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21・PM、言い負かされる。

「いや、妖天様、決して盗み聞きするつもりではなくて、どうにも出来なかったと言うか、聞くしかできなかったというか…」


クラリスが慌てふためいて妖天へ説明をする。

まぁ会議室の出入り口はこれだけだもんな。意外とだだ漏れだったようだな。

出来ればもうちょっと早いタイミングで出てきてもらいたかった。


「何シレッっとしてるんですか知也様ぁ!いつの間にここに召喚したんですかぁ!」


妖天の顔が真っ赤になり目尻へ涙が溜まって来ている、これはやばいパターンだ!


「酷いですよ知也様!うわぁぁぁぁぁん」


手で顔を覆い隠ししゃがみこみ、ついに声を出して泣き出した。キリエとクラリスに聞かれたのは不可抗力だからね?配慮が足りなかったのは確かだけど!

まぁそんな事言ってる場合じゃないか、意を決して相談してくれた妖天を無碍にするわけにはいかない。

妖天に駆け寄ろうとするとキリエが先に駆けつけ抱きしめる。


「妖天に先を越されてしまいましたね。妖天も察している通り私も知也様をお慕いしております。しかしこの通り言い出せずに居ました。勇気を持って知也様へ告白された妖天を私は尊敬します。そして、そう悲観しては駄目です、私達はまだ出会って少しの時しかたってないのですから。」


おいまて、時が立てば解決する問題じゃないからな。さり気にどういう慰め方してるの?


「トモヤ君、重婚だよ重婚。」


ここぞとばかりにクラリスさんが煽って来やがる。やめてくれ、期待はさせたくない。


「おれは妻一筋で生きたいんだよ、頼むから諦めてくれ。」

「くっ、わかってはいましたがガードが堅いですね…いっそのこと先ずは奥様を懐柔してみますか。」


分かってるならやめてくれないかな!?キリエが意外と黒い!まぁ桃花に言ったところで変わらないからいいけどさ。


「まぁそう簡単には行かないよねー。」

「easyでもhardでも行かないからな。妖天、すまないな。決して蔑ろにしているわけじゃないんだ。俺は桃花を愛しているし、桃花以外の伴侶は考えられないんだ。」

「ずびばぜん…ぼんどうばごんなごどいうづもりながっだんでずよーずびばぜんー!」


ああ、涙と鼻水がすごい…ポケットティッシュっと…

俺はティッシュを中身ごと取り出し妖天に渡し、受け取るや否や勢い良く鼻をかむ。

その様子を見ながらハンカチで目元を拭いてあげる。

ちなみにハンカチはちゃんと本日未使用品のだからね!


「本当にすいませんでした…感情がこんなにもコントロール出来なくなるなんて…」

「そんなのロボットでもない限り不可能だ、安心しろ。」

「しかし、それでは知也様に並び立つ資格なんて…」


並び立つ…?服従と隷従を望んでるようにしか見えないが…ちょっと考え方を改めさせないといけないようだ。


「勝手に決めるな妖天、俺はそんな事で見限ったりはしないぞ。さっきも言ったが感情が無くては何も出来やしない、そして自分の想いを卑下するもんじゃない。正直俺は嬉しいんだ、妖天の想いに答えてやれなくて申し訳ないが、ありのまま好きだと言ってくれたことは本当に嬉しかったしドキドキした。」

「知也様…本当に嬉しかったのですか?」

「ああ、間違いなくな。」


その言葉を聞いて妖天の顔が少し明るくなる。

その様子を見てクラリスが隣にスススっと近寄ってくる。


「トモヤ君…実は私も一目見たときから…」

「却下!」


クラリスが悪乗りして聞いてくるが即座に否定する。

もちろん冗談だと分かってる。すまないな…半ば無理やり和ませてもらった。


「クラリス…あなた…」

「じょ、冗談ですよ妖天様!そんな顔しないでください!」


妖天が怒った顔を見せるが、先程までの悲壮感漂う雰囲気は綺麗さっぱり消え去っている。

女の子の気持ちは女の子が一番知るか、クラリスには感謝しないとな。

落ち着いた様子を見てキリエが恐る恐る妖天に問いかける。


「妖天、真名の契約変更について詳しく聞きたいのですが宜しいですか?」


キリエが神妙な顔で聞いてくる。そう言えば聞かれてしまったな…

妖天が困った顔でこっちを見てくる。まぁ流石にそこは俺から回答しておかないといけないだろう。

俺たちは会議室に入り直し椅子に腰を落とす。


「妖天の真名契約はエリオーネから俺が奪った。理由はわからないが出来てしまったんだよ。妖天に落ち度は無いからな。」

「やはりそうでしたか…ブラッドと最初に出会ったあの辺りからで間違いないですか?」

「ああ、やっぱり気付かれていたのか。」

「いえ、流石に憶測でした、リュン様の件でお母様に問いただされたあの辺りから少し違和感を感じていただけです。」


違和感か…そう言う意味では何か行動に制約があったのかな。まぁバレたところでどうしようもないしなぁ。


「知也様、後でで構いませんので私とも真名契約を結んでいただけないでしょうか。」

「何度も言うが隷属はさせるつもりはないぞ」

「もちろんです!知也様は共に並び立つ人を望んでいる、ブラッドの件も結局命令件奪ったけどすぐに返してしまいましたし。例えどんなときでも自分で考えなきゃ駄目なんですよね…ただ与えられるだけなんて許してくれない、厳しい人です。」

「ほぼ合ってるが少しだけ違うな、駄目なときは頼れ、悩んでいるなら相談しろ、皆にはその権利がある。言ってしまうと真名契約なんて関係ないんだぞ?」

「それでも、証が欲しいんです。何者にも脅かされない確固とした証が…例え桃花様のように伴侶となれなくてもあなたと繋がっているという、そう言ったものが欲しいんです。」


結婚するより重い気がするんだが…

(聞いてる限りだとある意味結婚より重い気がするんだよ。)


俺の思いと同時にクラリスさんが似たようなことを小声で呟く。


「トモヤ君…とりあえずその件は屋敷に戻って話しなよ、聞いてるこっちが参っちゃうわ。只ならぬ関係ってことがよくわかったわ。」

「ああ、すまなかったクラリスさん、そうするよ。只ならぬって否定できないところが悲しいぜ。」

「クラリス!私にさん付けなんて不要だよ、どうやら私より年上っぽいからね、呼び捨てでかまわないよ。」

「よくわかったな、実はクラリスより若干年上なんだ。」

「おやじ臭いと思ったのよねぇ」


やめてくれ、その言葉は俺の心に刺さる。若干と言ったじゃないか!

どうやら最初にジジババの中へ含んだ事を根に持ってるようだ。


「それよりも決闘の件、どうするの?」

「おっと忘れてた、妖天と俺とでエキシビションマッチを行うがいいか?」

「え?私が確実に負ける戦いですよ?嫌ですよ?」


あれ、さっき色々と応えたい風に言ってくれてたよね?

まぁ乙女心は秋の空と言うし、気にしないことにしよう…一応事情だけ説明はするか。


「やってみなけりゃわからないし、周りも事情を知らないからな。どうやら決闘状が俺宛に大量に届いているらしいんだ。面倒だからスパッと戦って負けてくれればいいんだよ。」


八百長を仕掛けてる感じで気が引けるがしょうがない。

負けてくれればっていうけど勝てるかな?っていうところもあるからいいか。


「そういうことですか、では私と料理長対知也様でどうですか?そうすれば一発で決闘状も来なくなると思いますよ。」

「え?料理長?なんで?」

「何でってトモヤ君…英雄の一人だからよ、今の流れで気付いてなかったの?」

「ええええ!?」


人当たりのいい小太りのオジサンだぜ!?てっきり金光がこっち側の様子を見にきた時に暴れ回ってたのかと思ってた。


「いいのか?今全然強そうじゃないけど…」

「大丈夫ですよ、あの姿からは想像が出来ないほど俊敏に動きますから。私も彼を倒すのは苦労しました。」


人は見かけによらないな、と言うのを身に染みそうだ。ていうか妖天と料理長戦ったことあるのか。

妖天が苦労したとなると料理長も何気に神代クラスの実力者…そう考えるとブルール以上の実力者が2人纏めてか、勝てる気がしなくなってきた。

後で金光に特訓してくれるようお願いしよう。勿論みんなに内緒でな!


「因みに決闘にルールってあるのか?」

「いえ、特には無いですね、流石に開始の号令だけは守りますが。」


無差別かぁ、武器もありなんだろうなぁ…ならこっちも応援呼んでいいよね。


「そっちが2人なら正…」

「駄目です。さっきも言いましたが私達を1人で倒す実力を見せつけないと。正樹さんに代行してもらっても正樹さんに決闘状が行かなくなるだけで知也様の強さには誰も納得しませんからね?どうせ正樹さん1人に戦わせるつもりですよね。」


どうやら目論見がばれているようだ。ぐぅの根も出ないほどの正論を言われて撃沈する。

さて、そうしたら決闘日は何時にするかなぁ…


「明後日とかはどう?実は国王が来ていて、明後日に闘技場で盛大にエキシビジョンマッチが行われるよ。トモヤ君と妖天様とのマッチングだけでもいいカードだからね、すぐに採用されると思うわよ。」

「ほぅ、他にどんなやつらが戦うんだ?」


国王は直接会ったからいいとして、闘技場で賑わう程の戦いか、イベントごとをチェックしてたつもりなんだけどなぁ。領主も教えてくれればよかったのに。


「謎の戦闘妖精フェアリートーカー対妖天と、英雄兼料理長エルドラ対騎士団長カミュですね。カミュ様の来訪は突然だったけどカミュ様の熱い要望で組まれたわ。」

「へぇ料理長ってエルドラって言う名前だったのか…あと戦闘妖精って何だよ…妖天は知ってるのか?」


キリエと妖天が慌てている。どうしたんだ?


「いえ、初対面ですね!小さな体に似合わずかなりのやり手らしいですね!」

「え?そうなんですか?アースの従業員って聞いてたけど。」


そういや妖天もさすがに闘技場で戦うから情報は知ってたか。

それよりもうちの従業員?小さな体、妖精…フェアリートウカー…フェアリー、トウカー、桃花!?


「おいまて、うちの妻じゃないだろうな?」

「…」


妖天とキリエが思いっきり目をそらす。まじかよ、全然知らないかったんだけど!?

てかいつの間に決まったの!?昨日の今日ってか王様来たの今日だよね!?


「流石に王様も突然来る訳じゃないからね、そっちに情報が降りてこなかったのは多分だけど領主の配慮よ」

「いや、妻を戦いに駆り出されて黙ってられるほどお人好しではないからな!返答次第では只ではすまさんぞ」


思わず声を荒げてしまった…クラリスさんは何も知らなかったっぽいから仕方がないよな。


「ごめんなさい、トモヤ君の妻とは知らずに。今から領主に言って中止させます!」


俺の剣幕が余程酷かったのかクラリスが即座に中止を申し出てくる。

取りあえず状況確認が先だ、俺は妖天とキリエを睨みつける。


(キリエ様…決闘日が命日かと思ってましたが今日が私の命日かもしれません、先立つ不幸をお許しください)

(何言ってるの妖天、死ぬときは一緒よ。)


だだ聞こえなんですけど…その様子を見て怒りが収まる。まぁ今思うと今の妻に勝てる人間がそう居るわけないか。

だけどなぁ…


「あの、知也様…黙っていてすいませんでした!奥様の要望で黙っているようにと申し使っていたので…」

「そうよ、妖天ちゃんとキリエちゃんは悪くないわよ」

「桃花!?」


突然桃花が現れて一同が驚く。なぜここに?


「何故も何もないのじゃ、突然妖天が消えたら驚くじゃろうて。」


いつの間にか開いてた会議室から金光が現れる。


「あと妖天のリンク…真名の契約が切れたことがたぶん主にバレたんじゃよ。」


そっちは今の今まで気付いてなかったのかぁ。


「リンクが切れてるからいきなり死んだと思ってちょっとしたパニックに陥っとったわ。」


やはりリアルタイムハートビートではなかったのか、まぁそりゃ消えて反応なければびっくりだわなぁ。

これは激おこかなぁ、どうやってごまかすかなぁ。


「わかった、後で謝っておこう。」

「今謝って下さい!」


遅れて息切れしたエリオーネが入ってくる。

どうやら金光が位置を教えたようだ。


「あと文香と正樹を呼んだのじゃ、まぁもう少しで来るじゃろうて。」


ああ、ちょうどクラリスに紹介したかったからちょうど良かった。


「妖天!無事ですか!」

「く、苦しいですエリオーネ様、無事ですよ、何事もないですよ。」

「良かった、無事だったのね…あれ、でもそうすると真名契約が…」

「えーっとですね…」


抱きしめられながらバツの悪そうな顔で妖天がこっちを見る。

視線の先をエリオーネが追うと納得した顔を見せる。


「わかったわ、妖天は何も悪くないわ、そこのが何かしらで阻害してるのね、安心なさい。その代わりに、そこの魔王にちょっとお灸を据えないといけないわね。」

「そんな、私など些細なことのためにお手を煩わせるわけには…」


…なんか俺が悪いみたいな流れじゃないか…いや、どう考えても俺が悪いな!酷いことに魔王扱いだよ。

とりあえず質問は受け付けることにしよう。どうやら通信切れてるだけと思ってるみたいだし。

妖天の事は些細なことではないんだけどな…事の犯人なだけに何も口出せないぜ。


「些細ではありません、キリエと同じく妖天、あなたも私の大切な『娘』なのですよ?」

「エリオーネ様…」

「娘と思ってるならもうちょっと構ってやれよ、だからヤサグレって言われるんだよ。」


なんだ、ちゃんと大切に思っているんじゃないか、思わず俺はほっとして、口が滑ってしまった。

エリオーネの額に青筋が走ると同時に少しだけパチパチと閃光が走る。


「知也様!なんでそう言うことを言うんですか!思ってても口に出しちゃ駄目ですって。」


妖天が慌てて諫めるよう俺に文句を言うが、それエリオーネにとって逆効果だからな?聞こえないように言わないと。


「2人とも…そこに直りなさい…」


閃光がバチバチと迸る。先程とは打って変わって目に見えるほど迸っている。

あれ、エリオーネの力は殆ど奪ったはずなんだけどなぁ。回復しているのか?


「ほら、そこで怒るって事は自覚があるって事だからな?周りの迷惑だからその迸ってるの収めような?なに、本当の事を言われただけじゃないか、そこはスマイルだぜ?」


ゴゥっとエリオーネの体から光があふれ出す。危ないから会議室周辺に防護のイメージで力を放つ。


「あ、ちなみにだけどあれがうちの店長だからよろしくな、クラリス。」

「なぜこのタイミングで紹介するの!?どう考えても完全に煽ってるよね?とばっちり食らうのは勘弁だよ!?」


まぁごもっともだな、さて宥めるとするか、このまま商工会まで壊されたらたまったもんじゃない。


「水よ~」

「火よ」


文香と正樹の声が聞こえると同時に火の輪と水の輪が俺を縛り上げてくる。

エリオーネのほうに向かおうとしてたから勢い余って思わず倒れ込んでしまった。


「うぉ、なんだこれっ」

「なんだこれじゃないでしょう~えりーちゃんを心配させといて酷くない~?」

「全く…消えるところ見たこっちもびっくりでしたよ。…またエリオーネさんをいじってるんですか?」


正樹と文香が到着したらしい。動けないから見えないけど!

とりあえずみんなが見えるように根性でひっくり返る。

まず自分を見ると手に水の輪っかと足に火の輪っかが括り付けられている。

水はいいけど火は危ないだろうと思うが、全然熱くないんだなこれが。

周りを見渡すと追加で来たのは桃花と正樹と文香とエリオーネに金光か。

まぁとりあえず俺が悪いから甘んじて罰を受けよう。

あ、でも先に聞いとかないといけないことがあったな。聞いとかないと素直に受けれそうにないや。


「それよりも桃花が闘技場で決闘に参加すること知ってた人、挙手」


俺が尋ねるとその瞬間にエリオーネ、文香、金光が凍り付く。

正樹の方は頭にクエスチョンマークがついているから知らなかったようだ。


(正樹君~、タイミング良く来たと思ったけど最悪のタイミングだったよ~)

「え?」

(ごめん~!私離脱するね~!)


手の拘束が解かれた。どうやら文香は逃げるという選択肢をとるようだが、そうはさせない。


「逃さねぇよ」


俺は拘束が解除されると即座に文香の手足に枷のイメージを作る。

灰色の何かが文香の手足を拘束して勢い余って転倒する。


「やはり逃げ切れませんでしたか」

「ふぇ~ん、鼻打った~。なんなのこの輪っか~。」


正樹が火の刃で、文香が水の刃で輪を切ろうとするが、すり抜けるだけで拘束は解けない。

まぁそっちの水と火も切れないから似たようなものかな。


「先輩、今の奥さんに敵う者はそうはいないと思いますが。」

「わかってるさ…だがわかってても落ち着かないもんなんだよ。」

「何分独り身ですのでその気持ちには賛同できませんね…」


正樹の溜め息と共に足の拘束も解ける。いずれわかる日が来るさ。

その様子を見てた金光も深くため息をつく。


「桃花、そろそろ説明してあげた方が良いんじゃないかの。」

「そうね…知也さん、黙っていてごめんなさい。私が口止めしていたのよ。皆は悪くないわ」

「それくらい分かっているさ、だが黙っていたって事はこういう事も考えていたんだろう?」

「知也…大人げなさ過ぎじゃよ…」


それも分かってるさ、だけど心配するじゃん?妖天を呼び出してビックリさせたことは勿論謝る。結論的に言うとワープだけさせただけだから無事だったって話だけど、決闘においては何が起こるかわからないじゃん。まぁ相手が妖天(みうち)だから良いけど


「でもー、知也さんも妖天ちゃんと料理長と戦おうとしてたんでしょう?私の心配はどうするの?」


くっ、そうきたか…あれ?意外と桃花も怒ってる?

一番やりにくいパターンに入りそうだ。俺は良いんだよっていうのが通じる相手ではない。


「竜の国でも危ないことは無いって言いつつ、ブルールちゃんと戦って何度か吹き飛ばされたって言ってたしー?その事は知也さんからじゃなくて遠天ちゃんから聞いたのよ?」


やはり怒ってた!桃花が追い討ちをかけてくる、これはやはりやばいパターンだ。夫の威厳なんてどこにもなかった!


「こっちの世界に行くってなったときも、本当は私も一緒に行きたかったんだよ?人に自分の気持ちだけ押し付けるのは良くないと思うのよね。本当は竜の国から帰って来た時に伝えようと思ったんだけど、知也さんが私に嘘をつくから黙ってようって思っちゃったの。」


あかん、これはもう負け戦確定だ。下手な言い訳は逆鱗に触れかねない。

俺の場合は事前に説明したがあくまでも「安全」を前提にした事だったからな。

結果的に無事だったからよかったが、過程を知られたら「たまたま無事だった」に過ぎない。

はい、負け犬の遠吠えですよ…俺は心の中で泣くことにする。


「わかったよ、降参だよ。みんな、特に妖天、すまなかった。」

「あの~、そう思うんでしたら拘束解いてくれませんか~」


おっと忘れてた。俺は文香にかけられた拘束を解く。


「ひどいよ~。鼻が痛いよ~。」


拘束が解かれたら文香が早速鼻をさする。若干赤くなってるな。

しょうがないから文香の鼻に回復のイメージをした光の玉を投げてやる。


「わっぷ…なにこれ~、あれ~?痛みが収まった~?」


よし、これで問題ない。さて話を進めるか。


「傷は癒せるとはいえ、桃花と妖天もあまり熱くなるなよ?」

「もちろんよ、危ないと思ったら潔く負けを認めるわ。」


まぁそんなわけない。素直に負けを認められるような奴がさっきのやり取りで食い下がるはずがない。俺はため息をついて妖天をみる。


「知也様…こういうのも何ですが、正直なところ言うと、奥様と私の決闘は私の勝ち目ゼロですからね?知也様とも私と料理長2人掛かりでいい線いけるかなぁって思ってましたが、今のやり取りを見てゼロになったのを実感しましたよ…文香様が為すすべもなく拘束されるのを見て戦意喪失ですよ…」

「いや、流石に何でもありでも速攻で拘束使ったらブーイングものだろう。そこは配慮するさ。」

「いえ、むしろいっそのこと最初に拘束された方が気が楽なんですが。」


まぁ2人とも常識人だし、桃花の力も妖天が相手なら安心か、あの不可思議な力を戦闘に対してどのように使うか気にはなっているんだよなぁ。

戦いに使わないに越したことは無いと思っていたが、流石にこうなった以上は諦めて観察させてもらおうか。


「クラリスさんって言ったわね、提案があるのだけど、妖天と料理長に私も入れてもらっても良いかしら?」


怒りが収まってなかった人が1人いた。3対1って何それ?流石に無理があるだろう。

しかしエリオーネの提案にクラリスは快く受ける。


「まぁ良いんじゃないかな、エリオーネさんの力は派手そうだから盛り上がるかな!」


そんな理由で決めるのやめてくれないか!?俺への配慮はないの!?

力が戻ってきているエリオーネは相手にしたくないからなぁ、とりあえず阻止しないと。


「妖天と料理長はこの街で強者の認識があるけどエリオーネは無いだろう、いきなり出ても誰だよってなるだろう。」

「それじゃあ事前に騎士団長や勇者とでも戦うわよ、叩きのめしてあげるわよ。」


これは本気の目ですわぁ、余程公の場で叩きのめしたいらしい。公の場で勇者を叩きのめしたらマズいだろう、魔王認定されるぞ。

どうやら相手をするしかないようだ、それじゃあこっちも条件出そうかな。


「わかったよ、3対1でいいが、もし俺が勝ったらヤサグレおかんの称号を皆の前で領主から授与させるからな」

「良いわよ!万が一にも無いですから!」


よし、言質を取った。あとで授賞式について領主と詰めよう。国王も来てることだし、戴冠式みたいな感じで盛大に行うか。

前哨戦が騎士団長というのは流石に騎士団長が可哀想だな、竜王に許可もらってうちの青竜ブルール黄竜グランとでも戦ってもらうか。


「悪い顔してるんだよ~」

「文香さん、あの顔をしているときは関わっちゃ駄目です。」


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