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3・PM、ようやく異世界の地を踏む

ご都合主義ここに極まる。

「なぜ改変の力をキリエから奪ったのですか?」


かなりお怒りのご様子で部長が聞いてくる。

おかしいな、キリエ公認で力を受け取ってるんだけど。


「奪ったとは人聞きの悪い。目の前で譲ってもらったのを見てましたよね。」

「言葉遊びをするつもりはありません。知也ちゃん、あなたが迂闊なことをしない人だと理解はしてますが、その力は人が持っていてはいけません。速やかに返却してください。」


おっと、冗談も通じないくらいピリピリしてるな。

一部とはいえ力がこちらにあるんだ、いきなり消されはしないだろう。

少し踏み込んでみるかな。


「もちろん、返却はする予定です。ただしキリエから世界創世の権限を外してからとなりますが。」


「な!?そんなこと出来るわけがないわ!それよりも改変の力奪取の時もそうですが、何故仕組みを理解しているのですか!」


「全部が全部理解しているわけではないですよ。偶然です。」

「これが偶然なわけないでしょう!?」

「やっぱりばれましたか。実は…」

「じ…実は?」

「偶々です。」


あ、地団駄踏んでる人初めて見た。ムキーって文字が見えるようだ。

しかし本当に偶然だった。こちらの世界に来たときの違和感。それがなければ別の方法で頑張る気でいた。

当然改変の力なんて貰おうとも思わなかった。

キリエに力を譲渡するようにお願いしてはみたが、本当に譲ってもらえるとは思ってもいなかったし。

それと同時にキリエの自我が既に存在している可能性に気付いた。

譲渡された力の片鱗を使用し、この世界のリソースにアクセス、そしてキリエをスキャンして疑問が確信へと変わる。

やはりあの時夢で思ったことは間違いではないようだ。


「子育て失敗の責任を取るときが来ましたよ。部長」


「だれがやさぐれたオカンですか!」


部長の周りがパリパリと稲妻のようなものが走る。やべぇ悪ふざけ(挑発)しすぎた。

すぐそばでキリエが心配そうに俺を見上げている。やっぱり「自我」はあるよな。

俺はキリエの頭を撫でて安心させるように言った。


「いまからお母さんの本音を聞かせてあげるよ。」

「本音?」

「ああ、お母さんが君の事を好きすぎているってことさ」


ただし、色々と迷惑を掛けられたので仕返しの意味を込めてちょっと意地悪をするけどね!

まぁ、部長めっちゃパリパリしてるから、命懸けになりそうだ。


「部長、この子が歪んでしまうって夢で最初に言ってましたよね。」

「言いましたけど、それが何か?」


返し方が刺々しい、激おこですね、わかります。まぁ原因は俺なんだけどね!


(先輩を敵に回したくない理由はこれなんだよなぁ)

(私も知也さんと口論になったら冷静でいられる自信ないわぁ~)

(相手が怒るツボを的確に躊躇なく踏むのぅ、相手が相手だけに冷や冷やなんじゃが。)


さて、ここからが勝負だな。下手な回答すると物理的に消されちゃうかもしれないから気を付けないと。


「世界の喪失よりもこの子が大切ですか?」

「当然よ!たとえ全次元を敵に回してもキリエを守るわ!」

「お母様…」


あっさりと本音が出てきた。本当に不器用ですね部長…知ってましたけど。


「先輩、世界の喪失とキリエさんのどういう関係が。それに敵に回してるとは」


正樹の疑問はもっともだ。神という立場なのに制約事項が多すぎる、

答えは意外と簡単だ。神がなぜ地球で会社を興していたか。そしてキリエが神の役目を負っていたか。


「機構と禁忌、そうですね部長」


部長の顔がたちまち青くなり。足元に魔法陣が現れる、逃げる気だ。


「させませんよ。諦めてください部長。」


俺はリソース改変の力を使用して部長のステータスを下げまくる。

さすが神、なかなかの抵抗だ。力を使用するほど頭が割れそうなほど痛い。

部長の足元の魔法陣が徐々に薄くなり消えていく。

もう無理、これ以上力を使うと意識を持っていかれる。


「やめてください知也ちゃん!このことが知られたら私はキリエの前にいられなくなる!」


先ほどの怒りとは一転して泣きそうな顔になる。

本当に神様か?と疑いたくなるほど喜怒哀楽のしっかりしている人だ。


「早速消えなくてもいいじゃないですか部長、まずは話をしましょう。」

「お母様、お願いします。教えてください。」


キリエも泣きそうな顔で部長へ向き合う。

部長が驚いた顔でキリエを見つめる。


「キリエ?あなた感情が…?」


先ほどからめっちゃ顔に出してましたよー?あ、俺のほう向いてたから見えなかったのか。


「知也よ、キリエ様に感情がある事にいつ気付いたのじゃ?」


工場長が不思議そうな顔で聞いてくる。

「キリエが現れてからすぐですよ。」

「やっぱりそうなんですね、あの様子で感情がないっていうのが信じられなかったですよ。」

「頑張って感情隠そうとしている子みたいだったもんね~」


わりかし地球人にはもろばれだったらしい。


「文香の言った通り、隠すってのが今回のミソだな。」

「部長(仮)は感情を出させたがってたのになぜ隠そうとしてたのでしょうか。」


ついに正樹の中の部長の株が下がり始めた。


「感情を消して言う事を聞かないと捨てられるって王天から聞いたから。」

「そんな!捨てるわけないじゃない!?」


唐突に演技団体の名前が出てきた。まぁ感情を隠していた理由はそんなもんじゃないかと思ってた。


「王天が何故そんなことを、取り調べを行います。」

「我らの主を愚弄する行為、制裁をしなければ。」


もう十天君でいいよね。考えるの面倒くさくなってきた。

制裁するのは自由だけど、ブーメランにならないようにしてね。


「ちなみに残りの十天君はどこにいるんだ?」

「異世界に行って直接監視をしておるのじゃ」


工場長が重々しく口を開く。統括という立場から王天のやったことに対して

ショックを受けてるようだ。


「話を戻すが、まず禁忌について」

「まって知也ちゃん!なんでそのことをあなたが知ってるのか先に教えてちょうだい。」


話を遮るように部長が聞いてくる。リソース改変の力を知っているのになぜ聞いてくるのか。

この期に及んで話を逸らそうとしている…にしては必死だな。

まぁ正樹と文香への説明にもなるし、まぁいいか。


「改変ができるということは、元の値を知ることが前提となる。」


元の値を知り、条件に掛ける。プログラムスクリプトの基礎だ。

そんな感じでこの世界の根源にアクセスし、色々な値を取り出す。


「先輩、何気なく言ってますけど、どれだけの容量を必要とするんですかソレ」


正樹が疑問を被せてくる。そこに気付くとはさすがだ。

設定するのは一つの変数でも、持ってくるクラスとセットするオブジェクト次第では

馬鹿みたいに容量を使う。


「なぜか必要な情報がスッと頭の中に入ってくる。さすが神の力だ、超便利。」

「持ってくる情報が自動最適化されるのね~、うらやましいわぁ~」


時間があったらソースコード風に2人には説明してやろう。

さて話の続きを、


「…ません。」


うん?部長が青い顔で震えている。


「ありえません!改変の力にそんなことできるわけありません!」


でも出来ているしな、キリエでも使えてなかったし、部長でも使いこなせてなかったのかな。

まぁ禁忌の話に戻してっと。


「今回の禁忌とは、神の二分化の事らしい。あ、ちなみに最適化された情報しか回ってこないので全部が全部知ってるわけじゃないですからね?」


ご安心ください!と言わんばかりに今更ながらアピールしてみる。

諦めたのか、部長が語りだす。


「本来、神というのは1柱でないといけません。それは機構で定められたもの。そしてうつろわざるモノとして次元の管理を行っています。本来であれば何者の干渉を受け付けず、ただ悠久の時を漂う存在でした。」


機構…あまりにも馬鹿でかい情報量のため、改変の力が及ばなかった。

本当の意味での「神」であると思われる。


「地球に神寄せというのがあるらしく、偶然引っかかってしまい、人の身を与えられたのです。そうやって人として過ごしていくうちに私にも感情が芽生えてしまったのです。」


引っかかったってキャッチにかかったサラリーマン見たいだなと、喉まで出かかったけど抑えた。


「そうして一人の男性を愛してしまったのです。その時の愛の結晶がキリエ、あなたです。あなたはちゃんと愛されて生まれてきたのですよ」


キリエの瞳に涙が溜まっていく。あかんこれ泣かれるパターンや、ちょっとまって!

やっぱり見た目通りの年齢か、愛に飢えているのか。


「でも~部長(仮)?それならなぜキリエちゃんを放置してたんですか~?次元が違うと時の流れも違うでしょうけど~幾星霜の時を過ごしてたら誰でも狂ってしまうわ~。こんなにかわいい子を放置するなんて酷いわ~」


キリエの瞳から光が消えていく。放置期間を思い返してるのかなぁ。

それよりもさすが文香さん。言いづらいことをズバッと言ってくれる、そこに痺れる憧れる!

さすが独シ…


シュッ


高速の水が頬を掠めたような気がした。テロには屈しない絶対だ!これだからど


シュッ


「創世の力をキリエに持っていかれたんですね?」


俺は自分の命のために話を進める。

文香はテロリストじゃないし!テロには屈しない多分だ!

部長は無言で頷く。今の今まで手を出したくても出せなかったんだろうきっと。


「黙示録、地球の文献でも聞いたことはあるでしょう。それと同じようなものが神代にもあるのよ。」


今回の禁忌もその一部らしい。


「許してとは言わないわキリエ。でもそうしないとすべての次元が崩壊するの。」


今のところ分かったのは以下の通り。

・次元を作り続けないといけないのに、リソースが有限。

・地球を摸して作らないといけない。

・神様は代表で一人。

・王天が何故かキリエに感情を殺すよう教えた。


王天と機構が何をしたいのかわからんな。


「その先については、あたしからお伝えしよう!」


突然目の前が光り、ピエロのような化粧をした少女とスポーツカットの青年イケメンが立っていた。

工場長を見てみるが初対面の様子。王天かと思ったがどうやら違うらしい。


「あたしの名前はリュンそっちの男はアレクトル、共にそちらの世界でいうと機構の人間だよ!」

平然ととんでもない事を言い放つ。大ボスが登場してしまった。


「ふっふっふ、あたしは機構の中では最弱、あたしを倒しても第二第三の…」

「いきなり何を言ってんだお前は!黙ってるから連れてけって言ったのに開始早々約束破ってんじゃねーよ!」


何だろう、思ったのと違うのがきた。いきなり喧嘩してるし。

心読まれているのは間違いないだろうな。倒そうとしたのばれてるし。


「あー、すいません、チェンジで。俺もうちょっと発育いい子が好みなんで。」

「ほほぅ、じゃあこれでどうだ!」


リュンと名乗った少女が光りだし、姿が大きく変わっていく。

目を疑ったが、どうやら幻影とかではないらしい。


「文句ないっす。どういった御用で?」


話が進まなくなるのでとりあえず妥協する。

好みじゃないんだからね!妻一筋だからね!


「ここの多次元にて色々と不具合が出ているようなので様子を見に来た。まず管理者が2人になったところから調査する予定だったんだが。」


アレクトルと呼ばれた男はそういうと部長とキリエを見る。


「権限の譲渡が不十分なのか。あとなぜか自我が芽生えてるとな。」

「本当だねー、レアケースだね。どうする?」

「エルマへの接続が確立できればいい。接続権限がどちらかに完全移行すれば問題ない」

「この次元は目的達成してるのかなぁ」


部長とキリエはいつの間にかおどおどと抱き合ってる。


「お母様…」

「安心してください、キリエ。あなたは私の命に代えても守るわ。」


「あたしたちそんな鬼畜じゃないよ!?初対面だよね!?」


リュンは意外そうな感じで驚く。いや無理ないだろ。変な規約?みたいの作って制約しとけば誰だってそう思うだろ。


アレクトルの右手が光り、部長とキリエを光が包み込む。


「ふむ、問題なし。エルマへの接続を確認できた。」

「ふぃー、いきなりアクセスできなくなったときはどうしようかと冷や冷やしたよ。」


どうやら機構の名前はエルマと言うらしい。接続できない原因はやっぱり2人に力が中途半端に別れちゃったからなんだろうなぁ。


「肉体を得て子供まで作るなんて、やるねー!いいなぁうらやましいなぁ!」

「そう思うならもうちょっとおしとやかに生きろ。あと姿を戻せ、またイデア機関に怒られるぞ。」


しかし本当に軽いな。神を次元作成マシーンにしてる奴らとは思えないな。

そう思いつつも、すかさずスキャンする。お、アクセスできた。高次元情報体とな。

まぁ神様に対して権限操作を安易にやってるからすごい人?なんだろう。


「そういえば、君のおかげでここの次元に再アクセスできるようになったんだ、お礼を言わないと、ありがとうね!」


リュンが俺に向かってお辞儀をする。俺のおかげ?てかスキャンに気付かれたか?


「君がエルマに接続しようとしてくれなかったらここに来れなかったよ。」


最初にスキャンしようとしたのばれてたのか。個人レベルではばれてないのかな。


「不思議な力だねー、こっちの管理者に与えた改変の力と似てるけどなんか違うねー。今も体がくすぐられる感じだったよ?」


ぉぉぅばれてら。敢えて泳がされたってわけか。リソース改変の力ではないのか。なるほど、部長も真っ青な理由はこれだったのか。俺自身も知らなかったもんはしょうがないね!


「ねぇ、出会って早速で悪いんだけど君にお願いがあるんだけどいいかな?」


無茶ぶりされないことを祈ろう。断った場合のリスクが未知数すぎる。口調こそ柔らかいが命令だろこれ。


「内容をとりあえず聞いてみましょうか。」

「大丈夫だよ!君たちはあたしたちを何だと思ってるのよ、いきなり次元削除とかしないから!」


何だと言われたら難しいけど理不尽の権化だろうと思っている。いきなりじゃなければできるスタイルですよねわかります。


お願い事項というのはざっくりというと次元の昇格らしい。

今この多次元で二つの次元だけ上位昇格できそうとのこと。

昇格の条件は、知的生命体の意思の統一と小規模でもいいからビッグバンを起こす事。

候補に選ばれたのは地球と目の前の異世界。

知的生命体の意思の統一はある程度地球側がクリアしている。

小規模ビッグバンは異世界側にてクリアしているらしい。やべぇな異世界。

地球でビッグバン起こさせるか、異世界で意思統一か


「このままいくと、次元が崩壊するのはわかってるよね?」

「本来リソースは無限に近い。もちろん次元にも寿命があり、消えていく事も考慮しているからだ。今この多次元のリソースは容量そのものが縮小されている。理由については管理者領域の不自然な引き渡しによるものだと仮定されるが根本的な原因は実際に調べないとわからない。原因の解消に掛ける時間よりそちらに時間をかけて上位昇格させたほうが手っ取り早いだろう。だが万が一もあるから原因の調査と対策は俺とリュンでやる。次元の昇格についてはすまないが任せてもいいだろうか?」


リュンとアレクトルは現状の解析はある程度終わってるみたいだ。

まぁ調べ方わからないし、そうするしか道はないか。

まずは異世界に行って様子を見てみよう。元々行く予定だったし!


「皮肉なもんですね、最後に作られた世界が候補に上がるのは。」

「もしかしたら、それが誰かの手の内かもしれないぞ?」


正樹の言う通り、本当に皮肉な話だ、自然現象ならな。


「とりあえずリュンとアレクトル以外は異世界組でいいよな。」

「魔法陣の上に載ればいいのかな~」


神代の問題はエルマから来た二人に任せてよさそうだ。正直手に負えなかったからそこは安心だ。

部長とキリエの関係修復は異世界に行って考えよう。時間はたっぷりあるし。

正樹から的確なつっこみが入る。


「結局異世界行くんですね。このまま流れてしまうかと思いましたよ。」

「言うな」


次回よりほのぼのライフ!

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