プロローグ2
□ステータス
名前:サイトウ・ハジメ
年齢:17歳
外見:ごく普通の日本人の少年。顔はイケメンではないが、普通より整っているものの、自信のない表情で、生前は女子受けが良くなかった。
・先天スキル
全属性魔法適正
ネット通販
タブレットPC
アイテムボックス
不老
・後天スキル
・称号
異世界人 ……異世界から召喚された者。意思疎通に関して加護が与えられる。
剣神の悪戯……剣姫と巡り合うように運命を操作される。剣術に関する成長補正がかかるが、努力が無ければ無意味になる程度のわずかな効果。
「おぬしは、死んだ。こちらの手違いでな」
猛スピードで突っ込んで来るトラック。
車の気配が無かったはずなのに、急に側面で大きな音がしたと思ったら、大きなトラックに引かれた所まで覚えている。
跳ね飛ばされた衝撃で、痛みはあるのに体が動かせず、頬をアスファルトが引きずって濡れた感覚がした記憶がある。
目が無事だったのか分からないが、液体に塗りつぶされたような左目は見えなかったものの、右目で見たのは慌ててトラックを降りた人物が、こちらを視認したと同時に車へ乗り込み、急発進させたトラックで、息の根を止める一撃を加えてきた所で、意識が途切れてしまった。
「天使……いや、おぬしの世界の概念で言えば『死神』が、あの場所に誘導すべき人物を間違えてしまってな……」
声が出ない。
たしかにあの日、俺はなぜか深夜にコンビニへ行こうと思い、財布を持って実家を出た。
明るい時間帯にコンビニへ行く事はあっても、男とはいえ未成年だけで夜に買い物へ行こうと思うことは、それまでなかったはずなのに。
(……)
そんな理不尽を伝えられた所で、思考が停止するだけだった。
だって、俺には未練が無かった。
学校では、孤独だった。
いじめは無かったし、疎外されていた訳じゃないが、誰と話しても周囲から浮いている感覚があった。
(俺はどうなるの?)
異世界転生ものの小説ばかり読んで、自分がそうなりたいと思った事もある。
そんな事を考えていると、もしかして?
と、今さらながら、心が震える感覚が沸きあがってきた。
「ふむ……なるほど」
目の前の存在が、何か考え事をしていた。
ぼんやりとしていた姿が、神様かな?と考え始めたら、貫禄のある老人に見え始め、髭を撫でるような仕草をしていた。
「そう、わしは神じゃ」
思考が読まれているらしい。
であれば、異世界で好き勝手できるようなスキルが欲しいです、と思念だけで訴えかける。
「よいぞ。こちらの手違いで死なせたのだ。法外なスキルを持たせ、異世界へ送ろう。もちろん、剣と魔法のファンタジー世界だ」
(マジで? やった!)
「ふむ……あやつに世話を頼むか……」
何やら神様は、邪悪な笑みを浮かべて小声でつぶやいた。
「空間魔法を授け、現地の金をその中に入れたから、あとは好きに生きなさい」
(え、どう生きて行けばいいのですか?)
「質問は受け付けない」
神様が手をかざすと、空間に幾何学模様が浮かび上がる。
そして気づくと――。
空の上から落ちていた。
「ああああああ……」
死ぬ、いきなりDEAD ENDは勘弁してください。
――いきなりゲームオーバーは回避できた。
地面に触れる直前に、慣性を無視したような減速が入り、肝が冷える感覚で気を失いかけたが、なんとか意志を保つ事ができた。
そこには、女神がいた。
「私の名前は、ミカ・ウェルカーヌス。少年、名前は?」
「サイトウ・ハジメです」
耳の長い、エルフだろうか。
白い髪と赤い目、十代後半みたいな見た目の、とても美しい女性だった。
どこか落ち着いている。
全てを見通すような澄んだ瞳が、こちらの顔を覗いてくる。
「美しい……」
「……」
そこから先の記憶は曖昧だった。
自分が異世界から来たであろうこと、そして、ミカという女性が持っていた『鑑定スクロール』という、自らの情報を書き写す事のできるもので、俺が持つ能力を説明した。
「異世界……ね」
ネット通販というスキルで、食べ物や書物を出して見せると、それらに興味深そうに食いついてきた。
人が空を飛ぶ、大気圏を抜けて惑星に降り立つ、そういう話を楽しむように聞いてきた。
「私はエルフ。二千年以上は生きている。君の話が本当なら、しばらくこの世界の常識とかを教えてあげる」
「ミカさん、お願いします!」
そういった所で、急に眠気が襲ってきた。
なぜだろう、ちょっと安心したら、頭が痛くなって耐えられなくなった。
俺は気を失ったらしい。
気づくと、隣では、剣を抱きしめて寝ている美少女がいた。
なぜ?
(次回、明日18時予定)




