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忠犬君と気まぐれ猫ちゃん  作者: 宵月月美
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第四章 『愛ー愛ー』後編

投稿が遅れてしまってごめんなさい!

満足のいくラストが書けました。


それではお楽しみください。

 列車は線路の上を進んでいく。


 目的地までは直通で、一度走り出してしまえばもう引き返せない。窓の外の景色はめまぐるしく変化していて、手を伸ばしても、もう二度と同じ景色を見ることはできない。


 最初は暗く澄んだ街並み。人は少なく、しかし都会の美しさが映える、そんな街。

 少しすると、急に視界が明るくなる。鮮やかな明かりに照らされて、街行く人の表情が浮かんでいた。全員がどこか熱に浮かされているような、妖しげな街。

 前をみると、トンネルが迫ってくる。暗くて、湿っぽくて、でも外の明るさに焼かれた背中をゆっくりと冷やしてくれる。ずっとここにいたいほど居心地がよくて、ずっとこの暗闇が続くと思った。しかし、終わりは唐突に訪れる。名残惜しさを胸に、また外の光に背中を焼かれるのだ。



 今おれは小野町三倉(おのまちさくら)の隣にいる。星を、見に行く。願い事があるからと、そんな理由で夜に呼び出されて、駆け足で列車に飛び込んだ。

隣に彼女がいる。

彼女のふっと漏れ出す息づかいも、楽しげに話す笑い声も、優しい石けんと甘ったるい花の匂いが混じりあったような香水の香りも、全てが近くに感じられて、まるで現実味がない。夢心地というのは存外、落ち着かないものなのだと、かすむ頭の中でおぼろげに思った。

 隣で狸寝入りをする彼女を流し見た。昔と同じだ。




 なでたい……他の男と付き合ったのに、なんで俺とは駄目だったんだ?


 なでたい……またお前の背中を見るのは、もう嫌だ。


 なでたい……お前の……君のそんな寝顔から目を背ければ、この胸を握りつぶそうとする苦しみも、弱まってくれるのかな。


 苦しい、つらい、痛い、重い、かゆい……。全身からSOSのコールが聞こえてきて、でも救急車は来てくれない。

 勝手に震える両手で、小刻みにナースコールを押しているのに、その音に気付く人はいない。


嫌いだ、憎い、好き?いや、恨んでる。親の仇のように嫌悪しているのに、狂ってしまいそうなほどに、愛してる。この言葉は言わない。あげない。俺が一番あげたくて、彼女たちが最も望まない言葉。


 泣きたいのに、心は枯れている。

 叫びたいのに、息が吐けない。

 殴りたいのに、力が入らない。

 なでたいのに、手を伸ばすのを恐れている。

 伝えたいのに、この想いは一生隠さなければいけない。


 会わない時間に二人の間に愛が積もっていって、俺はその寒さに凍えそうなのに、君は心地良いと感じている。ぬくもりが欲しいのに、君はそれをくれない。

俺が一番欲しいものを、君たちはくれない。


 好き、好き、好き、いとおしい、おかしくなりそうだ。君しか目に入らない。君にだけ見てほしい。目を合わせて話すだけでいい。たったそれだけでいいのに……。


 君は俺の差し出すものに夢中で、俺の目を見てくれない。


 苦い、恋しい、足が動かない、恋しい。もがいても、もがいても抜け出せない。その底なし沼から見上げる空は恐ろしくきれいで、必死に手を伸ばすのに、足は地面を蹴ってはくれない。沈んでいく。このまま沈んでいく。





「ねえ。」


 足元から声がする。





「私のこと好き?」





  ずるいよ。僕は……、




「きっと好き。これからもずっと、きっと君に執着する。」



 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

 きっと、なんて言葉で不安になんかしたくない。執着なんてしない、自由でいてほしい。でも、きみはその言葉を望んでないだろうから。



「やっと、こっちを見てくれた。」


 その瞬間、キスをした。長い長い恋の時間をすべてからめとってしまうような、長くて熱くて、悲しいキスをした。離した唇をなめると、幸せの味がした。

 

 距離は近くなったはずなのに、前よりもきみがかすんで見える。それでもきみのことがよく見えていると嘘をつき続けなければいけない。

 僕は好きな人のありのままを受け入れるため、嫌いな男を演じ続けると決めた。

 きみの欲しい時に、欲しい言葉をあげられる、そんな素敵で、どうしようもなくクズな嘘を吐く男になった。



 ......笑うとき、目を大きくして一緒に大笑いしてくれるところが好きです。


 めんどうくさがりなのに、困っている人にはつい手間をかけて、優しくしてしまうところが好きです。


 ありがとう、って素直に言えるところが好きで、ごめんっていうときの顔も可愛くて好きです。


 どんな話でも、ゆっくり聞いてくれるところが好きです。


 動物にやさしいところも好きです。


 話すとノリがいいところが好きです。


 ちょっとからかってくるけど、最後は優しく慰めてくれるところが好きです。



 ......少し子供っぽい一面もあって、でもそんなとき、とっても楽しそうにしているところが好きです。


 大好きです。



 もっと知りたい。そしたら、きっともっと好きになる。そのためなら、僕はどんな嘘でもつきます。


 きみの気持ちが僕ではなくて、俺に向いていても、

僕はきみが大好きです。





「片想いの愛してる」


読んでいただきありがとうございました。

恋愛って、甘くてしょっぱいなあと、再確認できる作品になりました。


次作は、現在構想を練っているところです。

また読んでいただけると嬉しいです。


それでは、さよなら。

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