have you evar 〜3
GRAYERと名乗った集団は銀行内に入るや否や各々の装備を展開。臨戦態勢となった。
「な、何だ貴様らーんぐふぉっ?!」
「喋んなよタコスケ。てめぇらがあげて良いのは悲鳴だけだぜ?」
突然の出来事に狼狽えたデコの腹部めがけ、あり得ない程集弾した残弾が彼の体を撃つ。
「wow...…流石フルチョークにしたM3はエゲツないネ」
「な……デコ!!大丈夫か?!」
「ッチ……まだ勝手に話すヤツが居るのか。聞き分けない奴はー」
その時。先程ショットガンでデコを撃った人物が宙を舞う。その様子に俺や田沼警視、そして覆面集団ですらも驚き唖然とする。だが、GRAYERと名乗る集団には何が起きたか理解していたらしく、それでもやれやれと空を仰ぐ様な仕草を見せた。
「ッ……fuckin!!sniper lives in that building! Kill it!This fucking JAP is doing imitating jokingly!!」
「セラ、落ち着け。先にお前を殺すぞ」
「あぁ?……うるせぇよガルダ。その低身長を更に縮めてやろうか?」
「出来るものならやってみな。前みたいにヤク漬けラブドール直前にされたいならな」
周囲の事を完全無視して睨み合う2人。だが、その様子を彼らの仲間は気にもとめず黙々と準備を進める。
「で、あの狙撃手を撃つの?撃たないの?」
「「とりあえず殺せ」」
「はいはい。それじゃあルイ、準備を」
「はい、姉様」
完全に俺らを無視して好き放題している彼らに対し、大人しく待っている訳にはいかない覆面集団は堪忍袋の緒を切らす。
「てめぇら……良い加減にしやがれや!!!そんなにこれで蜂の巣にされてぇか?!」
「あぁ?誰が喋って良いってー」
その瞬間。セラと呼ばれた人物の言葉をかき消すGAU-17の乱射音が響く。それを見たGRAYERは一度黙ってその様子を見つめ同時に溜め息を吐いた。
「おいそこのデカブツ。てめぇの得物を抜くってのはどういう事か分かってるのか?」
「あぁ?決まってんだろ。お前ら死ねやって事だよ!!」
「へぇ、中々良い心がけだ。……だがなー」
天井を蜂の巣にするカベに向けガルダと呼ばれた男が銃を向ける。大口径リボルバー銃ーS&W M500ーを構えた彼の姿は、本来の身長の1.5倍も大きく見える程威圧的な雰囲気を醸し出していた。
「得物を抜く相手を見極めろ3流。強盗如きが俺らの血を拝めると思うなよ」
「欠品構えて粋がる奴が何を……」
直後、GAU-17の乱射音にも匹敵する程の爆発音がガルダの手元から放たれる。狙いすまされた1発はいとも容易くカベの手を貫きその巨体を跳ね上げる。
「がぁ……ぁぁあ……っ?!?!?!」
「こんな見事な銃を欠品とは。センスも3流だなてめぇ」
「かっ……カベ……お、おい!!トビ!!!早く狙撃をー」
その瞬間本日最高の爆音が響く。もはや小さな地震が来たのではないかと思う程の振動を放った先にはあり得ない姿があった。
「な……なな……」
「Headshot.
ルイ、ご苦労様。無事仕留めたわ」
「はっ。姉様もお疲れ様です」
「なんだよあれ………バレットだろ……なんで『人間が肩に担いで衝撃を全て抑えれるんだよ』……と言うかこの女も女だ……『スコープが付いてないスナイパーライフルで狙撃してやがる』」
アニキは思わず声を震わせ、ルイと呼ばれた大男とそのルイに肩車されている女性を見て戦慄する。
常識では考えられない撃ち方で顔色1つ変えず狙撃する2人組。S&WM500を平然と構える小柄な男。そして好き放題暴れ回る破天荒な少年の4人組に軽々と壊滅させられた覆面集団の頭アニキは、理解する。こいつらには抵抗してはいけない……と。
「分かった。大人しくする。要件を聞くから見逃してくれ。金なら持ってけ。この件から俺は手を引いて大人しく務所に入るから」
「へぇ。物分り良いじゃんてめぇ。感心したぜ。
けどな?勘違いするなよ?
俺らの存在を知った奴は皆殺しなんだよ」
それだけ言い残すとセラはアニキの口の中にM3の銃口を入れて悦楽の表情を見せる。
「Make a firm commitment? You know, thoroughly...moist...?」
「あがっ……コホッ……やめ……っ」
「come on……come on……so……BAD!」
語尾を強めると同時にセラは引き金を引いた。その瞬間アニキの体は痙攣しまるで爆発したかの様に四散する。
「相変わらず趣味の悪い。流石この世の恥辱を纏めた「あぁ?」ー何でもない」
啀み合いながらGRAYERはカウンターを超え田沼の元へと歩いていく。
「おい、これで良いのか?」
「ええ。迅速な対応ありがとうございます」
「ったく……日本じゃ派手に暴れれねぇから嫌なんだよ」
「ははは……耳が痛いものです」
「ま、稼ぎにはなるから良いけどよ。あ、報酬はそこの金でいいな?」
「ええ……い、いえ。構いません。元々奪われかけた金です。貴方方が居なければ取り返せませんでした」
「分かりゃいいんだよ。それ、よっ……と……?」
その時、俺とセラの目があう。お互い目を合わせ瞬きを繰り返し思わず同時にお辞儀をする。
「……じゃねぇよ!!!おい田沼!!なんでここに民間人がいやがる!!!」
「そ、それは奴らが保険で抱えていた人質で……」
「クソが!……あーあ。これが1番胸糞悪いんだよな。はぁ……」
頭を掻きむしりながらセラは俺に頭を下げ……その手に持つショットガンを俺の心臓に向けた。
「わりぃなジャパニーズ。俺らの事は国際法で秘匿にされ、定められた奴以外が知ればそいつを殺す。それが俺らの決まりなんだよ」
「な……それじゃあ俺は……死ぬのか……?」
「ああ。お前は死ぬ。恨むなら使えない自国の警察を恨みな……」
憐れみの目でこちらを見つめるセラ。一方、俺は突然の宣告に動揺し思考が停止する。どういう事だ。死んだと思ったら助かって、助かったと思ったら死ぬって……どういう事だよ……!
「日本じゃ辞世の句なんてもの読むんだろ?聞いててやる。そして俺は忘れないぜ」
「生憎だが……今そんな侍魂を持った日本人は居ない……そして俺はまだ死にたくない……」
後から込み上げてきた死の恐怖に全身が震え歯をガチガチと揺らしながら、それでも俺は抵抗の意を唱える。そんな俺の情けない姿を見たセラは頭を掻きむしりながらため息を吐き首を振った。
「そうじゃない……お前の意思じゃどうしようもねーんだよ。これは世界の意思だ。俺らを知った瞬間お前は死ぬんだよ。生まれて直ぐに産声を上げるのと同じ事なんだよ」
何とか生きようとすがりつく俺に悲痛な声で叫ぶセラ。どうやら彼にしても殺すのは心苦しいらしい。すると、その様子を見かねたガルダがため息を吐いてセラを弾き飛ばし俺に大口径リボルバーを手渡した。
「うちのバカがすまんな。けど決まりはない決まりだ。俺らはてめぇの死に様を見届けなければ次の仕事に向かえない。見せてみな?現代に生きるサムライスピリットを」
「……っ!!!」
手に広がる感じた事のない重量感。その重みとは別に彼が今まで撃ち抜いた人々の命の重みまで感じる気がするその拳銃を自分の頭に当て、引き金に指をかける。
「そのまま撃鉄を引いて……そう。後は指を引けばいい……」
「いやだ……死にたくない……嫌だ……っ……」
「大丈夫だ。痛みは一瞬。その後は安らかに眠れる。……安心しな。てめぇの武勇伝はGRAYERの中で生き続ける。現代に生きるラストサムライとしてな……」
優しく、どこか父性を感じさせる微笑みを向けガルダは語りかける。だが、俺はそんな事に気を回せる筈もなく震える指で熊殺しの得物を抱える。
「ねぇガルダ。私は待たされるのが嫌いなのですよ。殺さないなら私が華麗に撃ち抜きますわ」
「待ちなリィ。この男の命は俺が預かる。てめぇの判断で動くならルイの頭に風穴開けるぞ」
「く……私の弟を人質に取るなんて……貴方で無ければ頭と体が分離してましてよ……?」
明らかな苛立ちを見せるリィと呼ばれた小柄な女性に怯えつつ俺はこのどうしようも無い事態の終着点を見据える。
殺されるか、自ら死ぬか
あぁ。どうしてこうなったのだろうか。
折角の有給が仕事以上にハードな状態だ……
まだ結婚も何もしてないのに。やっと仕事が安定してこなせる様になったのに。
俺の人生これからだってのに……こんな事って……
溢れる涙を恥ず間も無く俺は嗚咽しリボルバーの銃口を頭に向ける。
「一言……ぅ……いいか……」
「ああ。聞いてやるよ」
「俺の事を女手一つで育ててくれた母さん。今までありがとう。先行く息子を……先行く息子を……ぐずっ……許して……ゆるじてぐだざい!!!!!!」
心からの叫びと共に引かれた引き金。その銃口からはかつて無い程の爆発音が響き、先立つ親不孝者の俺を三途の川へと送り込む弾丸が放たれたー