姉とパピヨンオージャー
特撮に詳しい姉がいる。どのくらい詳しいかというと、歴代スーパー戦隊シリーズにおける戦士の色の登場率を全て把握していて、イエローは約9割の作品に登場するとか、グリーンは6割以上なのに対してブラックは5割未満だとか、そうした数字が日常的なオタクトークの中でさらっと出てくるほどだ。
もとい、その愚弟たる私も含め、多少覚えのある特撮オタクなら歴代戦隊の順番と戦士の内訳は記憶しているので、時間をかければ誰でも同じ数値を導き出すことは可能ではある。しかし彼女の場合は常時そのデータをエクセルで管理しているのがヤバい。自分用のパソコンなど持っていなかった○学生の頃から「男性イエローと女性イエローの割合が逆転したか~」なんてことを毎年話題にしていた筋金入りである。幼少の頃は兄や私と無邪気にゴーゴーファイブのロボで遊んでいたのに(その時点で、マシンの空輸シーンをゴム紐で再現しようと試みたり、DXグランドライナーに付属のキャリングカーゴは「原作にないギミックだから」と好まなかったりしていたので、齢○歳にしてやっぱりどこかヤバいオタクになる片鱗を見せていたのかもしれないが)。
そんな姉が、先日始まった最新戦隊『王様戦隊キングオージャー』のパピヨンオージャーについて、何やらDiscordで言っていた。「今後、『紫の戦士』の横文字での総称をどうするか困るな」とか何とか。
平川結月演じるパピヨンオージャーことリタ・カニスカといえば、いかにもオタク受けしそうなメカクレ中二病ルックスと無口系中性キャラでいかにもオタク受けしている、いかにもオタク向けのヒロインである。戦隊シリーズ初の「紫」の初期メンバーという話題性も相まって、制作発表会の段階からプチバズリしていたことは私も把握していた。
しかし、そんなリタ様への世間の注目はそっちのけで、姉が真っ先に気にしていたのは、公式サイトでこのパピヨンオージャーのカラー表記が「パープル」とされていることだった。紫ならパープルで当たり前じゃないかと思うかもしれないが、実は戦隊シリーズでは、これまで紫の戦士のネーミングには「○○バイオレット」が使われてきたのだ。ゲキレンジャーのゲキバイオレットに始まり、飯豊まりえの顔と脚とキャラが良すぎることで知られるキョウリュウジャーのキョウリュウバイオレット、キュウレンジャーのリュウバイオレット(リュウコマンダー)など、実際に英語のvioletとpurpleのどちらに近い色合いをしているかに関わらず、名前に色を冠する場合は例外なく「パープル」ではなく「バイオレット」が採用されてきた。それゆえ、「戦隊レッド」「戦隊ピンク」などと横文字で総称を述べる際には、「戦隊パープル」ではなく「戦隊バイオレット」と言われるのが普通だった(パープルレッシャーの件はこの際置いておく。というかトッキュウ7号には福原遥を変身させて欲しかった)。
しかし、ここにきてパピヨンオージャーの「パープル」表記である。これは即ち、歴代の○○バイオレットらを含めた「紫の戦士」全般を、今後「戦隊バイオレット」とは総称しづらくなることを意味する。公式に「パープル」と言われているキャラを「バイオレット」と呼ぶのは違和感があるし、逆も然りだからだ。――というのが、キングオージャーの情報解禁から現在に至るまで姉を悩ませている問題であるらしい。“普通の”オタクに過ぎない私には何だかもう深淵すぎて付いていけない話だ。もっとこう、中性的なリタが女性としての一面を見せることはあるのかとか、演じる平川結月の水着グラビアはいつになるのかとか、他に気にすることがあるんじゃないのか。ちなみに近年の戦隊ヒロインはグラビア未経験であっても放送期間中にグラビアデビューするケースが多いので、我々紳士としては本作のダブルヒロインにも大いに期待したいところである。
ちなみに後日、姉が某動画サイトに上げている動画をふと見てみると、「レッドのクワガタオージャー」とか「ブルーのトンボオージャー」などと言っている中で、しれっとパピヨンのことは「紫のパピヨンオージャー」と言っていた。……とっくに対応完了してるじゃないか! まあ、紫の戦士全般の総称をどうするかという問題は何も解決していないので、彼女がこだわっているのはそこなのだろうけど。
ともあれ、私はごく普通の特撮オタクなので、難しいことは気にせずキングオージャーを楽しむつもりだ。まだ見られていない方も、ちょうどリタのメイン回である第5話の見逃し配信をTVer等でやっているので、ぜひ一度見てみることをオススメしたい。平川結月はバイオレットの、もとい紫の先輩である飯豊まりえに並ぶ逸材かもしれないので。