転生したら妹に全てを奪われました。~今さら何を言ってももう遅い!~
わたしが転生したのは、十六歳のある夏の日でした。
夏期講習を終えた塾からの帰り道に、大型トラックと乗用車の衝突事故に巻き込まれたというのが死因。トラックに跳ね飛ばされた乗用車が、歩道を歩いて居たわたしに向って来たのです。
そうして、気がつけばわたしは公爵令嬢であるナターシャ・グラスフィとしてこの世界に転生していました。
そこは、まるでファンタジーの世界――王国があり、貴族が居り、そして冒険者が居る。そんな、剣と魔法の世界でした。
まるで物語の世界のようで、わたしはわくわくしていました。
転生先であるナターシャは八歳で、二つ下の可愛らしい妹が居り、格好いい父親と母親がいました。
それからの毎日は、まるで夢のようでした。
幼馴染であり婚約者でもある第二王子のダリオスとの仲も良好でした。前世ではありえなかった、贅沢で煌びやかな毎日……ですが、わたしが十二歳になった頃から、世界はゆっくりと色褪せていきました。
ナターシャの妹、クレア……可愛い妹であった彼女が、わたしから少しづつあらゆるものを奪っていったからです。
十歳になってから、彼女は変わってしまいました。
お姉様とわたしを慕い、甘えてくる……まずは、それが無くなりました。そして、徐々にわたしを見る目が冷たくなっていきました。
そして、彼女はわたしの持つ物を欲しがり始めたのです。
最初は、わたしが――ナターシャが大切にしていた絵本でした。物心がつき始めてから最初に父様から頂いた、大切な絵本。クレアは、それを欲しがったのです。
わたしはクレアに説明をして、だからあげれないと言いました。だけど、父様はクレアの味方でした……いえ、味方というのは正しくはありませんね。ただ、姉から妹へとお下がりを与えるという感覚だったのでしょう。
そうして、絵本はクレアの物になってしました。
クレアの欲しがりは、これに留まりませんでした。わたしのドレス、アクセサリー、わたし付きであえい友人でもあったメイド、両親の愛……。
その頃には、全てがクレアを優先するようになっていったのです。
やがて……その欲しがりは、わたしの婚約者にまで及びました……。
必死で抵抗しました。
クレアがダリオスに近づくのを警戒し、決して二人きりにはならないようにしました。夜会でも、わたしはダリオスの側に常に控えるようにしてクレアを警戒しました。
それでも、いえ……それが、わたしのその行動がダリオスには重過ぎたのかもしれません。
少しづつ、ダリオスはわたしから離れ、クレアへと興味をもってしましました。
わたしは、わたしは……ダリオスまでもクレアに、妹に奪われてしまうのでしょうか?
わたしが何をしたというの? 幼い頃は、あんなにも仲が良かったのに……あれほど、わたしを慕ってくれていたのに……。
我慢出来なくなったわたしは、遂にクレアに言葉と共にその感情をぶつけてしまいました。
わたしも、既に我慢の限界だったのです。
そんなわたしに、クレアはその美しい顔に笑みを……しかし、その虚ろな瞳に涙を浮かべながら、わたしにこう言ったのです。
「あなたの物? いいえ、それらは全てお姉様の物ですわ。わたくしはただ奪い返しているだけ……。わたくしから愛するお姉様を奪った誰かさんから……………オネエサマノモノヲトリモドシテイルダケデスワヨ?」
久しぶりに書かせて頂きました。
元々、余り書いてませんでしたが……。
コロナの影響で色々とありモチベーションが無くなっていたのですが、ようやく生活が安定してきましたのでまた時間のある時にでもちょくちょく書いていこうと思います。
どうぞ、よろしくお願いします。