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7・PM、飲食店のオーナーになる?

甘味は正義

「おかえりなさいませ、シルバスタギルドが誇る英雄よ」


ギルドに戻るとむさ苦しいおっさんが優雅に頭を下げてきた。


「リンよりお伺いしております。トモヤ殿、マサキ殿、フミカ殿でお間違いないですな。此度はシルバスタを救って頂き誠に感謝しております。私は当ギルドのマスター、ウラカンと申します。まずは、ささやかではありますが、疲れを癒すための料理をご用意させていただきます。よろしければ食べて行かれませぬか?」


いきなり食事への誘いか、異世界の料理は少し気になるな…宿に行った面子をどうするか。


「ギルドマスター、知也様には連れがいる。その者たちも連れてきていいだろうか?」

「もちろんですとも妖天殿。是非ご参加いただきたい。それで、不躾でもうしわけないですが、その間にお話を伺ってもよろしいですかな。」


妖天ぐっじょぶ、じゃあ後で呼びに行くか。特に問題ないので頷いておく。

とりあえず料理ができる間に報告だな。面倒なので妖天にお任せだ!


「今回出現した魔王はこの世界で最古の竜です。なぜこの街に来たかは分かりませんが、現在では無力化されてます。」


一同が文香が持つブラッドへ視線を集中させる。ブラッドの目が死んでいる。

そろそろ離してやれよ…


「フミカ殿が抱えている竜が、あの大きな竜だと?」

「竜に変化能力があります。後、竜自体は知也様の封印魔法によりこちらに危害を加えることはできません。」


妖天が有能すぎて出番が無い。うん、喜ばしい事だ。こんなにも話がスムーズに行くなんて…


「封印魔法ですか、魔王を封じるほどの…因みに期限や制約等はあるのでしょうか。」

「知也様が死ぬまで有効となります。それまでは大丈夫ですよ。」


そういやブラッドに部下とか僕いるのかな、魔王って呼ばれてるくらいだったし。


「ブラッド、お前って部下とかいるの?」

「約2万くらいの竜が部下にいるぞ。」


意外と多い、復讐とかに来ないよね?

大きい世界地図もあるし見ながら話すか。そろそろ文香から離してあげないと。


「文香、そろそろ離してやれ。色々と教えて貰わないといけないからな。」

「は~い。また抱かせてね~。」


またという言葉に怯える元魔王ワロス。


「主よ、ありがとう。ありがとう。」


ガチ感謝だよ。そんなに嫌がることでもあるまいし。一部ではご褒美だぞ?

まぁ今まで体長20mが一気に小さくなって人に抱かれるとなると不安しかないか。


「解放されたところ早速で悪いが、部下の竜たちの様子を知りたい。後に控えているのか?」

「我の単独行動だ、一人のほうが身軽だからな。地図で言うと、大体この辺りを拠点にしておる。竜人もいるから多少文化的な暮らしをしておるから一応国と呼べるとは思うぞ。あと我が敗れたからと言って部下たちが動くとは思えん。自惚れじゃないが、我に何かあったかといってほかの竜では対処できないからな。」


かなり離れているな。そんな先まで俺の不穏な気配って伝わるのかよ。

それに竜の国か、争いだけは避けたいな。ブラッドが国の王ってわけじゃないよな?


「主の気配は距離に関係ないと思うぞ。この星に来た時点で魔王を冠する者は気付いておると思う。」


まじかよ。その先発がブラッドだったのか、魔王の中で我は最弱とか言わねぇよな。

再生能力は面倒だからなあ。まぁ必殺の真名言って強制下僕の術があるから楽と言えば楽だが、

神代に関係がない真名の無い奴が来たら面倒だ。


「我は魔王の中では強いほうだと思うぞ。少なくとも今現在では他の魔王に負けたことはないからな。」

「まぁそうだな。お前みたいなのがゴロゴロいたら世の中大変なことになる。だが混乱は避けたほうがいい、いずれは竜の住処へ案内してもらえるか?一応争うつもりはない旨挨拶はしておきたい。」

「主なら大歓迎だ。行くときになったら言ってくれ。先に王に伝えておこう。」


よかった、どうやら国王じゃないらしい。魔王って呼び方がややこしいな!


「我が王になっても、我の周りが常に夜だからな…不便極まりないだろう。」


もっともらしい理由だった。本当に迷惑なスキルだよなあれ。

とりあえず魔王と呼ばれる=魔王の周りが夜になるの認識で間違いないようだ。


「とりあえず竜による脅威が無いのがわかって何よりです。今の話ですとトモヤ様を狙ってほかの魔王が動くということもあり得るという事でしょうか?」


ギルドマスターの心配はもっともだ。俺がいると災害に合うって言ってるようなもんだし。


「そうですね、可能性としては無いとは言えないと思いますが、考えても見てください。今回魔王と呼ばれた中で最強の魔王を無傷で仲間に引き入れたんです。他の魔王も馬鹿ではなければそうそうに手を出してこないでしょう。」


正樹の冷静な突っ込みが入る。まぁどんな魔王がいるか分からないからなぁ、確かに安全とも言えないが、今こっちには魔王を引き入れた実績もある。


「シルバスタ領主の判断を仰ぐか…。ともあれ今は無事に脅威を脱したことを祝わおう。あと恩人に対して仇で返すような真似はしない、そこは安心してほしい。料理の準備がそろそろできる頃です、会場へ行きましょう。」


「それでは知也様、私はエリオーネ様達を連れてきますね。」


さて異世界の料理はどんなのかなぁ、ゲテモノ系だったらどうしよう…

食文化の違いは住む上では大切だからなぁ。やべぇ、変な考えをしてしまったら憂鬱になってしまった。

とりあえず会場に行くか…


「急に意気消沈して、どうしたんですか先輩」

「ああ、いやよくよく考えたら俺結構好き嫌い多いじゃん?合うかなーって思ってな」

「ただでさえ好き嫌い多いのに、口に合わなかったらそれは致命的ですね。昆虫系だったら僕もちょっと…」


正樹がさらに追い打ちをかけてきやがった。場所によっては貴重な食材なのはわかるが、さすがに受け付けられないな。


「2人して何黄昏てるの~、早く行こう~?」


心の準備と、後は断るための言葉を考えておこう。俺と正樹は意を決して会場へ向かう。


「美味しそうな香りだよ~」

「見た目は…牛肉っぽいものに鳥っぽい姿焼きに…行けますね!」


安堵してるところ悪いが、っぽいってのヤメテくれないかな!振りにしか聞こえなくなるから!

あと意外と繊細な自分の心にびっくりだよ。


「トモヤ様、マサキ様、フミカ様ですね、お会いできて光栄です。私の名前はエラーラ=トンプス、この街の領主をしております。」


いきなり若い男性に声をかけられ驚いたが、この人が領主だなんて更に驚きだ。

俺たち(今の姿)と年齢変わらないんじゃないか?


「この度は街を救っていただいたということで、本当にありがとうございました。」


ブラッドも俺がここにいなかったら来なかっただろうからなぁ…お礼を言われるのが正直心苦しいぜ!

でも貰えるものは貰うけど!


「ちょうどよかった領主様、相談したいことがあるので少しよろしいですかな。」

「この度の魔王襲来の件ですね、わかりましたお伺いしましょう。」


ギルドマスターから掻い摘んだ報告がされる。かくかくしかじかって便利だよね。


「なるほど、事情はわかりました。トモヤ様達は今後どうされるおつもりで?」

「どこかに拠点を構えて世界各地を見て回るつもりです。一応拠点の候補は妖天からの進めもあってここにしようかと思ってるのですが。」

「そうですか!それなら丁度良いですね!」


うん?何が丁度良いんだ?


「実は先月、ここに住むとある伯爵が退位なされて屋敷に空きがあるのですよ。よろしければそちらをお使いになられては如何でしょうか。」

「それは願ったり叶ったりだが、いいのかそれ。」

「魔王を退けるほどの力を持つ者が住んでいただける、それだけでもメリットは大きくあります。色々と費用の負担も街が持ちましょう!もちろん滞在している間だけで構いませんので街を気にかけてもらえれば幸いです。」


破格の待遇だな、だがこれを利用しないというのは無いな。正樹と文香にも確認をとる。


「怪しいと言えば怪しいですが、先輩を止められるとは思いませんね。厄介になりましょう。」

「私も賛成~。お屋敷かぁ~。憧れるな~。」


両極端な考え方だが、賛成か。


「領主様、ありがたくお受けさせて頂く、すまないが世話になる。」

「こちらこそありがとうございます。早速手配いたします。明日の夕刻までには準備できると思いますので、それまでは街の宿をご利用ください。そちらも準備いたしますよ。」

「ああ、それなら心配いらない。すでに宿はとってある。」


致せり尽くせリだな、さすがにそこまでやってもらうとなると気がひける。


「知也様、本来魔王級の盗伐は人間の悲願です。国に召還され祭り上げられる事態なのですよ。今後の私たちの行動に制約がかからないよう勝手ながら先に領主とギルドマスターには騒がないように言っておきました。」

「流石は妖天、気が利くな。ありがとな。」


なるほど、これでも抑えてるほうなのか。やべぇな魔王、何をそんなに悪さしてんだ。

うん?妖天の顔が赤いな、大丈夫か?


「人間を襲う魔王は一握りだ。大体見向きもせんよ。」


ブラッドがふてくされて呟く。いつの間にかまた文香に抱えられてる。

まぁ通るだけで災害みたいなもんだからな、妖天や俺たちがいなかったら勝てるイメージがわかないや。


さぁ全員そろったぞ!ご飯だご飯!


「それでは、魔王盗伐の記念に…」


領主の挨拶が始まった。盗伐にしといたほうがいいのかな?ここにいるとわかったら大騒ぎだもんな。


「ブラッド、すまないな盗伐されたことにしておいてくれ」

「気にするな主よ、人間にどう噂されようが構わぬよ。」


出来た竜だ。さて料理を食べよう!何から手をつけようかなー、異世界にもテーブルマナーあるのかな。


「ありますけど、この場は祝勝会です。気にする方なんていませんよ。」

「じゃあ遠慮なく頂くぜ。肉だ肉~」


色々な料理に手をつけた感想


ステーキっぽいもの:固い、アメリカンってレベルじゃないぐらい固い。味付けは、まぁそこそこいける!

頑張って噛めば全然食える!


鳥の丸焼きっぽいもの:ハーブが聞いててスパイシー、肉は…ちょっと臭みが強い。ハーブで打ち消せてない感じだ。


サラダぽいもの:全体的に青臭い、子供の時に口にした雑草な感じだ。


パンっぽいもの:フランスパンです。


「よし、俺は肉一択だ!」

「魚やエビみたいなものは美味しいですよ先輩」

「嫌いなのわかってて言ってんじゃねぇ!」

「でも海産系は素材の味って感じかなぁ~。もう少し味付けが欲しいなぁ。」


なんか極端な料理ばかりだな。だが昆虫系がないのが幸いだ。


「さすがに日本の料理と比べるのは酷よ、知也ちゃん。」


エリオーネがすかさず突っ込みを入れてくる。

もう少し手間を加えれば大分まともになるはずだ。どうにかしないと。

あとデザートが無いのか…よし、作るか!

俺は領主の元へ厨房に入る許可へに行く。


「トモヤ様が厨房に?いけません、料理はシェフにお任せください。」

「二品だけだ、俺の故郷の味を提供したい。あと様付けはやめてくれ、くすぐったい。」

「ではトモヤさんでよろしいですか?トモヤさん故郷の味、それは…さすがに興味深いです。」


同年代(今の姿)に様付けされるのはちょっとな。ギルドマスター?彼は商売みたいなものだしいいかな!


「じゃあ決まりだ。すまんが文香手伝ってくれ。」

「知也さんのデザート~!?手伝うよ~!手伝わせてください~!」


厨房に入ると料理長が出迎えてくれる。


「これはトモヤ様、料理になにかご不満でもありましたでしょうか。」

「いや、不満はない。俺の故郷の味をみんなに知って欲しくてな、厨房を少し借りたい。」

「そう言う事でしたらこちらをお使いください。」


おお、広い!いいな、こういう厨房憧れるあ。


「ちなみにだが、この街では食後には何か出すのか?」

「食後にはこちらのお飲み物を出す予定です。」


ワインとコーヒーか。ワインは見た感じ粗そうだが、コーヒーは中々いい香りをさせている。

となるとあれでいいな、厨房にある素材で手っ取り早くかつ、作れそうなデザートと言えば…

プリンとレアチーズケーキだ。


俺は材料を集め、一つずつ味見をする。よし材料に問題ないな。卵とチーズがすごい濃厚

これは期待できるぜ!久しぶりだなデザートを作るのは、忙しくなる前はよく作ってたっけ。

色々脳内回想しながら型に流す作業まで完了する。

どうやって冷やすかって?それでは人間冷蔵庫、文香の登場だ。


「文香、水を張って温度下げれるか?」

「私が温度管理できなかったらどうする気だったの~」


見切り発車であった。まぁできるんだから良いじゃないか!

30分くらいでいい感じに固まった。

料理長も興味深々だ、味見用にいくつか作ったから先に食べてもらうか


「こ、これは!トモヤ様、恥を忍んでお頼み申す!どうかレシピを教えていただけませんか!」


気に入ってくれたようだ。よかった、甘いものは正義!さぁ異世界にデザートお披露目だ!

もちろん後で料理長にはレシピを教える。


結構な量だからな、ウェイターやウェイトレス、コック総出で運んでもらう。


「料理長、配置完了しました。」


取り纏めらしきウェイターが料理長へ報告する。


「諸君、今日ここから料理の歴史が変わる!その歴史の変わり目を直に見れることを光栄に思え!」


大げさすぎませんかねぇ!ハードル上げると食べたとき落胆する人いるかもしれないからサプライズで食べさせようよ!?


みんな恐る恐るスプーンを手に取り口に入れてるな。そりゃそうだろう。俺もここの料理食べるのも勇気が必要だったもん。


お、プリンとチーズケーキそれぞれ一口位食べてみんな黙っちゃった。口に合わなかったか?

でも料理長がレシピ教えてくれって言ってくれてたしなぁ。


領主が突然立ち上がり手をたたき出す。それに会場中の人も合わせて立ち上がり手をたたき出す。

スタンディングオベーションってやつだ。

大袈裟すぎねぇか!?領主泣いてるし!甘いものそんなに好きだったの!?


「もっと食べたくなる、だからこそ、これを食べ終わった時の喪失感を考えると必然的に手が止まってしまう。神よ、なぜこのように優しく辛い現実をお与えになるのでしょうか」


おーいエリオーネ、呼ばれてるぞ、どうにかしてやれー。

俺はここまで称賛を上げられるとは思ってなかったので、こっぱずかしい気持ちでいっぱいだ。

また作ってあげるから!料理長にもレシピ教えるから!


「美味しいよね~、ほぼ一人占めできる桃花さんずるいよ~」

「久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいわね、知也ちゃん全然作ってくれないんだもん」

だもんってあんた、あんたが余計な仕事を俺に振らなければよかったんですけどね!


「先輩の意外な一面を見ました。お店で出せるレベルですよこれ。」

「いや、ここまでいい味だせたのは流石に異世界の食材のおかげだぞ。」

「そんなことないよ~、日本でもいけるいける~」


身内からの賛辞も恥ずかしものだ。


「金光様、このような美味しいものが地球に?私が交代で入った時にはなかったような気がしますが。」

「デザートとしてここまで昇華したのは地球でもここ最近50年前後じゃ、今の日本は食に厳しいでのぅ。」

「なんて羨ましい。ずるいです。早く交代しましょう。」


お前らが交代するときって確か見切りをつけてビッグバンする時だよな!?


「エリオーネ様は知っておられたようだな。」

「これは、反則よー、こんなの出されたら文句も言わず従ちゃう」

「このような美味なものに出会えた事に感謝。」


おい会社の元重鎮、お前らはもっといいもの食ってきただろ。


「お母様もこの味知ってるの?」

「知也ちゃんの作るデザートはどれも美味しいのよ?」

「…ずるいです。」


キリエがふてくされた。幾星霜の時を経て頑張ってきたのに酷いよね~。

後でいっぱい食べさせてあげるからな、安心しろ。


「やっぱり知也に嫁ぐしかないかなぁ、奴隷にされたし。」


奴隷にされたら嫁ぐって斬新だな。だが、それは無い。

契約解除の方法探しとくか…


みんな堪能してくれて何よりだ。料理長にもレシピ教えといたし。

今日は宿に戻って寝よう。色々とありすぎた。本当に濃い一日だったな。


会食も無事終わり、宿の布団に潜って目を瞑る。大分疲れているらしいすぐ寝れた。

そして次の日の朝が来る、妖天が起こしに来た、何やら来客らしい。


「トモヤ様、おはようございます。お願いがあって参りました。」


領主と昨日の料理長とが宿のロビーで待っていた。何事だ。


「トモヤさん、レストランのオーナーやってみませんか?」

「は!?」


どうやら胃袋をつかんだらしい。


書いてて自分でも作りたくなってきた。

自分で作ると苦労補正で美味しく感じるよね

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