5・PM、免許取得に勤しむ
「先輩、異世界の文字と言葉ってわかりますか?」
「全然読めねぇし、言葉もどうだろう。十天君の誰かに来てもらっとけばよかったな。」
そういや砦入口の門番さんと金光の会話は理解できてたな。エリオーネが何かしてくれてたのかな。
お酒の絵と剣のマークが入ってるからこれだろうと適当に入る。
「ようこそ、シルバスタギルドへ、本日はどのような御用ですか?」
入口に入ると早速女性から声を掛けられる。
「冒険者として登録をしてほしくて来ました。後ろの二人もそうです。」
「まぁ、依頼ではなく登録ですか、この時期に珍しいですね。わかりました、それではあちらの受付までお願いします。」
「わかりました。」
「それよりも珍しい服装ですね。別の国からいらしたのですか?」
「まぁそんなところです。」
女性から受付口へ案内される。
珍しい服装か、どこからどう見てもサラリーマンだが、異世界には企業戦士はいないっぽい。
「先輩、よく言葉知ってましたね。地球のどこかの言語に当てはまりましたか?」
「うん?俺は日本語と英語しか出来ねーぞ?」
「何語喋ってるのか全然わからなかったけど流暢に話せてたよ~」
マジか、自動翻訳機能がついてるみたいだな、改変の力のおかげか。しかし俺にだけついてるのも不便だな。毎回通訳するのも面倒だし…。戻ったらエリオーネか金光に相談してみよう。
「ようこそシルバスタギルドへ、登録の流れですが、いくつかの検査と試験を受けて貰います。試験料は無料ですのでご安心ください。試験合格の後、ギルドの規約説明と免許状発行におおよそ二時間かかりますので予めご了承ください。」
意外と早く発行できるんだな。試験か、大丈夫かな。とりあえず命に関わる事でなければいいが。
時間の単位は読み方こそ違えど、概要は一緒か。まぁ地球を摸してるなら自転の速度も一緒だよなきっと。
「では早速一つ目の検査ですが、まずは身体測定を行います。そちらに立ってください。」
三人は言われたまま並ぶ。そうすると目の前の女性が何か呟きだす。
「スキャン開始」
女性が右手をかざすと大きく光輝き体が照らされる。
「眩しい!」
その瞬間周りの景色がピタッと止まる。
『警告;魔法による身体への侵入を検知しました。この魔法による身体への影響はありません。情報を一部開示してしまいますが、許可しますか?拒否しますか?』
突然目の前に横長の液晶パネルみたいのが現れ警告文みたいのが表示される。
とりあえず身動きは取れないが、許可する、拒否するは選択できるみたいだ。
あと一部のところに意識を集中させると項目が出てきた。
レベル、職業、身長、体重、腕力、素早さ、体力、魔力、知力
レベルとな、ちょっと楽しみだな。だがここはお試しで拒否してみよう。
「はーいオッケーでー…うん?」
「どうしたの?」
「一人だけ情報が取れなかったの。」
どうやら成功したらしい。正樹と文香は取られたみたいだな。
「すいません、あなただけもう一度測定してもよろしいでしょうか。」
まぁ断る理由もないし、原因は俺だし!
「大丈夫ですよ。さぁどうぞ」
もう一度光を浴び、今度は許可するを選択。
「とれたぁ…。初めて取得できなくって焦りましたよ。」
そういや自分をスキャンしたことなかったな、後でしてみよ。
受付のお姉さん方もスキャンできるのかな。やってみるか。
まずは受付の方
名前:レファ=サイナード(30)
レベル:50
職業:戦士
力:200
…
おおー見れる見れる。レベル高いほうなのかな?30歳に全然見えないな、20位かと思った。
次はスキャン担当の方、俺もスキャンされたし、見てもいいよね!受付のレファさん?まぁ連帯責任ってことで!
名前:リン=サイナード(15)
レベル:20
職業:鑑定士
力:70
…
おや、姉妹なのかな?年の差兄弟だなぁ。
「レファさんとリンさんって姉妹なんですか?」
思わず聞いてしまった。
「嫌だお兄さんお上手ね!私たちは親子よ!」
嬉しそうなレファ。しかしリンの表情が険しくなる。
姉妹って言われたのが癪に障ったのかな?
「なぜ…姉妹だと思われたのです?」
「何故って、苗字一緒だから。」
「!?」
その瞬間レファの顔も驚愕の色に変わる。スキャンしたのばれちゃった。
「私もですが、お母さんをスキャンできたのですか!?」
「まぁ隠してもしょうがないか、すまんな、勝手ながらちょっとだけ見せてもらった。」
(何やら早速不穏な空気ですよ文香さん)
(どう考えてもワザとやってるよね~。言葉分かんないからもどかしいね~)
「ユウキ=トモヤさん、あなたを鑑定すた結果、レベル1でした。」
まじか、1なの!?意外と厳しいなこの世界!どうやったらレベル上がるんだろ。
こうなったらレベル上限になるまでどこかに引きこもるか。
「本来であれば特殊なアイテムが無い限りは自分より上位のレベルはスキャンできないはずなんですが…、何か持っているのですか?」
「思い当たる節が全然ないな…」
リンは首飾りを見せる。これが特殊なアイテムというやつなのだろう。
できるもんはしょうがない、残りの二人の結果はどうなんだろう。
「残りのお二人は…」
マサキ=ツルオカ レベル99
フミカ=ミツキ レベル99
ふーん、へー、なるほどねー。って高いなおい!
どう考えても異世界チートです。ありがとうございました。
この前俺がスキャンしたときレベルなんてなかったような…使う人によって出方が違うのかな。
「何者なんですか後ろのお二人。」
「召使いと下僕です。」
悔しくなんかないからね!本当だよ!
「まぁまぁ、次に進みましょう。次の検査は属性検査です。奥の部屋の魔法陣の真ん中に立って、体から何かを出すイメージで念じてください。リンと残りの方は別室でモニタリングできますよ。」
「とりあえず魔法陣中央に立って何か出せばいいらしい。正樹から行けるか」
「わかりました。でもきっと火ですよね。」
まぁそうだろうな、後はどのように火が出てくるかだな。さて別室で見学だ。
取調室とその別室みたいだ。一応窓があるだけ良心的か。
「それではどうぞマサキさん」
(マサキって呼ばれたのはわかった。発音難しいですね、)
正樹が目を瞑った瞬間大きく火柱が上がる。うん、大体想像通り。部屋の周りを改変の力で燃えないようにしておいてよかった。
「部屋が燃えちゃう!!…無事!?見た目ほど熱くないってことかしら。まぁ属性は文句なしの火ね。」
…あの鎧の置物高かったのかなぁ、溶けて跡形もなくなってるけど。リンは気付いてないからいいか。
「次はフミカさんですね。どうぞ。」
(何かを出すイメージか~)
文香が目を閉じる。一瞬線見たいのが上に上がっていくように見えたが…
「何も起きてない?」
違う、よく見ると部屋の中の空間が何かで満たされている。文香の髪の毛が徐々に浮かぶように上がっていく。
「水で満たされている…しかも限りなく透明に近い水」
さてどうやって部屋開けようかな。
と思っていると、文香が手を伸ばし、そこに水が集約されていく。
「綺麗…」
高速で吸い込まれていくように集まる水、透明な水とはいえ、移動するとさすがに目視できる。
中々良い絵になっているな。文香の手元に丸い水の塊が浮かんでいる。
「先輩、結構圧縮されてますよね、あれ。」
「ああ、どうする気だ?あれだけで凶器になりそうだぞ。」
文香は窓を開けて躊躇なく水の塊を投げる。
ザパーン
ニワニイケガデキテルゾー、ワキミズカ!?
「属性は水ですね、綺麗だった…」
確かにあの光景は感動するが、顔を赤らめるのはやめなさい。中身は25歳独神ですよ。
今躊躇なく外に水捨てたの見えなかったの?ある意味外大惨事だよ?
さて次は俺の番か。でもレベル1だしな。何もでないんじゃないのか。
「トモヤさん、気を落とさずに頑張ってください!」
もうちょっとマシな慰め方ないの!?何も出ない前提はやめてくれませんかねぇ!
まぁやるだけやってみますか。
(あいつらはなぜか火と水が勝手に思い浮かんだって言ってたな。俺の時は違和感しか
無かったが。)
俺は目を瞑り何かを出すように念じる。
…何もイメージがわかない。目を開けると真っ暗になっている。もしかして光吸収したとか!?
なんて思っているとそうでもないらしい。
「大変よ、魔王クラスの竜種がこっちに向かっていているらしいわ」
魔王とな、魔王が来ると夜になるらしい。うん、わかりやすいね、明るいとき限定で。
「知也よ、ちょっと手を貸してくれんか。」
「すいません知也様、さすがにあの種は私たちでも勝てるかどうか」
金光と妖天がいつの間にかこちらに来ていた。
手を貸すのは構わないが、俺たちが手伝ってどうにかなるのかソレ。
神の使いとなる者の手に負えないレベルになると無理だろ。
「門前で迎え撃ちます。戦える者は門の外に集まってください。」
ギルドの職員が戦力を集めている。みんな中々の手際だ、一斉に武器を持って外へ出ていく。
「妖天さん、竜って知能あるの?」
「妖天とお呼び下さい、知也様。竜種はある程度知能がありますが、恭順の意思を持つものは竜人となります。今回の竜は神滅主義の竜なので、話は出来ても仲良くなるのは厳しいと思います。あとすいません、後出しで申し訳ないですが、翻訳用の装具です。首にかけておくだけで効果があります。」
満点の回答だぜ。俺が欲しい情報全部言ってくれた。さらに翻訳機まで。
妖天さんぱねぇっす。呼び捨てで呼ぶのが忍びないぜ。
「すまない妖天、活用させてもらう。正樹、文香、受け取れ!」
「これで色々捗りますね。言葉通じなくてもやもやしてたんですよ。」
「やっと異世界の人とおしゃべりできる~。」
2人の安堵する顔が見える。まさか俺だけ言葉が通じるとは思わなかったんだ。マジすまなかった。
「知也様はつけないんですか?」
「俺は最初から言葉分かってるから大丈夫だ。」
妖天の驚く顔が覗けたが、すぐに戻った。
「金光様から聞いた通り、少々規格外のようですね!それなら安心です。」
「金光さん、何を伝えたんですか」
「やっぱりわしの事も金光と呼ぶのじゃ知也。じゃないと何も教えないぞ!」
こんな面倒な性格だったっけ工場長。まぁ姿は年下だし違和感ないか。
喋り方はめっちゃ違和感あるけど!
「金光、取り合えず現状を教えてくれ。」
「見張りの望遠鏡で竜種の魔王を確認したらしいのじゃ。まっすぐこちらに向かってきてるらしく、多分あと5分そこらで来るぞ。」
俺たちは門の外へ出て竜を待ち構える。
来た…翼を大きくはためかせゆっくりと降りてくる。何人か風圧で飛ばされてら。
一匹だけなのか。まぁ存在感はすごいな、優に20mはあるんじゃないか?
「わしが先鋒ででる。知也達はすまんが戦い方を見て参戦できると思ったらしてくれ。周りの人間が下手に手を出すと死人が増えるだけじゃて、妖天、その辺は任せたのじゃ。」
「シルバスタのみんな!まずは私、妖天と金光が様子を見ます!手を出さないでください!」
少女にそんなこと言われてハイそうですかとなるかい!見た目からして強くなさそうと感じるのに。
神の使いって知ってる俺たちですら疑問を持ってるからね!
「妖天さんが出るぞ!みんな絶対に邪魔するなよ!!」
なるんかーい!まぁ様子を見ることにしようかな。周りが期待してるってことは妖天無双でも見れるかな。
おっと、金光が竜へ近づいていく。
「久しいのブラッド、何しに来たのじゃ。」
「金光か、珍しいな。別次元に行ってるものだと思っていたが」
「あいにくと、次元崩壊の危機が迫っておっての、お主と争ってる場合じゃないのだがどうかの?」
「日和ったか、元はと言えば神が撒いた種であろう。我の知ったことではないわ。それよりも禍々しい気配をこの辺から感じる。我はその調査に来ただけだ。」
「調査のぅ。禍々しい気配とはあやつの事かの」
「…なんだあの男は。金光、あいつは消さねばならない。」
「させぬよ、あやつは我らの希望。すまないがお主が消えてくれ。」
一応知り合い?だったのかあの二人。何喋ってるか聞こえないな。
お、金光が殴りに行った。綺麗なアッパーカット決まったなぁ。
やっぱり身体能力すごいな。20m先の顎めがけて綺麗に飛んでった。
「私も続きます。知也様、時間稼ぎしかできず申し訳ないですが、何か対策を練って頂けるとありがたいです。」
対策って言われても、なかなか厳しくないですかい?あんなにがっつりやり合ってるのにまだ足りないのか。
「そういえば文香、ゲームで巨獣狩り見たいの得意だったよな?」
「機動力を殺すためには手足羽やっちゃいましょうか~」
既に対策は考えてたらしい。結構物騒なこと考えてた。
「正樹君、右足頼める~?」
「わかりました文香さん。遠距離からの砲撃行けます。」
「知也さん~、金光ちゃんと妖天ちゃんの退避を~」
2人は手を前に出す。
判断が早いな流石うちのエース&死線を潜り抜けた友だぜ。
「金光、妖天、遠距離砲撃に入る。左右近いほうに飛べ!」
「!?わかったのじゃ」
「了解です。」
2人が左右に分かれると赤と青の光線みたいなものが竜の足を貫く。
「意外と柔いですね、文香さん、翼に向かって第二射行きましょう。」
「いいですとも~」
お前ら仲いいな!光線って何!すげえなおい!
あっという間に第二射で翼ももいだ。あれ?これ楽勝じゃね?
次回決着予定
纏まりがつかなくなってきた