【プロット・キャラ設定の使い方編】引きこもりニートな聖女が遠距離魔法で世界最強な件
―プロット―
タイトル:引きこもりニートな聖女が遠距離魔法で世界最強な件
(△=資産) :遠距離聖魔法、引きこもれる結界、魔王による世界の危機
(□=探索・準備未完了):魔法少女から仲間の要請
(□=探索・準備完了) :遠距離聖魔法による魔法少女の支援
(☆=探索・成果) :魔王討伐
(△=次回の資産) :未定
あらすじ(上記の内容の言い換え):
世界は魔王によって侵略の危機にさらされている。そんな中、魔王を討伐するために仲間を集めている勇者が、聖女が魔法少女の支援要請を断られてしまう。しかし、聖女は遠距離聖魔法を究めており、その攻撃と回復によって、魔王群に囲まれてピンチに陥った勇者一行は救われる。
―キャラクター設定―
キャラ1:聖女、引きこもりニート
キャラ2:魔法少女、正義の味方
キャラ3:魔王、世界征服を企む
※この小説は、先にプロットとキャラクター設定を作成して書き始めています。小説中に書かれている、プロットやキャラ設定以外の情報は、後から追加したものになります。また、プロットや設定と一致しない情報は、書き進めていく中で変更したものになります。
(△)プロローグ:結界の聖女
深い、深い森の奥へと歩いていく。
きらきらと燐光を発する精霊が飛び交い、魔力に満ちたこの場所では、この森の外では見られない、不思議な生物の生態系が確立されていた。
それはすべて、森の中央に建立する、天を貫かんばかりに伸びた光の結界が原因だった。
結界の建てられた場所には、魔界と人間界を繋がる門が存在していて、そして――この場所を何百年も守り続ける、一人の美しい少女が、この森に住んでいた。
「それで、如何用でここを訪れた…救世を願う勇者よ」
「たった一つ――あなたのことが欲しい、それだけ」
まるで愛を囁くかのように、聖女を口説き落とそうとする少女。
その身に包んだ衣装は、まるで人目を惹くために作られたかのように、この世界では異彩を放っていた。
――全身がピンクの衣装に包まれて、スカートや衣装の裾には何重にも重ねられたフリル、手には先端にハートと羽根を象った大きな飾りがある杖を持っている。
彼女はワタクシに名乗った、そう――魔法少女と。
「お断りいたします」
「つれないお嬢さんだ。
確かに、この世界の危機は、我々、魔法少女の敵である<時の侵略者>たちによって引き起こされたもので、この世界の人間たちにはご迷惑をおかけしている。
本来なら、君が守っているこの門を通してしか、魔界の住人は行き来をできないはずだが、<時の侵略者>が引き起こした時空災害の影響で、魔界と人間界を繋ぐいくつかの穴が開いてしまった。
幸いにも、穴の大きさは軍を迅速に行き来させるほどのサイズではないが、魔界屈指の少数精鋭の部隊が、この人間界を恐怖のどん底へと貶めている。
そして、この穴を塞ぐことができるのは、我々――魔法少女の役割だ」
世界を救うために召喚された勇者は慣れた口調で、そして、聖女である私に慇懃無礼に、この世界で巻き起こっている混乱の事情を語って見せた。
「分かりました、それでは…こうしましょう」
「それは、何かな?」
魔力回路を表現するための微細構造が刻み込まれた魔力結晶をはめ込んだネックスレス。
ありていに言えば、これは通信機だった。
(□)第1話:遠距離聖魔法
「魔法少女かわいかったなー」
こたつに入ってヌクヌク。森の中は1年を通して寒いため、寒さ対策が欠かせない。
「あ、通知来てる、えーと、今は忙しいです」
『頼むよ』
二回目の催促。
もしかしたら結構ヤバい状態なのかもしれない。
「仕方ないなー…うぅ、さむい」
おこたを出ると、上着を羽織り、聖杓を手に持ち、冷たい床の通路を歩いて行くと、その剥き出しの生足のまま、魔力の満ちた泉で身を清める。
「ふう――<信号送信>、<逆探知>、<魔力回廊>」
雫がしたたり落ちるほど頭まで聖水で濡らし、そのまま前髪をかき上げて、瞼を閉じる。目の前は暗くなる。
「<生体走査>、<範囲調整>、<物理障壁>、<魔法障壁>、<感覚鈍化>、<感覚共有>、<魔力補給>、<自動再生>、<身体強化>、<高速化>、<肉体再生>」
勇者一行の戦況を確認しつつ、必要な支援を魔法で送り込む。
この世界は魔力で皆つながっている。
それを見つけることができれば、距離なんていらない。
「<聖魔反転>、<聖寄生木>、<対象捕捉>、<範囲調整>、<物理障壁>、<聖水領域>、<生体走査>、<感覚強化>、<呪印・致命>」
ワタクシたちは、この世界で一つになれる。
だから、こんな場所でたった一人でも、寂しくなんかないのだ。
そのことをよく知っている。
「<範囲調整>、<感覚支配>、<感覚共有>、…<聖槍一撃>」
ワタクシは、結界の中にずっと引きこもっている。
――ぴろんっ♪
「………」
メッセージが届いている。
『助かったよ、魔族は一掃された』
どうやら、いい仕事ができたらしい。
――ぴろんっ♪
『ついでに、可愛いお嬢さんを捕獲した』
「………」
画像データを確認すると、魔王の娘が四肢を光の鎖で拘束されていた。
…油断してグロ画像を踏んでしまった。
(□)第2話:時空災害
勇者一行の旅路は、順調らしい。
定期的にそんな報告がメッセで届くから、そうなのだろう。
捕まった魔王の娘は、順調に人格を矯正され、魔法少女に飼いならされている。
「四肢を拘束、人格矯正、首輪のまま可愛い衣装を着させられた少女」
昔の友達の娘さんの性癖がどんどん歪んでいく様を見るのは、心に来るものがある。
写真の中でも笑っているのが怖い。思わず悲鳴もこぼれた。
「………」
魔法少女が戦場にいない。
ということは、ワタクシの支援も必要無い。
ということは、一日中暇であること、今日はいい日になりそうだった。
「そうだ、配信でもしよう」
ネットの世界ではパズルゲームのRTAが流行っている。
ランダム性が高いので、じゃんけん実況と同じ要領で、視聴者はわいわい盛り上がることができた。
この世界でも、転生する前の日本でも、やっていることは変わらない。
変わる必要が無い生き物が生き続けてはいけない理由がよく分かる怠惰さだ。こんなことでは種の進化は促されることが無いだろう。
定命の人類よ、ワタクシのために短命であれ。
――ぴろんっ♪
『時空の穴を見つけたよ。
どうやら、魔王は時空災害に巻き込まれて一体化したらしい』
…相変わらず、魔法少女はワタクシにグロ画像を踏ませたがってくる。
昔の友達がよく分からない『口の中が魔界に繋がった不定形の怪物』に生まれ変わって暴れている様を見るのは、やはり、何か心にくるものがある。
――ああ、こんな世界は狂っている。早く楽にしてあげよう。
(☆)最終話:魔王
追われるままに逃げ回る怪物が、叩き落とされた谷底で追い詰められようとしていた。
「やっと捕まえたよ魔王。
さ…みんな、私はいつも通り時空の穴を塞ぐことに専念する。あいつが身動きを取れないように、時間稼ぎを頼むよ」
勇者一行が連携して、谷底に魔法障壁を展開して身動きを封じる。
たった6人の魔法使いが、山のように大きく重量のある巨体を、鎖で引っ張り上げ、しかし、近づいてこないように地面に叩きつぶし続けた。
聖女は、いつものように支援する。
結界の中から、外の世界を見て、攻撃を送り、回復し、まるで仮想世界のゲームのように繰り返す。
魔法少女との出会いは、新しいゲームの始まりだった。
「支援、支援、支援、支援、支援…死んだ? 生き返って。支援、支援、攻撃、支援、支援――」
みるみると魔王の命が削れていく様が分かる。
彼は話の分かるいい男だった。
なのに、こんな怪物に成り下がってしまって、宇宙は広いが、長生きは恐ろしい。
――コンナセカイ、クルッテシマッテイル。
「ソうは思わないか?」
「………」
支援、支援、支援、支援、支援――
「コの世界は不完全だ。
ダれもが足りないものを持っているから、不幸な目に合うんだと僕はそう思う」
支援、支援、支援、支援――あっ、死んだ。
「ダから、君は幸福だろう?
キみは今まで見てきた誰よりも、多くの存在とつながっている。
ボくたちが目指してきた理想に遥かに近い」
――ぴろんっ♪
『時空の穴は塞いだ。
今から救援に向かうよ』
あっ、あっ、あぁぁァァ――ワタクシジャナクナッテ!
「キみは不幸だった。ダって、誰にも君と繋がることはできなかったんだから。
コれが、僕たちが目指している幸福だよ?」
ゼンブ、ミンナデヒトツニナロウッ!
(△)エピローグ:<時の侵略者>
魔王を打ち倒し、人間界と魔界が繋がる門を閉じることに成功した勇者一行。
しかし、戦いが終わった後、魔法少女の仲間たちは次々と精神が壊され、魔法少女を殺すことを死ぬまで止めなかった。
「せっかく塞いだのに、そっちに行ってしまったんだね?」
魔法少女は、さらわれた聖女を追いかけて、魔界の門への向かった。
<答え合わせ>
今回は、プロットやキャラ設定を作る時に、何を考えて作って、そして、どうやって活用するのかを説明する。
まず、この物語を書き終わった後のプロット・キャラ設定は以下のようになっている。
―プロット―
タイトル:引きこもりニートな聖女が遠距離魔法で世界最強な件
(△=資産) :遠距離魔法、引きこもれる結界、魔王による世界の危機、時の侵略者
(□=探索・準備未完了):魔法少女から仲間の要請
(□=探索・準備完了) :遠距離魔法による魔法少女の支援
(☆=探索・成果) :魔王討伐、時の侵略者による精神支配
(△=次回の資産) :誘拐された聖女、時の侵略者による世界の危機、魔王の娘、魔法少女の仲間(予定)
あらすじ(上記の内容の言い換え):
世界は魔王によって侵略の危機にさらされている。そんな中、魔王を討伐するために仲間を集めている勇者が、聖女が魔法少女の支援要請を断られてしまう。しかし、聖女は遠距離魔法を究めており、通者一行を支援することで、見事に魔王を打ち倒す。ところが、魔法少女の敵である時の侵略者によって聖女の精神が支配されてしまい、世界は再び窮地に陥ることになる。
―キャラクター設定―
キャラ1:転生聖女、引きこもりニート
キャラ2:魔法少女、正義の味方、時の守護者、時空の穴を塞げる
キャラ3:魔王、精神支配されて世界征服を企む
キャラ4:時の侵略者
キャラ5:魔王の娘、魔法少女の奴隷
プロット・キャラ設定を作成する価値は、自分が書くべき物語を覚えておくためだったり、他人と素早く情報共有するためだったりするが、何よりも、今自分が何を書いているかを冷静に見直すために使うことが、有用だと思われる。
物語を執筆する前と、物語執筆後にプロット・キャラ設定の内容が変わるのは当たり前で、書いていくうちに新しいアイデアが出てくるので、それをそのまま書けば、最初に書いたプロット通りになる見込みが小さくなることは容易に想像できる。
そして、10万文字を超えるような長編小説を書いていると、今何が起きているのか、作者ですら覚えきれなくなることがよく起こる。
特に、長編小説だと複数の出来事が同時に進行させることがよくあるので、進行状況をメモするために、最初に作ったプロット・キャラ設定をその都度に更新することで、フラグ管理が楽になる。
つまり、プロット・キャラ設定を使うとは、普通、何度も書き直して細かくアップデートしていく、そういうものなのである。
次に、プロット・キャラ設定をどこまで細かく書けばいいのかという話である。
まず、プロット・キャラ設定とは、作者が執筆する内容の予定であるため、逆に言えば、自分で予定を立てておきながら、最初から守る気が無かったり、予定した内容の量が多くてを書ききれなかったりする場合は、プロット・キャラ設定の中に書く必要はない。
つまり、最初から守れる気がしない約束を立てる必要はないから、書く必要はない。その意味で、約束を守ることが苦手な作者は、一度とりあえず書いてから、そして、プロット・キャラ設定に変換して、自分が何を書いているかを把握すればいいだろう。
また、私は今回、プロットを書くために、
(△=資産)
(□=探索・準備未完了)
(□=探索・準備完了)
(☆=探索・成果)
(△=次回の資産)
という記号を使っているが、簡単に説明すると、聖女(=資産)を使って世界の平和(=成果)を得るための準備ができいるかどうかと、そして、その副作用で余計なものも手に入れる場合は、それも書いているのである。そうやって、資産を使って成果を得て、新しい資産状況が生まれた場合、どれを使って次は何を得ようかなと、改めて考えて、次の物語に繋げたりするのである。
最後に、
この物語は、
面白い物語の始め方と続け方と終わり方とタイトルの付け方
https://ncode.syosetu.com/n7330ie/
の応用編です。なので実際に活用したことが分かりやすいように書いてみました。
また、読者に物語の内容を共感させる方法について、
【応用編】サキュバスに魅了の魔法をもらったから困ってる幼馴染のために使うことにした
https://ncode.syosetu.com/n8233ie/
の中で詳しく説明しています。
また、ギャグ漫画みたいなコメディ小説を書く方法について、
【コメディ小説の書き方編】もう、もう、先輩、恋愛相談じゃありません!
https://ncode.syosetu.com/n8899ie/
の中で詳しく説明しています。