01:電子レンジは語らない 前編
「協力してくれるのか、……それは有り難い」
相手が向かい合うソファの真ん中に座れば、自然と自分も真ん中あたりに座っていた。飲んでいたコーヒーをセンターテーブルに置き静貴と目を合わせると、静貴の父親である達郎はいつもの通りにこやかに笑う。
「そうなると、やっと学校へ行くようになるんだな。最近は滅多に家からも出てなかったから、これで俺も安心できる……」
「あー、それなんだけどさ、親父。学校に護衛としてアンドロイド連れて行きたいと思ってんだけど……」
そう言えば、見開く目。素直に驚く姿なんて、いつぶりだろうか。
「それはいいが……急にどうした、つい昨日までは毛嫌いしていただろう?」
「廃棄されたヤツを昨日拾った。親父は自分の部屋で仕事してたから気付かなかっただろうけど、もう護衛にできるようにプログラミングもしてある」
「気に入ったやつがいたか。廃棄されたものでいいのか?」
「俺の腕を疑ってんのかよ。アンタが一番それに執着してるくせに」
睨んで嫌悪まじりに言っても、目の前の顔は涼しい顔をしている。その態度は静貴にとっての地雷だ。舌打ちの代わりに、口を歪めて眉間に皺を寄せた。
「それより、そうじゃなくて。俺が頼みたいことは、そのアンドロイドを人間として通わせてほしいんだって、いうことなんだ」
「………………」
笑顔が一瞬、崩れた。ポーカーフェイスがなくなったことに鼻で笑う。少しくらい、いつも素で過ごしたらどうなんだろうか。息子相手にすらほとんど地を見せない父親が、大袈裟なくらいに驚いてみせたことに嬉しく感じた。
「それはまた、どうして?」
「立代はアンドロイド同伴可能の中学校だけど、やっぱりアンドロイドとしてじゃ行けないところ聞けない話があるだろ。それに、親父の話を受けろっていうんなら、それが一番いいと思うけどな」
「しかし、それは護衛として持っていくんだろう。諍いがあったらどうする? 今時、アンドロイドを使った戦闘は珍しい話じゃない」
「なら従者として紹介しておけばいいだろ。――何、別に書類を偽造しろってわけじゃないって、それ犯罪だし。ただ学校側に事情を説明して、意図的に隠したりサポートしてくれればまた行動もしやすくなるだろう」
「教師陣に裏切り者がいたらどうするんだ?」
「それを踏まえて、親父に協力するのが俺の仕事だろ」
そこまで言えば思考するために顎に手を置き、少し俯く。……いや、演技かもしれない。いちいち行動がワザとらしい。
「分かった。話を通しておこう。――――ただ、静貴。こう言ってはなんだけど、自棄に素直に力を貸してくれるじゃないか?」
「別に裏はねえよ。ちょっとした反抗だ」
訳がわからないと顔に書いてある。まあ、そうだろう。
「俺がこの件で上手く犯人見つけることができたら、その上でどこかの文庫社に実力を認められたら、――俺の夢、一度考えてくれ。親父に不利益をもたらすようなことはしないから」
そう言って、返事を待たず顔も見ぬまま、静貴は自分の部屋に戻った。中では漫画を読み終わった愛が、本棚から次巻を取り出しているところだった。ロボットゆえに理解が早く、読み終わるのもそれだけ早いんだろう、静貴が父親と話している間に既に四冊は読み終わっている。
「おかえりです、静貴さん。話し合い、どうなりました?」
五巻を取り出してからこちらに気付き、そう切り出してくる。
「一方的に終わらせてきた。許可はちゃんと貰えたから、明日は明後日あたりにはもう学校に行くことになるだろ。俺も、その時から行くわ」
「分かりました。教科書類は学校で受け取ればいいんですかね?」
「ああ。言っておくけど隣のやつに見せてもらう少女漫画的展開はねえからな」
「ないんですか!?」
やはり愛らしくなるように作られたためか乙女思考が根付いているように思える。もしかしたら、遅刻しそうになってパンをくわえて走っても、誰にもぶつからない可能性があることも言っておくべきかもしれない。静貴はそっと目を逸らした。もし知っていたら恥かくだろう。
そうして愛が五巻を読み始めようとした時、静貴はもう一つ言っておかなければならないことを思い出した。
「愛。あのな、学校に行く上で条件があるんだ」
そういうと彼女は首を傾げた。
「条件、ですか? 静貴さんが学校に行くのは、親父さんにとってもいい事なんじゃ……」
「まあ、な。だけど、それは違う方を条件に出したっていうか……あー、説明すればいろいろ面倒臭くなるから省くけど、お前は人間として学校に通う上で俺の仕事手伝ってもらおうと思う」
「お仕事……親父さんはカシダで働いていると聞きましたが、そのお手伝いですか?」
「ああ、学校から工学関連は思いつかないだろうけど――――愛、外出するから漫画しまっとけ。学校行くんなら知り合いもできるし、これから人間として過ごしていくんだから服買っとかないと。説明は行きながらするから」
今彼女が来ているのは、アンドロイド用のポケットが二つ付いただけの白いワンピースだ。しかしワンピースといっても可愛らしいフンワリしたものではなく、大雑把にくっ付けられた布に近い。指定すれば注文した時にカシダ社が作った限定ものの服を着て買われたりするが、アンドロイドを直接買ったことがない静貴は知らない。
言われた通りに漫画五冊を本棚に直し始めた愛は、初めての〝お出かけ〟に嬉しく思っているようだった。
※※※
真夏なのに着替えるのが面倒くさいからと言って、ジャージで来るんじゃなかった。家を出て早々に静貴は後悔するはめになる。汗を拭うと、黒い袖が日を一瞬だけ隠した。その所為で悪くなった機嫌を隠そうとはせず、聞かれるままに静貴は先程の条件について彼女に話し始めた。
静貴が彼女を拾い、戦闘用に改造したその日――つまりは昨日の、晩のこと。
昼間に一度会った父親はデスクワークをしていて、夜の七時くらいまでは使用人が晩御飯を作ってもリビングに降りてこなかった。根っからの仕事人間なため、全てを終わらせてからじゃないと休憩しようにも落ち着かないんだろう。これも峰崎家では珍しい光景ではない。そんな時は静貴と父親の達郎の食べる時間がずれ、彼は喜んでいたのだが。
その日は愛を改造するのに時間を取り、それだけできなかった執筆を進めようと頑張っていたら、鉢合わせするはめになったのだ。
冷えた料理を温めなおして貰っている間。話すこともなく沈黙していた食卓で、声を出したのは達郎の方だった。学校にはまだ行かないのか、と聞かれた時は、嗚呼またいつもの小言か説教か、と静貴は思っていたのだが。
そろそろ学校へ行って、俺の仕事を手伝ってみたいか。
達郎にそう言われた時、静貴の頭に思い浮かんだのは、自分が父親をあっと驚かせる姿。そして思った――これはチャンスではないか?
今まで思い通りに動いてやったというのに、少しでも自身の想像から外れればとことん馬鹿にしてきたこの男に、一泡吹かせることができるのではないか?
『手伝うかどうかは内容を聞いてから決めていい。そもそもは警察のやることであって、お前がやるようなことではないからな。確かに潜入すれば情報は得やすいだろうが、軽い気持ちで受けることじゃない』『食べながらでいいから聞いておけ。お前に関係のない仕事かもしれないが、お前の将来には関係があるかもしれないからな』
『最近、違法のプログラミングデータが裏で流通しているようでね』『それの仲介者がお前の通うべき学校、立代にいるらしい』『これは確定だ。しかしそこにいるのがまだ主犯かは分からない。もし主犯じゃなくても、一つ潰せば犯罪に肩入れしている連中への見せしめになるだろう』
『一晩くれてやるから、じっくり考えろ』『これを機にアンドロイドの使用についても真剣に考えろ』『返事は明日聞く……食べ終わったら早く寝ろ』
本当ならそこで返事をしてもよかった。だが静貴にとって達郎は嫌悪の対象なために、やる気があるやら、やっとこっちの道に進む気になったか、やら思われても後々期待されて面倒なことになるだろう。それなら、一方的に話して一方的に終わった話に、てきとうに頷いている方が楽だった。
ポストの横にある電柱の張り紙が取れかけていた。炎天下での移動の上、長く話すと喉が渇く。一度立ち止まって、愛に持たせていた荷物の中から飲料を出して飲む。喉を通った冷たいスポーツ飲料、頭がスッと冷えていく感覚に機嫌が直った。
飲み終わってペットボトルを愛に渡せば、受け取った彼女の鳶色がじっとそれを見ているため、静貴は小さく飲むなよと釘を刺した。いくら人間に近くなるよう改造したと言っても、流石に内面までは完璧にできない。人間が食す時のように、喉から食べて胃の代わりになる空白のスペースを作ってもいいが、中で腐った食べ物をわざわざ取り出してからの毎日のメンテナンスなど、彼が進んでやるわけがない。その上、(疑似を作ることもできるが)彼女に味覚などないのだから、娯楽での意味すらないのだ。その事実を知っていて指摘された愛は、少し不貞腐れたように肩を落とし、飲料を小さめのリュックに仕舞う。
リュックの中には、大量の自立型アンドロイドの補充電池が入っていた。その数は一時間分を補う電池が八つと二時間分を補う電池が二つ。全部を使うことはないだろうが、予備があっても邪魔にはならない。リュックのファスナーを閉めたのを確認すると、眩しさに目を細めながら静貴は再度ズンズンと歩き出した。
外に行けば真夏日でも人が沢山いる。子供が二人とマンションを通りすぎて、十五分後。黒に英字の書かれたシャツをパタパタとさせ小さな風を作りながら、目的地であるデパート『フクシマ』の自動ドアを潜った。途端、エアコンの風が汗掻く肌を撫でる。デパートに入ったのが初めての彼女は、先程までなかった大きな音と涼しさに目を剥き、中の賑やかさと綺麗さに興奮した様子で歩を速めた。
市一番のデパート『フクシマ』はカシダが契約しているところの一つで、インフォメーションやそれぞれの店の会計、障碍者のための付き添い案内サービスなどでカシダ社のアンドロイドが使われている。新しく契約するところに視察にいかないかと言われ、昔開店前に達郎の部下と共に来たことがある。その時に確か、アンドロイド以外の従業員は監視カメラ映像の見張りや店内の掃除と細かいものをやっていた。元々視察でやる主な仕事は、アンドロイドの必要な数や固定型アンドロイドのチューブの長さなどを測ることだ。その数が凄く多かったため、嫌な仕事のことでも記憶に残っている。
「おい、ふらふらするなよ。寄ってもいいけど、まず服買ってからだ」
「はーい!」
静貴の言いつけに元気よく返事する愛は、まるで公園に来た子供だ。あまりに興奮しているその姿に呆れながらも、できるだけ速足でエスカレーターを使い八階に行く。まだアンドロイドの初期の服装である愛を、できるだけ人が多いところで長居させるわけにはいかないのだ。お目当ての服屋につけば、数少ない人間の店員に声をかける。
「中井さん」
「……、お久しぶりです、峰崎様。いらっしゃいませ」
長い黒髪をお団子にして纏めている女性店員・中井は、達郎も静貴もよく使うこの店で既に顔見知りとなっている。
「こいつに合う服を五着ぐらいセットで見繕ってくれませんか」
後ろでニコニコ笑っている愛を目で示せば、一瞬驚いたようだったが、すぐに表情を直して畏まりましたと女二人で店の奥に行く。
残った静貴は一人会計の隣で壁に背を預け、携帯を弄り始めていた。
※※※
中井が見繕った中から五着ほど、主に愛の好みであるフェミニンを選び買った後は、愛のリクエストにより『フクシマ』の一階にあるファーストフードで外食を取ることにした。食べることはできないが嗅覚で感じ取ることはできるため、それを楽しみたいらしい。スキップになりそうなほど軽い足取りで前を行く愛を、静貴は呆れを越して羨みの目で見ている。廃棄される前はあまり外に出させてもらえなかったのだろうかと、思考に集中し現実逃避を始めた。
白色のチュニックワンピース、勿論レースにシフォン。下はピンク色のショートパンツで、ベルト部分から取り外し可能の、花のチャームが三つ付いているチェーンもセットになっていた。これは中井の見繕ったものではなく、彼女が初めてだから一着だけでも選びたいと意見し悩みに悩んで買ったものだ。
アンドロイドの初期服装は地味なもので、愛玩用として作られた愛は華やかな服を切れなかったことに対して不満を持っていたため、今好みのものを着れたことで上機嫌になっていた。それこそ、満面の笑みですれ違っていく人の目を惹くぐらい。
主に主人の見栄で連れてまわされる自立型観賞用――愛玩用に似せて作られた彼女は、人間の髪に限りなく近い茶色の髪に、鳶色の目を持つ美貌の持ち主だ。笑った顔は愛らしくもあり綺麗でもある。それが故に、静貴が現実逃避を始めたく思うほどには目立っていた。
しかし、静貴が辛いと思うのは注目を浴びるからではなく、集まる視線の中に疑問がありありと表れていたからだ。言うならば、「美少女の後ろにどうしてあんな平凡が」という羨みまじりの視線。その内慣れるだろうが、正直見てくる人全員に説明するわけにもいかないので、わざわざバッと振り返ってまで二度見するのはやめてほしい。彼はそっと溜息を吐いた。
一階のファーストフード店につけば、注文をしない内に愛が一人で奥の席に行こうとするため、静貴が慌てて呼び止める。彼の声に驚いた客がその顔を見て、目線の先にいる愛を見れば、来るまでと同じように視線とひそひそ話が絶えない。
また、何も食べることができない彼女と一人で食べだす彼を見て、そのひそひそ話に軽い陰口が混じりだしていたことに、静貴だけが気付いていた。愛は状況に気付かず、匂いと彼の食事姿を堪能して一人上機嫌だ。
事情を知らないのならば配慮のできない男に見えるのだろうと、仕方のないことを気にするのを諦め食べることに夢中になっていれば、不意にアルトの声が頭上から聞こえてきた。
「いやあ、まさかヒッキー無愛想な峰崎くんに会うとはね!」
顔を上げると、イスの背もたれから乗り上げて、チシャネコのような笑みを浮かべこちらを見る同級生がいた。本来なら護衛であるが故に警戒しなければならないのだが、静貴に釣られるように彼女を見た愛が目を輝かせる。
「またえっらい可愛い子まで連れてさあ。学校行く気になったァ? 自称病弱な美少年、頭を吹っ飛ばしたくなる峰崎くん?」
「相変わらずムカつく奴だな」
「本当のことじゃあないか!」
酷いことを言うよね、君は。
そう言いながらまったく傷付いた様子はない彼女は、話しかけたくてじっとこちらを見てくる美少女にニッと好意的な笑顔を見せる。
イスから降りて愛の隣に強引に座り、初対面の彼女の手をとって大きく縦に振る。
「あたしは菱方真央。マオちゃんって呼んでねん!」
「マオちゃんですか! 初めまして、愛と言います!」
「愛ちゃん、かぁわいい名前。美少女すぎて惚れっちゃうぞッ!」
きゃッ、と乙女のように両手を頬に当てるは無邪気な笑顔もあって、子供のようだ。
短髪でツリ目、アメカジ風のキャラTシャツにショートパンツのオーバーオール。前髪をあげてオレンジ色のピンで留めている彼女は、静貴の長めな前髪を前から気に入っていないようである。強引に愛の隣に座って自己紹介が終われば早々、向かい側にいる彼の前髪を指さした。
「ねえ、それまだ切らないの? 鬱陶しいじゃないか、見てる方が」
「見てる方がかよ。まだ切らねえよ。目が見えないわけじゃないし」
「愛ちゃんに切ってもらえば? 美少女に切ってもらえば、例えどんな前髪になっても耐えられるよね? いやあ、まさかそこまで甲斐性の無い男だとは思いたくないぜ!」
「俺じゃなくても前髪が変になるのは嫌だろ。お前の女至上主義にはついていけん」
「信じられない! ヒッキー無愛想平凡男如きが、清楚系控えめ美少女の好意を無碍にするだなんて、アレ、前々から疑問に思ってたけど、峰崎くんって頭おかしいのかい?」
「お前に言われたくねえよ。面食いストーカー女」
「死ねッ!」
嫌悪を隠さずに罵声を浴びせる真央に、静貴も容赦のない暴言を放つ。二人にしてみれば、仲のいい友達の間で行われる軽口なのだが、人間の常識をあまり知らないどころか人間とのコミュニケーションすら一日ちょっとしかない愛は真っ青になる。
「まさに、戦争ですね」
「は?」「え?」
「諍いが此処まで激しいものとは思いませんでした……。お二人はどうしてそこまで仲が悪いのですか?」
「…………」「…………」
顔を見合わせた静貴と真央。前者は顔を顰め、後者は心配そうに眉を下げる。
「これは純粋なの? うちの学校行ったら、毎日ぶっ倒れそうな子だね」
「明日または明後日から、その学校に行くけどな」
「え、転入生だったの愛ちゃん。これまだどうして、こんな微妙な時期に」
三人は同じ歳で、今は二年の夏休み直前だ。驚くのも無理はない。えっと、と狼狽える愛を横目に言った。
「俺の従者として雇われたんだ」
「従者? それこそなんで今更」
「前はどうにか話逸らしてきたけど、学校行くっつったら丁度いいからって、もう誤魔化せなくなった」
「あ、ヒッキー卒業するんだ?」
「元々引きこもりでもねえけどな」
静貴は執筆に時間を使いたかっただけであって、少しコミュニケーションは苦手だが、もう愛を相手にするのも慣れた彼は、別に外に出るのが嫌いなわけじゃない。行こうと思えば学校にも行けるし、大人数を相手にすることもできる。
「へえ、じゃあ……あれ、もしかして愛ちゃんってアンドロイド? この細い腕で戦えるのん?」
「こう見えても怪力だぞ。それに、武器は拳銃やナイフとかが多いから、あんまり腕力いらねえしな」
「お掃除も得意ですよ!」
「愛ちゃん、それ戦闘関係ないよ!」
ここぞと自己アピールする愛に、真央は冷静返す。会話が難しい……、と呟く愛を放置し、二人だけで会話を続ける。真央は愛に話しかけたかったようだが、まだ人間としての設定を細かく決めていなく、ボロが出ては困ると思った静貴が話しかけ続けるのだ。
「――そういえば、菱方はどうしてここに? また服買ったとか、そのついでに?」
「あー、さっきまではソーマたんと一緒にいたんだけんどねー」
ソーマとは二人と同じクラスの平颯真のことで、教室ではよく三人で一緒にいることが多い。愛だけが話が分からず首を傾げるだけだ。
「用事があるらしく早々に帰ってね、わたくしは一人で寂しく食事、ああなんと因果がヨヨヨ……」
「何が因果だ。一人飯くれえで鬱陶しいな」
「基本ぼっちの君とは違うんだよん」
静貴のポテトを勝手に貰い、それを食べ終わると席を立って愛に笑いかけた。
「あんまり話しできなかったけど、じゃあまた学校でね、愛ちゃん。オマケで峰崎も」
「はい、またお話しましょう!」
「…………」
愛だけが返事し、静貴は買ったジュースを飲んで見送った。
※※※
家に帰りオクで愛の電池の残量を確認し足りない分を補足すると、彼女は真央のことについて根掘り葉掘り聞いてきた。何をしたら喜ぶか、何が好きなのか、と聞いてくる愛に静貴が甘い物が好きらしいと答えれば、家事を手伝いたいと言い出し了承すれば早速リビングへ向かった。今頃家政婦と共に夕食の相談でもしているだろう。
静貴はいつも通りパソコンの前に座り、集中して執筆を初める。明日から学校に通いだすから、今日のうちに進めておかないと。仕事のこともあり、明日からはこちらに気を向ける事が難しくなるだろう。
――コンコンッ、とノックの音。誰かと思えば、先程リビングに言ったばかりの愛がいた。
「何かあったか? ……ああ、そういえばあのオバサン、食事に煩かったな。初心者だから駄目だとか言われて、追い出されたか?」
「いいえ、里山さんは優しかったです! それよりも困ったことがありまして」
「何だ?」
「電子レンジの使い方が分からないのです」
言われて首を傾げた。それにつられるように、相手も首を傾げる。家政婦の里山に教わらなかったのかと彼が聞けば、愛が忙しそうで声をかけれませんでしたと答えた。
「なんだよ、機械なのに機械の使い方分かんねえのかよ」
「しょうがないじゃないですか………………静貴さん、電子レンジを音声で操れるようにできません?」
「電子レンジは話し相手じゃないからな。考えておくが、期待するな」
「はーい」
そうして、時間が経っていく。




