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マリアの独り言  作者: 藤高 那須
第一章 始まりは産声から 幼少期編
9/40

クレアの気持ち、ジルシュの覚悟4

前話を少し訂正させました。訂正箇所は前話の後書きに書いてあります。

あと前話の最後の部分も直しました。

「イヤ。私はここから出ないわ」

「っ!?」


 クレアは顔を上げ、ジルシュの言葉に対し否定の言葉で返した。

 クレアが返答すると、ジルシュは驚愕し顔を歪めた。


 しかし彼はクレアの応えに驚いたわけではない。


 彼は彼女、クレアのその姿に驚いたのだ。


 部屋が暗くてよく見えなかったが、クレアの腕と足は以前見た時よりも細くなっており、その顔は数日の間何も食べなかったのか、唇には血が通ってないのか色が肌の色に近くなっていて、目の下にクマができている。

 どう見ても彼女の体調は悪くなっていた。


「クレア!」

「来ないでっ!」


 クレアは風魔法を使ってジルシュを部屋から追い出した。ジルシュは十数メートルに吹き飛ばされ、何度も体を地面に打ち付ける。


「ぐっ、はっ」


 数秒ほど呼吸困難におちいるジルシュ。

 辛うじて受身はとったので大事には至らなかったものの、服がボロボロになり、きれいに整えていた頭はぐしゃぐしゃになっている。


「私はもう見たくない! このままどんどん成長して、私やお義父様を越えていくマリアを見るのが! あの子が強くなって! それが周りの人々に知られ、彼女は天才だと言われ、挙げ句の果てに国のためだと利用され捨てられてしまうのよ! だったら! あの子を、マリアをずっとここに囲い込んで、何もさせずにここにいさせれば良いじゃない! そうすればマリアは天才だと言われなくなるわ。なのにマリアは自分の力で成長していってる。だったらもうどうしようもないじゃない! ずっとここにいて、マリアの顔も見ずにずっとこの部屋の中にいたら……」


「……」


「彼女が不幸な目に合う姿を見なくていいじゃない」


 彼女が言っていることはジルシュにはほとんど理解できない。

 だがこれは彼女が本当に天才だったが故の不安なのだろう。

 天才ともてはやされ、危ない任務をたった一人でこなしてきた彼女故の。




「……ふざけるな」


 だがジルシュには聞き捨てならない言葉を聞いた。正直それ以外のことばなどどうでもよかった。

 彼女の葛藤の末に導きだした答えに、どうしても訂正しなければならない言葉があったからだ。

 それがジルシュの逆鱗に触れ、穏和な性格の彼を怒らせた。


「サラマンダー」

「はいよ」

「今から君の力を貸してもらう。いいかい?」

「ああ、久しぶりに骨のある奴とできるんだな」


 サラマンダーは待ってましたとばかりに準備運動を始める。

 だが本心ではクレアと戦うことよりも、あのジルシュがとうとう決断したことに喜んでいた。


「決めたよクレア。僕は何があっても君をこの部屋から出す。なぜなら君の答えは間違っているからだ。我が子の成長は喜ぶべきもの、そして我が子に危機が迫れば我が身を挺して護るもの。僕は決断したんだ。何があってもマリアを護ると誓ったんだ。君もあの時誓ったはずだ。だけどその誓いを破った。だから僕は君の夫ジルシュとして、僕は君をここから連れ出し再び誓いをたてさせる。マリアを護ることを。


僕はあの時誓ったんだ。何があってもマリアを護ると。例え四肢を引き裂かれようとも護ると」
















「それが僕の覚悟だ」

クレアとジルシュの戦いは次話です。

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