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16・PM、出店予定地を確保する。

「ブルールはちょっと力に固執しておってな。一回主に負ければおとなしくなると思うんじゃ。」


どうやらあの青と呼ばれる竜は名前をブルールというらしい、そんな事より決闘と言われても

文香と桃花の力をブレスで消す奴だよ?知能派の俺が勝てるとでも?


「桃花じゃ駄目か?」

「知也さん~、女の子を、しかも奥様を真っ先に戦わせるって酷くない~?」

「本当に酷いわ、帰ったら話し合う必要があるようね」

「女の敵っす、酷いっす。」


非難轟々だ、いや、俺も普通ならそれはどうかなってそう思うよ?

でも戦闘能力においてはそっちのほうが強いからね、最強の一角だからね?

はぁ…でもブラッドの懇願を無碍にするわけにもいかないか。


「分かったよ、おーいブルール、決闘しないか?」

「軽っ!決闘申し込むって感じじゃないっすよ!」

「まぁ知也様ですし。」


遠天が突っ込みを入れてくるがそんな作法を俺は知らん。

キリエの中では俺はチャラいイメージになってそうだ。

決闘と言う言葉を聞いたブルールは嬉しそうな顔をする。


「人間風情が、調子に乗りおって、身の程を弁えさせてやる。かかってこい。」


やる気満々なようです。だがどや顔にちょっとイラっと来た。

そんな様子を感じたのか竜王は心配そうな顔でこっちを見る。


「知也様、どうか命だけは…」

「俺は肉体派じゃ無いからな、大丈夫だろう。むしろ俺の心配をしれくれ。」

「そんなまさか。」


意外そうにいわれても正直自信がない。今まで正樹と文香に任せてきたし…

とりあえず巻き込むと悪いから全員から離れるか…


「覚悟は出来たようだな人間!」

「まぁ、こいつは黙らせておいた方が話が進むか…」


とりあえず距離を置いて炎が飛ぶイメージを作る。


「先手必勝!燃えろ!」

「ふん!」


またブレスでかき消された。やっぱり都合いいように行ってくれないよね…


「次はこっちの番だ、食らえ!」


ブルールは体を勢いよく回転させ尻尾で俺を薙払う。

ガードなんて関係ない位の質量が俺の体を大きく吹き飛ばす。


「うぉ!まじかよ、身体強化しといて良かったぜ。」


ご都合主義のスキルのお陰で体は無傷だ。しかも吹き飛ばされたお陰で距離が開いた。

俺は体勢を整えると透かさずに先程の炎をブルールに向けて連射する。

連射の甲斐があって炎をかき消しきれず何発か体に命中する。


「くっ、かき消せぬ!初源の炎だと!?小賢しい、だったらこっちも砲撃に入るわよ!」


どうやら炎撃が結構効いたようだ。

ブルールの口が青白く輝く、どうやら口から何か出すみたいだ。


「いかん、全員伏せろ!」


竜王が声を荒げ全員に叫ぶ。

え?まじな勢いなやつ?俺消し飛んじゃわない?


「塵すら残さないわ、私の全力を食らいなさい!」


間に合うかな、いや、間に合わせないと。

俺は全力で反射のイメージをする。


「かぁぁぁぁ!」


青白い光線が俺に向かって放たれる。軌道線上の地面抉れてるじゃねーか!


「着弾させるわけには!」


俺は反射のイメージを前方に展開し上空へ向くよう角度を調整する。前方に鏡のようなものが現れる


「耐えてくれよ!」


鏡のイメージに当たると青白い光線は上空へ向かって飛んでいく。


「ふぅ、マジで焦ったぜ。」

「そんな、私の全力が…」


うまくいってよかった、空に何もなかったという事を祈ろう。

ブルールは驚愕の顔をしている。でも打ち消した訳じゃないからな、あんな威力だと正樹達しか正面から対処できないだろう。


「竜王よ、この国が救われたな。」

「ええ、災厄が娘によってもたらされるとは予想にもしませんでしたが…」


結構な威力だったもんな、城消し飛ぶって言われても信じちゃうよ。

俺も内心ビビりまくって心臓バクバクしてるぜ。

あんなのまた撃たれる前にこっちから攻めまくろう。


(あなたの力は危険すぎます。そのような考えをせず拳に力を込め直接放つようにイメージしてください。相手を気絶させる位でいいのです。)


脳内に声が響きわたる。気絶させるくらいってハードル高いんだけど!

まぁでも脳内サポートの人?は間違ったこと言わなさそうだ、さっきも力を放つしかイメージしてなかったしな、まぁやってみるか。

俺は拳に力を込め遠当てのイメージをし正拳突きの要領で前に出す。


「この一撃で眠ってくれよ!」

「!?」


拳を前に出した瞬間に拳の先から力が放たれブルールを200m先位の城壁まで吹き飛ばす。

やべぇ、なんかすごい勢いで何か出た!


「元始魔法だと…」

「やっぱり見間違いじゃ無かったっすね…」


竜王が驚愕の顔でこっちを見る。そういや遠天がさっきもそんな事を言ってたな。

自分でも思ってた以上に威力があったから驚いたが殺傷能力ではやはり文香たちに軍配があがるか。


黄と呼ばれる竜が門の方へブルールの様子を見に行く。大丈夫だよね?生きてるよね?


「大丈夫だ。ちょっと気を失っているだけだ。」


黄と呼ばれる竜がブルールを抱えて戻ってくる。

すげぇな、何キロあるかわからない竜を普通に抱えるって。竜が竜を抱える姿は圧巻だ。

黄と呼ばれる竜がブルールを地面に寝かせるとこちらへ向き跪く。

デカい、跪いているけど見上げちゃうよ。


「青が大変失礼しました、決闘に敗れた者の宿命として本来は命を捧げねばなりませんが、まだこやつは若い身、我が命でどうかお許し下さい。」

「いや、そっちの作法とか知らないからな。…いや、命を捧げるなら俺の言うことを聞いて貰おう、勝手に死ぬのは許さん。そしてお前等は俺の店で働いて貰う。」

「店?」

「ああ、誰もが楽しく食事を出来る店だ。」

「それは竜も、竜人もなのか」

「当たり前だろう。この世界の壁なんか知らん。どの種族も分け隔てなく楽しめる場を作る、そういう店だ。」

「当たり前…それは理想で難しい、あなたの力なら支配する方が容易いが…」

「それに何の意味がある、そしてそれは楽しいか?」

「!?なんという傲慢さ!ククク…フハハハハ!」


急に黄と呼ばれる竜が笑い出した。可笑しいこと言ったか?いや色々とおかしい事だとは思うが笑うとこか?

黄と呼ばれる竜は立ち上がり今度は竜王の元へ跪く。


「竜王様、お願いがございます。」

「よい、そもそも私もそうしておろう。良きに計らえ。」

「ハッ!」


黄と呼ばれる竜は竜王へ軽く会釈をし、また俺の所へ来て再度跪く。わざわざ跪かなくていいよ!


「失礼ました、名乗り遅くなりましたが私の名前はグラン=ゴウル、親しい者には黄と呼ばれております。知也様、あなたの理想にどうぞ我が身命お使い下さい。」

「楽しく行こうって言ってるのに重いよ!」

「!?なんと盲点であった。早速主の意向から外れてしまったのか!」


そのやり取りを見て後ろで文香と桃花は爆笑している。


「創世期と呼ばれた頃、多種多様な種族がこうやって笑い合ってたものだ。」

「ええ、懐かしいですねぇ。人に竜に妖精に、ここにはいませんが魔族に獣人にと」

「最初はみんな仲がいいのに、種族による力の差が原因で争いが始まっちゃう。でもこうやって再び笑い合える日がくるのでしょうか」


ブラッドと竜王とキリエはしみじみとしている。そういえばこの中でキリエもぶっちぎり年長組だったな。

普段の行動と言動て忘れてしまってたよ。あ、ちなみに桃花は人だからな、姿変わっちゃったけど。


「ブラッド様、こちらのお嬢様も神代の方ですか?私の記憶が確かなら創世期からいない気がしますが。」

「この世界の創造主だぞ?」

「なんと!?あなたがキリエ様でしたか、これは大変失礼をしました。」

「良いのですよ竜王『様』、今の私は何の力もない女の子です。」


自分で女の子って言っちゃったよ。

しばらく三人の談笑を聞いているとブルールが目覚めた、暴れ出さないといいが。


「う、うーん…」


ブルールは気だるそうに体を起こしきょろきょろとし、気付いたように身構える。


「はっ!?まだ終わってないわ!構えなさい!」


…あれだけ悠長に寝といてそれはないだろう。さてどうしようかな、寝ていたという現実を教えてやるか。

俺がブルールの前に行こうとすると竜王が先に動いた。


「青、お前の負けだ、文句無しの一撃でお前は敗れたのだ。」

「そんな、あれは偶然よ!」


うん、確かに偶然だ、俺もあそこまで威力があるとは思ってなかったし。


「認めろ青、お前より強い奴はこの世界に五万といる。」

「嫌よ、私は竜の国最強の戦士よ!私に勝てるのはブラッド様とお父様だけよ!竜の国の誇りにかけて負けるわけにはいかないのよ!」


竜王の子供だったのか、それで竜の国を背負いたいって言う強さへの拘りかぁ。てかこいつより強い奴が五万といたら困るんだけど。

ブルールに勝てるのは、ってところで俺はちょっと疑問に思ったのでこっそりと黄に聞いてみる。


「なぁ、お前の方が強いよな。」

「…言わないでやってくれ、難しい年ごろなのだよ。」


なるほど、思春期というやつか。

そんな中ブラッドがブルールに諭すように話しかける。


「青よ、我が主は我をもしのぐ力を持っておるのだぞ?さっき自分が言ったように、我が主に我が勝てぬのにお前が我に勝てぬなら敵う筈もあるまい。」

「そ、そんな…ブラッド様でも勝てないだなんて」

「お前はまだまだ若い、まだまだ力も経験も未熟だ、それを認め研鑚するがよい、お前には我らを超える資質がある、今に拘りすべてを捨てるでない。」

「ブラッド様…申し訳ありませんでした。」


お、予想外に素直に謝った。これで落ち着くかな。ブラッドもさすがは年の功だな、諭し方もうまい。


「ちなみにだが、青よ、言っちゃ悪いが、お前はこの中で一番弱いからな?」


おいぃぃ!竜王意地悪過ぎだろ!せっかく落ち着いたのに何火に油注いでんだよ!本当に言っちゃ悪いよ!


「え…嘘?」


どうやら現実を受け入れきれない様だ、まぁ俺は実際戦ったからともかくとして、

しょうがないからこっちのメンバーの実力具合を軽くまとめてブルールに教えてあげる。

遠天の場合は、金光や妖天と実力が似てるなら、まぁブラッドと渡り合える実力者だ。

キリエはこの世界に創造主だ、力を大半俺に持っていかれたけど、まぁ本気を出せば軽く一捻りだろう。

桃花と文香は言わずもがな、ブラッドを圧倒する実力はある。文香に至っては既に実証済みだしな。


「そ…そんな、黄は?黄は私より弱いじゃない!」


ついに下を見だした。そんなにショックだったかぁ。

そんなブルールに竜王がとどめを刺す。


「黄は私と戦い渡り合えるくらい強いぞ?お前が生まれる前は魔王陛下の再来と言われるほどの暴れ竜だったからな。力を見せてないだけだ。」

「やめてくだされ、竜王様、恥ずかしき過去にございます。」


竜王…自分の子供に何か恨みでもあるの?容赦ないな。

てか黄は暴れ竜だったのか、それがこんなに落ち着いて、時の流れってすごいなぁ。


「なまじ実力があるものですから、いつか言おうと悩んでいたのです。ちょうど我らの種族以外で強者がいますので現実を知らしめるには丁度良いかなと思いました。これを機におてんば娘を卒業して欲しいものです。ていうか弁えさせないとこの国が滅びそうです。」


なるほど娘だったのか、たしかにこんなお転婆だと貰い手がいなさそうだ。下手すると家族崩壊どころか国崩壊って笑えないな。

まぁ大丈夫、うちにも似た子いるから。

それはさておき、勝者の特権だ、言う事を聞いてもらわねばな。

そう思ってると竜王が言葉を続ける。


「さて、我が娘ブルール=ナーガよ、よもや決闘に敗れたのを忘れたわけではあるまいな。」


竜王が急に真面目な顔になりブルールに負けた現実を再度突きつける。

竜王の言葉でブルールの顔が青ざめる、ように見える。人間じゃないから顔色わかんねーよ。


「はっ…、決闘に敗れた者はその命を勝者に捧げます。」

「その通りだ、それは我が娘とて例外ではない。」

「はい…」


おーい?さっき黄と話し付けたよね?命なんていらないよ?


「しかし、知也様はそれすら許されぬ。死とは逃げることだと考えるお方だ。例え恥辱、屈辱にまみれてもどんなに苦しくても生きるという業を与えるということだ、戦士としての名誉なんてどこにもない。」

「知也様どうか慈悲を!負けを認めます。どうか名誉ある死をお与えください!」

「ならぬ!ブルールよ、竜王の名に置いて命ずる!知也様の奴隷となり生涯仕えよ!」

「そんな!?人間の奴隷だなんて」

「言ったであろう、例え恥辱、屈辱にまみれても生きるという業を与えると、敗者のお前には自分の意思で決める権利はもうない!例えこの場で自害したとしても竜の国の汚点として語り続かれようぞ」

「そんな!死ぬことも許されないなんて!?」


竜王まじパネェ…てか奴隷で取るつもりないってば。でも今はややこしいから従ってもらおう。

生涯って言われても竜って何年生きてるんだよ、さっき創世期からいる見たいなこと言ってたよな。

あと恥辱ってなんだよ、そんなの与えないよ!あ、店の制服は着るのに抵抗あったらどうしよう。


「なんていうか、純粋で極端よねぇ」


桃花がぼそっと呟く、その通りだと思う。青も黄も真っすぐで純粋でそして気高い。まぁ竜王はちょっと腹黒いけど。

まぁそんな奴らをドロドロとした人間社会へ突き落そうとしてるんだから、まぁちょっと気が引けるな。ちょっとだけね。

流石にちょっと可愛そうに思えたのかブラッドがフォローに入る。


「あー、青よ、こういうのもなんだが、我も知也の奴隷だからな?ある意味」

「!?」


最後のある意味ってなんだよ。ブラッドの言葉を聞いた途端ブルールが呟きだす。


「ブラッド様の主と言う事は、私も知也様の奴隷になればブラッド様と同じ奴隷になれる。ブラッド様と同じ奴隷と言う事はブラッド様と一緒にいられる。ブラッド様も奴隷で私も奴隷…あれ?私奴隷になりたい。」


あ、これ駄目な竜だ。てかブラッドの事好きだったのかぁ年の差半端なさそうだけどな。


「知也様!いえ、ご主人様!まだ未熟な身でありますが、どうぞよろしくお願いします!どうかセイとお呼び下さい!」


青が今までにない真っすぐな瞳で宣言してきた。清々しいなもう!


「知也様、改めてお願い申し上げます。人質とは聞こえが悪いですが、友好の証としてどうぞ青と黄を連れて行ってください。」

「わかった、まずは店のノウハウを二人に叩き込む、そして竜の国でも店をいつか開かせてもらうぞ。その時にこの二人には中核になってもらうからな。」

「わかりました。その時を心よりお待ちしております。」


竜王と改めて認識合わせを行い、二人は正式に俺の部下となった。

後でシルバスタの領主に言っておかないと面倒な事になるかなぁ。

日も落ちてきたしそろそろ帰るか。その前に二人の味覚チェックだ。


「そういえば、竜王、青、黄、ちょっとこれを食べてみてくれないか?」


俺は袋からプリンを取り出し三人に渡す。青と黄は体でかいから5つ位纏めてあげる。それでも体からするとほんの少しなんだけどね。


「こ…これは。」

「なんだこの未知なる味は」

「大きい体が恨めしい…しかしブラッド様が恭順しない以上私もそうするわけには…」


「「美味しい!」」


どうやら満場一致で味覚は共通なようだ、ドラグニアへの出店が楽しみになって来たぜ。


竜の国編いったん終わり。

次回には街に戻ってます。

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