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15・PM、禍々しいと言われ若干へこむ

「おおー、メニューにない料理だ。どうしたのこれ」

「どうしたも何も作ったんだよ。ビュッフェってやつでな、好きな料理を自分で皿にとって食べるんだ。」


小分けにするのが面倒だったからな、大皿6種類くらいの料理にデザートと果物を中央のテーブルに置いて好きに取れスタイルだ。


ローストビーフ、ポテトサラダ、パエリア、ジェノバパスタ、ピザトースト、唐揚げ…重たいのばかり作ってしまった…ほぼ女の子しかいないのに…


「知也さん、今日はこれで文句なしよ、みんなお腹ぺこぺこよ。」

「そうだね~、今はがっつり食べたい気分だからよかったよ~。」


そう言って貰えるならありがたい。作った甲斐が出てくるもんだ。

おっとキリエの分残しておかないと。俺は小皿を取り適当に料理をよそって冷蔵庫へ入れる。

そういや温める手段が直火しかないや、次の家電作成は電子レンジにチャレンジかな。


「今日のMVPはブラッドだよねー」

「ほう、そうなのか」

「空だと誰ともぶつからないから遠くのお客さんまで一直線だからねー」


リュンが自慢げに言ってくる、確かに、それは凄いな。動線が上空だから邪魔になる者が確かにいない。だがバランス感覚が要求されそうだから相当精神すり減らしているんじゃないか?


「主よ…明日は少ないよな…」


うん、相当疲れてるね。若干涙目だね。この後竜の国行くんだけど大丈夫かな。


「大丈夫だ…流石にウエイターやって疲れましたなんて言ったら魔王の名が泣くぞ。」


いや、明らかに疲れてるから。ちょっと泣いてるから。まぁ明日は少ない事を祈ろう。


「先輩、竜の国へはどのメンバーで行くんですか?」

「そうだな…メンバーはブラッド、キリエ、桃花、文香、遠天で行くよ」

「分かりました。万が一本日中に戻ってこれない場合の店の編成はどうされますか?」


…その辺は何も考えてなかった。そりゃそうだよな、戦争しようとしている国へ行くんだ、一筋縄で行かない場合もあるか。

まぁそういうときの魔法の言葉がある。


「そうしたら臨機応変に頼む。」

「まぁそういうと思ってましたよ。わかりました、安心して行って下さい。」


じゃあ聞くなよって話は無しだ、仕事において報連相は大切だからな。

これで正樹の判断で動いて良いって証明にもなる。


「まぁ早々に帰るさ、長引かせてもしょうがないからな。」

「その辺はあまり心配してないのですが、もし万が一の保険ですよ。」


そういう考えを持ってくれるから安心して任せられるよ。

しばらくして興奮も醒めやらぬ内に賄い料理がすべて消える。


「まだ足りないってやついるかー?足りなければ手を上げろー。」


全員満足したようだ。俺は正樹とエリオーネに後片付けを任せ二階で竜の国へ行く準備をする。


「ただ今戻りました!」

「おお、お帰りキリエ、そろそろそっちに行こうと思ったんだ。お腹空いてないか?」

「商工会でお菓子を少し頂いたので大丈夫です!」


クゥゥゥ

キリエのお腹が盛大に鳴る。


「…いや、これはですね、お店に残る料理の残り香につられてですね。」

「フフ、まだ少し時間に余裕あるから、ちょっと座って待ってろ。」

「スミマセン…」


赤い顔を手で隠すようにしながらキリエはソファーへちょこんと座る。


俺は厨房へ戻り冷蔵庫から料理を取り出し、適温になるよう念じる。

料理から湯気が出て厨房に料理の香りが広がる。

香りを感じたのか片付けをしていた金光と遠天がこちらを見ている。


「すまないキリエの分だ、まだ足りなかったか?」

「大丈夫なのじゃ、いきなり美味しそうな香りがしたから何事かと思っただけなのじゃ。」

「え?金光様そこですか!?今知也様が使ったのって元始魔法っすよね!?」

「遠天、いちいちそんな事で驚いてたら身が持たないのじゃ」

「そんな事っすか!?」

「なんか不味いのか?」

「いや、何もないのじゃ、早くキリエ様に持って行ってあげてほしいのじゃ。」


金光がそう言うなら大丈夫か。俺は二階へ颯爽と戻りキリエの前に置く。


「待たせたな 少しで申し訳ないが我慢してくれ。」

「いえ、大丈夫です!凄く良い香り…」

ローストビーフのソースとジェノバソースの香りが部屋中を漂わせる。俺も食べたばかりだけどちょっとお腹空いてきたな。


「美味しいです!何ですかこの緑色のパスタは。口にするの最初は凄く勇気出しましたけどすごく美味しいです。」


ジェノバの見た目は俺も最初は抵抗あったなぁ。材料見て食べてみようと思ったんだけど、それ以来ハマってしまった。この香草強めの感じは苦手な人いるだろうけどね。


「御馳走様でした!」


満足頂けて何よりだ。俺も準備終わったからそろそろ下に集まるか。

キリエに着替えたら下に降りてくるように伝え、俺はホールへ向かう。

ホールにはすでにキリエを除くメンバーが揃っており談笑している。


「知也さん、こっちの準備はオッケーよ。」

「桃花はその格好のままなのか?」

「好きでしょう?」


そう言われるとハイとしか言えねぇ。


「何普通にいちゃついてるんですか~止めて下さい~。」

「まぁ夫婦なんですからしょうがないっす。ただTPOは弁えてほしいっす。」


遠天はこっちの世界にいたんだよな?なんでTPOなんて言葉知ってるんだ。


「皆さんお待たせ致しました。準備オッケーです!」


キリエも来たことだし、遠天へ竜の国への移動を頼む。


「任せるっす。流石に城の中は不味いと思うので入り口で良いですよね?」

「ああ、それで頼む。」

「それじゃあ行くっすよ」


遠天は両手を広げて光の輪を前方に作る。俺達が入るくらいになると光は地面に降りていき、輪の部分から内側が光り輝く。


輝きが収まると目の前に大きな城がそびえ立つ。

思ったよりも大きかった…あと広くて歩くの面倒い、やっぱり城の中にして貰えば良かった。


「さぁ城門に行って入城手続きするっすよ。」


…人間との戦争準備中何だよな?通るのかそれ…


「これは遠天殿、本日はどのような御用向きでらっしゃいますか?」

「竜王様に用があるっすよ、この人たちを連れて行きたいんっすけど手続き大丈夫っすよね」

「申し訳ありません、遠天殿のお連れ様でも人間の方をお通しするわけにはいかないのです。」


ですよねー。遠天がグヌヌと唸っている、竜人の門番の対応からしても意外と信頼があることは伺えたが、駄目だったか。

その様子を見たブラッドが大きくなった。これでいけるか?


「我の頼みでも駄目か?」

「魔王陛下!…ってふざけるな!姿を語る偽物め!陛下が現れるときは夜になるのだ!」


おっと逆効果だったか…ブラッドもまさか夜になる=俺登場みたいに思われてたのが心外だったのか小さくなって塞ぎ込んでしまった。


「この時期に魔王陛下を語る不届きものめ!いくら遠天殿の知り合いとは言え許せぬ!神妙にお縄につけい!」


うん、なんかそんな感じしてた。どうしようかな…


「遠天、竜王がいる部屋までどの位ある?」

「ここをまっすぐ行ったら玉座があるっす、大体はそこにいるっすよ。」


真っ直ぐって、それでも一キロメートル位か…しょうがない…


「桃花さん、文香さん、やっておしまいなさい。」

「え~、やっちゃうの~?」


動けなくするだけで良いからね!戦争したくないって意図酌んでくれてたよね!?


「冗談だよ~、輪っか作ってポイと」


門番たちがあっという間に水の縄に縛られ動けなくなる。

すげえな、耐久力どのくらいまであるんだろう。


「くっ、者共出会え出会え!敵襲だー!」


口は塞いで欲しかった…と後悔しても遅いな。

あっという間に通路に竜人達が群がる。500はいるんじゃないか?一気にこうも集まるなんて練度高いな。奥には大きめの竜も見える。


「まぁこれ位なら大丈夫かな。」

「ですね~。」


まじか、でも頼むから怪我とかしないでほしいのと、相手にもさせないでね。

二人の手から無数の輪っかが放出され次々と竜人達を囲っていく。

桃花のはなんだあれ、形容しがたい何かだな。考えるのは止めて人体に影響がない事を祈ろう。


「あっと言う間ですね…二人ともすごいです。遠天も出来るの?」

「私には無理っすよキリエ様…」


特に兵以外の障害もなく入り口前まで到着すると二頭のドラゴンが立塞がる。


「城塞都市の者か、我らの動きを嗅ぎつけたか。」

「中々の手練れなようだが、我らの前には無力、死に急ぐ事もあるまい、降伏せよ。」


死に急ぐつもりもないんだが…どうしたものかなぁ

色々考えていると桃花と文香が容赦なく輪を投げつける。


「甘いわ!」

「そんなもので我らの動きが封じられると思ったか!」


おお、輪っかが来る前にブレスでかき消した。

この二体の竜は竜人とは比べ物にならないっぽいな、ブラッドと比べてどのくらい強いのかな。

おや二体の竜がきょろきょろし出した、何か探し物かな、コンタクトでも落としたか?

ブラッドの方へと視線を定める


「…この力の波動は、ブラッド様!?」

「なんと、この幼き竜がなぜブラッド様と同じ波動を!」


おお、こっちの竜は話が通じそうだ、ほらブラッド、イジケてないで二人の前に出てみろ。


せいおうよ、久しいな、我だブラッドだ。」

「!?何故そのようなお姿に!まさか神代の介入があったのですか!?」

「遠天殿もいらっしゃるのか、そこの人間といい、遠天殿!盟約をお忘れか!」


まぁ介入といえば介入ですね、ハイ。なんか決め事があったのか?


「盟約を破るつもりはないっすよ。私の手に負えないってだけっす…」

「ほう、神代の一人が匙を投げ出すほどとは、是非お話を聞かせて貰いたい。」


建物から長身細身の青年が現れた。髪の毛長いな。


「すごく綺麗な男の人だね~。」

「そうね、まるで作られた感じがするほどね、これはこれで芸術的だわ。」


女子二人にはウケが良いらしい。これが美丈夫という奴か、羨ましい!


「竜王様、危険です。まだ奥へいて下さい!」

「安心しろ、彼等がその気ならここは一瞬で滅ぶ。」

「!?」

「なる程、ブラッド様が言う通り清々しいほど禍々しい感じだ。」


そう言いながら竜王は俺を見る。清々しいほど禍々しいってすごい表現だな。


「ブラッドといい揃いも揃って人のこと禍々しいって言いやがって、そんなにヤバいの俺?変なオーラ出てる?」


ただ黄色いオーラは嫌だな…臭そう。


「いえ、気に障られたなら謝罪申し上げる。しかし率直に申し上げるとそのような表現しか出来ないのです。」


まぁ気にしてないけどな。本当だからな!


「3日ぶり位か、部下にもう少し思慮深くなれと言っておけ。ついでにお前もだ。」

「ブラッド様、随分可愛くなられて…返す言葉もないです。」


竜王は軽口を叩きながらもブラッドの前に跪く。

ブラッドって本当に偉かったんだな!って思ったのは内緒だ。


「お帰りなさいませ、魔王陛下。たかが3日といえども一日千秋の気持ちでありました。言い付けを破り挙兵しようとしたことをどうぞお裁き下さい。」

「よい、争いに入る前に止められたのだ、それで良しとしよう。」


ちゃんと言いつけてあったのか。てか王様が一番えらいんじゃないの?


「我もそう言ってるんだがな、聞かぬのだ。」

「慕われてるんだな、それよりも、さっきその気になれば一瞬で滅ぶとか言っておいて戦争を仕掛けようとするなんて狂気の沙汰じゃ無いぞ、どういうつもりだ。」


俺は疑問をありのままぶつける。


「なっ!?人間風情が失礼だぞ!この方をどなたと思っている!」


青と呼ばれたドラゴンが激おこである。だがそんなの知らん、いや、竜王っていうのは分かるよ流石に、そう呼んでたし。


「青、下がれ。失礼をした、今更ながらだが自己紹介をさせてくれ、私の名はアルス=ナーガ、この国を統治するものだ。どうか名を聞かせて貰えないだろうか。」

「知也だ。性は結城だ」


青と呼ばれた竜と黄と呼ばれた竜が戸惑いだした。

俺に文句を言いたそうな感じでもあるが。

ブラッドが小声で教えてくれる。


「竜王が名乗るのは最上級の敬意の証、しかも先に名乗るのも相手を上の立場だと示すことだ。竜王よりも上はいないからな、これ以上ない信頼の証だ。竜王が敬意を示したことでお主に文句すら言う権利を失ったと言うことだ。」


それで戸惑ってたのか。敬意を示すって初対面なんだがな。


「それでは知也様、此度は我が失態の上、御足労までかけてしまい大変申し訳ございませんでした。魔王陛下より何があっても挙兵するなと言い使っておりましたが、この世界の脅威となれば例え種が滅んでも阻止せねばと考えておりました。しかしあなたは魔王陛下と共に、我が過ちを諫めに来られた。」


なんかくすぐったい言い方をするな。別に俺が、っていうよりブラッドが心配そうにしてたからな。


「世界の中立たる我が国が戦争を仕掛ければ、この世界は混沌と化すでしょう。私の早とちりで多くの命を悪戯に失わずに済んだ事の御恩は生涯をかけてお返ししていきます。これより竜谷、ドラグニアは知也様へと忠誠を誓います。」

「竜王様!待って下さい!人間に下るというのですか!?」

「青、竜王様のお言葉が聞けぬのか。」


竜王の言葉が終わると同時に間髪入れずに青と呼ばれた竜が食い下がる。黄と呼ばれる竜が諫めようとするが聞こうとしない。

てか俺も驚きだよ、いきなり忠誠を誓われても困る。


「主よ、お願いがあるのだがいいか」

「珍しいな、どうした?」


ブラッドが珍しく頭を下げる。いやな予感しかしないが、こいつが頭を下げるなんて余程なんだろうなぁ。


「あの青、ブルールと決闘をしてくれないか。」

「…えー…?」


竜の国は次回でおさらば!

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