こんにちは、呪いました
何番煎じでしょうか、幽霊モノです。
なろうでの投稿は初ですが、やるだけやってやろうの精神で頑張ります。
では、御託は短めにしまして。
どうぞ!
俺はとあるDVDを自転車のカゴの中にぶち込み、友人の家を出て帰路に着いた。
一時間ほど前に夏休みの間に高校で開かれる夏季学習会が終了し、さーて帰るかーと荷物をまとめて教室を出ようとした途端に突然友人––––––柴崎に呼び止められたと思えば、そのまま流れるように彼の家に招かれ。
「お前こういうオカルト系の映像観てみたいって言ってたよな?これやるよ、何かウチの物置から出てきたんだ」
そんな言葉と共に渡されたこのDVD。
真っ黒なケースの中に収められていたDVDの表面には何も書かれておらず、それ以外には何も入っていない。どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
••••••別にどこかに怪しげな御札とかが貼られていたりとかしていた訳ではなかったので、雰囲気だけで本当は特に怖くもない映像なのではないか?と柴崎に言ってみたが、
「その雰囲気が尋常じゃない感じがするだろ、お前好みの。まぁ、もしエロ動画とかだったら俺にも観せてくれ」
と返された。雰囲気がいかにもってところには同意するが、もしエロ動画だったらDVDを叩き割って返してやろうと思った。特に意味は無い。
「••••••確かに恐怖映像とかの部類は好きだとは言ったが、まさかここまでガチっぽいのを渡されるとは」
自転車を漕ぎながらそう呟く。
俺は以前から柴崎を始めとする友人たちにオカルトにハマっている旨の話をしていた。と言っても特に自分からは広めようとせず、聞かれたら答える程度のレベルだったのだが。柴崎はそんな俺のためにこのDVDをプレゼントしてくれたのだ、観なければ失礼というものだろう。
だがこのDVD、どう見てもそこらのレンタル店で陳列されている類のモノとは異質な感じがする。もしかしてこれ、呪いのDVDとかそういうものなんじゃないだろうか。観たら死ぬとかいう、アレ。
「まさかな」
またも呟きつつ、自転車のハンドルを切って十字路を右に曲がる。その後も自転車を漕ぎ続けていると、馴染みの我が家が見えてきた。まぁ、我が家というか7階建てのマンション••••••賃貸であるのだが。
駐輪場に自転車を止めた後てエントランスに向かい、そこで正面に備え付けられているテンキーにパスワードを打ち込んで自動ドアを開き中に入る。
エレベーターに乗り込んで3階に到着••••••しばし歩いた後に自室の前へと到着する。
「ただいま••••••っと」
一人暮らしであるため家族の返事は返ってこないし恋人の返事などもっとあり得ないのだが、一応そう言いつつ玄関の扉に鍵を差し込んで開ける。
部屋に入った後は肩にかけていた荷物を床に下ろし、手洗いうがいや着替えを済ませた後に再び荷物の下へと戻り、件のDVDを手に取る。本来ならば今日は夏休みの課題を適当に進め、夕飯や入浴を済ませたらとっとと寝てDVDを観るのは明日にしようと思っていたのだが••••••。
「ここまで怪しいと逆に気になるんだよな••••••とても明日まで待ってられない」
俺は基本的に誘惑には弱いタイプなのだ。勉強中もゲームやオカルトの誘惑に負けて毎度集中出来てないし。
そんな訳で俺は自嘲気味に笑いつつ、テレビの電源を入れてDVDをプレーヤーに挿入する。しばらくすると画面が切り替わり真っ暗になった。やべぇ、何か物凄くワクワクしてきたぞ。
年甲斐もなく(まだ高校二年生だが)興奮しつつ、テレビの前で正座しながら映像が流れるのを待つ。すると、画面に変化が現れた。
「••••••んん?」
もしかしてこれは本当に呪いのDVDなのではないか••••••そんな期待と不安が入り交じった想像をしていた俺は、目の前の画面に映った光景に首を捻った。
画面の中では、見た目麗しい黒髪の女性が寂れた廃村のような場所をバックにこちらを凝視していた。まぁ、これだけならイメージ通りと言えなくもない。だが、その装いは。
「どう見ても学生服、だよな••••••」
画面内の彼女は創作物の中などで幽霊がよく纏っている白装束などではなく、ごく一般的な学生服を着ていた。黒セーラーだった。
というか、そもそも女性というか女の子だ。俺と大して年が変わらないように見える。やたら可愛いし髪は艶やかだし、その髪だってロングではあるが別に顔を隠していたりはしない。
俺が困惑していると。
『••••••••••••(ザッザッザッ)』
「こっち来た••••••」
黒セーラーの彼女は無表情でこちらを凝視したまま、こちらへ歩を進めて••••••あっ転んだ。 地面がぬかるんでいて歩きにくいようだ。起き上がった彼女は服が泥だらけになったせいか少し涙目になっていた。
それでも表情を崩さず再び立ち上がり歩を進める女の子。今度は少し慎重になっていた。転倒しないようにゆっくりゆっくりと地面を踏みしめている。
そしてついに前方に両手を伸ばし、恐らくテレビか這い出るための行動を彼女が起こしたその時。
俺はテレビを180度回転させ、画面を壁の方へと向けさせた。
「ッ!?」
「必殺幽霊封じ••••••なんちゃって」
こうすれば彼女は壁に阻まれこちらに来ることは出来ない。とりあえず今のモーションで彼女が俺の方へ来ようとしていたこと、そして恐らくこれは「本物」だという事が分かった。あとはこの状況をどうするかだが••••••。
「––––––!? ––––––ッ!(バシバシ)」
おい壁を叩くな、隣人に迷惑だろ。
「ちょっ••••••だ、出し••••••呪いますよ!?」
「綺麗な声ですね」
「あ、ありがとうございます••••••って、そんなことは今どうでも良いんです!早くテレビの位置を直してくださいっ!」
「えぇ••••••」
予想に反して随分と可愛らしい声でそんなことを言ってきた幽霊(仮)。当然俺は難色を示す。
とりあえず彼女はテレビから出て来ようとしている時点で普通の存在じゃない。極めて常識的な範囲でのオカルト好きの俺としてはいくら可愛くてもそんな存在とわざわざご対面するのは避けたいことであるし、何よりも「呪いますよ!?」の言葉から推測するに、まだ俺は呪われていないということになる。つまるところ、現時点では俺は安全な立ち位置にいるのだ。
しかし彼女をテレビから出した場合はどうなるか分からない。ならば、やはりこのまま大人しく帰ってもらうのが得策だろう。
俺はガタガタと揺れるテレビに向かって。
「もう一度テレビの中にお戻り下さい」
「分かりましたやっぱり呪いません!脱出しても貴方のことは呪いませんのでここから出して下さい!」
「••••••貴女が俺を呪わないと言える根拠は」
「••••••私、幽霊です。幽霊は契約とか約束にうるさいものなのです。こういう時の幽霊は信用出来ます」
契約にうるさいのは悪魔とかの類なのではないだろうか。若干どころか物凄く怪しいが、いよいよ聞こえてくる彼女の声が涙声になってきていたので、一か八か彼女を信じることにした。テレビを再び180度回転させ、俺の方へ画面が向くようにする。すると画面からやたら血色の良い二本の腕が伸びてくる。ビビった。
「ふ••••••んん••••••っ」
「••••••••••••」
妙に艶っぽい声と共に、今度は女の子の頭が画面から出てきた。演出なのか、必死に黒髪を前の方に寄せて自らの顔が隠れるようにしていた。そしてそのまま胴体、足と順調に画面から彼女は這い出てきて。
「ふぅ。••••••出してくれてありがとうございます人間さん。早速ですが貴方を呪いました。余命はきっかり一ヶ月です」
「は?」
このクソアマ、どうしてやろうか。
無事テレビからの脱出を果たし、その場でスッと立ち上がったと思えばちょっと得意気な表情でそんなことを言い出した黒セーラーの少女。契約にうるさいとは何だったのか。
俺は一瞬でも気を抜けば彼女の顔面へと伸びてしまいそうになる右の拳を左手で抑えつつ、彼女に問うた。
「あの、アレですかね。やっぱり貴女は幽霊なんですかね、呪いのDVD的な」
「そうですね、幽霊です。このDVDを観た人を呪って殺し、また別の人が見たところでその人を呪う••••••というのを生業としています」
「ゴミみたいな職業ですね」
「比喩です比喩。要は私の習性みたいなものだと思っててください」
「どちらにしろロクでもないのは変わりませんよ」
そう吐き捨てるように言ってみるも、大して気にしてない様子の幽霊少女。腹立だしい。
「いやー、長い間このDVDを観てくれる人が出て来なかったんですけど••••••ずっとあの廃村で待ち続けた甲斐がありましたよー」
「廃村ですか」
「廃村です。ほら、さっきまで私がいた」
彼女がテレビを指差すと、そこにはぬかるんだ地面や風化した民家が目立つ廃村の風景が映っていた。なるほど、つまり彼女は俺がこのDVDを観るまでの間、一人寂しくあんな所で暮らしていたと。
「いや、だからって俺を呪わないでくださいよ」
「だって呪わないと出られないんですもん。それに、一ヶ月後には向こうに逆戻りですしね」
知らんよそんな幽霊の都合なんて••••••。
「はぁ••••••分かりました分かりました。全く納得いきませんが分かりました。一ヶ月ですね?」
「はいっ!貴方はあと一ヶ月で死にますっ」
人の死をそんなにこやかに宣告するんじゃない。いや、人を呪う幽霊としてはそれが普通なんだろうけどね?••••••とにかく今は状況整理に努めよう。今まで起きたことをまとめると。
○ 俺が柴崎から受け取ったDVDは呪われていた
○ 観ちゃった♡
○ 画面の中から黒セーラー美少女の幽霊登場
○ その可愛い女の子に呪われた
○ 呪いによって俺は一ヶ月に死ぬ
○ 精々余生を謳歌しよう
○ ふ ざ け ん な
ちょいと雑かつ怒涛の展開すぎやしませんか。確かに怪しい怪しいと思いつつDVDを観てしまった俺にも責任はありますけど。問題の幽霊さんが可愛いのが唯一の救いだ。余命宣告を受けた挙句に、この幽霊が俺のSAN値をゴリゴリ削ってくるようなおぞましい容貌の持ち主だったりした場合、俺は発狂してしまっていてもおかしくなかっただろう。
俺が今までの流れを振り返りつつ、頭を抱えていると。
「ではでは、私はここで失礼します。人間さん、これからの一ヶ月は日々を大切にしてくださいね「ちょっと待てやコラ」ふぎゅぅ!?」
しれっと玄関から普通に外へと出ようとしていた幽霊さんの襟首を引っ張ってこちらに引き戻す。何か潰れたカエルみたいな声を上げていた。
というか、割とあっさり物理干渉出来たな••••••。幽霊だっつーから手がすり抜けて触れられないみたいな可能性も一応考慮していたんだけど。
「何勝手に出ていこうとしてるんですか。呪いとやらの解除方法が見つかるまで逃がしませんよ」
「えぇー。私の滅多に無いお休み期間ですのにぃ」
「こっちはこうなった以上、おちおち休んでもいられないんですよ」
うだうだうるさい幽霊さんが逃げ出すことのないよう、彼女の襟首をガッチリ掴んだままそう言う。超能力的な何かで逃げられたらどうしようもないにしても、この先好き勝手に行動させておくよりかは出来るだけこうして目に付く範囲に彼女を置いておくのに越したことはないはずだ。
さて、これからどうしようか••••••俺が今後の予定について考えていると。
「あーあー、退屈ですー。せっかくのお休みですのにー。何も出来ないなんてのは嫌ですー」
「やかましいですよ。別に俺の目に届く範囲なら動いてもいいですから••••••」
俺とて悪魔ではない。いや、目の前にいる存在は俺の呪殺を企む紛れもない悪魔のような方なのだが、いかんせん見てくれは良いのでそこまで過剰な束縛をする気にもなれない。女の子についつい甘くなってしまうのは童貞の宿命とも言える。
••••••一番近い表現を挙げるならば。
「一ヶ月の間俺と同棲してくれれば、それで」
「きゃー!人間さんったら、呪いを解くためとかいう大義名分の下に私を性欲の捌け口にしようって魂胆なんですね!?ごめんなさい顔はそこそこ好みですけど、せめて死んでからでお願いします!」
「ぶっ飛ばしますよ」
この野郎、俺がどんな気持ちでこんなことを言ってるのか分かってんのか。
「とりあえず、俺の知り合いにこういう霊的な事象に詳しい奴がいるんです。明日会いに行きますよ」
「ふふ••••••この私が明日までじっとしているとでも?」
「このDVD叩き割ったらどうなります?」
「やめてください!消滅しちゃう!」
「貴女が消滅した場合、呪いが解けたり••••••」
「解けませんけど?」
「••••••••••••」
とりあえずこの幽霊をここに留めておくためにこのDVDを人質(?)に取っておいて••••••解呪に失敗していざ死ぬぞという時には、これを破壊して彼女も道連れにしてやろうと心に決めた。
「あーもー分かりましたよー!まぁ、たまには人間さんと過ごす休暇ってのも乙なモンかもしれませんしねー」
「••••••どのような理由であれここに留まってくれるなら構いませんよ、もう••••••」
「あははっ。あ、そういえば人間さん、どうせ一緒に暮らすならお名前を教えて頂いても?」
そんなわけで。
楽しい楽しい夏休みの最中に突然人生に一ヶ月のタイムリミットを設けられた俺と、そのタイムリミットを設けた当人である幽霊少女との同棲生活が幕を開けたのである。
「••••••広瀬彰です」
「私はまんま幽と申します!よろしくです、人間さん––––––もとい、あっくん♡」
「誰があっくんですか」
••••••行き先は不安しかないが。
いかがでしたか?
まだ手探り状態ではありますが、これからどんどん設定を固めていこうと思います。感想など貰えたら嬉しいです。
ではでは。




