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9・PM、聞き耳を立てる

「知也、朝だよ起きて。」

「誰だ…」


見知らぬ女が俺の部屋に来て起こしに来る。声は聞いたことある気がする。


「酷いなー、もう私を忘れちゃったの?薄情だよ!」


この物言い、リュンか!ピエロの化粧落としているから分からなかった。


「素顔のほうがいいんじゃないか?」

「へ?…もう知也ったら変なこと言うなぁ。それよりも聞きたいことがあったんでしょ。」


そりゃ昨晩言ったが、こんな朝でなくてもいいんでないかい?俺はゆっくり寝たい派なんだ。


「ていうかこっちの調査報告もあるんだけど、聞きたくないの?」


すっかり忘れてた。世界どころか宇宙レベルでの話だ。きっと突拍子もなさ過ぎて忘れてしまったに違いない、うん。


「そんなことないぞ、むしろその報告はエリオーネにじゃないのか?」

「…神とエルマの使徒の主が何を言ってるのよ。自覚しなさい、あなたはもう創世の力を超えたものをもってるのよ」


いきなり真顔でリュンが詰め寄ってくる。規模がよくわかんないなもう。なぜそんな奴が必死に喫茶店開こうとしてるんだよ。


「まぁいいわ、結論から言うとこの多次元はエリオーネのリソース不足は間違いないけど、エルマからの制限ではないわ。エリオーネ自身から勝手に制限されているというほうがしっくりくるわね。」

「やはり子供を産んだからかなのか?」

「直接的な原因ではないけど、その時に何かが起きたのは間違いないわね。」

「神寄せというのは普通にできるもんなのか。」

「普通は出来ないわよ…そんなホイホイできてたらエルマがパンクしちゃうわ。今までも前例はないわ。」


神寄せを興なおうとしてたんだ、普通の事ではない。しかし、所詮は人事だ。こっちの世界のような魔法みたいな事象は発生させることはできない。だが、確かにその時に何かが起きたのは間違いないんだよな。


「そもそも次元昇華のメリットってなんだ?」

「軸に対する操作権限が増えるっていえば分かるかしら」

「4次元から5次元か、俺たちに身近なものは、時間か?」

「正解よ。まぁ正確にはそれのマイナス値、逆行よ。昇華して恩恵を受けるのは神以上だけなんだけどね。」


早い話がやり直しができるという事か。誰もがそんなの使えてたらたまったもんじゃない。

しかし解せないな。それだったらエルマが正常と思える軸に戻せばいいだけだ。

まぁとりあえず様子を見るか、原因が分かっただけで対策は変わらないな。


「そういやリュンは空腹とか感じるのか?」

「基本減らないよ?食事はするけど形上だけかな、でも味覚とかはしっかりあるからね。」

「先日だがキリエのお腹が鳴ったんだが、何かわかるか?自身も初めてだって言ってたが」

「堕天…かな、キリエのステータスに創世系のスキルってまだあった?」

「すまん、それは見てない。今見てみるか。」


とりあえず俺はキリエを意識してスキャンをしてみる

おや、創世系のスキルは存在しているが(転送中)となっているな。進捗は1%未満だな


「まだあるが、転送中となっているな。まだ1%未満だ」

「…ほとほと、あなたの規格外さには驚かされるわ。そう、まだあるならいいわ。」

「これって途中キャンセルするとどうなるんだ?本人に影響あるのか?」

「戻るだけで特に問題ないわ。元凶倒したらキャンセル出来るよ。」


あの時のキリエの顔を見ていると、こんなスキル無いほうが幸せなんじゃないかと思うのは俺のエゴかな。

まぁとりあえずはキリエと相談して、要らないっていうのであれば俺がもらえばいいだけか。


「よし、とりあえずキャンセルっと…OK、転送中が消えたな。」

「へ?」

「転送先はノルン=ランドロームだ、ランドロームってことは十天君か。」

「は?」

「まぁエリオーネが起きたら聞いてみるか。」

「あ、はい」

「あとエルマ経由で転送されてたぞ?本当に何も知らないのか?」

「え?…ええーーー!!知らないよそんなの!ちょっと戻って確認する!昼までには戻るね!」


リュンの体が薄く光り消えた。慌ただしい奴め。

まあ十中八九、犯人は王天だろうな。転送キャンセルされたことに気付いたかどうか。

それにしてもエルマの関係者が手を貸しているんだろか、こっちのポンコツ神以上に交遊関係拾いな王天は。


さて、目が冴えてしまったな、二度寝をする気分じゃ無くなってしまった。

メニュー作りに精を出すかと厨房へ行くと既に良い香りを漂わせている。

文香とエリオーネだ。朝早くからどうしたんだ。


「なる程、こうやって味に深みがでるのですね。」

「エリーちゃんは飲み込みが早いよね~、さすが神様だね~」

「文香ちゃんの教え方も上手ですよ。プロセスだけではなくちゃんと中身を理解した上で説明してくれるから頭にグイグイ入っちゃいます。」


文香に料理教わる神様、上司、同年代(見た目) 。色々複雑だが仲が良くて何よりだ。


「よし、これで後は弱火で煮込んでいけば完成だよ。」

「シチューは初めから作るとこんなに大変なんですね。」

「地球だと固形ルーをそのままドボンで完成だからね~、そっちも全然美味しいけどね~。」


まぁ市販のルーは誰が作っても基本おいしい。手作りでもそれ以上のものを作れるか、というと結構難しいと思う。何も考えずに手軽に美味しい物が作れるメーカーに感謝を。


「今って色々不便~?」

「心配ありがとう文香ちゃん。少し思うところがありますが大丈夫です。正直今が楽しいです…」

「力が戻らなくても良いと~?」

「しかし神としての役目を放棄なんて出来ません…」


出来ないのかな?リュンが戻ってきたら相談してみるか。あと王天の意図も確認しないと、あいつの目的がどうも神の権限剥奪みたいだからなぁ。


「放棄しても誰も文句言わないよ~」

「次元が崩壊したら死んじゃうんですよ?」

「それこそ譲渡とかすればいいじゃない~」

「こんな重荷を誰かに押し付けるなんて出来ません。」


重荷か、人の意志を介すとそうなるか。だからこそエルマは何も考えない人形を欲したのかもな。

ただ自身が次元昇華したいということであればどうにかしないとな…


「エリーちゃん、本当に今楽しい~?」

「文香ちゃん?急にどうしたの?」

「私がただ我慢すれば良いかと思っていたときに知也さんにかけられたら言葉だよ~。」

「知也ちゃんらしいわね…」


あれ、そんなこと言ったっけ。あれかな、最初に文香とあったプロジェクトの時かな。


「初めて怒ったよ~、楽しい訳ないじゃんって~。」

「知也ちゃんは人を怒らせる天才よ…身に染みて分かるわ…」


あれで怒ってたのか、まぁ我慢するだけの仕事なんてつまんないじゃん?まぁ前提条件として独身に限る。

やはり結婚すると妻を養わなきゃって意識が働いて我慢しちゃうんだよなぁ。妻>仕事の構図だ。

エリオーネすまん、お前の場合は意図的にやった。


「でも~、それは本当は自分自身への怒りだったんだよね~」

「自分への…」

「何のために働いてるんだろう。辞めても誰も困らない。仕事への責任だけしかない。誉められるわけでもない。」


いや、あの時辞められてたら確実に困ってたからな!

怒ってたって聞いて今ヒヤっとしたよ!


「でも苦労している、していたから簡単に離れることが出来ない。何故かしがみついてたんだよね~。全然楽しくないよね~。」

「…私もそうだと言うの?全てを捨てて投げ出せと?あなたとは違いそれ捨てたらすべてが滅ぶ…それでも自分が楽しむために捨てた方が良いとあなたは言うの?」

「うん~?、私は捨ててないよ~?」


おや…なぜか精神がゴリゴリ削られていく!?

それにしてもやたらと突っかかるな文香の奴。


「キリエちゃんが望むことって何だろうね~。エリーちゃんがキリエちゃんのために色々頑張ってるのは分かるよ~。でも今はもう状況が違うよね~?」

「知也ちゃん…」

「そうだよ~、勝手に力奪って好き勝手やって。そんな悪ふざけの産物がいるんだから押し付けちゃえばいいのよ~」


酷い言いようだ、俺は悲しいよ。てか最初のこと相当根に持ってるなコレ。


「私は…知也ちゃんが好き。だからこそ、そんな知也ちゃんにも重荷は背負わせたくない。」

「うん~、知ってたよ~。でもごめんね、敢えてつらい現実を言うね~。今のあなたに何が出来るの~?力をキリエちゃんに奪われ、残りの力も知也さんに奪われ、ただの人に成り下がったあなたに~。」

「!?」


おぃぃ!直球でえぐって来た!何かエリオーネに恨みでもあるの!?

あ、余計な無茶ぶりプロジェクト色々回されてたっけ。


「あなたが今までに知也さんに自身の力を返してと言ったことあった~?」

「なっ!」

「望んでいたのよ、 心の奥で力を捨ててしまいたいと~」

「でも…っ違う」

「そしてそれが叶ったのよ?だからこそあなたは不安ながらも歓喜している。それが今のあなた~」

「違う…違うわ…」

「違わないわ~、それでいいじゃない~」

「違う!違うわ!良くない!私がやらなくちゃいけないの!」

「ただの人に成り下がったあなたに何が出来るの~?」

「!?」


二度目の精神攻撃、もうエリオーネのライフはゼロよ!?

ていうか怖えよ、何があったんだよ急に。


「もう一つ、あなたにとって対等って何~?肩を並べたかったんじゃないの~?」

「た、対等よ、私はそう思ってるわ。」

「その割に隠してること、まだあるよね~?」


ああ…そういうことか、すまないな文香…嫌な役目押しつけちゃって。

どこかで言わなきゃいけないと思ってたが、力を奪った俺から言うとここまで響かなかったな。

しかし、ここまで言うってことは文香にとってエリオーネが大事なものになったんだな。


「もう一度言うわ~、ただの人に成り下がったあなたに何が出来るの~?ここまで来てまだ一人であがこうと言うの~?」

「違う、違うのよ…そうじゃないの。」

「万が一の時にキリエちゃんを取るか、エリーちゃんを取るか。しかし不完全なキリエちゃんでは次元が崩壊する可能性がある。そうなったときエリーちゃんはキリエちゃんをどうにかしちゃうのかな~」

「!?」


次元崩壊まで進みそうになったらリソースを一つに戻せばいい。今2柱いることが要因だというのは事実だからな。最悪を備えて色々根回しをしているのだろう。

しかし、わからないと思ってるのかこのポンコツ神。変な覚悟だけ決めてしまうからたちが悪い。


「出来る事なら私が変わってあげたい。でもそうやっても次元の延命はほんの少しだけ。キリエにリソースの完全移行できるほどの容量はないのよ」


文香がエリオーネを抱き寄せる。よく見るとエリオーネは涙を流していた。

幾星霜とどうしようもなかったんだもんな。悔しいよな。


「大丈夫よエリーちゃん。絶対解決して見せる。次元昇華すれば全部解決なんだから、もし万が一は考えない!諦めて一緒に消滅しよう~!」


とんでもないことをサラッと決めやがった。全次元代表文香さんぱねぇっす。

まぁそれについて文句は言わないし言えない。どうせ恨む暇もなく消滅だ。問題ない。


「歩み寄るのが怖かった。対等と言葉を持ち出してただ安心したかっただけ。」

「そういうのはただの強がりっていうんだよ~。今までつらかったね~。後は私たちにまかせろ~!エリーちゃん覚悟してね~?私と知也さんと正樹君の三人が組めばしつこい上に無敵で手が付けられないからね~!キリエちゃんだけじゃなくて貴方も救って見せるよ~!」


文香が高々と宣言する。正樹もそうだが、文香も大分変ったな。思い切りがよくなった。


「そして共に歩もう~。私の人生を掛けるからこの世界だけとは言わずに一緒に歩み続けようよ~。もちろんキリエちゃんも一緒に~。」

「本当に私たちと生きてくれるの?私は本当にそのままでいいの?キリエを受け入れていいの?」

「良いに決まってるよ~。だから、隠し事はなしね~。秘密だったらしょうがないけど~。」


エリオーネの泣き声が厨房に響き渡る。すべてに解放されたような泣き声だ。

次元崩壊がなんだ、次元昇華がなんだ、安心しろ、俺が全力で良い方向へもっていってやるよ。

あれ?文香の体が今光ったような…


名前:深月 文香(∞)

真名:フミカ=ユェル=アルバータ

レベル:99

職業:使徒

力:9999


なんか真名がついちゃった。職業が会社員から使徒になっちゃたんだけど…

あとでリュンに確認しよ…意外と頼れる女だ。

流石に入れる雰囲気じゃないしなぁ、いつまでも聞き耳立ててるのも疲れるし、

俺は部屋に戻りひと眠りすることにした。


仕事始まるとさすがにペース落ちますね。

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