第五幕
その夜、僕はずっと起きていた。頭を抱えていた時間は2時間ぐらい。ベッドにうずくまっていた時間はそれ以上だった。一晩、考えても整理の付く出来事じゃなかった。
「この事を受け入れるか、入れないかはお前次第だ。だが、その力をコントロールしなければお前の周りの人々は殺されるだろうな。お前によってな」
そう言って、怪物は僕の病室を後にした。怪物は言葉と共に、指輪を置いていった。
「それをつけていれば、ヴァンパイアの力を少しは押さえ込めるだろうな。まぁ、本来はそのために使うのでは無いのだが」
僕は一晩考えた結果、指輪を付けることにした。なぜなら、怪物が僕に危害を加えなかったからだ。危害を加えないなら、何で僕のところにきたのだろうか。それは、僕を助けるつもりだからだ。
といった仮説を僕は立てた。僕はこの仮説を信じ切った。苦労した分だけ、信じられるものだ。
朝になったら、僕は勇気を出して指輪を付けみることにした。右手でそれを持って、左手のそれぞれの指をおのおの広げた。そうして、大きく深呼吸をした後に左手の中指にゆっくりはめた。
はめた瞬間は、なにも起こらなかった。僕はほっとした。
その瞬間、激しい頭痛がした。僕は頭を押さえながら目をつぶった。目を開くと、そこは病室ではなく真っ暗な空間だった。
「オレを押さえようってのか?」
「!」
僕の前に、ヴァンパイアが現れてそう言った。
「オレを押さえることは出来ねえよ」
「お前は、何なんだよ?」
僕は単刀直入に聞いた。
「あ~?そんなもん決まってんだろ」
「?」
僕が眉を寄せるとヴァンパイアは笑いながら言った。
「お前自身だよ!オレはお前だよ!お前はオレだよ!オレとお前は一心同体なんだよ!!だから、意識や感覚は主人各のお前が支配してるんだ!」
「じゃあ、何で今朝の出来事が起きたんだよ!?」
「オレはお前の心の中でひっそり暮らしてたが、無理だった!やっぱり、ヴァンパイアは暴れないとなぁ。そろそろ、頃合いかと思ったから今朝は体を乗っ取らせてもらったんだよ!主人各のお前の意識が無いときなら、少しは表にでれるからな」
「だけど、僕はもう指輪を付けてるよ」
「・・・そうだ。その指輪を付けている。だが、その指輪はオレとお前を近づけるための物だぜ?」
「は!?」
ぎりぎり12時に間に合いました(笑)




