プロローグ
□ステータス
名前:ミカ・ウェルカーヌス
種族:エルフ
年齢:推定2000歳以上
外見:10代後半から20代前半の美女・美少女。赤い目に、美しい銀色の髪(髪の長さは肩くらい)。
・先天スキル
風魔法
弓魔法
千里眼
・後天スキル
身体強化・極(剣)
筋力強化・極(剣)
見切り・極(剣)
空間魔法・極(剣)
防刃・極(剣)
対衝撃・極(剣)
耐状態異常・極(剣)
耐魔法(剣)
研磨(剣)
操剣
創剣
……(剣)は剣を装備している時、あるいは剣で扱えるスキル
・称号
剣狂い ……剣の道に狂いし者
剣聖 ……剣を極めし者
剣姫 ……周囲から剣姫と呼ばれし者
剣を妄執するエルフ ……剣に取りつかれたエルフ
救国の剣聖 ……国を救った剣聖
時を切り裂く剣 ……剣で時空へ干渉する者
因果断裂剣 ……物理的な剣で神域へ干渉した者を称える称号
救世の剣神 ……人の世界を守護した剣聖に贈られる称号
・呪い
剣神 ……剣の神(分身)を切り殺し、その実力を認められた者。体術と剣以外の武器を扱う事が出来ない呪いであり、祝福である。
□プロローグ
空から、人が落ちてきた。
物語であれば、年頃の少年がそれを見つけ、旅をするのがお決まりだろう。
しかし、エルフの女性が見たものは、少年がゆっくりと空から降ってくる場面だった。
「……」
面倒事の気配がする。
彼女には、それをする超常の存在に心当たりがあった。
「ここは……どこ?」
目を回している少年。
聞けば、少年は異世界から召喚された人物らしい。
彼女にとっては非常に残念ながら、気軽に剣で切り裂いてよいような、悪党ではなかった。
ミカ・ウェルカーヌスは、血に狂ったような辻斬りではない。
しかし、長命種のエルフ、それも女性でありながら剣の道に生涯を捧げた変わり者。
エルフは先天的に筋力が付きにくく、遠距離攻撃や魔法のスキルに適正があるにも関わらず、ミカはただ剣を振り続けてきた。
武器を持てば、それを使いたくなる。
それはエルフであっても同様であり、ミカは刃物で命を奪う事に迷いはなく、むしろ戦いになれば斬殺する事に喜びを見出す種族である。
長い生を持つがゆえに、それが露骨に発揮される事はないが、極めた技を誰かに見せる機会があれば躊躇わない。
「私の名前は、ミカ・ウェルカーヌス。少年、名前は?」
「サイトウ・ハジメです」
空から降ってきた人物は、異世界人であるらしい。
彼の話は面白かった。
異世界では、人類は空を飛び、月まで降り立ち、星の裏側の情報すら数秒で伝達するほどの高度な文明を持つらしい。
ミカは、その話を聞いて少し興味を抱いた。
そして、異世界人がこの世界の常識が身につくまで、しばらく面倒を見てもよいと思った。彼女には時間だけは余っており、心情的にも、他者に教える余裕はあるのだから。
(それに、これはアイツの差し金だろうし)
「私はね、剣を極めることに人生を捧げてきた」
ミカはハジメにそう語った。
エルフの女性なのに、剣一本で生きてきたという彼女の境遇に興味を惹かれたが、その真意を聞く前にハジメは抗えない眠気に襲われ、気を失った。
その様子を見て、ミカは明日から始まる生活を考えた。
「最後に人と関わってから、五十年ほどか……。久しぶりに人里へ行くか……」
人間の寿命は短い。
故に、名を挙げた英雄であっても、それらが忘れさられるのに、半世紀は十分な時間である。
――ミカは、剣に狂った女である。戦乱を呼び寄せる災厄と呼ばれた事もある。
彼女は、長い時間の中で何度も人と関わってきた。人の国家に仕えた事もあり、地位も名声も得た事がある。
しかし、それらの経験は全て、剣の道を進むためのもの。
戦乱の世に解き放たれると、斬って、斬って、殺して殺し尽くす。
エルフは基本的には温厚であり、長命種ゆえの老獪さはあれど、積極的に殺しを楽しむような種族ではないが、何事にも例外がある。
肉を切る感触に、命が事切れる手応え、返り血のむせ返る鉄の匂いと、それらが身体に掛からないように工夫する一手間。
岩をも断つ、剛剣を極めた事もあれば、最小の動きで急所を突いて切り裂く、静かな技を磨いた事もある。
(最近の流行りは、間合いを誤魔化す小手先の技)
ミカは、あまり魔法が得意ではないが、魔力だけは常人よりも多く持っている。
剣を装備した時だけ、身体強化の魔法を扱えるが、他のエルフが魔法や弓による遠距離攻撃を主体にしているのに対して、ミカはとある呪いにより、剣以外の武器を扱う事ができない。
徒手による格闘は可能だし、短『剣』などは扱う事ができるが、剣以外の武器、例えば『弓』や『槍』を使おうとすると神の呪いで弾かれる。
まだ100歳を超える前の若い頃には、旅先で気になる剣の流派があれば弟子入りしたり、特殊な形状の剣も、片手間に修行した事もあった。呪いを受ける前には、弓や槍の武術に手を出した時期もあった。
(この少年との関わりで、新しい剣の道を見つけられる気がする)
ミカはそう思いながら、少年の傍らで野営の準備をするのだった。




