表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

出会い

遠くオーストラリアから香港のペットショップに売られた子犬。わたしはスカリーと名付けられたその時の子犬です。私と飼い主の出会いのお話を聞いてください。

わたしは14才と18日の女の子。15年前の9月17日からずっと、そしてこれから何年たっても14才と18日のまま。だって虹の橋に来ちゃったから。


わたしが生まれたのはオーストラリアなんだよってマミが教えてくれました。私はあんまり覚えていないんだけど、私と同じ様に背中に丸いブチのあるお兄ちゃんと一緒にケージに入れられて、何時間も暗くて揺れるお部屋で過ごした後、ホンコンって名の街に着いたは覚えている。やっと箱から出れると思ったのに、それからワンチャイのペットショップに連れて来られて、見たこともないろんな姿かたちの子犬のいる壁のケースに入れられたの。次の日お兄ちゃんは私の聞いた事のない言葉を話す人に大事そうに抱かれて連れて行かれちゃった。


私はそのまま何日も壁のケースに入ったまま。その間、たくさんの子が嬉しそうにニコニコする人々に大事に抱えられてつぎつぎといなくなったよ。それから何日も何日も待ったけれど、誰もわたしを迎えに来てくれなかったの。


初めは壁の真ん中のケースに一人で入ってたんだけど、一週間後は端のほうのケースに移され、二週間たった頃、新しく入って来たスパニアル兄弟と一緒のケージに入れられちゃった。結構うるさい兄弟だったなあ。


そのころはもう、 ニンゲンが見ていたら、 元気に遊んだり寝転んだりおねだりして見せればケージから出してもらえるって事を知っていたんだけど、でもね、スパニアル兄弟と一緒のケージになってからは、兄弟がケージのガラス面に張り付いて出来るかぎりのジャンプやタッチを繰り返すので、私は近づけず、後ろの壁を引っ掻いてきゅんきゅん鳴いていた。


そんな時だった。マミがお店を覗いたのは、「おった!おった!」と叫んだと思ったら、走っていなくなり、すぐに男の人を連れて戻って来た。それがダダだった。


マミってのはダダがそう呼ぶからなんだけど、本当の名前はルミなんだよね。

ダダはマミがそう呼んでるけど、本当の名前はデイヴィッドなんだよね。


ダダを連れて戻って来たマミはわたしのケージの前で立ち止まり、すごく嬉しそうに小さくジャンプまでしている。スパニアル兄弟が我先にとガラスに交互に飛びつき大変な事になっているので、私はいつも通り、キュンキュン鳴きながら後ろの壁を引っ掻いていたの。


不思議な事に、ダダとマミは派手に動き回っているスパニアル兄弟ではなく、惨めに後ろ向きに壁に向かって鳴いている私をケージから出してくれるようにお店の人に頼んだのよ。それは私がジャック・ラッセル・テリアだったからだと、二人は私の理解できない広東語ではなく、英語で話していたので分かった。


マミは温かかった。必死でよじ登ろうとする私をしっかり支えて、蔓延の笑みを浮かべて私の頭を撫でてくれた。ずっとずっと探していたんだよ、って話しかけてくれた。マミの目にはうっすら涙が浮かんでいた。


この2週間、幸せそうな人に連れられていなくなったたくさんの子犬のように、わたしもこの人に連れられてどこかにいくのかな?このせまい箱から出れるのかな?とドキドキして抱っこされていたのに、マミは店員さんに私を渡し、ダダと一緒にお店を出て行ってしまった。もしかしたらぬか喜びだったの?マミの喜び方、涙は何だったの?


わたしはまた、うるさいスパ二アル兄弟のいる壁の箱に戻されて、とっても惨めな気持ちでした。


かわいい、かわいいって抱っこされても、結局連れて行ってくれないなんて、もう慣れっこだったからなんとも思わない。それでもマミの喜びようと、涙が忘れられない。そんなことを思いながら疲れて寝てしまいました。


目が覚めた時は、マミとダダがお店から出て行って2時間くらい経っていました。そしてなんと、そこにマミとダダが戻って来ていたのです。わたしはきっと夢を見ているんだと思いました。でもはっきり聞いたのです。私の知らない広東語ではなく英語で、この子犬を連れて帰ります。明日迎えに来ますって言っているのを。


こうやってわたしはスカリーという名前をもらい、マミとダダと暮らすようになりました。結婚して2年目、子供のいない二人にそれはそれは大事にしてもらいました。私がこの二人とどんな14年間を過ごしたかは、また別の機会にお話ししますね。虹の橋ではたっぷり時間があるのだから、思い出をゆっくり回想するにはもってこいの場所なんですよ。


マミとダダがわたしを抱っこした後、わたしをお店に置いていなくなったのは、側のビクトリア公園で家族会議をし、二人で犬と暮らすことの覚悟を語りあったそうです。普段から犬を迎えるためにいろんな準備をしていた二人なのに、マミとダダにとって犬ってどんな存在なんでしょうね。


わたしはマミとダダにとって永遠のマドンナなんだそうです。

わたしは永遠に14才と18日の女の子だから?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ