうともしなかったんです!! 私が悪いんです!! 」
そう、先生が泣く必要はないんだ、だって私が悪いんだから。 私が頑張りもしなかったんだから。
怒られて当然なのに、なぜ先生は泣くのだろう。
「 泣くに決まってるでしょっ! 私が無理に押し進めたせいで、大切な生徒を失うところだったんだから!! 」
大切な生徒? 私が? 言うことも聞けない、やれと言われたことも出来ない私を大切なの?
この、先生は、私を大切だって言ってくれるの? そ、そんなの……。 前の世界でどれだけ頑張っても、誰にも言って…………。言って……?
――うぅっ、頭が割れるように痛い。
「 ゆりね!? どうしたの!? 」
なにか思い出しそう。 これは……。
―― 「 ゆりねのこと大切だからね!! 」
―― 「 大切なお前を、そんなところには行かせられない!! 」
―― 「 ずっと一緒にいよう 」
な、なに? この記憶……。 身に覚えがないのに、なぜこんなにも懐かしく思うの?
もしかして、失ってる記憶の一部? 出てきた人は霧がかかってるみたいに見えなかったけど、誰だったんだろう。
「 い、いえ。 大丈夫です。 そんなことよりも、私のことを大切って言ってくれてありがとうございます、嬉しいです……。 先生って意外と優しいんですね 」
純粋に、大切と言われたのは本当にうれしい。 そんなの滅多に言われたことがないから、照れくささを覚えた。
「 ふ、ふん! それより、マナの流れはわかったみたいね! 眠っていたマナが起きたから、随分と体が楽でしょう? 」
――全身にマナという水が流れてるのがわかる。
確かに、これよりも段違いに体は楽だし、今ならバク転が出来るかもしれない。 あくまで例えだけどね。 これがマナの流れを把握するってことなんでしょう。
「 魔力を体に慣らすために、今日は戻って休みましょう。 明日から本格的な修行になっていくから 」
「 わかりました、明日からは本気で頑張るのでよろしくお願いします!! 」
帰りは、行きと違ってもっと早く帰れた。 おそらく、魔力のおかげだと思う。
これほどまでに、体というのは軽く感じるのかと驚いた。
――先生によると、私の魔力の量が普通の人より多く清らかだかららしい。
夜ごはんを食べ終わり、自室に戻り湯あみを済ませると、糸が切れたように眠気が来た。
ベットに横になり天井を見てウトウトしながら、『 明日は、今日よりも大変になるんだろうな、
でも、大切と思って言ってくれる人の期待には応えたいな 』と、考えながら私は眠りについた。
――――――――――――――――――
カンカンカン!! カンカンカン!!
うるさい、うるさい!!
「 先生!! この起こし方はやめてくれませんかねっ! 」
「 しょうがないでしょっ、優しく何度も起こそうとしたのに、起きないじゃない!! 」
あれ? そんなに寝起き悪かったっけ? 前なら、起きろって言われたら一発で起きてたのに、おっかしいなぁ。 起きないと、もっとつらい目にあうし……。
あぁ、そっか。 もう、そんなこと起こらないから起きるの下手になっちゃったんだ。
そっか、知らず知らずのうちに起きるの下手になってたんだ。……嬉しい誤算かなっ。
「 なーに、朝から泣いてるのよ! あっ! も、もしかして、まだ体が痛いとか? 」
「 ふふふっ、先生心配しすぎですよー。 違います、これは何か目にゴミが入っただけです~ 」
先生ってば、昨日のとこで心配しすぎっ! ふふっ、大切にされてる実感があって、幸せだなぁ。
「 もうっ! 誤解を招くようなことをする、ゆりねが悪いっ! ほら、ご飯できてるから、早く下に降りてきなさいよね! 」
そういって、先生は下に降りて行った。
先生には感謝している、ご飯も作ってくれるし、暖かいお湯を魔法で大きい桶いっぱいに出してくれた事によって、湯あみもできたし。 感謝してもしたりないぐらいだ。
だからこそ、今日は先生の期待に応えられるように精一杯修行に努めよう。
さーて、今日のご飯は何かなーまた、あのステーキが食べたいなー
昨日は、ステーキをまた食べたいことを伝えると、先生は悲しそうな顔をしていたけど……。
どうしてだろう? 先生に聞いてみようかな?
よーしっ! 準備ができたし、下に行きましょう。
「 せんせーいっ! お待たせしました、今日の朝ごはんはなんですかっ! 」
「 朝ごはんは、鶏むね肉のソテーに、シーザーサラダ、卵スープに、パン。
デザートのパンプキンマフィンよ 」
おお! すごく美味しそう!
「 いただきます! 」
私は、頬張るように一斉に食べ始めた。
先生が、頬張る私を見て半ばあきれたみたいに見てきたけど、そんなの気にしなかった。
「 モグモグ、先生、モグモグ、あの、モグモグ 」
「 食べながら喋るのはやめなさい、ちゃんと口に物がなくなってから喋りなさい 」
モグモグモグモグ、ゴクンッ
「 先生、またあのステーキを晩御飯でいいので、出してくれませんか? もちろん、他も美味しいんですけど、あれが食べたくて 」
さっきも思ったけど、本当にあれは美味しい。 また食べたい。 思い出すだけでも、涎が出てくるほど……。
先生は、困ったようにこう言った。
「 暫くは無理なの。 ごめんなさい 」
なんで? もしかして、食材の用意が難しいから?
「 もしかして、調達が難しいからとかですか~? 」
私は、お茶らけたように先生に聞いた。
――先生はいきなり怒り出した。
「 違うわよッ!! 調達だけなら用意するのは、簡単よ!! 」
じゃっ、じゃあ、なぜ? 調達だけなら簡単なら、調理するのが難しいとか?
いくら考えても、他には理由が見つからない。
「 調理するのが難しいからとかですか……? 」
「 違うッ!! ……違うの。 私は、ゆりねを想って、無理って言っているのに…… 」
先生が、泣いてる? それに……
「 私の為……? って。 それ、どういうことですか……? 」
おちゃさくです。後書きとかよくわからないので、作者の独り言でも残しておきます。
【 お茶は、生茶派です 】
それでは!
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オナシャーーース!!




