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13・PM、さり気なく仕事を押し付ける

「銭湯みたいな形で風呂が存在するとは思わなかったな」

「そうですねぇ、これだけ大きい館ですからねぇ、使用人も住み込みが殆どでしょう。」

「人間はこのような形で湯浴みするのか、気持ちいいのぅ。」


屋敷のお風呂は男女共用なので、最初に男次に女と順番が決まった。

俺と正樹とブラッドはゆっくりとお湯に浸かる。

ブラッドは初めての体験なのか頻りに感心したようにお湯に浸かっている。その姿はまるでカピパラのようだ。


「世界には温泉という秘境もあるもんだぞブラッド。竜の国ではお湯に浸かるというのがないのか」

「我らは基本的に魔法にて清潔に保たれているのでな、体を綺麗にするとかしなくていいのだ。」


なんとも羨ましい話だ。だけどそれはそれでこの風情を楽しむことも必要なくなるのは寂しいか。


「この心地よさは、体を綺麗にするしないに限らずだな。また入りたいぞ。」

「こうやって足を伸ばして入れる浴場はなかなか無いものですよ。しかし世界には色々な浴槽があってそれを探すのも趣があっていいかもしれないですね。」

「なんと正樹殿、それは真か、旅が楽しみになって来たぞ。」


温泉を楽しみにする元巨大竜の魔王か…世の中どうなるかわかんねぇなコレ

まぁ暴れまわるよりははるかに健全的だろうきっと。


「超他人事みたいに考えてますけど、そもそもの原因を作ったのは先輩ですからね。それよりもブラッド、体調は大丈夫ですか?」

「大丈夫だ正樹殿、神より上位の者が施した術だ、そうそう問題はないだろう。それに後で主に自由に大きくなれるよう調整もしてもらったからな。」

「え?なんですそれ、初耳なんですが」


正樹がジト目でこっちを見てくる。


「安心しろ、ブラッドが今暴れても俺たちで抑えられる。それに無益な戦いをするような奴じゃないよブラッドは。」

「無益有益にかかわらず、主達とはもう戦いたくないぞ。」

「はぁ、まぁいいですけどねぇ。」


さて本格的に体を洗うか。石鹸を泡立ててみるとフローラルな香りが広がった。

こっちの世界の洗剤はさすがに自然派だな、香りがすごいぜ。

すごく良い香りなんだが華やかすぎる。


「ふむ、湯船につかるだけでなくそうやって体も洗うのか、しかし中々すごい香りだな」

「さすがにこちらの世界では化学も余り進んでなさそうですねぇ加減が無い。まぁ寝る頃には少しは落ち着くでしょう。」


うーん、料理する身としてはあまり香りが強いの嫌だな、華やかな香りのする喫茶店もいいけど、落ち着かないしちょっとキツイな。

しょうがない、少しだけ成分を調整して果物系の香りにしてしまおう。匂いも少し抑え目だ。


「正樹、ブラッド、こっちのボトルを試してくれないか。花の香りよりは果物の香りの方がいいだろう?」

「林檎のいい香りだな。果物はベトベトのイメージがあるが、大丈夫か?大丈夫ならこっちがいいぞ。」

「安心しろ、こっちの国だと普通に売ってるし、ベトつきもしないぞ。」

「まぁフローラル過ぎますから、僕もこちらの方がいいですね。プラスチックボトルってことは向こうから持って来たんですか?」

「いや、今作った。さすがに喫茶店でフローラル過ぎる香りをまき散らされてると気になるからな。」

「確かに、こっちのほうがデザート販売促進間違いなしですね。てかこれもこのまま売れるんじゃないですか」


正樹とブラッドのお墨付きを得たところで多めに作成する。あとで女性陣にも感想を聞いてみよう。

ふむ…どうせだったら一式揃えてみるか。

シャンプー、コンディショナー、トリートメント、洗顔、ヘアマスク、ボディソープ、ボディローションっと

こんなもんかな?リクエストがあればまた作るか。


「なんだかんだで先輩の力もチート過ぎますよね。」

「そんなことないだろ、お前らの方が遥かに強いじゃないか」

「争いが無くなれば無用の長物ですよ。先輩の力の方が絶対いいですって。」


異世界ワクワク探検だったら強さのほうがいいと思うが…まぁ現代っ子だし仕方ないよね。

さて、男三人でドキドキワクワクのお風呂タイムの終了だ。


「さて、温まったところで出るか」

「そうですね、だいぶいいお湯でした。ちなみに掃除当番とかあるんですかね。広すぎて億劫ですよ」

「すごい勢いで水を弾いておるぞ、ちょっとやそっとでは水を掛けるだけで汚れも一掃されそうだから大丈夫ではないか。」


ブラッドの言う通り異常な程に弾いてる。桃花のコーティングかなこれは。

水だけで汚れがあら不思議~みたいな感じでがっちり全体がコーティングされてそうだな、こっそり車のコーティングも頼もうかしら。


「おや、これは浴衣ですね、なかなか凝ってますね…これも桃花さんですかね」

「多分そうだろうな、仕事着もさくっと作ったって言ってたし。」


脱衣所に行くとタオルと浴衣が用意してあった。ブラッド用も用意されてあるが、結構細かいつくりしてるな。

あと鏡とドライヤーと扇風機も…完全に銭湯だコレ


「先輩…ドライヤーに電源コードついてないですが…」


電源コードがついてないがしっかり温風が出ている。まじでどういう原理なんだこれ。まぁ使うの身内だけだからいいか…

着替えてから風呂場から先の広間に行くと既に女性陣が揃っていた。俺たちが上がるのを待っていたようだ。


「すまん、待たせてしまったか。」

「雑談楽しいから全然大丈夫よ~。うん~良い香り~。それに浴衣かぁ、旅館って感じでいいね~。」


近場にいた文香が答えてくれる。少し寄っただけで香るのか、匂い成分キツすぎたかな。


「匂い自体はキツくないから大丈夫だよ~、お風呂どうだった~?」

「すごい癒されたぞ、さすが大浴場だな。そっちの人数全員入っても広々できるんじゃないかってくらいだから男三人で使うのは忍びないな。」

「ほほ~、それは期待だね~。私もまだ見てないんだよ~。桃花さんは下準備があって先に入ったけど~。」

「期待していいと思うぞ。あと洗うものとかこっちで準備してたのもあるから好きなの使ってくれ。あとキリエと妖天に使い方を説明してやってくれ。」

「了解だよ~。しかしまたどうして準備を~?一通り揃ってるって聞いてたけど~。」

「ちょっと香りが華やか過ぎてな、喫茶の敷居を上げてしまうかと考えただけだ。まぁ好みもあるだろうから強制はしない。」

「わかった~、入る前に皆に説明するよ~。」


文香と話していると後ろから桃花の声が聞こえる。


「知也さんおかえりなさいー。」


振り向いたら小さな物体が俺の胸に勢い良く飛び込んでくる。

そういや小さかったの忘れてた、思わず驚いてしまった。


「ただいま桃花、お陰ですごく良い風呂だったよ。」

「クンクン、あれ?この匂いのなんてあったっけな?良い匂いね。」

「ああ、実は…」


文香に説明したように桃花にも同じ様に説明する。


「その発想は忘れてた、そういえばそうだね、作ればよかったんだよねー。すでに用意してあったから良いかと思っちゃった。」

「用意してあったのも良い匂いだっぞ。休みの日とかに使いたいな。」

「捨てるのも勿体ないしそうしよう!でも本当に良い匂いね。」


あの、桃花さん、そろそろ離れてくれませんかねぇ、周りの目があってですね。


「リア充め…爆ぜろ」

「この国は重婚が…」

「私も小さくなろうかしら」


なんか物騒な言葉が聞こえる。そんなときは話を切り替えるに限る。


「さてこんな所で長話するのもなんだ風呂入れ」

「知也…父親みたいだね!」


リュンが囃し立てる。うるさいな、言ってて自分でもそう思って自己嫌悪中だよ!


「お父様ってこんな感じなのですね、知也様のことを父様パパと呼んでも良いですか?」

「ああ、問題な…いや、ダメだろ!いいからみんなさっさと入れ!」


危うくキリエの柔らかい口調に呑まれるところだった。

てか二重音声で変な声聞こえたんだけど気のせいだよね。


女性陣がお風呂場へ一斉に向かっていく。あれ?そういや金光がいなかったな、どこに行ったんだ、せっかくみんな揃ってるのに…見つけたら早く入るよう促すか。


「さて俺はこの後に厨房で明日の下準備をする。お前らはもう寝るんだろ?」

「そうですね、さすがに今日は歩き回ったので疲れましたよ。いいお湯で癒されて心地よい内に寝ます。」

「うむ、我も初めてのんびりした心地よい気分だ、今ならすぐ寝れそうだ。」


そういや竜って恒温なのかな変温なのかな…まぁいいか。俺たちはその場で解散し、俺は厨房へ向かう。


厨房に入ると金光と誰か4人組が居た、その表情は何か少し堅い。てか残り4人誰?


「来たか、知也…待っておったぞ。」

「そちら様はお前のお客さんか?」

「ああ、お主の客でもあるのじゃ、右から趙天ちょうてん張天はんてん孫天そんてん遠天えんてんじゃ。」


金光が軽く紹介してくれる。どうやら十天君のメンバーらしい、王天がいないな…このタイミングで何故集まったんだ?


「まぁいっか、いいか?俺への自己紹介は後だ。文句は聞かない、まずは主と交流を深めてこい。」


俺は転送のイメージをして金光達に手を向ける。いけるかな?うん、大丈夫そうだ。

とりあえず金光には主へ先に報告させる癖付けさせなきゃ


「ま、まつのじゃ知也!すこ」


言い終わる前に魔法陣が五人を包み込み姿を消し去ると、その瞬間どこかでドボーンと水しぶきが上がったような音がした。

金光がなんか言い掛けてたな、まぁいいか。それよりも明日の準備だ。


そしてしばらく準備してるとゾロゾロと厨房に人が集まってきた。


「知也ー!人を問答無用で飛ばすとは何事じゃー!」


その中の一人は激おこである。まぁ仕方がないよね。なんだかんだ言ってしっかりと温まったみたいだがな。


「悪かったよ、ほら、全員に冷たいゼリーを用意しておいたぞ、湯上がりに丁度言いだろ、冷えているうちに食え。」

「そんな事いうとる場合じゃないんじゃよ!」

「やったー!いただきまーす。」


リュンが真っ先に食いついた。曲がりなりもこの中の頂点であるリュンが率先してゼリーを食べ始めたから金光は文句も言えなくなり諦めてゼリーに手を伸ばし口へ運ぶ。どうやら本音は食べたかったらしい。

俺はこっそり妖天に正樹とブラッドをここに連れてくるよう頼む。妖天は小さく敬礼するとひっそりと厨房から出ていく。


全員からリンゴの香りがする。みんな使ってくれたんだな。

まるでジューサーでリンゴをおろしている時みたいだ、飲みたくなってきたな…


「知也様、ごちそうさまです!美味しかったです。」

「おう、美味しかったなら何よりだ。また作ってやるからな。」

「はい…」


気付いたら俺はキリエの頭を撫でていた。キリエのテンションが下がっちゃったな、まぁ流石に洗ったばかりなのに嫌だったよな。


「すまん、髪洗ったばかりなのに嫌だったよな。」

「そんなことありません!好きなように撫でてください!」

「お、おう。また今度な。」


キリエの勢いに押されてしまった。顔が赤くなっているから照れているだけだったか。流石に大勢の前では恥ずかしかったか。女の子への気遣いって難しいな。


「知也ちゃん、そろそろ金光ちゃんに構ってあげないと拗ねてるわよ。」

「拗ねてないのじゃ!もういいのじゃ!」

「よくは無いだろう、お客さん待たせてるぞ」

「誰のせいなのじゃー!」


本当に金光は元気がいいなぁ。さて茶番はおしまいにして自己紹介と行きますか。


「先輩呼びましたかー」

「主よ、来たぞ。」

「知也様、お二人をお連れしました。」

「ありがとな妖天、正樹とブラッドも寝るところにすまん。一応全員で聞いて欲しいと思ってな。」


正樹とブラッドが来たし、これで全員だ。俺の考えるメンバーは1人足りないけど、どこで何をしてるのやら。そろそろ創世の力の転送に失敗したの気付いてる筈なんだがなぁ。


「待たせてすまなかったな、先ずは全員と顔見知りになってほしくてな。」


「ふふふ、聞いていた以上に面白い方ですね、金光様からではなく、自分から自己紹介すべきでした。私の名前は趙天ちょうてん、エルダート王国にて諜報活動をしております。お立ち寄りの際はぜひお声掛けください。」


張天はんてんだよ、すごくいいお湯をありがとう。用事を付けたら帰るつもりだったが、飛ばしてくれてよかったよ。でも次回からは自らの足で入らせてくれ。私は遥か西方、獣人の国イジュラムにて諜報活動をしている。」


「俺の名前は孫天そんてん、北方の秘境国レインブルムで諜報活動をしている。このゼリーの作り方をあとで教えてくれ。」


「私の名前は遠天えんてんっす、竜谷のドラグニアで諜報活動をしているっす。お手柔らかに頼むっす。飛ばされたときは死んだと思ったっす。でもみんなと裸の付き合いができたのは嬉しかったっす。」


俺たちは一通りの自己紹介を済ませる。さて何か要件があったんだよな。


「まぁ私たちが呼ばれたのは金光様に明日の開店のお手伝いをしろって命令されたからっすけどね。ついでになんですけど、一大事をお伝えしに来たっス。今ドラグニアでは大掛かりな戦争の準備をしてるっす。狙いは噂ではここ、シルバスタっす」

「なんだと、それは竜王も知っているのか。」

「知ってるも何も竜王の先導のもとっすよ。」


ブラッドが食いついた。まぁ自分の国だもんな、しかし、確かに一大事だな。

まぁ理由はブラッドの奪還、かたき討ちだと思うがどうするかな。


「わかった、まぁ準備に時間かかるだろう、明日営業時間終了後に行ってみるか。」

「了解っす。」

「さぁ、新しい仲間の自己紹介も終わったことだし寝るか。妖天、四人を部屋に案内してやってくれ。」

「わかりました、知也様、さぁみんな、こちらですよ。」


みんなぞろぞろと部屋に戻っていく。俺も早く準備して寝なきゃなぁ。


「もうさすがに邪魔はされんだろう、いい加減準備して寝るぞ。」


俺はある牽制のために声を上げて宣言する。


「知也様、明日の準備でしたら私もお手伝いさせてください。」


キリエは一貫して良い子だなぁ。娘がいたらこんな感じなのかな。


「私も手伝うのじゃ、遅くなってしまった原因は私にもあるでの。」


怒りも収まったようで何よりだ。よし、さっさとやって明日を迎えよう。

だけどその前にちゃんと話は聞いてあげないとな。


「金光、本当は王天の事で聞きたいことがあったんじゃないのか。」

「聞く気が無いかと思ってたのじゃが…なぜあの場では駄目だったのじゃ?」

「リュンが聞き耳立ててたからな。今は大丈夫だ、結界で覆ってある。何かしら接触すると早く寝ろっていう言葉が頭の中に100回響く仕掛けしてるからな。」

「そ、そうなのか…リュン様がなぜ聞き耳を立ててたのじゃ…」

「王天は間違いなくエルマの人間と関わりを持っている。その情報を少しでもほしいんだろう」

「全然気づかなんだ…エルマといつの間に関わりがあったのか…」


まぁリュンとエリオーネも気づかなかったから仕方がない。


「王天は今どこにいるのでしょうか」

「そこはすまん、無事だという事以外わからないな。」

「そうですか、でも無事なんですね。」

「ああ、今のところは大丈夫そうだ。」


キリエがホっと胸をなで下ろす。やはり育ての親みたいなものだからな、心配なんだろう。


「なぜリュン様に聞かれちゃまずいのじゃ?この程度だったら問題ないだろう。」

「いや、ここからが本題だが、王天を救う為にはどうすれば良いか考えてるんだが…」

「救う?捕らわれているのですか!?」

「ああ、ある意味囚われている」

「金光、キリエ、大切なものを助けるために世界の運命を揺るがすモノがバックについてるやつを敵に回したいか?」

「!?」

「王天を救うという事は…エルマを敵に回す…そういう事じゃな。」

「あくまでも最悪の場合だ。だが想定はしていなければいけない。リュンは大丈夫だろうが、エルマの動きが読めないのが怖いな。」


一番怖いのは現段階でエルマに実力行使に出られることだ、最悪過去改変されてしまうからな。

された場合とか状況がわかるのかな…意識なく変わってるのが怖いぜ…


「ということで、竜の国の問題が片付いたら解決に少し乗り出そうと思う。その時は金光とキリエに死ぬほど働いてもらうからな。」

「まぁ…既に我が主と共にお主に全てを預けておる。この命好きに使うがよい。」

「わたしも!知也様と王天のためなら頑張ります!」


二人とも健気だな…死なせはしないから絶対に。命までは懸けて欲しくないって言おうと思ったけど、二人の覚悟に水を差すのもどうかと思ってやめた。俺が守ればいいだけの話だ。


「よし、準備も終わったことだし。この話は今のところ6人の秘密だぞ。」

「はい!秘密です!え?6人?」

「正樹殿、文香殿、桃花殿じゃな。」

「その通りだ、あいつ等に隠し事すると俺が死ぬ。」


特に正樹と文香には緊急時には動いてもらわないといけないからな、事情はある密に話しておく必要がある。

さて下準備も終わったし、寝るか。


「よし、下準備完了だ、手伝ってくれたお陰で早く終わったぜ、ありがとうな。」

「こちらこそ色々為になりました!明日の開店が待ち遠しいです!」

「そうじゃな、飲食店は私も初めてじゃから緊張するのじゃ。」

「まぁ明日は宣伝も何もしてない突然の開店だからそんなにこないと思うぞ。まぁ気楽に行くと良いさ、さぁ明日に備えて寝るか。」


二人と別れて俺も自室へ戻り布団へ入る。桃花はすでに寝ているようだ、俺は指先で桃花の頭を撫でてから目を閉じる。


特に夢を見ることもなく目が覚める。まだ少し空が薄暗い、ちょっと早く起きすぎたかな。


「おはよう知也さん。早いわね。」

「おはよう。桃花こそ早いじゃないか。」

「柄にもなく今日の開店に緊張してるかもね、でも楽しみだわ。」


厨房へ行くとそこにはウエイトレス姿の趙天がいた。


「おはようございます知也様、桃花様。」

「おはよう趙天、様なんて畏まらなくてもいいぞ?」

「おはよう趙天さん、私も様なんて言われるとくすぐったいわ」

「ふふ、善処いたしますわ。 僭越ながら朝食を用意いたしましたがいかが致しますか?」


二人が席に着くと趙天はカップに紅茶を注ぐ。一連の流れに無駄がない。俺たちは朝食を頼むことにする。


「かしこまりましたわ、すぐにお持ちいたします。」


趙天は丁寧にお辞儀をすると厨房へ向かう。


「すごいな、本当のメイドみたいだった」

「これがメイド…私の紅茶に角砂糖2つ、知也さんの紅茶はストレート、こっちに来てから紅茶飲んでないのに何故好みを知ってるのかな。」

「これがメイド力という奴か恐るべし。」


俺たちが仕切りにに感心してると朝食が運ばれてきた。

トーストにベーコン、ほうれん草、目玉焼き、ポテトサラダが綺麗に盛り付けされて出てきた。


「なるほど優雅だな、趙天の所作のおかげでなんか気分がものすごく落ち着くよ。」

「ふふ、お褒め頂いてるとってしまいますよ?しかし料理はやはり知也様達の世界には全然及びませんね。」

「料理は作り方を知れば良いだけだからな。それでもこの料理も全然いけるぞ」

「そうね、これはメイド喫茶が早くも実現しそうね。」


昼まで文香と付けて落ち着いたら俺とキリエにつけるか。優秀な教育係ゲットだぜ。

それじゃあそろそろ店へ行ってみるかな。俺は全員を広場に集め馬車へと集める。


「みんな揃ったかー?いくぞー」


馬車で店舗へ行く道中になんか行列が出来ている、列ばないと手に入らないものでも発売するのかな?


「正樹、このあたりに何か列ぶようなモノでもあるのか?」

「いえ…このあたりには特に無いはずですが…本日目玉のものなんてうちのデザートくらいですよ。」

「うちの店あたりで列が途切れてないか?」

「ああ、うちですねぇ。伏せていた訳ではないので有り得ないことでは無いですが…ここまで広がるのは…」


まさかの行列に俺達は慌てる。馬車を裏道に寄せて裏口から入る。


「どうする、全員提供するには材料がやばいな。」

「さすがに初日からこれは予想外ですね。今ある分を売ってしまって本日は閉店にしたほうがよくないですか?」

「最終的にはそうなるな、今後のためには枠は少し広げたい。キリエ、材料調達をして貰って良いか?2人誰か連れて行け。」

「わかりました知也様。」


キリエは張天と遠天を連れて外へでる。


「桃花と妖天は客の整理を頼む、多分追加食材込みで500前後は用意できるが、それ以上はわからん、種類ごとに制限があるからその際は別の、もしくは次回へ等促して欲しい。」

「分かったわ知也さん。次回割引券作るわよ。妖天さんフォローお願いね。」

「わかりました奥様、お任せください!」


あれ、いつの間にか妖天が桃花を奥様と呼んでいる。まぁ合ってるから良いか。


「ホールスタッフはカウンターに置いてある量を見て売れ筋を出してくれ。優先的に作るから頼むぞ。さっきも言ったが種類ごとに制限がある、喧嘩にならないように優先順位はしっかりとな。」


「「了解しました。」」


さて準備は万全とは言えなかったけど、喫茶店「アース」開店だ。

ちなみに店舗名は名称決定権をキリエに押し付けたらこうなった。


書きためて書きためて纏まりがつかなくなってくるという大惨事

お店を開くとはいったい…

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