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鬼殺し  作者: 八尺瓊
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プロローグ

 真っ白な世界。

 その中に横たわるように浮かぶ1人の少女がいた。

 彼女の名前は望月 ののか 17歳。

 先ほど通学途中朝のラッシュでホーム際にいた彼女は後ろの人たちに押されてしまい、あ、っと思った瞬間には電車にはねられ死亡した。

 まだ、恋も知らず、世の中に未練が残る形で死んでしまい、その記憶を白い世界で考えていた。

 声が聞こえたような気がした。

 

 ---ごめんなさいね。---

 

 真っ白すぎて周りがよく見えない状況の中で、必死に声のするほうを見た。

 顔を向けるとそこには女性が立っていた。

 一瞬一緒に落ちた女性の可能性を考えたが、どうも様子が違う。

 白い布の服を着た優しい顔をした20歳前半ぐらいの女性。

 神々しいまでの雰囲気を持ち、直感的に女神様だとわかった。

 声を出そうにも口が動かず、一番先に頭に浮かんだ言葉を心に思いうかべる。

 

 (なぜ、私は死ななければならなかったのでしょうか?)

 

 その心の声を拾ったように女神様は顔を横に振る。

 

 「その事については本当にごめんなさい。私の手違いによりあなたを死なせてしまったの」

 (手違い?)

 「そう本来ならあなたはまだ死ぬ予定ではなかったの」

 

 あらゆる感情の波が押し寄せて、ののかの目から大粒の涙が零れ落ちる。

 

 (私は生き返ることはできないのですか?)

 「あなたが17年間いた世界にはもう、体がないの。生き返ることはできないわ」

 ののかは言葉が出なかった。

 もう両親とも、友達とも会うことはできない。

 気持ち崩れ落ちそうになり、そのためか体が薄くなっていく。

 自分が消えていく恐怖にどうしようもなく、体も動かない。

 

 「まずは心を落ち着けなさい。まだあなたは消えてはならない。大丈夫」

 

 女神様の言葉に、安らぎと安心感を感じ、心の中で深呼吸をする。

 

 「そう。あなたがこの場所にいるのは消える為ではないの。私の罪を償う為。私も女神という存在ではあるのだけれども、間違いを起こしてしまう事もある」

 

 ののかは必死に女神様の話を聞き、ある期待感を感じていた。

 

 「今回起こしてしまった私の罪。あなたを殺してしまった事に対する償いとして私が管理している別の世界に転生させようと思うのだけれども?」

 

 ののかは考えた。

 

 (別の世界ではなく、元の私がいた世界に転生する事はできないのですか?)

 「生き返る事も、転生するとしても、あなたをあの世界に帰せないの」

 (どうしてですか?)

 「あの世界とあなたの運命が切れてしまったから。新しい運命を他の世界と繋がなければ、望月ののかとして、転生できなくなってしまう」

 (では、転生した世界で”私”として生きられるのですか?)

 「ええ、転生先であなたの記憶も一緒に繋げるつもりよ」

 (もし、転生せず”私”が消えて新しい”私”が生き返ることは可能ですか?)

 「”望月ののか”ではなく、別の人間の魂とあなたの魂を混ぜて、記憶を真っ白に戻し、元の世界に帰ることは可能です」

 

 ののかは、自分が消える恐怖から抜け出す事ができず、教えてもらった元の世界に新しい魂として帰る事は考えることはできなかった。

 色々な思いが駆け巡り、女神様にお願いしてみることにする。

 

 (では転生するのに何点かお願いがあるのですが、聞いてもらえますでしょうか?)

 「その前に、あなたがいく事になる世界の話を致しましょう。それからでもお願いは遅くはないと思いますよ」

 

 確かにお願いするには、今もっている常識がそのまま使えるとは限らない。

 ののかは女神様の話を聞き、お願いごとを改めて考える。

 女神様から聞いた話ではまず、転生する世界は、今まで暮らしていた世界とほぼ文化レベルは変わらない。

 しかし1点だけ違う事がある。

 それは”鬼”が住む世界である事。

 ”鬼”とは自分の知っている通りの存在で、化け物であり人間を糧に生きているという。

 ただ人々が”鬼”を常識として認知しているかと言えばそうではない。

 人間の姿をしており、闇にまぎれてこっそりと人間を食う生き物らしい。

 そんな恐ろしい世界に、自分が行くことになるなんて、怖くて仕方なかった。

 その”鬼”と戦う力を授けてくれるという話もあったのだが、ののかは自分では”殺し”はできればしたくないといった。

 特別な力は自分には必要ないし、そんな血なまぐさい世界に飛び込みたくもない。 できれば普通の女の子として生活をし、平穏な暮らしを望むと話をした。

 けど、”鬼”がいる以上は、かなりの確率で死んでしまう可能性がある。

 それは17歳で生涯を終えてしまった、ののかにとっては、大問題でありせめて17歳以上は生きたいと願った。

 

 「それならば、護衛をあなたにつけましょう。”鬼”がいる世界で”鬼を退治する者”がいます。その者達の中から選りすぐりの者をあなたの護衛としてつけましょう」

 (そうして頂けると助かります)

 「しかし、彼らには役目があり、あなたが20歳になるまでしか護衛する事ができません。それでもよろしいですか?」

 (わかりました。20歳まででかまいません)

 「ほかにお願いごとがありますか?」

 (どんなに食べても常識の範囲内で太らない体型を維持できるようにして頂きたいのです)

 

 ののかは生前食べる事が大好きでダイエットに困っていた。

 体型を気にしてしまい、思いっきり食べたい肉、お菓子、中華が食べれなかった。 

 (後、望むものは何だろう?健康な体でお願いします)

 「分りました。美に対する要望などはないのですか?」

 (普通でいいです。すごい美人とかだと面倒になりそうで)

 「そうですか。では私から少しプレゼントを用意しておきますね」

 (プレゼントですか?)

 「ええ。あなたの来世がいいものでありますように。後、もうあなたとお会いする事はないでしょう。この世界は本来、死んだ人間の魂を呼ぶ所ではないので私とは会えないと思います」

 (そうですか。最後にいいですか?たぶん女神様のミスだとしても、本来、私のような人間の子に便宜を図るようなことはないと思うのですが?)

 「あなたが、あなたの世界に生を受ける前、こことは違う場所で私と約束をしたのだけど、私のせいでその約束を守れなかったの。その為の罪ほろぼしと思ってください」

 (どんな約束をしたのですか?)

 「それはいえない決まりになっています。ごめんなさい」

 (わかりました。以前の約束は覚えてないですけど改めて一つ約束させてください。”あなたの娘として精一杯生きておばあちゃんになってまた天界に戻ってきます”)

 

 女神様は大きく目を見開き驚いた顔をしたが、ののかには顔が薄っすらとしか見えておらず、その驚きを見ることなく意識が薄れていった。

 

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