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マリアの独り言  作者: 藤高 那須
第一章 始まりは産声から 幼少期編
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動き出す学徒達

お待たせしてすいません。今回は説明回です。この学園についてちょっとだけ説明します。

 決闘後、クラスが変わるメイズさんは別の寮へと引っ越す準備をしました。彼女のクラスはかなりランクの高い位置にあり、一クラス一寮、さらに一人一部屋という大変贅沢なことができたクラスでした。なのでクラスが一つ落ちたり上がったりすれば寮を移動しなければなりません。メイズさんと闘った相手の寮は他クラスと共用だったので移動はありませんでした。同じ寮同士のクラスの入れ替えだと部屋は移動しなくても良いみたいです。さすがに部屋の移動は面倒臭いですしね。


 クラスというのは、その年の入学者を上から実力順に入れていき、数十人ずつに分けていったものです。昔は三つ四つと少なかったようですが、今の国王によって平民の受け入れの増加や難易度の低下をしたことで一気に入学者が増えました。平民も平民で、貴族と同じ学園に通うことで周りに自慢ができると考えたり、口減らしついでにと入学させようとする親がよくいるらしいです。学徒の食費や教師の給料などの費用の方は貴族が全て負担し、負担するお金は貴族が徴収した税金から使います。


 話を戻して、引っ越しの準備をした後、メイズさんは荷物を引っ越し先の寮へと運び始めました。見かねた私はメイズさんを説得し、荷物運びを手伝いました。


 一緒に引っ越し先の寮まで荷物を運んでいる道中、ルミナス先生が私達に話しかけてきました。メイズさんに用事があるようで、引っ越しが終わった後に話がしたいと言いました。

 全ての荷物を運び終えた私達は、先生が待っているテラスに行きました。

 テラスには学徒や教師が談笑したり、勉強したり、くつろいだりする場です。ここはいくつかあるテラスの中でもそれなりに人が多く、先生を探すのに一苦労してしまいました。


「時間をとらせてすいません二人とも。荷物運び、私も手伝いたかったのですが、この歳だとさすがに体にきてしまって……」

「いえいえ、さすがに教師にやらせるわけにはいけません。それで、話というのは?」

「あの決闘のことです」


 ルミナス先生は、決闘でメイズさんが勝利したのにクラスを下げてしまったことに対し、メイズさんがどう思っているのか聞きたかったらしいです。


「別に怒ってなどいない。確かに、まだ決着もついていないのに相手に背を向けるのは非礼だった。謝罪をするのはこちらの方だろう」

「フフ、貴女がまだ十の子供だとは思えませんね。普通なら私に合った途端に怒り出すはずなんですがね。言動に幼さがありません。そしてマリア君、貴女も」

「私も?」

「貴女には相応の幼さがあります。話し方や考え方の幼さは他の子と変わらないでしょう。しかし、貴女の目に妙な物を感じるのですよ」


 そう言ってルミナス先生は私の目をじっと覗くように見つめました。


「貴女のその金色の目。その中にどうしてもすべてを悟ったような何かが現れるのです」

「はあ……」


 悟ったような目ですか。……まあ、私はこれまでいろんなことを経験してきました。普通に生活していれば絶対に起こらない出来事を体験してきたのです。そこらへんの子供とはかけ離れた人生を送ってきたわけですよ。そうです。きっと先生は私の中に隠れた秘めたる大人的な雰囲気を感じ取ったのかもしれません。


「ふふーん」

「……学園での決闘。あれには驚かされたでしょう。他にもこの学園には様々なルールがあります。わからないこと、知りたいことがあるなら訊いてください。できる範囲でお教えしましょう」

「じゃあまず私から。この学園にいる学徒は全部で何人いるか気になってたんですよ」

「教師を含めると多くて七、八千人ほどですね。学徒は少なくとも五千人はいると考えて下さい。大雑把なのは人数が多すぎて私達も把握しきれていないんですよ。なので大まかにクラスに分けて教師が一人一人の顔をその日のうちに覚えています。人数は一つのクラスに三十から四十人ほどですね」


 なるほど。じゃあそこから計算すると……。……一年目の学徒は少なくとも千人。そしてクラスに……三十人いるから……、……三十ものクラスに分けられているんですか。


「私はその中の一番下なわけですね」

「そういうことになります。しかし実力さえ見せてくれれば、それに見合うクラスに移動させてくれます」

「ですが、これだけ人が多いと働き手が減ってしまって、お金の入らなくなる貴族達の反発は大きくならないんでしょうか」

「貴族の反発は大きいですね。働き手が少なくなり税金が減り、さらに力を持った平民が戻って来るとなると貴族を倒そうとするかもしれません。国王はそれを押し切って制度を決めましたからね。後は国王の腕と知恵次第です」


 今の国王は平民に特に易しくなるような制度を作っているようで、貴族から良い目はされていないみたいですね。国王はこの国をどうするのか、貴族を潰す気なのか、周りではそんな話が多く流れているようです。


「だからこそ、ここにいる貴族の子供達は平民に力を見せなくてはいけません。貴族と平民の違いを身を以て教えなくてはいけないのです。余計な希望を抱かせて、反乱が起こるようなことがないように。しかしクラスの入れ替えは決闘だけではありません。学徒が教師に自身の能力を見せ、上に行く実力があると認められれば決闘をせずとも上のクラスへ進めます」


 なんであれ、能力さえあればそれでいいんですね。剣の技術で入学しても、弓の技術が良ければさらに上のクラスへと進めるということです。本当に実力主義な学園です。


「それに対し決闘では能力対決ですから、審判である教師が挑戦者と対戦相手が決めた対戦内容と不得手を確認してフェアな勝負ができるか判断します。できるならあの時私がしたようにルールの説明を行い、できないならその場で勝負を取りやめ、もしくは内容を変更します」


 教師はかなり面倒臭いことをやらされているんじゃないでしょうか。無差別に起こる決闘に立ち会い、決闘の場所を設けて、さらにそれぞれの学徒の情報を知る必要がある。これだけでもかなり時間がかかります。そして決闘の結果の報告と説明を各所に言わなければならず、立ち会った際には一日の大部分を決闘に割かなければならないのです。


「まあ教師の方にも拒否権はありますから。教師が中止させればそれで終わりですよ」


 疲労感たっぷりの声でルミナス先生はそう言いました。メイズさんの決闘は先生がやったんでしたね。その後も多くの決闘の審判を引き受けたんでしょうか。

 鐘の音が響いたところでお話は終わりとなりました。気づけばもう夕暮れになっていて、辺りには私達三人しかいませんでした。


「最後にマリア君に言っておきたいことがあります」

「なんでしょうか?」

「貴女に限らないことですが、平民の学徒達は貴族の子女達に虐めなどを受けることが多いです。国が運営しているとはいえ貴族が集めたお金を使っているので強く出られない場合があります。なので私達はともかく貴女達に対する彼らの横暴に対処するのは難しいかもしれません。国王も同じく強く出られない部分なんですよ。特に一番下のクラスにいる人達はその対象にされやすい。気をつけて下さい」


 そう言ってルミナス先生は席を外し私達と別れました。


「実際にそういうことをする貴族の子供はいるんですかね?」

「いるにはいる。ただしほどんどがそうと言うわけではない。彼らが平民の前に立ち過ぎるせいでそうではない者達が隠れてしまっているんだ。まったく困ったものだよ」


 彼らは、自分が平民より上だと、偉いのだと思っているのでしょう。そこを勘違いしています。偉いのあくまで父親または祖父であり、貴族の称号を持つのは彼らだけなのです。その子供はあくまで『貴族の子供』であり、貴族ではありません。要は虎の威を借る狐ということです。しかしその親が貴族なのがいけないのです。貴族の子供を傷つければ、間違いなく親は黙っていません。だから平民は反発ができず、貴族の子供はさらに増長する。


「まあ、なるようになりますよ。私はいつも通り、ここで色々と学ぶだけです」


 私はメイズさんと別れ寮へと戻りました。


 部屋に戻ると、ライルさんが手のひらの上で目玉くらいの大きさの水玉をふよふよと浮かせていました。ライルさんは水の魔法が得意で、暇な時はたまにこうして魔法を使うことがあります。


「それにしても凄いですね。水玉をほぼ完全に空中で静止させるなんて」

「そ、そうですか?」

「はい。練習を重ねても多少は上下するものですよ。こんなに静止していられるのは、目をつむったまま爪先で片足立ちをやるより難しいですよ。それくらいライルさんの集中力が良いんです」

「そんなに褒められると照れますよぉ」


 動揺とか、精神が不安定になると水玉が浮かばなくなって落ちてしまいます。しかし照れるとか言っておきながら水玉は微動だにしません。またやっていたら脇をくすぐってみますか。


「ライルさん、終わったらその水私にください」

「そうですか。そろそろ終わろうと思ってたので、ちょうどよかったです」


 ライルさんが魔法で出した水はとてもおいしいです。なんといっても水の冷たさです。まるで氷で冷やしたかのようなその水は飲んだ瞬間に体の疲れが抜けえもいわれぬ解放感に包まれます。


「ライルさん。いつも思うんですが、なんでそれを教師に見せようとしないんですか。それを見せれば間違いなくここよりもずっと上のランクのクラスに行けるのに」

「そ、その、実は私、本番に弱くて。いつも緊張して失敗してしまって……」


 学園の試験の時も緊張で体がガチガチで、試験一日目で合格していなかったら間違いなく落ちていたらしいです。


「ちょっとずつでいいので、直していきましょう」

「はい……」




◆◆◆◆◆



 ある一室の、上下にあるハンモック、その下の方でハッシュは考え事をしていた。

 数日前から頻発に起こっている学園での決闘。それは学園内の自分達のランクを決める戦いだ。


「俺は何もしていない」


 同じ部屋にいた友達も、いつの間にかいなくなっていた。気づけばこの部屋はハッシュだけになっていた。


「マリアも、多分ライルも、すぐに上へ上へと行くに違いない」


 ハッシュは焦っていた。


「マリアがあそこにいたから、俺も合わせたけど、隠すのはもう止めた方が良いのかもしれない」


 マリア、ハッシュ、ライル、そして彼らと同じを持つ者達が、動き出す。

捕捉……学徒同士の試合ではなく、教師が監督する試験の場合は学徒の入れ替えはない時があります。ある期間の後、上のクラスの学徒と下のクラスの学徒の実力が逆転していた場合にクラスの移動があります。


説明回はひねり出すのがものすごく難しく、考えるのに時間がかかるうえにものすごく面倒くさいです。なのでちょっとだけ設定が矛盾する可能性があります。その時は教えてください。

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