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22・PM、特訓する。

「それじゃあ実力を示すためにエリオーネさんと誰かの試合を前の方に組むわね。」

「お願いするわ!」


やる気がある事は良いことだ、クラリスには後でエリオーネに対抗できる人材を紹介しないと。他も色々と明後日に向けて調整しなきゃな。

喫茶店アースの出店とキャンペーンガールの準備だ!

明日じゃ遅いかな?早速闘技場の下見にいくか。


「もう先輩の中で決闘はどうでも良さそうですねぇ…闘技場での販売をどうするか考えてますね。」

「わかるか?野球観戦みたいで良いよな!出店に売り子がいると華があるよな。その点うちのスタッフは申し分ないし、さらなる売り上げが期待できるぞ。」

「知也様!その話し詳しく教えてください!」


売り上げと聞いてキリエが食いついてくる。お金の話が絡むと性格が変わってる気がする。ま、まぁ商売に熱心なのは良いことだよね!

あと、決闘については今悩んでも仕方がないだけで、どうでもいいなんて思ってないからな。


「キリエもやる気だし、早速闘技場下見に行くぞ、出店の位置とか考えなきゃな!金光も一緒に来てくれ。後は解散で良いか?」

「…はぁ…主達が不憫なのじゃ…知也よ、足元をすくわれても知らんぞ?」


どうやら金光にもどうでもよさそうに見えるらしい。

そうならないための特訓要員だからな?流石にこの場では言わないけど。


「知也ちゃん、私が勝ったら何でも言うこと聞いて貰いますからね!」

「わかったよ、勝てたらな?」


エリオーネが念を押してくる、ちゃんとわかってるよ、もちろんそっちが負けたときの方だけどな!

喜劇のような授賞式を思い浮かべてしまい、思わず笑いそうになる。


「…知也さん、さっきはごめんなさい。」

「桃花が謝る必要なんて無いさ、心配するのもわかるが、せっかく異世界こっちに来たんだ、精一杯楽しもうぜ?あんなのだけど神様もついているさ。」

「うん…」


桃花のさっきまでの勢いが急にしおらしくなる。珍しいな、考え事をするにしろ表情までが沈み込んでいる。

むしろ桃花のこんな表情は初めて見たかもしれない。


「桃…」

「桃花さん、屋敷に戻りましょう!知也さんの弱点を教えて頂戴!」


桃花に声をかけようとするがエリオーネに遮られる。

エリオーネの言葉に桃花は困った顔して俺を見てくる。


「女子会がてら気晴らしに話すといいさ。ついでにエリオーネの弱点を探っておいてくれ。」

「もぅ…『わかったわ』、私がするべき事が。それじゃあ先に屋敷に戻ってるわ、文香さんも一緒に打倒知也さん会議に参加しましょう。」

「おお~、是非ですよ~。被害者友の会ですよ~。ギャフンと言わせてやるですよ~。」


酷い言われようだ。文香め、被害者友の会ってそんなに根に持つことしたかな?うん、思い当たる節がありすぎて何ともいえないな。

いつもの桃花に戻ってくれたのはいいけど、桃花のやりたいことって俺を倒すになってないよね?何か選択肢を不味ったかな…

俺達は帰宅組を見送った後に闘技場へ向かう。案内役にはクラリスが買って出てくれた。


「クラリスは時間いいのか?少し遅くなるぞ?」

「大丈夫大丈夫、どんな感じで出店計画練るのか興味があるし。」


どーんと来いという感じでクラリスが胸を張って言う。そう言うことなら、むしろ来てもらった方がいいか。

早速外に用意された馬車に乗り込み闘技場へ向かう。

馬車を走らせることしばらく、街の外れだというのに綺麗な道が途切れることなく、そして闘技場につくと俺は思わず感嘆の声を上げてしまった。

竜国の神殿みたいな建物が大きくそびえ立つ。この街でこれが一番立派なんじゃないか?


「何分魔王を退けた街として実力主義の冒険者が街でもめ事を起こすのが後を絶たないからね。まぁ闘技場を立派にして産業として取り込ませてもらったのさ。」

「これは建物を見るだけでも価値があるよ、本当にすごい。」


産業としてって、そんなに需要があったのか…どの位の規模の戦いが繰り広げられているんだろうか。


「竜の神殿みたいです。血生臭い争いがここで行われているなんて信じられないです。」

「そっか、竜の国に行ったことあるんだったね、意匠は竜の国からアドバイスもらったんだよ。」


キリエの意見も最もだ、外見に物凄く荘厳さを感じるし、ここで争い事をしてるなんてもったいない。

それよりも竜の国からアドバイス貰うだけでここまで作れるのかよ、すごいな。この建物を設計した人はどんな人なんだろうか…


「正直戦いに使う建物だから私は好きになれないが、そんな風に素直に褒めてもらえると嬉しいよ。先代領主もきっと喜ぶよ。」

「中には入れるのか?」

「もちろんだよ、じゃあ行こっか。」


先代領主が設計したのか…この世界の文化基準で一世代で作れるか?

あー…でもまほうが有り余ってるの多そうだからちゃんと計画練れば行けるか?何にせよ段取りの取り方が物凄く巧いんだろうなぁ。

早く中に入りたいと心を躍らせながら、クラリスに先導され闘技場の中へ進んで行き広場へと出た。


「明後日はここで戦ってもらう形になるかな。」

「思ったよりも広いな。後ろの方とか殆ど見えないんじゃないのか?」

「まぁ、そこはオペラグラス必須だねぇ。」


荒野をイメージしたような場外がなく大きい岩が何個か無造作に置かれたフィールドだ。

観客席と闘技場には二メートル近い高低差があり、球場みたいな作りになっている。

最上階を見るとかなり距離がありそうで、激しい戦いになると目で追うのが大変そうだ。

岩場のせいで場所によっては観客からの死角も多そうだ。


「クラリス、お願いがあるんだが、明日でもいいが領主と闘技場の管理者を連れてきて貰えないか?」

「そりゃ構わないけど、どうしたんだい?」

「闘技場の設備を追加したいんだ。ちょっとサンプル出すぞ。」


俺はステータスウィンドウを出す要領で大きめのビジョンを宙に浮かせ、連携させるための高精度カメラとマイク、スピーカーをイメージして作る。ライブ会場に仕立てる算段だ。


「ものは試しだ、金光、すまないがクラリスとカメラ一式を持って最上階の所へ飛んでくれないか?」

「違和感なく色々出すようになったのじゃよ…なるほどのぅ、まぁ地球ではある意味ポピュラーじゃからの、よし、任せるのじゃ。」


金光がクラリスとカメラを抱えて跳躍する。何だかんだで言うことを聞いてくれるのが金光だ。


「え?えええええええああああああああ!」


突然抱えられ高く跳躍されクラリスが絶叫する。クラリスが一般人ってことを忘れてないか…いや、頼んだのは俺だけどさ。

着地すると金光が細々とセットアップしているのが見える。

こちらのスピーカーから金光の声が聞こえセットアップ完了の合図が出る。


「セットアップしたのじゃ。」


俺はビジョンを宙に固定し、カメラと連携させる。

上空のビジョンにカメラの先の俺とキリエがくっきりと映る。

キリエが金光達の方に向かって手を振ると金光から返事が来る。


「見えてますかー。」

「ばっちりなのじゃ、カメラワーク確認したいから少し動き回ってくれるかの」

「わかりましたー。」


クラリスが興奮して後ろで「え?なんなの?これすごい!」って叫んでる。どうやら先ほどの抱えられた恐怖よりも興味をもってもらえたらしい。

魔法技術でどうにかなりそうなもんだけど、どうなんだろうか。

さてどう動き回るかなぁと考えているとキリエが剣を構えてこっちを向く。あれ?動き回るって戦うって事なの?


「知也様、私でお役にたてるかわかりませんが、お母様との試合まで特訓にお付き合いします。金光を連れてきたのはそのためなんでしょう?」


金光を連れてきた意図はキリエにはバレバレだったらしい。キリエが戦う所を見るのは初めてだが、力を大体奪い取った後なんだけど大丈夫かな。


「大丈夫なのか?お前の力は大部分が俺のところにあるんだが。」

「大丈夫です。あの段階でも金光達以上の力はあります。」


流石に主達の力は一味違うらしい。結構吸い取ったと思うんだけどな。

それであれば特訓に付き合ってもらうのも悪くはないかもしれないが、絵面はまずいよな…

まぁ金光でもあまり変わりはないけど


「それじゃあお願いするか、先ずは色々と見比べたい、適当にかかってきてくれ。」

「はい!キリエ、参ります。」


キリエが大地を踏んだ瞬間砂煙が舞う。そう思った瞬間下から何か来る気配がしたので一歩下がる。

下がった瞬間ブォンと特急列車がホームに全力で入ってくるのと同等以上の風圧が体を突き抜ける。

どうやらただのアッパーカットらしい。拳を突き上げた形でキリエが静止している。

俺はあの風圧の拳が当たると考えると戦慄を覚える。さっきの風圧が無ければすごくかわいらしいのだが…


「さすがです、本気で当てに行ったんですけどね。軽く躱されてしまいました。」


全然軽くじゃないからな!剣じゃなくて良かった!

勢いが凄すぎて絶句しているところをどうやら軽いと思われてるらしい、ここは慌てた方が良かったか?いや、流石に子供の前ではそんな姿は見せられないな…そんな訳の分からない見栄もプライドも何にも役に立たないと後悔する事になっても中々辞められない。


「そりゃ大振り一発だからな、当てるだけなら手数を増やして見ればいいんじゃないか?」

「わかりました!では行きます!」


もう一度キリエが大きく大地を踏み込みこちらへ突進してくる。

さっき後ろに下がれたのが奇跡だった、まずはストレートをガードの上から貰い、体が宙に浮く。

軽くでこの勢いかよっ!余計なことを言ったと後悔しても遅いか。

動作を短く抑え、もう一度アッパーを当てて来る。さっきのように無駄が少なく、確実に当てようとしているのがわかる。

もう一度ガードの上から体を突き上げられ、5メートルくらい宙に浮く。結構容赦ない攻撃に腕が軋む。

腕折れてないかなこれ…


「体術だけではありませんよ!光よ…行け!」


キリエの後ろに10本の光の槍が現れこっちに飛んでくる。

うーん、容赦ないなぁ。俺は身を守るイメージをしながら手を前に出す。

イメージがうまくいったのか光の槍は薄らと現れた力場に触れると消滅した。


「あれ、キリエちゃんってあんなに強かったの?」


どうやらマイクがオンになったままらしい、クラリスの声がスピーカーから聞こえる。


「まぁさっきのメンバーの中じゃ上位に食い込むじゃろうなぁ。力を抑えられてるとはいえ今の動きをみる限り妖天よりも間違いなく強いんじゃよ。」

「妖天様よりも…!?本当にアースの人たちって何者なの!?とりあえずこの戦いも見て判断させなきゃ!領主と騎士団長連れて来るわ!」

「わかったのじゃ、まぁ早くしないと終わるかもしれんから瞬間移動で行くのじゃ、しっかり掴まると良いのじゃよ。」

「へ?きゃぁぁ!」


捕らえられるの間違いじゃないのか?問答無用でクラリスと一緒に転送された。

まぁ大半人外です、なんて言えないが、しかしそう言いたくもなる。クラリスの事は金光に任せて戦いに集中しなきゃな。

俺は肉体強化をして着地に備えるが、着地する瞬間を狙ってキリエが突撃してくる。


「隙だらけですよ、知也様!」


飛び道具は使いたくなかったが仕方がない。ブルール戦で使用した火の玉をキリエの手前に連弾で打ち込む。


「きゃあ!」


炎の着弾の勢いに負けて突撃する足を止めてくれたので俺は難なく着地できた。

流石にブルール戦の時よりは威力落としてるからな、当たったとしてもあまりダメージもないだろう。

炎をキリエに当たらないように地面に当てた事もあり、キリエの足元から煙が上がり姿が見えなくなった。

広がる煙が雷雲のように光ると中から光の槍が飛び出してくる。

しかし魔法についてはさっき防げるのは実証済みだ、俺は手を前に出して光の槍を消し去るが、攻撃が止む気配がない。ひたすら光の槍が俺に降り注ぐから手が離せない。


「そろそろ煙も晴れるが、どう出てくる…」


煙が晴れそうなときに特大の槍が飛んでくるが、質量に関係ないのか難なく打ち消せた。

しかし煙が晴れるとそこにキリエの姿はなく、気付いたら俺の足元にきて回し蹴りのモーションに入っていた。


「魔法は効かないのはわかりましたからね。肉弾戦ならどうですか!」

「くっ、やるな。」


戦い馴れしてませんかキリエさん?次々と繰り出される攻撃に驚愕する。

箱入り娘のイメージだったが刷新しなきゃな。

てかそんなの考えている場合じゃないな。腹部に防御集中っと。

キリエの回し蹴りが俺の腹部に炸裂し、俺の体は後方に大きく飛び闘技場の壁に激突する。

やべぇ闘技場の壁が壊れちゃった!


「自分の身より闘技場を心配するとは余裕ですね。」


こっちに向かって突進してくるキリエの両手が白く輝きだす。

壁が壊れるほど思いっきりぶつかったけど肉体強化のおかげか全然痛くなかったぜ。


「魔法は効きませんでしたがこれならどうですか!」


キリエからコンビネーションジャブが繰り出される。

両手の白い光のせいか、さっきよりも断然重い攻撃が連撃で来る。今の所両手で捌ききってはいるがそろそろ腕が痛い。

攻撃の勢いで砂埃が舞い上がり、お互いの姿が見えなくなるとキリエの攻撃が止み、どうやら闘技場の中央に戻ったようだ。


「両腕青あざだらけだな。痛すぎるぜ…」


俺は袖を捲り痛々しいほど青くなった腕をみる。

両腕に回復をイメージした光を当てるとたちまち青くなった腕が元に戻る。回復魔法って便利すぎだよな。

それよりもこの服丈夫すぎだろ、この服のお陰でダメージも軽減されてるのかな。

もしそうじゃなかったら青あざどころじゃ無かったかもしれない、そう考えるとゾッとするものがあるな。

さって大人の威厳っと、余裕を持たなきゃ!それに青い腕見せてたらキリエが気に病むだろう。

まぁそれ以上にキリエの予想外の強さに内心バクバクだけどね。

煙も晴れ、俺も前に出て再度キリエと対峙する。


「無傷…ですか。この体では全力だったんですよ?」

「そんなことはない、だいぶやばかったぞ?それよりも剣は使わないのか?」


回復して擦り傷一つ無い姿で言われても説得力はないだろう。

それよりも開始時に持っていた剣はどうしたんだろう。


「…このとおりですよ。最初の一撃でポッキリです。」

「まじか」


キリエが根元近くでぽっきりと折れた剣の柄を見せてくれる。

振ってるところ全然見えなかったんだけど!?結構躊躇いなく切り掛かってたのね。


「到着して早々にこのような戦いが見れるとは…」


スピーカーから領主の声が聞こえる。もう来たのか、早いな。


「瞬間移動じゃし、こんなもんなんじゃよ。」


こちらの思いを組んでくれたのか金光が返答してくれる。領主にカミュに見慣れないイケメンが一人、多分この街の騎士団長かな…騎士団長ってイケメン限定なの?

とりあえずキリエがやる気満々なのでスルーしてキリエに向き直る。


「そろそろウォーミングアップは終了で良いですか?」

「…まじか」


もう「まじか」という言葉しか出てこなくなってきた。

これで軽く流しているだけか…今時点でどのレベルまで行けるんだろうか。


「今のところ、妖天と同じくらいの力加減だと思ってます。金光はもう少し強いですね。」

「そうか、ちなみにエリオーネと比較したらどの位なんだ?」

「そうですね、ざっと100倍くらいでしょうか?」


あれ?意外と負けフラグ踏んでるのは俺のほうか?ちょっとやばいかもしれない!

しょうがない、キリエに胸を借りるか…もう少しきつめにしてもらおう。


「領主様たちも来たことですし、もう少し力を加えていきますね。」

「知也よ、こっちは結界張っておるから気にしなくて良いんじゃよ!」


言うまでもなく攻める気満々でした。ありがとうございます。

金光が気を利かせてくれるが、そもそも気にする余裕は多分ないと思うからね!


「それでは第二ラウンドです!」

「…お手柔らかに頼むよ。」


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