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17・PM、王様に(一瞬だけ)会う

「世界征服するおつもりですか?」


翌日にシルバスタの領主へ竜の国から連れてきた二人を領主邸の庭で紹介する。

予想外に大きいブルールとグランを見て領主がひっそりと聞いて来たのだ。

もちろんそんな気はない。別に危害とか加えないしさせないし安全だよ?


「竜を従えるのは勇者であることの証明でもあるのですよ?しかも1柱だけならまだしも2柱も…こんな事が王都に知られたら間違いなく召還対象ですよ。」

「呼び出される筋合いはないな、バレたら適当に断っておいてくれ。」

「出来る訳ないでしょう!」


竜の単位って柱なんだ…国によるのかな?

まぁ王都内で商売させてもらうのだ、ある程度は条件を飲むが勇者となって魔王を倒せと言われるのは流石に嫌だ。


「さて、そろそろ戻るよ、あまり長居するとキリエに怒られてしまう。」

「あなたを止められる方々が同じ場所に居てくれて助かりますよ…まぁ竜の件は何もできることはありませんからね、知也さんに」


失礼だな、まるで俺が暴走機関車みたいじゃないか。

むしろ俺の周りが暴走しちゃうからな?


「さて、ブルールにグラン戻るから小さくなってくれ。」


呼び方が名前になったのは、大勢いる前で青と黄で呼ぶと真似して他の者たちが呼んでしまうのを避けるためだ。

普段竜王の元で最小限の人数で暮らしていたから気にしなかったらしいけど、こっちに来て大勢の人の前で働くようになると不特定多数に覚えられるから嫌らしい。


「ご主人様…なぜ私だけ人間の姿なんでしょうか…」


ブルールは不満そうにつぶやく、

何故かというとブルールの姿は人間に近く、背中に竜の羽が邪魔にならない程度生えている状態だ。

姿の変更に関わったリュン曰く


「せっかく女の子なのに竜の姿だと(知也が)楽しめないでしょう。」


まぁ女子仲間が欲しいんだろうなぁ…てか正樹一人で大丈夫かな、こんなことならブラッドとグランも人間の姿にしてしまうか、いやハーレム状態を満喫しているかもしれない。


「まぁ知也殿がそうしたいなら構わぬが…人間の作法をあまり知らぬぞ?」


あまり抵抗が無いみたいだから人間の姿になれるようにもしておこう。

やるなら服を桃花にお願いしてからだな。ブルールの時は人間の姿にされたら真っまっぱだったし。

普段裸なのか全然羞恥心がないから困り者だ。その辺の情操教育は周りの女子’sに任せておこう。


店の手前あたりに来ると何だか騒がしい。


「ワシの前に並ぶとは不届きものめ、道を開けい!」


おお、並んでいるところへ割り込みを掛けようとしているグループがいる。

しかも20人って多いな。どこかの貴族か?先日開店した噂を聞いて来たのかな?

よく見ると先頭のおっさんの前に妖天が立って割り込みを阻止している。


「あ、知也様、実はあの方々が突然来て優先させろと騒いでるのですが。」

「珍しいな、妖天がいれば大体大人しくなるのに。もしかして他の街から来たのか?」

「えー…そうなんですが…」


歯切れが悪いな、妖天にしては本当に珍しい。


「実は王様なんですあの人」


ホワイ?…なんで王様が喫茶店?しかも割り込みかけるというせこさ。


「あの状況でこれが国の王様だーって言われて信じられるかなと思いまして…」


まぁ付き添いに20人連れてるからまぁ偉い人なのはわかるんだけど…


「おじちゃん、ちゃんと並ばないとダメだよ!順番だよ?」


後ろに並んでいた子供が王様の前に出て来た、勇敢な子供だな。親は顔真っ青だけどな…


「何だと!このワシに対して無礼な、ひっ捕らえよ!」

「お許しを!まだ何も分かっていない子供なんです!罰でしたら私が受けますので!」


親が子供の前に出てきて庇うように懇願する。


「だったら尚更分からせるために鞭打ちじゃ。ついでじゃ母親のお前も監督不行届きの責任を取って罰を受けるがよいわ」


おっと、さすがにうちの店の前でやらせるわけにはいかない。

うちの前以外だったらいいかって?まぁ俺の見える範囲でと訂正させてください。

俺が身構えると妖天が何かに気付いたのか慌てて止める。


「あ、待ってください知也様、大丈夫ですからもう少し見守ってください!」


大丈夫って言われても、まぁ妖天がそういうなら様子を見るか。

念のため子供の防御ステータスを上げておく。


「それでは不肖ながら私が鞭捌きをご覧にいれましょう。」


おや?あんな奴さっきまでいたか?同じ兵装してるからあの王様の部下なんだろうけど。


「よしやれい!ってこの声は…!?」

「さーてこの馬鹿王が、勝手に外出したかと思えばこんなところに来て騒ぎ出すとかなに考えてるんだ!」

「ひぃぃぃ!カミュ!」


あ、王様が鞭で打たれた。

すごい勢いで飛んで行ったけど大丈夫かあれ?


「やはりカミュでしたか、彼は王都の騎士団長です。彼がいるなら安心です。」


顔見知りか?王様にあんな態度をとり、妖天が信頼している程の人間か、中々興味深いな。


「なぜ貴様がここに!?北方の制定に向かわせたはず!一年は戻ってこれないはずじゃぞ!」

「どう見積もったか知らんが一週間で終わったわ!」


すごい雑な見積もりなのか、あの騎士団長が規格外なのか…てか王様頑丈だな、反論するほどに余裕がある。


「騎士団長が規格外ですね。正直私たち神の巫女でも勝てるかどうか」

「ほぅ、彼は他次元の人間なのか?」

「いえ、純粋にこの世界の人間です。この世界のパワーバランスが取れているのも人間にも超越者がいるからなのです。勇者とも呼ばれていたりしますが。」

「まじか、彼が別の次元に行ったら敵無しなんじゃないか?」

「そこまでの干渉が許されてませんから試したことないですが、神代の格は与えられるのではないでしょか」


勇者か、まさか早くもお目にかかれるとは。

あ、王様に二撃目が入って今度こそ倒れた。


「あ、彼は超越者ですが竜を従えるという点がクリアされていませんので、この国では勇者ではないです。」


まぁ国が作った制度ルールか、竜という希望と絶望を連れた「勇者」という象徴が欲しいんだろうな。

王様を伸した後カミュがこっちに来た。王様放置かよ!


「妖天殿!この街にいるとは聞いてましたが、早速会えるとは。そしてなんとお美しい…ここの制服なのですか?デザイナーはどなたです?是非とも会って我が女性騎士団への導入を検討していただきたい!」


おうけい、こいつとは仲良くできそうだ。ちょっと領主を交えて座談会でも開くか。


「うちの店員と制服をお気に召して頂いたようで何よりだ、それよりも王様放置は不味いだろ。」

「ああ、つい見とれてしまってつい。おい、誰か領主亭まで運んでやれ。」


扱い雑すぎぃ!てか領主の所に行くのか、鉢合わせにならないといいが。

他の客の邪魔にならないよう店の裏手の広場に行き、妖天が改めて騎士団長を紹介してくれる。


「知也様、こちらが王都の騎士団長カミュです。歴代最高の実力を持つと言われ勇者ではないですが剣聖の称号を持つ強者です。」

「妖天殿にそう言われると誇り高いことです。しかし妖天殿に比べまだまだ若輩者であります。会う度に恐縮ですが、騎士団への参画を是非お願いしたい。」

「カミュ、毎度の申し出は嬉しいのですが、私には今やることがあるのです。」

「ここの従業員が騎士団よりも重要だと?」

「駄目ですか?」


くるりと回りスカートをちょこんと摘みお辞儀をする。

あざとい、すごくあざといよ妖天。


「いえ、騎士団と遜色なく素晴らしいお店です!」


ここに熱い手の平返しを見た。


「しかし、民を守るためには力が必要です!力あるものが守らねば、そのためには一人でも多く強者を集め、指導していかねば国力はいずれ衰えるでしょう。妖天殿には是非来てもらいたいのです!」


この男が善人でよかったが、しかし強い者の役割か…

この世界では強者と弱者の違いがはっきりしすぎている。

近代的な武装は無いから実力者の個々の力が突出していて力こそ正義みたいな感じだからな。


「店主と契約してますので破るわけにはいきませんよ。」

「店主はどなたですか!私が直接話をつけてきます。」


おい妖天、面倒臭いからって俺に丸投げかよ!

まぁ部下を守るのも上司の仕事か…


「まぁ店主は俺なんだがな。」

「あなたが店主殿ですか、早速ですがこの店の制服のデザインについてですが、騎士団をモチーフにしたらどうなるかデザインしてくれませんか!」


そっちかよぉぉ!今までの下り何だったの?

まぁ流石にここまで熱い意志を感じたらやるしかないか!


「わかった、出来上がり次第届ける。だがまずは現状を見たい、今度お伺いさせてもらうが良いか?」

「問題ありません、ありがとうございます!」


よし、一つの商談はこれでまとまったぜ。

あとで桃花と騎士団の視察を行おう、不満点があれば改善してあげないとな。


「あと恐れ入りますが妖天殿の契約なんですが、どのような契約をされてるのでしょうか」

「魂を縛った奴隷契約ですよ。」


妖天が間髪入れず言ってくる。

違うよ?くどいようだけど違うからね?

妖天め、どういうつもりだ?珍しいな本当に。


「残念だ…素晴らしき同志と出会えたと思ったが、こんなに卑劣な男とは思わなかった。」


カミュが静かに剣を抜く。

よく見ると涙を浮かべてガチで悲しんでいる。


「おいやめろ、そんな訳ないだろう。妖天も悪ふざけは止めろください。」

「言い訳は無用、店主殿、神妙に覚悟せよ。」


なんでこんなに喧嘩っぱやいのここの人たち!

もうこうなったら眠ってもらうしかないな。

俺はブルール戦の時に得た要領で懐に入り拳を宛てがう


「速いっ!?」

「いきなりですまんな、眠ってくれ。」


気絶させるように意志込め力を放つ。


「ゴフ…この強さ…このような強者がこに国にいたのか」


あれ、気絶しない?意志の込め方が足りなかったのかな?


(警告します。この者の精神と肉体は同調しています。このままでは命を摘む恐れがあります。)


まじか、メンタルどんだけ強いんだよ…


「先に剣を向けてきたのはお前だからな恨むなよ?ていうかそのまま眠ってろ、悪いようにはしない。」

「恨みなどしません、一撃です…一撃でここまでやられたのです。清々しい気持ちですよ、正直意識を手放した方がどれだけ楽か…しかし私は長なのです、ここで寝ては部下に示しがつきません。」

「わかった。おいお前等!かかってこい。さもないとこの軟弱な騎士団長をやってしまうぞ」

「なっ!?」


ちょっとわざとらしいかな?騎士団長が一撃で眠るのが嫌ならほかの奴を一撃で眠らせればいい、そうすれば安心して眠れるだろう?


「知也様…あの、ごめんなさい。無茶ぶりしたの謝りますから、もうその辺で許していただけないですか…」


俺は妖天の頭を撫で怒ってないよと安心させる。


「くっ!みんな俺に続け!団長を死なせるわけにはいかない!」


よかった、このままかかってこなかったらどうしようかと思ってた所だ。

しかしどうするかなぁ、20人かぁ、どう捌こうかなぁ。


「ご主人様、ここは私にお任せください!」


ブルールが俺の前に出てくるが、俺は問答無用で首元に手刀を入れ気絶させる。

ふぅ、あぶねぇ死人がでるところだったぜ…

気絶したブルールをグランがお腹の下辺りに入り器用に抱えてパタパタと店内に飛んで入っていく。


「おい…あれって竜じゃないのか。」


しまった、グランの存在を隠すの忘れてた。

20人全員がどよめきあう。

そんな中カミュが号令をかける。


「全員、勇者様へ敬礼!」

「そんなんじゃないからね!?」


全員が整列し敬礼をする、一糸乱れぬポーズに感動を覚えたが、そうじゃない。

面倒な事になりそうだという現実が待ち構えてしまった。


「此度の無礼、真に申し訳ございませんでした。この強さも勇者様なら納得です。」

「おい話を聞け、勇者じゃないからな。」

「ではあの竜はなんなのですか。」

「ああ、あれは竜じゃなくて新種の羽が生えた犬だ。あまり良く見てないだろう?」

「なんですって!」


そう話すとブラッドとグランが出て来た。

っておい!お前らの存在を隠したいのに何で出てきちゃうの!?


「主よ、犬とは酷いぞ!断固抗議する!」

「そうだ知也殿、酷いぞ!」


くそぅ、ここぞとばかりに自己主張してきやがって…

領主邸での話を聞かせておくべきだったか。


「あの、お二方は店主殿とどのようなご関係でいらっしゃいますか?」


やべぇ直球でそっちに行きやがった。俺は慌ててブラッドとグランに頭の上にバツ印をして喋るなよとジェスチャーで伝えようとする。


「主は主だ、我は従うだけの存在だ。なので今は喫茶店の店員だ。」


嘘つき!さっき犬扱いして抗議してたのに!


「我は竜王の盟友たる知也殿に忠誠を誓う身、今は喫茶店の店員だ。」


余計な名前が更に出て来た。最後の喫茶店の店員だけでいいじゃん!


「竜王…ですか、本当に何者なのですかあなたは!」


ほら食いついた!説明めんどい…


「妖天、カミュ殿に掻い摘んで説明をしてくれ、何処まで言っていいか分かんなくなってきた。」

「え!?」


突然振られて妖天が驚く。そこで私ですか!?と言わんばかりの顔を向けてくるがスルーだ。


「うう、今までの恨みを少し返そうと思っただけなのに酷いことになりました…」


恨みって言っちゃったよ。やっぱり真名契約嫌だったのかな?

妖天がカミュのお腹に手を当てながら語り掛ける。どうやら回復魔法掛けてるっぽい。


「カミュ、この方は世界を救う者に間違いありません。しかしそれは『勇者』としてではないのです。」

「なんと!しかし勇者ではないというのは…」

「勇者というのはあくまでもこの国での呼び名、この国の為だけ力を振るう者の事ですよね?」

「そんなことありません!魔族や魔王を打ち倒すのがこの世界の悲願です。人間だけでなく竜人や獣人、妖精の中でも英雄となりえましょう。」


魔族と魔王ってあまり紐づき無いって聞いたような気がするが、認識違ってたのか?

てか世界を救うって大っぴらにするのはやめてくれませんか?恥ずかしいので。


「いいえカミュ、あなたが思ってるよりも世界は広いのです。この国が戦っている部分など一部分であり、魔族の大半は人間に好意を持っています。こちらが確認している魔族の国より更に奥に行くと人間と魔族が仲良く暮らしている国だってあります。一部の魔王と魔族が人間に牙を剥いているのは間違いないですが、それを種族全体で見るのは間違っています。」

「そんな…」

「そこで我らが主であります知也様がこの喫茶店をもって全世界と全種族を救おうとしているわけなのです!」


いや、喫茶店はついでだからね確かに好調過ぎて主力にしようと考えちゃったけど!

しかし、そんな突拍子もない事誰が信じるんだよ。


「なんと壮大な…素晴らしいです!力ではなく社交の場での解決とはなんと平和的な考え方なのですか。そのような力を持って尚そのような考え方ができるとは、我が身の矮小さを実感した思いです。」


ああ、真っすぐな眼差しが痛い…合ってるんだけどなんかこの純真さに自分の胸が苦しくなってくる。

とりあえず裏庭でいつまでも長話をするのも申し訳ないので、テーブルと椅子を用意してもらって料理を一通り味わってもらう。今後の方針を見てもらうのと、まぁ殴ってしまった罪滅ぼしというやつだ。

なぜ裏庭かというと、店内はまだ混雑真っ只中だから20人も入れないし、何より割り込みになっちゃうからね!あの子に怒られちゃうぜ!


「あ、ちなみにですがカミュ、魔王一人(一柱?)この中に混じってますので、事を荒げないでくださいね?」

「えぇ!?」


黙ってたら分からなかったのに…



朝食…作らなきゃ

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