駄菓子屋の猫
お題SS合戦
お題:「駄菓子屋の猫」
芸熊さんとのバトルです><
駄菓子屋の猫
「おばちゃーん!これください!」
ボクは1個30円の袋菓子を手に、おばちゃんを呼んだ。
「はいはーい」
奥から出てくる駄菓子屋のおばちゃん。
もうこの土地で何十年も駄菓子屋をやってるらしい。
「はい、30円ね」
お金を渡しながら
「あれ?今日はクロいないの?」
いつもはそこいらの床で横になって涼んでいる猫を目で探した。
「この暑さだからねぇ。奥の部屋で涼んでるよ。あ、今出てきたよ」
全身真っ黒な猫が奥からゆっくりと出てきた。
クロ~と言いながら触ろうとする。
クロはおとなしい猫だが、触ろうとすると、毛を逆立ててシャアッと逆らってくる。
「ちぇ、ボクのこと嫌いなのかな」
「そんなことないよー。誰にだってこうだからしょうがないんだよ」
「でもおばちゃんにはいつもすりすりしてるよね」
そう言って、おばちゃんの足下にすりすりする、駄菓子屋の黒猫を眺めた。
「そうだねぇ。飼い主だからかねぇ。でも無愛想で困っちゃうよ」
おばちゃんは、優しく笑った。
夏休みも中盤にさしかかったある日。
「今日はどれにしようかな」
ボクはいつものようにお菓子を選んでいた。
するとクロが寄ってきた。
「あれー、クロ、珍しいね」
撫でようとしても嫌がらない。しばらく撫でてから、おばちゃんを呼んだ。
「おばちゃーん」
だが、出てきたのは見たことのないおじさんだった。
「悪いねぇ。今日はおばちゃん休みなんだよ。」
「おばちゃんの旦那さんですか?」
「そうだよー」
そう言いながら会計してくれた。
「おばちゃん、病気なんですか?」
「うん、ガンっていう難しい病気にかかっちゃって入院してるんだ。だからしばらく店には出られないんだよ」
クロが寂しそうに「なぁご」と一声あげた。
「そうなんですか・・・。おばちゃんにがんばって!と伝えてください」
「わかったよ。ありがとうね」
おじさんは、おばちゃんと同じように、優しく笑った。
あっという間に夏休みは終わり、久しぶりにいつもの駄菓子屋さんに顔を出してみた。
「あ、おばちゃん!」
おばちゃんは棚にお菓子を並べていた。
「あら、久しぶりね」
おばちゃんはいつものように優しく笑った。だが少し痩せて見えた。
「おばちゃん元気になったの!?」
「もう元気だよ!心配かけてごめんね。早期発見だったからすぐ治ったんだよ」
「ガンって聞いたからびっくりしたよ。元気になって良かったね!」
「ありがとうねぇ」
「あれ?クロは?」
この間はすりよってきたクロが居ない。おばちゃんがクロ~と呼ぶと、「なぁ」と一声聞こえてから、ゆっくりとおばちゃんの足下にすりよった。
「やっぱり、クロの居場所はおばちゃんなんだね」
「もうちょっと無愛想も直れば助かるんだけどねぇ」
おばちゃんは、少し痩せた体でいつものように優しく笑って、クロの体を撫でた。
駄菓子屋の黒い猫も少し、笑ったように見えた。