第七章
「僕」が僕から離れた後、僕は自分の体をしげしげと見つめた。「僕」が言って初めて僕がヴァンパイアになっていたことに気づいた。僕の爪は有り得ないほど伸びていて、少し赤くなっていた。体がとても動かしやすく、普通の黒人よりも完全に黒かった。
「これでお前も、オレと同じってワケだ!人のこと言えねぇな」
「亜美華を守るためなら、怪物にだって何になってなってやるよ」
「そんなこと言ったって、ヴァンパイアになったらもう後戻りは出来ねえんだ。これからの人生、お前はずっと夜の生き物なんだぜ!」
「僕が拒否しても、どうせ僕を乗っ取って周りの人を殺すんだろ?」
「・・・そりゃな。お前がヴァンパイアになるまでお前の周りの奴らを殺そうとは考えてた」
僕はため息を大きくついた。
「それなら、今なって正解だね。少しでも遅かったら、人が死んでいた」
「・・・そういう受け取り方もあるがよぉ、自分が速くヴァンパイアになっちまったとは思わないのかよ?」
「思わないね。今まで一番大切だったものを失ったんだ。僕はもうこれ以上なにも失いたくない」
「・・・甘いな。それでも、お前はオレの主人格だ」
この言葉の意味を僕は理解できなかった。
「しばらくオレはお前の中で引っ込んでてやるよ」
「僕」は首を横に倒し、ボキボキと首をならした。
「気が変わったからな。お前の事を内側から見ててやるよ」
「?・・・何でいきなり?!」
「気が変わったっつってんだろ。安心しろ、もう殺しゃしねぇよ」
「ホントだな」
「ぁたりまえだ!約束ぐらい守ってやらぁ」
「僕」は後ろを向いて、手をふりながら言った。
「あぁ、それから暇なときでいい。オレ達に接触してきたヴァンパイアに会ってこい。何か分かるかもしんねぇかんな」
「・・・うん」
「じゃあな」
「・・・・・」
目の前が真っ暗になった。
「光!光ってば!」
「・・・ん、あ」
「光が起きたよ!良かった~。あたしの事分かるよね?!」
「え、うん。亜美華でしょ」
「良かった~。死んだみたいに寝てたから、心配しちゃった。やっぱり、光はあたしがいないとダメだね」
この声が聞きたかった、この人を守りたかった。
「う、うん。僕には亜美華がいなきゃダメだよ」
やっと大切な人を守れた。
これからもよろしくお願いします




