1
「だりぃー。。めんどくせぇー。。」
佐藤望は小麦色の肌を日に当てながら、人々が行き交う渋谷の街を眺めていた。
(なんであいつ来ねぇんだよ!)
イライラはつのるが、解消する方法も特に思いつかない。
佐藤は今日、おすすめのネイルサロンを紹介するという言葉につられ、真夏だというのにもう30分は駅前広場に立っていた。
この間に3人ほどの人間に声をかけられたが、なんとなく相槌を打つくらいで適当に回避している。
(私は簡単に会話するような安い人間じゃねぇっての!)
斜に構えた姿勢でもう10分、時間が過ぎた頃
「ごめんごめん!電車が何か動物轢いたとかで遅延してさー。人身ならまだしも、動物って東京ではめずらしくねぇ!?動物保護団体はちゃんと動物を管理しろよなー」
人の時間を奪っておきながら適当な事を言ってくる友人に呆れつつも
「おせーよ!ネイルよりまずはクーラーがんがんの喫茶店とか行くぞ!」
怒りよりも酷い暑さにやられていた佐藤は、池上美紀にイライラをぶちまけつつ喫茶店に向かった。
「ごめんごめん!待たせてしまったのは悪かったよー。
だけど本当にオススメのサロンだから、イライラなんか吹き飛んじゃうって!!」
池上にグチりすぎたなと思いつつ、続けて と口をへの字にしながら顎で指示を出す。
「なんかここから10分くらい歩いたところなんだけど、え!?こんなとこにネイルサロン!?って感じの店があるわけ!
でね!そこが超面白くて、、『ネイルを変えたら人も変わるのですよ』とか『あなたの後ろに霊がみえます。とてもネイルが綺麗な方です』とか、超真剣に話してくるの!私爆笑するのを必死にこらえながらお願いしたんだけど、それがすっごいよくてさ!」
よく喋るなーと思いつつ、少しだけ面白そうだなと佐藤はメロンソーダを1口含む。
「私ピアノ科じゃん??ネイルしてたら先生がうるさいんだよね。『爪がチカチカする!爪の技術磨く前に指の技術磨け!』とか言って、何にもかかってないのにドヤ顔するの。チョームカつくから普段はネイルしてなかったのね。けど、その店でネイルすると、何と言うかねー、、指がピアノを求めるって感じがして、、そのまま授業受けちゃったわけ。するとあらびっくり!『まるで蘇ったショパンだ』とか『ドビュッシーでもその表現はできない!』とかめちゃめちゃ褒められてさ。。
何とドイツ留学に推薦されちゃいました!!しかも特待生で授業料免除だって!!」
「ほぉー。それはすごいな。おめでとう。」
佐藤は先程までのイライラを忘れ、素直に感心していた。
「まぁ、そんなすごい場所を紹介してくれるなら遅刻の件は水に流すわ。
じゃあ早速連れてってよ!」
すっかり飲み干したグラスをテーブルに置き、2人は目的地にむかう。




