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初めての夕焼け
僕はゆっくり立ち上がった。
膝は震えている。
それでも、一歩踏み出す。
足裏に伝わる感触は、
さっきと同じ。
でも、意味が違った。
――支えられている。
顔を上げると、
今まで見えなかった景色が広がっていた。
谷を抜ける風。
遠くの山。
流れる雲。
「……きれいだ」
思わず、そう呟いた。
前を歩く揺れる黒髪は、振り返らない。
でも、もう僕にもわかる。
そんなに気を張ってちゃ生きていけないとは、
わらわれてなどいなかった。
もっと気を抜いて生きていいんだよ、と囁いてくれていた。
わからなかった、あの頃の僕には。
落ちるかもしれない橋を前に、
ヒビが入ってるかもしれない橋の上で、
怖がらずに景色を楽しもうなんて、
最初からできるはずがなかった。
見えなかった、こんな景色には。
一度手放して、知った。
一度諦めたから、見えた。
やっとわかったから、
あの時教えてくれた夕焼けの色を見ることができた。




