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マリアの独り言  作者: 藤高 那須
第一章 始まりは産声から 幼少期編
18/40

原因不明

今回、一人称とか三人称ところころ変わります。

「……知らない天井」


 目を覚ますと、見たことのない天井がありました。

 体を起こし、しばらくぼーっとしながら横を見ると、少しふくよかな体をした女性がいました。そして、その人はハッシュの母親で、ここがハッシュの家で、昨日はここに泊めてもらったことに気づきました。


「なんだ、起きてたのか」


 隣のベッドから声をかけられました。どうやらハッシュも今起きところのようです。

 ハッシュはベッドから出て、着替えた後、部屋から出て行きました。私は急いでベッドから出て、ハッシュを追いかけました。


「どこか行くの?」

「外に出て、特訓するんだよ」


 外はまだ薄暗く、人の姿が見当たりません。まだ寝ているんでしょうか。


「こんな時間に?」

「こんな時間だからだよ。母ちゃんは朝飯はちゃんとみんなで食べなきゃいけないとか言うし、かといってその後は店の手伝いとかしないといけないから、朝早く起きてやることにしたんだよ」


 なんで走りながら説明しているのか聞くと、これも特訓らしいです。長い時間走って体力をつけようと考えているとか。

 十数分くらい経って、ハッシュはやっと走るのを止めました。


「ゼェ、ゼェ」

「ハァ、おまえ、体力、ない、な」


 そんなこと言ったって、私はハッシュよりも身長が低いんですから、同じ速さで走るためにはハッシュよりも頑張らないといけないんです。

 私が恨めしそうに見ているのにも気づかないハッシュは、そこらへんにお落ちていた腕くらいの長さの木の棒を広って、素振りし始めました。


「ハッ! ハッ!」


 それからずっと、ハッシュは上から下、上から下と、何度も棒を振り続けていました。


「ねぇ、ハッシュにとって、親ってどういうもの?」


 ふと浮かんだ疑問を、ハッシュに投げかけました。


「俺にとって? そうだな、大事な家族だよ。でも、その親が、邪魔な存在になってるってのもある」

「邪魔な、存在?」

「俺はさ、騎士になりたいんだ。騎士になるためには学校に行って、卒業しなきゃならない。でも、入学するには金が必要でさ、服屋をやってる親にはそんな金を出す余裕もなくて、反対されてるんだよ。何より入学できるかどうかも怪しいとか言ってな。だったら、こうやって特訓して、楽々と入学できるくらい強くなって、それで親を納得させようと考えてるんだ」

「騎士にならせてくれないから、邪魔な存在なの?」

「そうさ、父ちゃんも母ちゃんもわかってない! 騎士になれば、必ず国王の下で働くことができ、服屋なんかよりも多くの金が手に入る! なのに入学できないとか無理だとか、ふざけるなよ! もし、もしも、親が金持ちだったら、こんなこと考えずに、親のいないところで隠れて、しかも限られた時間の中でしか特訓できなくならないのに!」


 ハッシュは心底悔しそうに言いました。そして――


「あんな、あんなわからずやな親なんて、いな――」


 ハッシュが言いきる前に、私はハッシュの頬を叩きました。


「いてぇ、なにすん――」

「右の頬を叩いたら……」

「へ?」

「左の頬も叩きなさい!」

「ぐへぇ!」


 私は何度も何度も、ハッシュの顔を叩きました。感情に任せて、手が赤く腫れるのも忘れ、ハッシュのうめき声も無視して叩きました。


「家族は、大切な、ものなの!」

「ぐ、くっ」

「子供のことを、心配、してくれてるの!」

「……マリア」


 言葉を口にするにつれ、叩く力が弱くなっていきました。ハッシュはそれに気づいて、私の顔を見つめています。


「だから、そんなこと、言っちゃだめ!」

「……」

「私なんて……顔すら見てっ!」


 私はハッシュの胸に顔を埋めました。

 私の頭に、何かの感触がしました。ハッシュの手でした。


「……ごめん」

「ううん、こっちもごめん」


 ハッシュは少しスッキリしたような、何か吹っ切れたような顔をしていました。

 やっぱり、親というのは大事だと、私はおも――


「マリア、俺さ……マリア?」

「……」

「マリア、マリア!」





††††††††††





「ったくよぉ、俺のパートナーは……」


 やれやれ、といった風に、ルシファーは言った。

 彼はハッシュにバレないようにマリアから出て、今は二人の頭上二~三十メートルほどの高さを浮遊している。


「えぇと、屋敷は……あった」


 ルシファーは果実の種くらいの大きさくらいにしか見えない屋敷を見つけると、手のひらから拳一つ分の大きさの光の玉を出した。


「よし、それで……ルシファー、大きく振りかぶって――」


 ルシファーはその光の玉を


「投・げ・たあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 屋敷に向かって投げた。


 一方、その屋敷では、しばらくぶりにマリアの母親であるクレアが戻って来た。

 クレアはジルシュ、バン、そしてシュトールのいる執務室へと向かった。


「ああ、クレア、おかえり」

「ええ、ただいま、あなた。お義父様も、あとシュトールも」


 クレアは順番にお辞儀をして、側にあった椅子に座った。ちなみに、バンとシュトールはジルシュにプレッシャーを与えるようにして斜め後ろに直立していた。


「それで、マリアは元気にしてた?」

「うん、僕は今いろいろと忙しいからメイドに任せてるんだけど、問題はないってさ」

「そう、よかった」


 クレアは憑き物が落ちたなのうな顔を浮かべて安堵した。少し留守にしている間、マリアをことを心配していたのだ。


「じゃあ私ちょっとマリアのところに――」

「? どうかした?」

「シュトールよ」

「ハイ、わかっております」


 ジルシュ以外の全員が察知した気配、今はふざけてはいられず、シュトールはバンにきちんと返事をした。

 気配は少しずつ大きくなっていき、そして、その気配が執務室の窓側、つまり北の方からまっすぐこちらに来ていることに気づいた。


「伏せるのじゃ!」


 クレアの中からルドラが飛び出した。その時、窓が割れ、すごい速さでの玉が入って来た。ルドラはし瞬時に風を起こし、光の玉にぶつけた。互いに力が強く、部屋の中の紙などが吹き飛んでいく。その光景を、ジルシュは、あの飛んでいった紙はどうしたらいいんだろう、と少し泣きそうな顔をしながら見ていた。

 光の玉は消え、紙やインクなどで汚れた執務室。ジルシュを除いた三人は状況を確認することにした。


「あれはいったい誰がやったんだ?」

「たぶん、神様、つまり誰かのパートナーがやったんだと思うわ。そしてルドラでも攻撃を止めるのに苦戦するほどの力。神様と契約し相棒とできるのは基本的にこの国しかないらしいから、敵はこの国の誰かで、かなり名のある人でしょうね」

「まあ、暗殺者という線もありますが。いや、それはない気もします。本当にその気なら、相手はこの屋敷ごとあなた方を吹き飛ばせたハズです。なのにここだけを狙い打ちとは……」


 と様々な視点から考えても何も出てこない。理由ならたくさんあるが、どうにも不可解な部分がある。そうしていると、メイドが息をきらせながら扉を開け、言った。


「お嬢様が、マリアお嬢様がいません!」


 四人は一斉にメイドを見る。そして、あの光の玉はそういうことを意味しているのかと考えた。


 マリアはこっちにいる――と。




††††††††††





「マリア! マリア!」


 マリアの意識が突然途絶えた。何が起こったのか、俺はわからず混乱していた。

 つい昨日会ったばかりの、どこの誰かもわからない子供だが、話していくうちに、こいつとは気が合いそうだなと思った。自分の夢を語った時、こいつはちゃんと聞いてくれたし、絶対に言ったらいけないことを、口にする前に止めてくれた。今はもう、俺にとってマリアは親友だ。

 そしてのし親友が今、大変なことになっている。


「だ、誰かっ! 助けてくれ!」


 俺は大声で助けを呼んだ。早い時間とはいえ、それなりに時間は過ぎた。誰か起きていてもおかしくないだろう。

 俺の声を聞いて、木こりのおっさんが来てくれた。今すぐ医者を呼んで来ると走って行った。これで安心、のはずだ。今の俺には、マリアの手をつなぐことしかできない。


 やっと医者が来た。遅い、もっと早く来いと行ったが、木こりのおっさんは医者を呼びに行ってからそれほど時間は経っていないと言ったそそれほど俺は焦っていたのか。

 安全を確認してから、医者の家へ行った。ベッドの上にマリアを乗せ、医者に診てもらった。

 調べてみた結果、発熱が出ていること以外は異常はないらしい。でも、マリアはあんなに苦しんでいる。


「誰か、誰か助けてくれ!」


 俺はその言葉しか言えなかった。親友が大変なことになっているのに、俺にできることは本当に限られていて、それも気休め以下のことしかできない。

 扉の開く音がした。振り返ると、俺みたいな平民では一生着る機会はないであろうと思えるほど高そうな服を着た三人の大人と、その執事かもしれないじいさんが入ってきた。


「ち、ちょっ……な、何でしょうか?」


 医者は文句を言おうとしたが、相手の服を見て一気に態度を変えた。俺でもきっと、あれを見たらそんな感じになるかもしれない。


「だ、誰だよあんたら! こっちにくるな!」


 だけど、今はそんな風にはできない。もし俺の親友を傷つけるようなことは絶対にさせない!


「君、マリアの友達かい?」

親友・・だ! そっちこそだれだ!」


 優しそうな雰囲気を持った人に、おれはそう返した。そいつは嬉しそうな、困ったような顔をして頭を掻いた。


「ごめんなさい、自己紹介が遅れたわね。この人はジルシュ・サマン・ログベール。私はその人の妻のクレア・ルドラ・ログベール。義父のバン・ジャクス・ログベール。そして執事の――」

「シュトール・ロ・ノワールでございます」

「ろ、ログベール!?」


 『ログベール』と聞いて、医者は腰を抜かした。

 ログベール……何か聞いたことあるような名前だ。だが今はどうでもいい。


「マリアに何の用だ! もし何かしたら、許さないからな!」


 俺はできる限り四人を睨みつけた。奥の執事が殺気のようなものを放って怖じ気づくところだったが、俺はマリアの手を強く握って、なんとか持ちこたえる。


「シュトール、よせ。この子は儂らのことを知らんのだから」


 四人の中で一番いかつい顔をしたおっさんが老執事を止めた。

 厳ついおっさんは俺ところにあ歩み寄り、そして俺を強く抱き締めた。


「――!」

「ありがとう! ありがとう儂の大事な孫を守ってくれて!」


 急に抱き締められて、俺は頭が真っ白になったが、厳ついおっさんが言った感謝の言葉を聞いて我に返った。俺は厳ついおっさんの腕の中から脱出した。


「いらねぇよ! 感謝なんて、されるようなことを俺はしていない!」


 俺は精一杯叫んだ。医者の顔が青ざめここから出て行ったが、今の俺には目に入らなかった。

 今度は厳ついおっさんではなく、きれいなお姉さんが前に出た。


「いいえ、貴方は私達にとって感謝してもし足りないことをしてくれたの。だから――」

「ちげぇよ!」


 半ばなだめるようにお姉さんは言ったことを、俺は全力で否定した。俺は四人に見せつけるようにマリアの手を握っているところを出した。


「見ろよ! 俺は、こんなことしか出来ないんだ! 俺には病気とかを治すような力みたいに、こんな時に親友を助けてあげられるような力を持ってないんだよ! 俺は……無力なんだ」


 俺はそう言って、マリアの手を握ったまま床に座った。目から水が流れる。泣いてんのか、俺。


「そうだ、君は無力だ」

「ちょっとっ」


 優しそうな兄さんがバッサリと言った。そう言ってくれて、心がなんだか軽くなった気がした。


「だけどね、それでも君はマリアを、僕達を救ってくれた」

「そんなわけ――」

「あるよ。君がいなかったら、マリアは危なかったかもしれない」

「それは俺じゃなくたって」

「君じゃないとダメだ。君がこうやってマリアの手を握ってくれている。それだけでも、君には感謝してもし足りない」


 マリアの手を見る。ずっと握っていたせいで汗でぬるぬるになっている。


「君がマリアのことを大切に思っているとわかるからこそ、親父は君を強く抱き締めたんだよ」

「……ハハッ、全然似てないですね」

「僕も思うよ」


 互いに笑顔になる。


「俺、できることがあれば、なんでもしたいです。まだ少ししか知り合ってないけど、大事な親友だから」

「うん、そうだね、僕達で何とかしよう!」


「いやぁ~話がまとまってよかったよかった」


 どこからか声がした。互いに顔を見るが、皆一様に首を横に振った。


「上だよ、上!」


 上、と言われたので上を見た。

 そこには、黒髪赤眼で、若干白い肌に黒いシャツと長ズボンを身につけ、さらに背中に黒い羽を生やした悪魔のような男がいた。

作者「そういえばもうクリスマスだね~」

マリア「メリクリメリクリ~」シャンシャン

作者「……クリスマスってさ、本当はイ◯スさんの誕生日なんだよ。それをサンタにかっさらわれて、本当に可哀想だよ」

マリア「メリクリメリクリ~」シャンシャン

作者「ぶっちゃけクリスマスが誕生日の人って不遇だと思うのよ。こう、誕生日プレゼント的な? ものがさ? クリスマスと一緒にされてしまうような?」

マリア「メリクリメリクリ~」シャンシャン

サンタ「まあ高校生くらいになったらさすがにないと思うけどさ。せいぜい誕生日ケーキとクリスマスケーキが一緒になるくらいだよ」

マリア「メリクリメリクリ~」シャンシャン

作者「……そろそろ腕を振って鈴を鳴らすのやめようか」

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