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14・PM、開店そして回転をはやくする

サブタイトルが修正できないっ!

「知也ーお客さん捌き切れないよー!キリエー、カツ注文多いから少し多めに揚げといてー」


多次元管理者の頂点が泣き言言ってんじゃない。

こっちも意外と切羽詰まってるんだ、どうしてこうなった。


「知也様 カツ追加で20ほどあげておいて貰えますか」

「ラジャー、10分後で良いな。」

「ありがとうございます。料理長はこの辺の果物を小さく加工をお願いします。」

「かしこまりました、キリエさん」


キリエが厨房のリーダーとなってホールと連携しながら色々指示を出していく。最初こそ戸惑いはあったがすぐに慣れたのか、驚くほど的確に指示を出していく。このまま行けばみんなの負担も減るだろう。


開店早々材料不足で売り切れ閉店の予定が何故こんなことになっているかというと、開店1時間してからキリエと料理長が大量の食材を持って戻ってきた。

どうやら仕入れ業者達が結託して駆け回って材料を集めたらしい、回りのお店に影響出てなければいいが…揉め事はヤダヨー

それでも食材の無くなるペースは早い早い。そして補充も早い早い。休む暇ねぇよ!ホールが回らないので文香に応援に出て貰う。


「未来のお得意様です。値段もサービスしますよ!あとこれはうちからの開店祝いです、よろしければどうぞ。」


愛想のいい業者さんが追加で持ってきた、助かったぜ、これで後二時間は持つな。納品物とは別に開店祝いとして100キロもある牛肉と大量の果物が厨房に運ばれる。


「良いのかこんなに、赤字じゃないのか?」

「キリエさんに未来を見ました、まだまだ店舗を増やすでしょう?これはうちを使っていただくための先行投資ですよ。」


賄賂ってこの国では罪にならないのかな、まぁ大丈夫か。しかし食材も質より量って訳ではなく、色艶共に文句なしの逸品だ。


「扱ってる品にも自信がありますよ、うちは」


食材を凝視してて気になったのか業者が自信満々に言ってくる。


「すまない、疑ってるわけじゃ無いんだ、あまりにもみんな良い色してたからな、思わず見惚れていたんだよ。それにこの触り心地、間違いなく良いものだ。」

「…今後とも色々ご贔屓にお願いします。あなたたちとなら良い商売が出来そうだ。」

「ああ、此方こそ是非ともお願いしたい。」

「交渉にキリエさん、品質にあなたと、これは手を抜けませんね。」

「おいおい、いきなり手を抜く宣言か?勘弁してくれ。」


業者と談笑しているとキリエが怒った顔でやってくる。


「知也様!人手が足りないんですよ!早く作業に戻って下さい。」

「おっと、それではすまないな、作業に戻るよ。検品と納品はあっちの倉庫にいる金光へ頼んでくれ。」

「ははは、忙しそうでなりよりですよ、それではまたお会いしましょう。」


業者との会話を切り上げ作業に戻る。しかしどうにかならないかこの忙しさは。何か休む口実が欲しくなるな。まぁみんな頑張ってるからな、俺も頑張らないと。


「知也ー領主様がお見えだよー。上に通すよー。」


こんな時に来客だと!じゃあしょうがないよね?とキリエを見ると仕方がないですねと頷いてくれる。

決意新たにしたのに、こんなにも早く休む口実が出来てしまった。


「知也様、早く戻ってきて下さいね?」


笑顔だけど何か冷たい。早く戻らないと本気で怒られそうだ。

慌てて二階の来客室へ行くと領主がソファーに座っていた。


「忙しいときにすみません、まさかここまで盛況してるとは。」

「いや大丈夫だ、お陰で息抜きが出来る。俺もここまで客が来てくれるとは思っても見なかったよ。」


領主と談笑していると妖天とエレナが昼食セットを四人分持ってくる。どうやら二人も休憩に入るらしい。そして俺の分が用意されているって事は領主の対応も休憩に入るらしい。流石キリエ抜け目ない。


「お待たせしました領主様。これがうちのお店のおすすめセットですよ」

「ほぅ、これが制服ですか、妖天殿すごくお綺麗だ。」

「まぁ領主様ったら、私なんかより料理の方がオススメですよ。」


妖天の華麗なスルーが炸裂する。上手い返し方だなと感心する。

しかし、真っ先に制服に目が行くとは、領主侮れないな。


「これは知也さんの趣味ですか?」

「ああ、俺の趣味だ。」

「ではうちの制服のデザイナーをお願いできませんか!」


突然立ち上がり手を取ってくる、そして熱い眼差しだ。これが本気の男か!そして俺はこの熱意に答えてやりたくなった。


「では、じゃねーですよこのバカ領主、さっさと食べて帰ってください、知也さんに迷惑かけるんじゃありません。」


スパーンとエレナが領主の頭を叩く、その人上司だよね?


「ああ、すまないつい、て言うか領主の頭を気軽に叩くな!外では止めろって言ってるだろう!」

「ああ?領主をそこの店長と交代させてもいいんですよ?」

「まじすいませんでした。あ、でも知也さんなら安心か。」


突っ込みどころ多いよこの二人!ちなみに俺は店長じゃ無いからね、店長はエリオーネだからね!

後、領主は絶対にやらないからな!て言うかさっさと食え。


「やはり美味しい…そしてこの豊富なメニュー…領主邸に支店を導入しませんか?出来合いの売店形式で良いので。」

「領主様、その案は賛成です。是非ともそうしましょう。」


流石に気が早すぎるな、落ち着いてきたら考えよう。て言うか料理長が泣くぞ。


「料理長もこちらのレシピを見てメキメキ腕を上げてるはずだ、そろそろそっちの食堂も充実するだろう?」

「それもそうですね、ただ妖天殿がその格好で来てくれるなら、別口で確保したいです。エレナも今後はその格好で仕事しようか。」


欲望に忠実な領主で何よりだ。まぁこっちも宣伝になるから行かないってのは無いんだけどな。だが流石に初日のこの惨状はいつ落ち着くのか。


「さて、ここから少しまじめな話ですが。」


急に領主がキリッとなってこちらへ向く。


「流石にこの盛況は不味い、周りの商店への影響も必須だろう。そこは商人として周りに奮起して欲しいところですが、正直次元が違いすぎてとても太刀打ちが出来ないでしょう。料理だけならまだしも、接客の品質も高い。しかもこの盛況を難なくこなせる要領、これを超えるとなるとなかなか難しいでしょうね。」


随分と評価が高いな、まだ初日だぞ?だが危機感を持つのも分かる。このまま続けば周辺の飲食を生業としてる店は潰れるだろう。

宣伝せずにじわじわとっと言うのもそういう傾向を緩やかに見る為だったのだが、いきなりの大盛況と少し戸惑っている。そもそも今日オープンなんて領主とエレナにしか言ってない。


「…救世の勇者がお店開くらしいよ、しかも超旨いらしい。って口コミが広がっていったみたいですね。」


エレナが横を向きながら、さながら他人事のように言う。しかも挙動が怪しい。


「犯人はお前か」

「犯人だなんて酷いです!大盛況なんて良い事じゃないですか!」


まぁその通りだ、口止めも特にしてないしな。救世の勇者っていうのが超気になるけど。

となると、一過性の繁盛で済むかなと思うが。


「いや、この値段でこの品質だ。良い意味でも悪い意味でも手頃すぎる価格です、当分は続くでしょう。」

「そうか、それで何か案があるんだろう?」

「いや、どちらかと言うとお願いですね。都合のいい話かも知れないですが、知也さんをこの城塞都市運用のコンサルとして招き入れたいのです。まずは市全体の食の改善を視野に入れた計画に参画して欲しい。」


いきなり大きな話に出たな。料理教室みたいのを開けばいいだけだろう。


「作り方もそうですが、食材の効能を明らかにしたいのです。例えば壊血病にはオレンジ系のフルーツがいいなどと言いますよね。そのオレンジに含まれる何かが、どういうものかを研究していく必要があると考えているのです。もちろん周辺への対策として各店舗によるレベルアップも必要ですので、運営手法の勉強会など教鞭奮って頂ければ。どうかその中心となって頂けませんか。」


なるほど、薬学と化学の研究をするつもりか。この世界は魔法が使えるからその辺の進化があまり進んでいないが、考える人は考えるのか。だがとっかかりとしての知識が無いからな。それを解明するためには並大抵の努力と投資がないとキツいだろうな。


「なるほど、興味深いがすまんな、その辺は役に立てそうにない、近いうちに旅立つ予定だからな。だが周辺住民を犠牲にしてまでこの店を残すつもりはないからな。まずは、新しい食文化の促進を合わせてやるよ。レシピも特に秘匿するつもりはないから必要であれば公開するし、まぁ最悪うちの傘下に加わって貰うなどして手助けするさ。」

「そうですか…わかりました、それならしょうがないですね。既に市民への気遣いまで考慮されているとは痛み入りますよ。立ち行かなくなる前に早めに相談するよう近隣に伝えておきます。」

「ああ、何かあれば相談してくれ、店の件や業者の件と世話になってるからな、そこは遠慮なく言ってくれ。『ここ』で解決できる範囲なら計画に参画しなくてもやるさ。」

「ありがとうございます。お昼ごちそうさまでした。このプリンだけでも意地でも来る価値があるのに更には美味しい料理までと、ここにいると幸せ過ぎて帰りたくなくなりますよ。」


いや、俺がキリエから怒られるからそろそろ帰ってもらわないと困るんだが。


「妖天、領主様のお帰りだ、例のあれを持ってきてくれ。」


領主と料理長へ冷蔵庫のプレゼントだ、中には既にプリン100個位を入れてある。

馬車へ詰め込む前に冷蔵庫の使い方を領主へ説明する。開けたら冷気逃げるから開け閉めは迅速にしてもらうだけなんだけどね!

桃花によって超高効率化されたその箱は見た目ほど重くない。熱交換ではないから、暖気は外に出ないという無茶苦茶な代物だ。そして動力は不明っと、トドメにコードレスだから持ち運びも便利だ。


「まだ試作機だからな、性能は保証するけど、耐久度はわからん。何かあったら言ってくれ」

「これは…歴史に名を残す程の物ですよ。いいのですか?」

「うちは既に屋敷と店舗にと設置済みだからな、全然構わないぞ。プリン食べ終わって中身が空いたら食材でも入れてくれ、賞味期限が伸びるぞ。」

「ここまでコンパクトに仕上がるとは…魔石を使った冷やす箱はあるにはあるのですが、箱もものすごく大きく設計しないといけないですし、更に冷えにムラが多く、とてもじゃないですが実用的ではないです。しかしこれはコンパクトながら冷えも均一となっている。是非とも分解して解析してみたい。」

「それは止めておいた方がいい、こちらでも作った本人じゃないと怖くて分解できんのだ。作った本人曰く下手に分解すると周辺何キロかは更地になるってさ」

「それは安全なのでしょうか…」

「動力に安全装置センサーを幾重にも付けてるそうだから、分解されるとその辺が保証できないらしい。機能としてその安全装置一個でも不具合が起きたり強力な衝撃とか与えられると動力だけ異空間へ放り込まれる仕組みらしいから、まぁ普通に使う分には大丈夫だろ。」

「なる程、取扱には厳重に注意させます。便利を求めるということは、反面にこのようなリスクを孕むのですね。勉強になります。」


冷蔵庫に核爆弾搭載してるイメージだからな、一歩間違えば戦略兵器だ。世界最強の武器が冷蔵庫ってシュールだし、しかも機能の割にリスクが半端なく高い。


「それでは帰ります。エレナ、迷惑かけるなよ」

「頑張ってます!迷惑かけてません…よね?」

「大丈夫ですよエレナさん、全然助かってます。」


妖天が太鼓判を押す。余裕ができたらホールや倉庫の動きも見ておかないとな。


「街の守護神から推して頂けるなら安心ですよ。それではお邪魔しました。」

「ああ、そっちも仕事頑張ってくれ。」


領主を見送り俺たちは仕事に戻る。


「お帰りなさいませ知也様。現状ですが客足は落ち着きましたが店前のウェイティングが4~10組とキープしてます。お客様も理解していただいてるのか食べた後に早めにお店を立ってくれてますので回転は当初の2倍早いです。」


早速キリエから現状の報告を受ける。

よくホールスタッフ回せているな。人数多めに配置しているとはいえ凄いぜ。


「厨房はリュン様と桃花様が的確にニーズを押さえてくれているので、多めに作って置いてもバランスよく捌けます。あとたまに外れた商品でもホールにて勧めてくれて作り置きがいつまでも残ると言うことがありません。食材の量ですが、売り切れ商品が3つ程、売れ筋のストック切れはあと二時間の想定です。」


キリエが優秀すぎて辛い。ここまで分析できてかつ回せてるなら文句なしだ。俺いらないじゃん。


「管理者の総意は二時間後に売り切れでお店を閉める方向でいってます。しかし今のうちに卸業者へ追加注文をしておけば閉店時間までは持つと思われますがいかが致しますか?」


なる程、判断に迷うな。でも管理者の総意纏まってるなら俺の意見聞いて左右されてもなぁ。


「閉店で問題ない、だがちゃんと客へのアナウンスと表への表示は忘れるなよ?30分前にはオーダーはストップだ。」

「わかりました。桃花様に伝えてきます。」


よし、ラストスパートだ。ここを乗り切れば大丈夫だな。


「完売です!お疲れさまでした!」

「疲れたのじゃー…工場のラインフル稼働でもここまではなかったのじゃよ」

「ふう役所仕事より疲れました…もしかしてこれが毎日!?」


まぁ工場は機械による生産スピードに限りがあるからな。

しかし何人くらい来てたんだろう。数えてるかな。

毎日がこれだったらマジでやばいな。仕入れ業者も持たないだろうなぁ…


「ほら、片付けとホール組の為に賄いを作るぞ。最後の力だ。」

「ら…ラジャーです。」


まだ客自体はホールにいるからな。全部いなくなってこその閉店だ。それまでに閉店するための準備をする。


「知也様、私は業者さんとの打ち合わせに行ってきます。材料の見直しを計りたいです。」

「わかった、キリエは竜の国に行きたいか?」

「行きたいです!…でも遅くなるのが嫌でしたら置いていって下さい…」

「大丈夫だ、まだ余裕はある。帰ってこなかったら行く前に商工会へ呼びに行くよ」

「ありがとうございます!」


働き者だなぁ、ワーカーホリックにならないといいんだけど…

あとで甘やかせてあげよう。俺はそう誓いキリエのためにデザートの新作を作る。


「知也ちゃん、お客様全員いなくなったわよ。」


ホールが空いたようだ、それじゃあみんなを労うために賄いを持ってホールへ行きますか。


パスタの中ではジェノベーゼが一番好きです。

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