姉とシン・仮面ライダー
特撮に詳しい姉がいる。どのくらい詳しいかというと、映画『シン・仮面ライダー』のとあるシーンで「三栄土木」の文字が映るのを見て、脊髄反射でクスリと笑ったというほどだ。
なんでも、昔の初代『仮面ライダー』で、ロケ地として多用されていた採石場・造成地の通称らしい。平成生まれなのにどこでそんな知識を仕入れてくるのか。私も人並み程度には特撮オタクのつもりだが、初代ライダーのロケ地と言われて秒で出てくるのは桜島くらいのものだ(「桜島1号」という形態名の通称に使われているので)。
そんな私でも、『シン・仮面ライダー』を観た後にネットの掲示板で感想を見漁っていると、この「三栄土木」がマニア向けのネタであることは何となく分かった。姉にDiscordでその話を振ってみたところ、出てきたのが冒頭の述懐である。聞けば、「三栄土木」と呼ばれた造成地はその後、開発が進んで姿を変えており、またその呼び名の由来となった工事業者としての「三栄土木」は昭和50年代に倒産して今は現存しないという。だから、平成生まれがどうしてそんなことまで知っているのか。子供の頃は兄や私と無邪気にカーレンジャーごっことかしていたのに(そのカーレンジャーすらその時点で「数年前の作品」だったので、思えばその頃から実年齢と合わない特オタの片鱗を見せていたのかもしれないが……)。
そのあと、気になって、姉が某動画サイトで出している動画を見てみたら、映画の内容そっちのけで三栄土木についてガチで語っていたので私も笑ってしまった。それによれば、くだんのロケ地は東映の作品だけでなく円谷プロのウルトラシリーズでも頻繁に使用され、かの『ウルトラマンレオ』でモロボシ・ダンが主人公のおおとりゲンをジープで追い回す特訓シーンの舞台にもなったという。しかし、クタクタの着ぐるみが殴り合うことで有名な『ウルトラファイト』に出てきた光景は、マニアの間で「三栄土木星」などと言われているが、実は三栄土木ではなく「大竹興業」という別の業者が造成していた場所であるそうな。当時のスタッフの間ではこの二つのロケ地はしっかり区別されて台本にも書かれており、姉曰く「ガチのマニアが見ればちゃんと見分けがつくらしい」という。アンタがそのガチのマニアなんじゃないのか? 「地球人から見たウルトラマンくらい、ウルトラマンから見て強い」とされるウルトラマンキングよろしく、一般人から見た彼女くらい彼女から見て凄いガチオタがこの世界にはゴロゴロいるのだろうか。こわいぞ特撮界隈。
そんな姉だが、日常生活では特オタの素顔は極力隠しているようで、現に人から『シン・仮面ライダー』の話を振られた時には「浜辺美波ちゃんと西野七瀬ちゃんカワイイですよねー」と無難なトークでやり過ごしたらしい。浜辺美波と西野七瀬の顔が良すぎるのは、ライダーに詳しかろうと詳しくなかろうと万人が同意するところなので、流石の返しだと思う。間違ってもそこで、幼少期の浜辺美波が『仮面ライダーウィザード』にハマってウィザードリングを集めていた話だとか、乃木坂OGのライダーシリーズ出演は生駒里奈に続いて二人目だとかいう話を掘り下げ始めてはならない。まあ、あの人なら多分そうした話にも問題なく付き合えるのだろうけど……。
と、こんなことを書いていると、私も浜辺美波の顔が良すぎるシーンをもう一度見たくなってきたので、今度レイトショーで行ってこようか。まだ映画を観られていない方も、浜辺美波の顔が良すぎるだけで一見の価値はあるので、ぜひ一度行かれることをオススメしたい。マジで浜辺美波の顔が良いので。