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母が使っていた服だと言われて渡されたいくつかのドレス、布はかなり良いものだ。だが古くさい。その上派手なドレスだ。こんな古くさいものをうら若き乙女たるアンジェに渡すとはなんたることか、とオーランドを睨んだ。


「どういうつもりなのかしら」


「え、いや母のもの以外だと下女の制服ぐらいしかないし」


「今日一日くらいはそれで結構。ですがまさかずっと貴方のご母堂のものを着てろと?」


「そ、それは・・・あ~」


意外なことを言われたと頭を抱えるオーランド。アンジェに言われるまで思い付きもしなかったと言わんばかりだ。


「だいたい、どれも夜会用のドレスじゃない!こんなもので日常を過ごすわけないでしょう?!普通のものはないの?!」


「綺麗なほうがいいかなって思っただけで・・・!探せばあるはず!」


怒鳴るようなことはしたくないが、文句がつきず詰め寄れば、オーランドはたじたじとしながら母の部屋を案内する!と直接服を選ばせてくれるらしい。母はもう亡くなっているから好きに使っていいとのことだったが、埃も積もっていない。最近のことなのか、保存状態がいいのか、アンジェにはどこかのゲストルームに思えた。


「・・・いつまで部屋にいらっしゃいますの。貴方も早く着替えたらいかが」


「着替え?出掛ける予定はないよ」


「そんなこと聞いてませんわ、まさかその格好のままでいる気なんですの、野ネズミ!」


「ねずみ?!」


召喚の儀式をした薄暗い部屋を出れば、オーランドの格好が埃まみれなのがよく目立つ。伸び放題の髪はバサバサで汚ならしく、シャツがズボンから出てしまっているし、全体的にシワまみれ。眉を潜めるどころではない。下男だってもっとマシな格好をしているだろう。オーランドはまさしく三徹して論文を完成させた学者然としていた。


アンジェは少しの沈黙のあと、威嚇するように腕を組んでオーランドをねめつける。


「私少し理解いたしましたわ。あなたの最初の願い、いじめられてるから助けてほしいの原因が!」


「え?!違うよ、陣形魔術が軽んじられているから認められたい、だ!」


「その回りくどい言い回しを要約したら私の言葉になりますわ」


アンジェよりも上背はあるくせに猫背になりながら必死に否定するオーランドだが、先ほど願い事を口にしたときにはブツブツと自分へ難癖つけてくる人間の恨み節をアンジェへ漏らしていた。どう取りつくったとしても自分を馬鹿にしてくるやつらを見返したい、であった。


「いいから、風呂へ入ってきなさい!」


「え?!うわあ!これ風魔術?!すごいっ」


戸惑っているのか喜んでいるのか、何故か興奮して彼は風呂と思わしき場所までアンジェの魔術で運ばれていく。遠くなっていく声にどっと疲労感が押し寄せてくる。この短時間で色々なことが起こりすぎた。状況の把握にいっぱいになっている間に外は日が傾いてきている。


ため息を飲み込んで、背筋をのばす。オーランドがいない間に探検をしておくべきだとアンジェは躊躇なく見て回った。部屋や廊下の内装、調度品と確認し、文化レベルなどが元の世界とほぼ変わらないことを確信する。この分では異世界というのは勘違いの可能性もある。言葉も通じるし文字も読める。国名が違うだけで国土は同じ可能性がある、と思ったがそれはすぐ否定された。

壁に飾られた家系図のタペストリー、世界地図、宝物はどれも知らないものだった。


公爵令嬢として万全の教育を受けたアンジェならば、当然教わった知識が見知らぬものに置き換わっていた。不思議であった。知らない国名、王族、アンジェという貴族が存在しない世界だった。


「あら、パスコー家から王族・・・?」


「そうだよ、公爵家なんだ」


眺めていたタペストリーから視線を外して、ゆっくりと背後を振り返った。濡れネズミがみっともない恰好で立っていて、アンジェは嫌な顔をする前にぺいっと扇子をふった。ぶわっと髪の毛の水分が蒸発してふわふわとしたのにオーランドは驚いた様子でぱたぱた頭を撫でた。


「公爵家だというならば、何故あなた一人なんですの」


広い屋敷だが、召喚された部屋からオーランドの母親の部屋まで、結構な距離を移動したというのに誰ともすれ違うこともなかった。その上アンジェが一人で自由に探索までできた。ありえない話だと指摘をすれば、オーランドは肩をすくめた。そうだね、と俯きがちに肯定してボソボソ事情を話してくれた。


「父上は王都へいって、こちらへ帰ってきていない。使用人はみんな父上についていった。ここは最低限屋敷を維持管理するだけの人間しか残っていないよ。それも通いだ。掃除と、庭の剪定と、そんなもの。警備とか他の重要な部分は全部魔術だ」


「つまり家の管理のみで、あなたは身なりからマナーから何も教育を受けていないと」


「教育を受けていない?僕は王立高等魔術学園で学生だぞ」


「学業についてではなく」


「マナー講師ならいたさ、それは学園に行く前に合格をもらった!」


憤慨する様子を冷たく眺め、アンジェは思案する。その間にオーランドは早口でこの部屋を使っていいから!と言って出ていってしまう。


アンジェはその後ろ姿を見送り、暫し考えをまとめた。目の前から余計な存在がいなくなって、急速に頭が回り始める。得た情報を組み立て、推測をし、あらゆるパターンと結果を比べて自分がどう動くことが”自分”にとって最善か考える。


(そうね、やはり願いを叶えること・・・)


アンジェは笑った。自分がランプの精の真似事とは!とベッドへ倒れこんだ。

アンジェは公爵令嬢としていつか王子に嫁ぐ身であった。だが当たり前のように親に決められた王子に大人しく身を委ねる気などなく、どの王子を選び、誰を王とするかは自分が選んでやろうと画策をしていた人間であった。そんな大それた計画を己一人で実行しようとしていたアンジェにとって、野ネズミを相手にすることなど苦でもなかった。


令嬢という身分がない分、爽快感さえ感じながら眠りについた。



朝目を覚まして身支度をしたところで、バタバタと慌ただしくオーランドは部屋へ入ってきた。淑女の部屋へ突然、ノックさえなく入ってくるとは、と注意しようとしたが、それより先にオーランドが口を開いた。


「僕は学園に行かないといけない。君は自由にしてくれて構わない。でももうすぐ掃除の人間がくるから隠れるか、街へ出ていてくれ」


お金を渡しておくよ、と財布を差し出して、昼にもう誰もいないと思うやら帰る時間は、などと矢継ぎ早に話す。アンジェに言葉を挟まさないあたり、もしかしたら昨日のことを気まずく思っているのかもしれない。アンジェ自身はなにも気にしていなかったから、まぁ必要な情報はありがたいと、笑顔のまま頷いていた。


他人に考えを悟らせない、鉄壁の愛想笑いだ。


それじゃ、と姿を消したオーランドは気が急いていて、果たしてアンジェがこの後どうするのかということを尋ねなかった。自分のことで頭がいっぱいで、ましてや令嬢然としたアンジェのことが、昨夜だけですでに苦手意識ができていた。


オーランドは令嬢という存在が、いやそもそも貴族という存在が苦手だった。

自分が公爵令息であることにさえ吐き気がする。


「おやおや、ビハブくんがご出席だ」


「本当ね、別に出席しなくても公爵家さまなら卒業できるでしょうに」


ほほほ、なんてわざとらしい気取った笑い声に苛立ちを感じると共に、つい俯いてしまう。睨み付けてやればいい、家の名前をだして脅してやればいいと思うが、思うだけだ。彼らを視界へいれないことだけがわずかな抵抗であった。


オーランドは教室の隅で静かに座って教授がさっさと来るのを祈りながら教科書を眺めていた。目の前では高貴な貴族がいろんな下級貴族たちに挨拶をされていて、大変そうだ。


しばらくして教室に入ってきた教授は全員揃っていることに満足そうにして、本日の魔術について話をしていく。原理や魔力の出し方の座学を終えれば次は実践だ。大半の生徒と同じくオーランドも座学より実践が好きだった。教授は、ぐるりと教室を見回してオーランドを見ると表情を厳しくした。


「パスコー、イタズラをしないように」


イタズラだなんて!心外だと思ったが心当たりがないわけでもない。オーランドは大人しくうなずいておいた。先ほどオーランドをビハブくんと笑ったやつらが失笑したのがわかった。こそこそと間抜けなパントマイムをしながらオーランドを笑っていた。


じっと教科書を眺める。手の振り方、魔力の練りかた、魔方陣の描きかた、それらをみているともっとこうしたらいいのではないか?と考えてしまうのは学生として普通だと思う。そして当然ながらそれが上手くいくことは少ない。以前にゴーレム作成の授業でなにか動物と泥粘土と石のキメラじみたものが出来上がった時には、ひどく冒涜的だとその場で怒られ、それ以後教授たちからの警戒があがった。今回のように釘をさすような発言も多い。


それからすっかりオーランドのあだ名はビハブくんだ。


授業が終わって、すぐに荷物を片付ける。そうそうに帰らねばならい。なんといっても自宅にまだ悪魔、否アンジェというご令嬢を待たせているのだ。あの気の強いご令嬢に何を怒られるのかと考えると憂鬱だが、だが彼女を勝手に召喚したのはオーランドだ。彼女からすれば誘拐されたも同義。可能な限り誠意を見せなくてはと考えている。


(悪魔に命を捧げるつもりだったのにこの体たらく)


情けない、と苦い顔で胃を押さえた。

そんな思考をよぎるようにべしゃり、となにかが背中にあたった。驚いて硬直すると、じんわりと背中が濡れていくのがわかった。ぎゃはは、と下品な笑い声が響いて心臓がはやくなる。


「おいおい公爵様のお召し物を汚すなんて誰だよ~」

「よくみろ青スライムのジェリーだ。ご自身の実験で使用したに違いない!」


教室にいた男たちだ。顔はわかるが名前はわからない。オーランドが覚えているのは社交界で必要になる家の人間ぐらいなので下級の貴族だろう。だというのにオーランドを見下すようにしてニタニタと笑い、片手に緑のスライムの入った瓶をこれみよがしに見せつけている。


逃げよう、と思うが足が動かない。ぐっと彼らを睨み付けて距離を測る。とっとと逃げ出したいがおそらく彼らのほうが脚が速い。


「お前緑スライムの効能知ってるか~」


「知らねぇ、青と混ぜちゃダメなんだろ?」


冷や汗が流れる。オーランドをまるでいないもののようにして喋る男たちには悪意しかない。スライムの効能?なんだったか、以前薬学で習ったが緊張のためか頭が回らない。男たちが振りかぶってオーランドへ投げつけた、が、なぜか瓶はオーランドへぶつかる直前に弾かれて地面に転がった。


かつん、と割って入るようにヒールが鳴った。


「緑スライムは環境特化型スライム、その成分はすぐに周囲に影響され効能を倍にするため薬学では手軽に強化するのに使われますわね、つまり侵食と溶解に優れた青スライムと混ぜますと人体の皮膚など簡単に溶けますの・・・これは、ずいぶん野蛮ですわねぇ」


軽やかな鍵盤楽器の音を聞いているような心荒立てない話し方で、一瞬にしてその場を彼女の存在に染めてしまった。優雅な仕草で扇子をひょいと振り、瓶の蓋がとれて中身のこぼれた緑スライムが消失した。オーランドはその見事な無詠唱魔法に感動した。だがそれよりもまず先に口についたのは彼女が何故ここにいるのか、だった。


「アンジェ・・・!なぜここに」


「まぁオーランドさま、お会いする約束でしたでしょう?せっかくなのでお迎えにあがりましたの。どうぞ校門前に馬車をご用意いたしましたから」


驚いていたのはオーランドだけではない。男たちも信じられない顔をしていた。アンジェはまるで空気を読まずにこやかにオーランドの側へより、さっと扇子を振って今度は背中のスライムを消してしまう。しつこいスライム汚れを一瞬で!と今度こそオーランドはすごい!と声に出した。



黙っていられなかったのは男たちだろう、後ろにいた数人はそのまま逃げるかどうか迷っている様子だったが、率先して騒いでいた前方の二人が舌打ちをひとつして、下卑た笑みでマダムと呼んだ。どうみたって未婚だとわかるだろうに、と思ったオーランドは眉をひそめたが、ドレスのデザインが古いという嫌味かもしれないと察した瞬間、自分のミスだと思い至って血の気がひいた。母親のドレスをそのまま渡すという行為により彼女が蔑まれているというのは、なんとも堪えた。


「そいつは危険な魔方陣ばかり書いている変人ですよ」


「先生たちが毎回注意するぐらいには問題児なんです。キメラをつくったり、ただの火魔法を爆発させたり僕たち木っ端な貴族への迷惑など考えません」


僕たちも少々やりすぎましたが、これは彼の自業自得ですよ、と正当化した主張を述べた。パスコー家現当主である父親が出てこないように、被害を最小限にしようとしている。令嬢ごときなら黙らせられると思っているに違いない。


(そんなことしなくたって、父上は関心などないさ)


「まぁ、ご迷惑をお掛けしているんですね。ですが先ほど先生方からとても優秀だと聞きましたの。・・・ねぇ先生。このような安易で危険な行為をされる方々、王立の学園としてどう扱いますの」


扇子で隠された口許がつり上がっているのが、オーランドの角度からはよく見えた。ぞわっと背筋がわななく。そうして彼女が小首をかしげた方向には、確かに厳めしい表情の教授がいた。学園の教授陣のなかでも一際礼儀作法に厳しいのは有名で、そのせいか貴族階級の訪問客を案内することも多い。アンジェが客として正式に訪問しているならば決して同伴はおかしい話ではない。


「ええ、お恥ずかしい限りです。学園長に通達しておきます」


「先生?!いつの間に!」


「ずっとだ、馬鹿者!そのスライムはどこから調達した!」


ほぼ間違いなく薬品棚からくすねてきたのだろう。顔を真っ赤にした教授は勢いよく杖を振った。ようやくまずいことになったと理解したらしい奴等が言い訳をしようとしたその口は強制的に閉じられ、直立不動となった。


「パスコーの危険行為は監督する先生がいる授業内でのことだが、お前らの薬品の盗難と危険行為は看過できるものではない。ご両親への報告は成績とともにお知らせする。もちろん、相手がパスコー家であることも添えましょう」


最後の言葉はオーランドとアンジェに向けて放たれた言葉だった。オーランドは怪訝そうな表情を返してしまったが、アンジェは静かにうなずいた。当然であると言わんばかりである。教授はお見送りができませんが、と申し訳なさそうにアンジェへ頭をさげた。


「構いません、オーランドと合流することはできましたので」


「では、私はこいつらに話がありますから」


オーランド、ちゃんとエスコートしろよなんていう余計な言葉をかけて去っていった。オーランドはようやく一息ついてアンジェへ向き直った。その場ですぐに話を聞きたかったが、さぁ馬車がございますなんていって先導するので仕方なくついていく。


「アンジェ、どうして学園へ」


「まぁそんなことが気になりますの?外へ出て、ちょっと紳士な方に学園へ案内してもらっただけですわ」


「じょ、女性が一人で?」


「ええ、女一人では危ないからと馬車まで用立ててくださいました」


用意されていた馬車は家紋などないが、それなりのものでこの学園内でも見劣りがしない。何をいってこの学園に侵入したのかはわからないが、確かにアンジェがちょっと悲しそうな顔でもすれば勝手に気を回す男はそこらにいくらでもいるだろうと、その横顔をみて納得してしまった。詐欺師みたいな女だ、やはり悪魔か、と顔をしかめた。


「やっぱりいじめられていましたのね」


「あ、あれは・・・!僕はあんなの気にしていない!」


「さようですか。まぁご当主に話がいくのであれば問題は縮小していくでしょう」


「父上が僕のために動くもんか!子供の喧嘩だから放っておけというだろうさ」


オーランドが強く否定をすればアンジェは少しだけ驚いたような顔をした。しかしそれも一瞬で、すぐに控えめな微笑みを浮かべた。


「あなたのためではなく家のためならば動くのでは?」


貴族はなめられたら終わりですから、と言って、すぐにこちらからも報告をいたしましょうと提案。書面は私がしたためましょう、とぐいぐいオーランドへ迫った。馬車を降りる段階でどんな便箋と封筒でどんなインクを使うかまで指定された。


「王都はどんなところですの」


「さぁ?僕は行ったことないからね。なんでもある場所だっていうけど」


どこか投げやりな言葉とともにオーランドの視線はどこか遠くへ向けられる。アンジェの細められた瞳はそんなオーランドをいっそ冷徹にも思えるほどに観察し続けた。


家の維持以外に使用人はいない、といっていた通り料理人も雇っていないらしく、彼の食事は街のレストランへ行くか、貴族御用達の料理を配達してもらうかの二択だった。本日は貴族御用達の料理をあらかじめ配達されるように手配していたらしい。


アンジェからするとそれははじめての経験だったのでワクワクする出来事であった。魔術でさっと温めれば、やはりオーランドは嬉しそうにする。自身も魔術は使えるはずなのに何故、と尋ねれば呪文もなくやってしまうのが高度で素晴らしいとのことだった。


食事も風呂も終えた後、何気ない様子を装ってアンジェは言った。


「あなたに深い魔術知識があるのはわかったけれど、公爵家の次期当主として教育を受けているようには見えませんわね」


「な、なんだって。昨日いった通り僕は・・・」


合格したマナーのレベルはわからないが、それはテーブルマナーや多少のダンスの心得程度の話だったのではないかとアンジェは推測している。そしてそれはオーランドも自覚しているはずだ。だからこそ言葉につまった。オーランドは諦めを瞳に宿しながら、負け惜しみのように君に関係ないだろう?といった。


「いいえ、あります」


泣きそうになっているオーランドの眉間へ扇子を向ける。


「まず貴方、身なりを整えなさい」


「はぁ?!急になんだ。風呂には入ったじゃないか!」


「そのままの意味です。清潔と清潔感は別」


「容姿は仕方ないだろ、君は美人だからわからないだろうけど!」


「あらありがとう、素直なのは良いことですわ」


おほほ、と大げさな淑女っぷりを出しているがアンジェはオーランドが震えるほど威圧的だった。扇子はさっきから開いたり閉じたりと忙しない。


「でもね、そうじゃないんですの」


ちらりと上目遣いの彼女はオーランドの心臓が痛くなるほどに魅力的で蠱惑的であった。頭に血が巡ってだんだんと思考がまとまらなくなっていくのがわかる。


「いいですか野ネズミ!お前は魔術オタクだから軽んじられているのではなく、お前がだらしなくてみっともない恰好をしているから馬鹿にされているのです!」


ガンと頭を殴られた気分だった。


「学園へ赴いた際に調べましたが陣形魔術は別に侮られていません。お前自身に威厳があれば陣形魔術は引き合いに出されません」


オーランドはなにか反論したくて口をぱくぱくとさせたが、なにも言葉にならなかった。


「私が公爵家らしい振る舞いを叩き込みます。覚悟なさい!」




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