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婚約破棄された引きこもり魔女ですが、実は天才魔女でした。王宮で無自覚覚醒します!  作者: 兎丸 蓮


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第5話 地味で不遇な令嬢の退路封鎖 ──平穏生活、令嬢断たれる

「もうね、君は文句なし、王宮魔術師として合格、合格だよ! 

 いやぁ、素晴らしい。

 

 ヴァービナス侯爵領地で君の魔法を見た時も圧巻だったけど、

 うんうん、アッパレ、見事だね。

 

 この魔力馬鹿のクロフォードの魔法銃の弾を

 すべて弾いちゃうってなかなか出来ない芸当だよ。

 そもそも、クロフォードは全然手加減ってものが出来なくてね、

 いつも受験者に怪我を負わせてしまうんだよ」


 銀髪の彼は上機嫌で捲し立てた。


 キレイな顔立ちをしているが、

たぶん年は三十代後半。

 不思議な魔力を纏っている。


「『魔力馬鹿』は余計だ」


 不服そうにクロフォードは呟いた。


「しかたないだろ、事実なんだからさ」


 にこっと屈託なく微笑む彼に、クロフォードの顔が引きつった。



 改めて部屋を変え、今度は賓客室に案内された。


 さっき玄関先で顔を合わせた侍女からお茶と菓子が給仕された。

 琥珀色に透き通ったダージリン紅茶。

 真ん中に真っ赤なベリージャムがとろりと載った黄金色のクッキー。


(美味しそうだなぁ。けど……)


 さっきから胃がキリキリして痛い。


 魔法省大臣と天才王宮魔術師クロフォード。

 そして、美しいがやけにしなやかな筋肉を持った

端正な顔立ちの軽快な口調の銀髪の男。


(人懐っこい笑顔を浮かべているけど、絶対に高貴でとんでもない人だよ)


 銀髪の男の正体をなんとなく本能的に察しながら、

エレナは恐々と彼を見た。


「はあ、本当すごいなあ。

 ちょっと乱暴なこの試験の目的はね、

 緊急事態のときどこまで身を守れるかっていうのなんだよ。

 いやぁ、でも、ここまで僕が興奮したのは久々だ!」


 彼は子供のように弾んだ声をあげる。


「これで君が剣まで使えたら、

 魔法騎士からもスカウトされちゃうところだったよ。

 あ~、本当君が剣を使わない令嬢でよかったよぉ」


 彼は露骨に胸をなでおろす。

 それをピーテルが呆れるように口を挟んだ。


「マインラート、もう少し落ち着いたらどうだ? 

 エレナ嬢も混乱しているぞ」


 呆れるピーテルの言うとおりだった。

 エレナはこの彼のテンションとその勢いに圧倒されていた。


「ああ、そうだね。ごめんね。もう、すごく楽しくなっちゃって、あはは」


 マインラートがコホンと咳払いをする。

 背筋をすっと伸ばした。


「改めまして、僕はマインラート・ソシュール。

 宰相府人事部魔術師採用室の室長をやっているんだよ」


 銀髪の男、

マインラートは胸に手を当てて、

にこにこと笑顔を浮かべる。


「簡単に言えば、

 王宮魔術師の採用人事権を握っている偉い人なんだよ、

 全然見えないでしょ?」


 なんともコメントしづらく、エレナは乾いた笑みを浮かべて、心の中で叫ぶ。

(やっぱりぃ~! 物凄く偉い人だったぁ!!)


 どうやらエレナをスカウトした父の言う“著名な王宮魔術師”というのは

彼のことだろう。

 ということは、

彼がここの屋敷の家主で、元王宮魔術師筆頭様だ。


 彼らを前にして

優雅にクッキーを摘まめる自信なんて、

エレナには一ミリもない。


「だな。とてもじゃないけど、高貴な御仁に見えねえ」


 ぼそっとマインラートの隣でクロフォードが悪態をつく。

 マインラートにぽかっと後頭部を殴られ、小気味の良い音を立てた。


「痛っ!」


「はあ、クロフォード。

 いい加減、君は口を慎むことを覚えた方がいいんじゃないかな」


 ため息交じりにピーテルに言われたクロフォードは、口を尖らせた。


「はーい、気をつけまーす」


 素直に返事をするが、まったく反省している感じがない。


「ああ、ごめんね。話が逸れちゃったね。ええと、紹介を続けるね」


 マインラートはご機嫌なのか、口調がすごく滑らかだ。


「ピーテル様はさっき話していたからもういいよね。

 あ、言っておくね、彼は魔法省大臣でもあるけど、僕の良き相談相手。

 大臣兼任で宰相府人事部魔術師採用室の次長もやっているんだよ」


 マインラートに改めて紹介されたピーテルが軽く笑顔で会釈する。


「で、この子は僕の弟子で、君の二つ年上、クロフォード・ノーエランドだ」

 改まった声でクロフォードを紹介した。


 クロフォードは、意外にも謙虚に丁寧な会釈をする。

 エレナはびくびくしながら軽く会釈し返す。


「あのね、こう見えてもクロフォードはね、

 魔力量が軍部最高責任者のハウルデュース公爵や

 ルシアン・クレインバール総騎士団長以上、

 ひょっとすると皇帝陛下以上かもしれないんだよ。

 すごいでしょう? 

 まあ口と態度は悪いし経験値は浅いのが玉に瑕なんだけどね」


「んだよ、ディスりじゃん」


「違うよ、ディスってないって」

 

 マインラートはクロフォードに向かって、手をひらひらさせる。


「やだなぁ、ここからがクロフォードの真骨頂。

 

 魔術の繊細な技術力や操作力は僕以上に上手いし、割といい奴。

 しかも意外と面倒見もいい。

 王宮魔術師になるということは、

 彼の後輩になるということでもあるから、

 彼には試験官として立ち合ってもらったんだよね」


 クロフォードは

マインラートが本当に自分を褒めたことを意外そうにして、

目を丸くする。

 

 それからエレナと目が合うと、小恥ずかしそうに頬を掻いた。

 それは同世代の男の子という仕草で、エレナはなんとなく好感を抱いた。


「それでね、本当は君に王宮魔術師になってもらいたいところだけど」


 マインラートは顎に人差し指をあてる。


「王宮魔術師が無理っていう話なら……

 ピーテル様から話はあったと思うけど、

 魔法省調査部の女官として働いてもらえればいいかな、って。

 けどね……、

 ちょっと想像以上に能力値が高すぎて、

 勿体ない気もしてきたんだな、これが」

 

 マインラートの語尾が少し言い淀む。


「そ、そうおっしゃいましても……」


 エレナは視線を泳がせた。


(魔法銃のような物騒なもので

 毎回攻撃されるような王宮魔術師なんて、絶対無理! 

 命がいくつあっても足りない)


 そんなお仕事よりも、

最難関の官吏登用試験を受けなくてはいけないけど

魔法省の女官として

魔道具の研究や現地調査をしていた方が断然いい。


「要は、あれだろ?」

 クロフォードが口を挟む。


「エレナ嬢は人見知りで、

 極端な対人恐怖症だけど、

 魔法使いとしては申し分ない才能がある。

 この才能を生かしたいってことだよね?」


「まあ、そうだね」


 マインラートとピーテルは頷いた。


「なあなあ、魔法は好き?」


 クロフォードが真っ直ぐエレナの瞳を見て尋ねた。


 躊躇いなく向けられた美しい若草色の双眸。

 エレナはドキッとする。


「は、はい、魔法、す、好きです」


「だよな。

 魔法の能力っていうよりセンスがすごくいいと思ったんだ。

 俺の周りであんなふうに

 自分の背後一帯に防御魔法を施すような奴なんて

 そうそういない。

 あれ、無意識に無詠唱でやって、防御壁を張ったんだろ?」


「む、無詠唱ができるのは防御壁を作るだけで……。

 でもカーテンみたいに揺れるものや、

 すでに他の方が張った結界魔法が施されている場所だと、

 上手く対応できないです……」


 なんとなく視線が下がった。


「なるほどね。

 けど訓練次第では、動く生き物も、

 すでに魔法がかかってるものも含めて

 施せるようになるよ」


「え、そうなんですか?」


 エレナが弾けるように顔を上げると、

クロフォードはくすっと笑った。


「ああ、できるよ」


「あ、あの、

 ちなみにあの部屋に施されていた結界は、

 防音と透視だけですか? 

 それ以外にも感じたことのない特殊な防御結界を

 感じたんですけど……」


 エレナは思い切ってさっきから気になっていたことを質問した。


 すると、三人は驚くように顔を見合わせた。


「はぁ、これは卓越した能力だねぇ」


「ああ。

 部屋に結界が張り巡らされていることに

 気付くだけでも凄まじい感知能力だ。

 ましてや、あの部屋自体に『修復強化魔法』が

 張ってあったことまで見抜いているとは……

 うん、驚異的だね」


 ピーテルが驚嘆していた。


「「これは是非とも王宮で魔法使いとして働いてもらいたい!」」


 マインラートとピーテルの声が重なった。


「だよなあ。魔法省だけじゃあ宝の持ち腐れだ」


 クロフォードが頭の後ろで手を組んだ。


 エレナは慌てた。


 そんなに凄いと言われるようなことをした覚えはないし、

宝の持ち腐れなんてどうでもいい。


 ひっそりと穏やかに暮らせればいい。

 そこにちょっとした魔法に携われればそれで幸せなのだ。


「なあ、リックランス大臣」

 

 クロフォードがピーテルに視線を投げた。


「〈影〉の諜報部隊で使うっていうのはどうかな? 

 団体行動が難しいと言うなら、

〈影〉は基本一人行動だし、

 それはそれでいいんじゃない? 

 

 侯爵令嬢という身分からもあまり危険な任務を

 やってもらうのは気が引けるだろうけど、

 あれだけ機敏になんだかんだ動けるなら問題ないと思うよ」


「やはりそっちの方向になるか。だが、ヴァービナス侯爵になんと言えば……」


 ピーテルがため息をついた。


「いいじゃん。

 他国に任務で行かせるのは難しくても、

〈影〉として王宮内の情報を探ってもらいつつ、

 本人は魔法省の女官として危険な魔道具解析とか、

 未知なる魔法開発の研究に精を出してもらえば。


 リックランス大臣だっていつも言ってたじゃん。

『気軽に国家機密級の難解な取り扱い注意の魔法案件を

 頼める人材が魔法省にもっと欲しい!』って」


 クロフォードがさらりと提案した。


「確かにな。

 う~ん、調査研究室は慢性的な人手不足だ。

 けど、どうしても危険が伴う」


 ピーテルは顎を撫でながら天井を仰ぎ見、逡巡した。


 どうやら、彼らがエレナにやらせたい仕事は危険が伴うらしい。

 有力貴族の娘に下手な仕事はさせられない、と渋っているようだ。


 やはりどこへ行っても、私はヴァービナス侯爵家の娘。

 暗澹たる思いが胸をよぎる。


「なあ、エレナ嬢」


 クロフォードが身を乗り出す。


「はひ!」


 エレナは思わず声が裏返った。


「〈影〉になれば、

 なんの制限もなく国家機密級の魔法を調査できるぜ。

 そういうの、興味ない?」


「きょ、興味ですか……。えっと、その前に、か、〈影〉ってなんですか?」


 エレナがどもって訊き返すと、

ピーテルがマインラートと神妙に顔を見合わせた。


「そうだね、一言で言うと危険なお仕事かな。

 生半可な気持ちでは困る、大事なお仕事なんだよ」


 冷ややかな声でマインラートがティーカップをテーブルに置いた。

 何となく場がひんやりとした。


 今まで柔和だった分、

マインラートの全身から放たれる迫力が凄まじかったからだ。


「まあまあ、マインラート。そんなこと言われたら怖がらせてしまう。

 それにヴァービナス侯爵家は中立派だ。

 内容を伝えるくらいなら問題ないし、

 最後に守秘義務の念書を書いてもらえばいいだろ。

 

 せっかくクロフォードが提案するように

〈影〉の任務ができそうな人材を見つけたんだ。

 私も薄々そっち方面を考えていたんだよ。

 あとは本人に決めてもらえばいいだろ?」


 ピーテルが言い返すと、マインラートは束の間考えて、頷く。


「……そうですね」


「エレナ嬢。あのね、この〈影〉という存在は、国家機密組織なんだよ」


 ぎょっとするほど、冷たい声音でマインラートは話し始めた。


「へ? こ、こ、国家機密……。そんなに重要なことなんですか……?」


 エレナは飛び上がるように驚いた。


(しまった、聞くんじゃなかった!)


 踏み入れてはならないところに踏み入れてしまった。


 そんな気がして尻込むが、マインラートの説明はもう止まらない。


「彼らは、

 皇帝陛下ならびに皇太子殿下の御身を

 守るために存在する部隊なんだ。

 

 詳しい組織図や構成人数、身元の詳細は皇帝、皇太子殿下、

 そして上官の僕とピーテル様以外、

 知らせることはできない。

 そこは許してね」


「え? 皇太子殿下は留学中なのでは?」


「そう、その通り。さすが侯爵令嬢。

 情勢をよく把握しているね」


 マインラートはにっこり頷いた。


「殿下は、ビファーヘイブン共和国に留学中だ。

 そのため皇太子殿下の〈影〉の数名は、学友と称して出向いている。

 残りの〈影〉については別の皇族が取り仕切っているんだよ。

 まあ彼らの任務は大半が警護だが、

 専門的に調査を行うのが諜報部隊班だ」


 諜報。

 つまり、貴族勢力を気にせず内部調査をする、ということだろう。

 

 マインラートは遠い目になると、

椅子の背もたれにもたれかかった。


「基本、〈影〉の諜報部隊は単独行動なんだ。

 〈影〉同士も仲間の素性も素顔も知らない場合が多い。

 本当に孤独な仕事だし、命の危険だってある。

 もし今後結婚して〈影〉を引退したとしても生涯他言無用、

 一生家族に嘘をつき通さないといけなくなっちゃう。

 ……だから、君の身を案じているご両親のことを思えば、

 止めておいた方がいいかもしれないね」


 エレナの目線は下がった。


 そんな重大な仕事、私にできるはずがない。


「けどさぁ」


 クロフォードがすかさず明るい声を差し込んだ。


「〈影〉になれば、真っ先に魔道具や魔法に携わる

 チャンスはぐんと増えるんだぜ。

 女官の新人なんて立場じゃ、やりたい研究は回ってこない」


「へ? そ、そ、そうなんですか?」


「そりゃあそうだろ」


 クロフォードはクッキーに手を伸ばして、口に放り込む。


「なんだかんだ年功序列だ。

 先輩たちのところにそういう案件を先に持っていかれちまう。

 だけど〈影〉になれば真っ先に依頼が来るんだ。

 というか、

 機密組織の一員であるあんたじゃないと

 依頼できない代物ばかりだぜ」


 クロフォードの目が鋭くなったと思ったら、

エレナの顔をすっと覗き込む。


「どう? やってみたくない?」


 若草色の澄んだ瞳。


「俺が見たところ、

 あんたは相当な魔法好きだ。

 さらなる自分の知らない魔法に興味ないか?」


 クロフォードが面白がるような声をエレナに向けた。


「や、やってみたいです……!」


 エレナは、密かな好奇心が疼き出しているのが

バレたような気がして恥ずかしくなった。


「じゃあ、次は〈影〉としての採用試験を受けよう」

「え!?」

「クロフォード!?」


 クロフォード以外のみんながぎょっとした。


「〈影〉もスカウト採用が基本だけど、採用試験は必須だろ?」


 クロフォードは意地悪そうに口角を上げ、

マインラートに視線を投げた。


「まあ、そうだけどねえ」


 渋い顔で頷いたのを確認してから、

クロフォードはエレナを真正面から見据えた。


 ドキッとした。

 またあの瞳。

 吸い込まれそうな既視感。


 エレナは目が逸らせなかった。


「エレナ・ヴァービナス嬢」

「は、はひ」


「政略結婚も嫌。

 目立つ王宮魔術師も嫌。

 魔法省に入るための官吏登用試験を受けるのも躊躇ってる。

 これじゃあ子どもの癇癪と変わらないよな」


 エレナは言葉を失った。

 その通りだったからだ。


「分かるよ。

 あちらの不備で婚約破棄されたのは屈辱的だっただろうし、

 心ない誹謗中傷をしてくる社交界から逃げて、

 修道院に入りたくなる気持ちもすご~く分かる」


 クロフォードがテーブルに手をついて、ズイズイと近づいてくる。


 エレナは仰け反りながら、口をパクパクさせた。


(な、なんで知ってるの!? 

 修道院のことは家族以外に誰にも話してないのに!)


「けどさ、世捨て人になる前にさ、

 死ぬ気でやれること一遍やってみない?」


「え?」


「どうせ失敗したら修道院に入ればいいだけなんだし。

 でも成功したら、〈影〉として働く一方、

 仮初の姿として魔法省の女官を続けられる。

 好きな魔法にずっと携われるんだ。

 何も怖いもんなんてねぇじゃん」


「ぎゃ、逆を言えば、〈影〉の試験を突破すれば、

 超絶難しい官吏登用試験を受けなくても

 女官になれるってことですか?」


「そう。本職は〈影〉なんだからな。女官は仮初の姿だ。

〈影〉の本職試験を突破すれば合格する必要もない」


 とはいえ、危険任務までいかなくても、国の秘密を握るような仕事。

 自分にできるのだろうか、不安に思う。


 不意に、不敵な笑みを湛えるクロフォードから、

エレナは「嫌」という言葉を口に出すのを憚るような、

ただならぬ圧を感じた。


「受けるよな? 〈影〉採用試験。俺も協力してやるから」


「え? 協力?」


「ああ。魔法を教えてやるくらいはしてやるよ」


 クロフォードは事もなげに肩をすくめるが、エレナにとっては大冒険だ。


「そ、それでも、不合格だったら……?」


「ん~、そうなったら、あんたの首に縄付けてでも王宮魔術師にする。

 それが嫌なら、俺の弟子として任務に連れ回すのもいいな。

 俺、これでも顔が売れてるから、相当注目されるだろうけどさ」


 クロフォードは、いたずらを思いついた子供のように唇の端をくいっと上げた。


 天才で異端児、しかも美青年、その魔術師の弟子……。


 注目度を想像しただけで、恐ろしい。クラクラ目眩がする。


「ああ、そうか。

 それすら拒否するなら、

 あの『鬼団長』のクレインバール卿と結婚するしかないな。

 なんなら本人紹介してやろうか?」


 さらにぐいっと身を乗り出したクロフォードに、

エレナは心臓が口から出そうなほど驚いた。

 首をぶんぶん振った。


「いえ、い、い、いいです」


「いい? 何、やっぱ美形の鬼騎士団長に興味ある?」


「違いますっ!」


 クロフォードはエレナに覆いかぶさるように立ち上がった。


「だったら、受けるべきだろ。〈影〉試験」


 クロフォードの影がエレナを覆う。


 その顔には頬にえくぼを刻みながら、わざとらしく意地悪な笑み。


 息が詰まるような圧力に射すくめられ、

エレナは思わずコクコクと頷いてしまった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

エレナ、ひっそり暮らしたいはずが、ついに「逃げ道」を完全に塞がれてしまいました(笑)。

クロフォードのグイグイくる圧と、マインラートたちの勧誘……。

断る隙を与えない、まさに国家機密級の包囲網ですね。

いよいよ物語は、未知の〈影〉採用試験へと進んでいきます!

【お知らせ】

本作は「カクヨム」にも掲載しております。

そちらでもたくさんの応援をいただき、本当にありがとうございます!

もしよろしければ、お好みのサイトでブクマや評価などで応援いただけると、執筆の大きな励みになります!

次回、エレナはどうなってしまうのか……!?

どうぞお楽しみに!

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