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婚約破棄された引きこもり魔女ですが、実は天才魔女でした。王宮で無自覚覚醒します!  作者: 兎丸 蓮


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第13話 踏み出した令嬢の打破――古代魔道具と無効魔法

彼女を取り囲む男性受験者たちは、

濃い赤い靄に包まれている。


そして彼らの瞳が玉虫色のように爛々と光り出す。


不気味な眼だ。


――操られている。


これは精神を操る魔法にかかった者が見せる特徴だ。


この国では、

精神破綻(せいしんはたん)の恐れがある精神を操る魔法は

基本禁止している。


重罪人に自白させるときなどの特定の状況下で、

限られた者にしか使ってはいけない。


それなのに、

なぜこんな公然の場である王宮で

そんな禁止魔法が使われているの?


エレナは、

じっと艶然(えんぜん)と微笑む彼女を観察する。


(あの子から魔力を感じない。

 わたしみたいに魔力制限しているとかではなく、

 魔力そのものがない)


つまり、

ネックレスを身に着けているあの令嬢自身は

魔力を持っていない。


(じゃあ、誰がこれを巻き起こしているの?)


胸元のネックレスが光る。

甘ったるい官能的な甘い香り。

鼻腔(びこう)を突き破るような吐き気を誘うほどだ。


周辺の人々をより一層精神的に蝕む。


(ああ、そうか。

 あのネックレスが

 とんでもない巨大な魔力を秘めている魔道具なんだ)


魔道具は本来、使用者がいて成立するものだ。

使用者に魔力がないのに、

これだけの力を発動できるということは……。


「古代魔道具……」


エレナは小さく呟いた。



あれは人の心を惑わせる古代魔道具だ。



古代魔道具は長い年月を経て、

そのエネルギー源の魔石によっては

意思に近いものを持つと言われている。


彼女が通りかかったときに感じたあの気配。


あれは、

ネックレスから発するもので、

古代魔道具だったのね。


(道理で。今まで感じたことない魔力を感じたわけか)


古代魔道具を見るのも近くで感じるのも初めてだ。



けれど、あの玉虫色の瞳――。



古代魔術書の一節が脳裏に(ひら)いた。



『赤き(もや)に惑わされし瞳は

 (あや)しく玉虫色に光り、

 (ことわり)と魂を失う』



まさに今の状況は酷似している。

彼らは強力な魅了の魔法により操られている。


まさに古代魔道具が、

意思を持ち、

人の精神を(もてあそ)んでいるっていう状態だ。



(これ、(おさ)めないとわたし、

 試験、きっと不合格よね)


というか、

ローゼルが危惧したとおり、

試験自体も中止になる。



それは困る。



エレナは必死で目を凝らす。

赤い靄に包まれていないのは、

自分含めた女性たちと、

一部の男性たちだけ。


何故あの魅了魔法にかからないの?

彼らの共通点は?


(……ああ、そっか。魔法が使える、魔力持ちだから)


つまり、試験官全員魔法使い。


そして、一部の受験者男性たちもローゼルも、

自前の魔力による抵抗力を持っているから。


魅了の術にはかかるパターンがいくつかある。

男女ともにかかる場合。

もしくは、どちらか片方のみしかかからない場合。


今回は?


女性受験生を見ると、全員魔法使いとは限らない。

……ということは。


エレナは束の間、逡巡する。



「女性には効かない」

思わずぼそっと声に出る。



(そういえば、

 ローゼルがロシェとニコライに声をかけたとき、

 あの二人はハッとして元に戻ったよね。

 っていうか、あの赤い靄をローゼルの声が霧散させた)


きっとネックレスの魔法の効力は、術者次第。


持ち主が女性であり、魔力を持っていない。


だからこそ、魅了は出来ても、

完全に魔法にかかる前に同性に邪魔されたら、

魔法が立ち消えてしまう。


(それだったら……男たちに強くかかっている魔法を解除すればいい)


エレナは小声で魔法詠唱を唱える。

精神に影響が出ないように慎重に丁寧に、

ゆっくりと無効魔術を発動する。




   「光の理(アンチ)よ、

   欺きの影(エンチャント)を退けよ。

   惑わしに囚われし者たちを、

   真なる意志(サークル)へと還せ。

   我が声に応じ、

   守護の環(サークル)を成せ

   ――《無効魔法アンチ・エンチャント・サークル》」




それだけでは足りない。


また魅了魔法にかからないために、

すぐさま防御結界を一人一人にかける。

本来なら膨大で繊細な魔力操作が必要な精密作業。


けれどここで手をこまねいている暇はない。




   「光の盾(シールド)よ、

   欺きの術(エンチャント)を退けよ。

   惑わしに囚われし者たちを、

   真なる意志(ウィル)へと還せ。

   我が声に応じ、

   守護の環(サークル)を一人一人に成せ

   ――《無効防御結界アンチ・エンチャント・バリア》」




これで数時間くらいは

ネックレスの魅了魔法に干渉されないはずだ。



しばらくすると、

怒号を上げていた男たちが次々と我に返って、

黙り込んだ。



一瞬、奇妙な静寂が訪れた。



なぜ、あんなに令嬢を擁護していたのか。

操られていた彼らは、

自分の言動の理由を分かっていない。



どよめきと困惑が入り交じる中。


今試験直前の試験会場前にいるという現実に、

受験生たちは慌てて顔を青くして口を閉ざした。


それから、すごすごと受付の列に戻っていく。

ゆるやかな静けさが戻る。



「……あら?」


彼女はキョロキョロ見渡す。


突然誰も自分を擁護しなくなり、

そして、自分の周囲から男たちが

去ったことを不思議に思ったのだろう。



誰も彼女と目を合わせようとしない。



彼女の艶然と笑っていた唇が引きつる。


焦りを隠せない様子で、

赤いルビーのネックレスを指で撫でた。



「さて」


試験官の中でも最も屈強な体格のリーダー格の男が

ぐいぐい彼女の前に歩み寄る。


「改めて話を聞かせてもらおうか」


鋭い視線で彼女の胸元のネックレスを射抜く。


「特にその胸元のネックレスについてな」


「あ、あたしは何も悪くないわ!」


ギャーギャーと喚く彼女を試験官たちが数人がかりで、

抱えるようにして別室へ強制連行していく。


周囲が弛緩した空気を取り戻し、受付が再開された。



読んでいただき、ありがとうございます!


「これ、収めないとわたし、試験、きっと不合格よね」という、

エレナらしい現実的な理由(?)からの無効魔法炸裂でした。


「エレナ、ナイス解決!」

「詠唱がかっこよかった!」と思ってくださったら、

ぜひ下の**【★評価】や【ブックマーク】**で応援いただけると、

次話を執筆する凄まじいエネルギーになります!

次はついに試験本番、そしてクロフォードの「協力者」との接触……?

次回もよろしくお願いします。


※本作は「カクヨム」にも『カァーム・ビュラクラト ―元引きこもり魔女王宮奮闘録―』

というタイトルで掲載しております。


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