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prologue

「お目覚めですか?お嬢様。」そう言って一人の男性は私に向かって深々と頭を下げた。


髪の色は青く、瞳の色は凄く澄んだサファイアのような色で、彼の醸し出す冷静な雰囲気とよく合っている。

顔立ちは整っていて、凄くイっケメンー☆

イケメン!?うん?うーん・・?ちょっと待てよ!?これはいったいどんな状況だよ?

私・・・は・・・えっと・・・誰?

あれ?私は誰ですか!?私、どうしてベットで寝てるの?というかここはどこ??


私は今、自分がおかれている状況を確認する為に、慌てて周りを見回した。

私が寝ている部屋はとても広く、学校の教室一つ分くらいの大きさで、その部屋にセンス良く置かれている家具は家具に詳しくない私でも分かるほど豪華なものばかりだった。

よく見てみると、私の服も高そうな素材のドレスだった。


えっと・・・。どうしてこんな事になっているのでしょうか??冷静になって考えて見ませう。うん。

私の名前は?・・・ワカリマセン。

ここはどこ?・・・・ワカリマセン。

今、何時?・・・ワカリマセン。

・・・・って、なにも分からないじゃないか!?これは、まずいよね?どうする私!?

ココドコーーーー???って慌てるあまり片言になってた。危ない。


「お嬢様??大丈夫ですか?」私がぼんやりと考え込んでいるのを気にしてか、先ほどのイケメンが私の顔を覗き込みながら聞いてくる。

はー近くで見るとやっぱり整った綺麗な顔してる。乙女ゲームに出てきそうな感じ。うん。顔・・近い。・・・って近いんだって!!!近いよ!!

「どうしたらこんなイケメンと出会う状況になるんだよ!?ここは、乙女ゲームの世界かっ!!って違う。あの・・・すみません。ここは、どこですか?」私はイケメンに恐る恐る問いかけた。

するとイケメンはかっこいい顔を台無しにして、「はっ?寝ぼけるのも大概にして頂けますか?」と盛大にため息をついてくれた。


なんだか、このイケメン感じわるーい。

でも、今この状況で助けてくれるのはこの人だけだよね?うん。

好感度下げたら、間違いなく死亡フラグ立つ感じじゃないの!?

あーやだやだ。とりあえず、無難に謝っておくか。

「すみません。私、どうして今自分がここに居るのか分からなくて・・・。」

「ぷっ。ははははっ。おっかしい。あなた、私の演技に引っかかりましたね。ひゃははははは。」

は?さっきまでの敬語キャラはどこにいった!?

「あのー。私、ほんとうに困ってるんですよね。ふざけないで助けてもらえませんかね?」私が真剣にそう訴えると、一通り笑い終えたのか男性はまじめな顔つきにもどった。


「まあ、分からないのも当然ですよね。あなたは、異世界に転生してきたのですから。」と、イケメンは決め顔でそう言った。

うわー似合ってるわ。素敵。きゃは☆

・・ってちがうでしょ!!!

「あのー。そろそろ焦らさないで教えてもらえませんか??」

「じゃあ、教えて差し上げます。あなたは、高校三年生の19歳。富士川ふじかわ 恵凜えりんさんと言います。」

「・・・えりん。あっ、私の名前・・。うん。」

「転生したことによって、忘れていたのでしょう。まあ、よくあることです。気にすんな、ドンマイ。うん。私が知っているあなたについての情報はそれだけです。」イケメンはそういうとにっこりと微笑んだ。

どうして名前と年齢しか知らないんだよっ!!

「あなたがこの世界に転生してきたのにはちゃんとした理由があります。それは後ほどご説明させていただきます。あっそうそう。申し遅れましたが、私の名前はオーウェル。この城に住んでいるものです。先程は失礼しました。」オーウェルさんはそういうと深々と頭を下げた。

この人は礼儀正しいんだか、無礼なのかよくわかんないや。


「オーウェルさん。私は、この世界の人間ではないんですよね?私は元の世界に戻れるんですか?記憶は・・・元に戻るのですか?」私は不安な気持ちのまま沢山の質問をオーウェルさんに投げかけた。

オーウェルさんは面倒くさそうな顔をせず「あなたは役目があるのでこの世界に招かれた。役目が終わればあなたは元の世界に戻れます。あなたが望めばね。まあ、元の世界に戻った場合あなたのここでの記憶は完全になくなりますが。」と説明してくれた。

「そうですか・・・。私は何をすればいいんですか?私がこの世界に居る間、現実の世界はどうなっているんですか?」

「あなたがこちらの世界に居る間、あなたのいた世界の時は止まっています。なので、そのあたりの心配は要りません。そして、あなたの役目はたった一つ。この国の後継者を選ぶことです。」

「・・・・・後継者???」

「ええ。そうですよ。後継者です。」

「この国の…ですか?」

「はい。そうです。」

私はそこで一つの疑問が浮かんだ。


「あのー…。普通、国の後継者って、王様か王女様が選ぶものですよね?どうして私のような一般人の…この国について分からないようなものに選ばせるのです?」

私がそう言うと、オーウェルさんは悲しそうな表情を浮かべた。

何か聞いてはいけなかったことなのかな?

私はどうしていいか分からず、黙り込んでしまった。


「この国の王女様は…殺されました。」

「殺された!?」

「毒殺されたのです。」

ちょっと!?待って!?今、オーウェルさん毒殺って言ったよね?

毒殺って、食べ物とかに毒を入れて殺す…とかそんなやつ!?

この国、そんな事する人いるのか!?うっわ。怖い。帰りたい!

というか、帰らせろっ!!!

「あのー…オーウェルさん?一ついいですか?」

「はい?」

「王女様は何故毒殺されたのです?」

「アイリーン様は、この国の王女様でした。けれど、国の抗争に巻き込まれ、他の国のものによって毒殺されたのです。まだ、20歳だってのです。私達は…アイリーン様をお守りすることは出来なかったのです。情けない…。」オーウェルさんはそう言うと唇を強く噛んだ。

「すみません。あなたには関係のないお話でしたよね。」そう言うオーウェルさんの綺麗な瞳には水滴が浮かんでいる。


…涙を堪えてる。オーウェルさんにとってアイリーン様は守りたかった人だった。なのに、守れなかった。それが悔しくて、後悔してる。でも、弱いところを見せたくなくて、泣くのを堪えている。オーウェルさんらしい…。でも。

「オーウェルさん!泣きたいときは泣いて下さい!辛いときは喚いていいじゃないですか。堪えなくても。じゃないと、いつかオーウェルさんが壊れてしまいます。どうして隠そうとするのですか?素直に泣いたっていいじゃないですか?辛かった…守りたかった。大切な人だった。泣く理由には充分すぎます!堪えてると、辛いだけです。」

私はベッドから下りると、しゃがみ込んで泣き出したオーウェルさんの背中をそっとさすった。


オーウェルさんの背中広い。この背中で国や、王女様を守ってきたんだ。私は、この国の人間じゃない。けれど、せめてここにいる間くらいは、オーウェルさんの力になりたい。


「ありがとう・・エリン様。」

「えっ?」

「あなたで良かった。こうしてこの世界に来た人間が。」オーウェルさんはそう言うと優しく微笑んだ。

「いえ、私なんて…」

「ふふふ。あなたらしい台詞です。」オーウェルさんはそう言うと私に背を向けてから、涙を拭き立ち上がった。

そして私に優しく微笑みかけ、しゃがみこんだままの私にそっと手を差し出してくれた。

先ほどまでとは違う、優しくてあたたかい太陽みたいな笑顔。

私はそっとオーウェルさんの手をとった。


「今日からここは、なたの家ですよ。さ。じゃあ、この屋敷のメンバーを紹介しますね。あなたが後継者として選ぶ人の候補たちです。私を含め、5人いるのですが・・。もうみんなには向こう部屋に集まってもらっていますから、行きましょう。」オーウェルさんは私の手を握ったまま歩き出した。

オーウェルさんの手は大きくてあたたかった。


不安だな・・・。この国にの後継者なのに、政治に詳しくない私なんかが選んじゃったらこの国の崩壊を招きかねないんじゃないのかな?私にそんな重大な役割が務まるのかな・・。

「不安ですか?」私の不安に気付いたのかオーウェルさんは優しく声をかけてくれる。

「不安です。私なんて政治もなにもわからないのに・・・。」私の手は不安のせいか、緊張のせいなのか小刻みに震えている。

すると、オーウェルさんもう一つの空いた手で私の手をぎゅっと握った。

「えっ?」

「大丈夫です。私がついていますから。あなたは絶対誰にも傷つけさせない。守り抜いてみせますから。私を信じてくれますか?」オーウェルさんの瞳は真剣だった。

揺るがない強い決意の目だった。

「はい!大丈夫です。」私がそう言って笑うと、オーウェルさんは頷き部屋の扉を開けた。

「行きますよ。」

「お願いします!!」私の声を合図にオーウェルさんは歩き始めた。

しかし、オーウェルさんは「あっ!」と声を上げるとすぐに立ち止まってしまった。

「どうかしましたか?」不思議に思った私はオーウェルさんに問いかける。

すると、オーウェルさんは振り向き「私のことは“オーウェルさん”ではありませんよ。」と言った。

「えっ?」私が言葉の意味が分からずあたふたしていると、オーウェルさんは口に手をあててくすりと笑い肩を震わせた。

そして、「私のことはオーウェルって呼んでください。“さん”なんて要りません。あたなは代理とはいえ、この国の姫なんですから。」と悪戯笑顔で言った。

「はいっ!オーウェル!!」私もつられて笑う。


初めはどうなるかと思ったけれど、オーウェルも良い人そうだし・・・。

どうにかなるよね?うん。諦めないで、ここで私が出来ることを頑張ろう。


こうして、私の異世界での生活が始まったのです。


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