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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋に落ちる

犬も食わない ー恋に落ちる3ー

作者: ちゃあこ

ムーンに投稿していた作品シリーズをなろうBLタグをつけてこちらに移動しております。

ささいな日常をニヤニヤとお楽しみください。

 どうしたの?めずらしくいらいらしてるね。


 同僚にそう声をかけられた。

 確かにその日は普段ならしないような小さなミスが積み重なっていた。

 カラーでプリントしようとした書類が白黒で出てきたとか、プリントし直したら部毎の設定になってなくて手で一部ずつまとめる手間が出たとか、ステープルの針が曲がったとか、針が切れたから備品を取りに行ったら勢い余ってケースを床にぶちまけたとか、ほんとに些細なミス。

 それでもこれだけ重なれば周りも気にする。


 ランチを誘ってくれた仲間についていって席につき、注文したとたんに聞かれた。何かあった?と。


 正直、三十にもなってこんな事恥ずかしいんだけど、と前おいて、恋人とケンカした、と正直に言った。


 いつもランチを食べる仲間は三人。男二人、女性一人。僕と男一人が独身で、あと二人は既婚。ちなみに、この男二人ともに僕はかつて失恋をしていたりする。


 お前もまたこっちに来るか!と独身男に肩を組まれた。こいつはつい先日彼女と別れたばかり。相手の浮気が原因だ。


 ラブラブだったのに珍しいじゃない。何がきっかけだったの?とニヤニヤしながらいうのは、だいぶ年の離れた相手と再婚した子。前の旦那さんの借金で苦労してたけど、完済して今の旦那さんと幸せそうにしてる。


 実は、社員旅行のことを話したら恋人が自分も休みとって同じ宿に泊まろうかなって言いだして、僕が嫌がったら悪のりしてきて店の常連仲間と慰安旅行にしようかなとかどんどん一人で盛り上がって。

 絶対ダメって僕が怒ったら、ならキスマーク付けていいかって言いだして、無理って言ったら浮気する気かとか言いだして。もうワケがわかんなくて大ゲンカになったんだ。

 そんな心配するようなことあるわけないし僕のこと信用してないのかと思ったら腹が立って、仲直りできてないんだ。


 まぁ確かに恋人できてからお前なんか色気でてきたもんな。それに雰囲気が柔らかくなったし。ちょいちょい飲み会でお前の名前でるようになってるぞ。


 かつての想い人にそう言われても、特に感慨も抱かなくなったのは恋人であるマスターのおかげだ。どうしてマスターはそれを分かってくれないのかな。こんなにこんなに愛しいのに。怒っているマスターの顔にさえも見とれてしまうほどに、恋しいのに。

 とっくのとうに僕の心にはマスターしか居ないのに。


 ちゃんとそれ、伝えてる?

 相手に伝わるように伝えてる?


 伝わるように、って?

 よくわからなくて聞き返すと、再婚してからネイルにハマりだしたというその子が整えられた指先をこっちに向けて言う。


 あのね、相手に伝わらなきゃ言ってないのと同じなのよ。例えばね、毎日奥さんに花を贈ってます、それが愛情表現です、って言ってもさ、花瓶に入れて毎日水換えてってのは奥さん担当だったら、その手間暇にウンザリしてることもあるの。

 奥さんの誕生日にアクセサリープレゼントしました、ってのもね、ワンオペで赤子の世話してる母親だとしたらその金でシッターさん頼んでくれた方がよっぽど嬉しいってこともあるの。人によってはね。

 結局さ、なにが嬉しくてなにが心配かって人それぞれだから、ちゃんと話し合った方がいいよ。あたしはそれで一回失敗してるから。


 ああ、そうか。マスターは僕が社内の人に失恋してきた遍歴をほぼ全部見てるから、不安になってるのかもしれない。マスターとつき合いだしてから同僚の話をしなくなってるからそれが逆に不安を煽るのかもしれない。


 自分の至らなさに気付けたから、彼女にありがとう、とお礼を言った。帰ったらちゃんと恋人と話してみる。


 そういうとこ、変わったな。

 前はけっこうウジウジしてたのに。


 隣の席のかつての想い人に言われた。ウジウジってなんだよ、って笑いながら、変われたならそれも全部マスターのおかげだな、と思った。


 ああ、伝えなきゃ。マスターに、あなただけを愛してますって真っ直ぐ伝えなきゃ。


 真っ赤なバラを百本買って帰るべきかな?って聞いたらみんなが笑って、僕も笑って、おかげで午後はスムーズに仕事が出来た。


 定時で会社を出た帰り道、花屋に寄ったかどうかは、僕とマスターだけの秘密。




***********************




 ケンカをしたの。うちの可愛い可愛いあの人と。


 あのね、あの人、あたしとつき合いだしてからほんっとに可愛くなったのよ。


 ちょっと、笑い事じゃないの。こっちは真剣なの。


 あたしが何をしてあげても嬉しい、ありがとう、幸せだよ、っていっつもニコニコしてるのよ。

 ニコニコニコニコ、笑ってるの。それがほんっとに可愛いのよ。わかる?可愛いの。


 だから笑い事じゃないの。


 あんまりにも可愛いから、どこに行っても話しかけられるのよ。

 ナンパじゃないわよ。隣にあたしがいるんだもの。


 そうじゃなくてね、お店の店員さんとか、隣のテーブルの客とか、電車で隣に座った人とか、やたらと話しかけられるのよ。


 デートですか?

 お出かけですか?

 楽しんでくださいね

  

 とかそういうなんか、こう、とにかく話しかけられるのよ!

 もう!


 あたしのなのよ?

 あたしのなのに!


 なんであんなにやたらと話しかけられるのよ!


 ほんっとに腹が立つ!

 誰に断って話しかけてんのよ!


 あたしに許可取りなさいよ!

 もう!


 そしたらさ、今度社員旅行があるとか言い出して。あの人今まで会社の同僚に片思いして失恋してたのよ?

 そんな人たちと社員旅行よ?

 あんなに可愛いあの人がよ?


 絶対絶対、横恋慕してるやついるでしょ!

 夜は飲み会に参加せず真っ直ぐ帰ってくるから社員旅行を機にお近づきになろうとか画策してるやからが老若男女問わず絶対いるわよ!


 もー、あたし気が気じゃなくて、お店休んでついて行こうかなー、とかつい言っちゃったのね。


 そしたらあの人、凄く嫌そうな顔して。

 あたしもそれ見てムッとしちゃったから、常連さんたち集めて慰安旅行しようかしら、なんて意地の悪いこと口にしちゃったの。


 何?その常連に自分も入ってるのかって?

 さあねぇ。どっちかしらね。


 それでさ、あの人が絶対ダメって怒りだして、こっちも引くに引けなくてじゃあキスマーク付けさせてって無理を言ったの。


 そう、無理なのは分かってるの。

 キスマーク自体はあの人に見えない場所に何度か付けてるからそれはまあいいんだけど、あの人を試すような事を言ってしまったあたしが悪いの。


 不安になっちゃったのよ。

 最近あの人、職場の人の話をしないから。


 つき合う前は、店でする話は片思いと失恋ばっかりだったの。


 つき合いだしてからは趣味の話とか些細な日常のこととか今度の休みに一緒に何をしようかとか、そういう話をしてて。


 好きよとか愛してるよとか、お互い口にしてはいるけど、なんか、不安になっちゃったのよ。


 あたしの世界はこの店が中心だけど、あの人の世界はたぶん、あたしより広いのよね。


 今までの恋人とあの人はぜんぜんタイプが違うから、勝手が違いすぎてあたしもうぐちゃぐちゃなのよ。


 みっともないったらないわ。

 ああ、情けない。


 もう、ちょっとそんなに笑わなくてもいいじゃない。

 弱ったあたしも素敵だって?


 ああそう、ありがとう。

 でもあたしはもう身も心も全部あの人のものだから諦めてちょうだい。


 さあさあ、そろそろその席あけてくださる?


 なぜってあの人が帰ってくる時間だもの。


 ケンカしてるんじゃないかって?


 ええ、そうよ。

 ケンカしてるわよ。


 だからってあの人があたしの顔見て夜ご飯を食べないはずがないでしょ。

 あの人はね、あたしの顔見てご飯食べないと一日が終わらないのよ。

 知ってるでしょ。


 ほらほら、さっさとその席あけて。


 そこはあの人の特等席なの。


 はいはい、向こうに移ればいいでしょ。カウンターはあいてるんだから。


 いらっしゃいませ。

 あら、今夜はけっこう混みそうね。


 予約札代わりにあの人の席に花瓶でも置いておこうかしら。





挿絵(By みてみん)

2021/07/20追記


珈琲きの子さん(XID:X8545W)にタイトルロゴを作成いただきました!

凄くないですか???放置されてる骨っことか、乱舞してるハートマークとか、二人の痴話喧嘩が一目で分かる表現素晴らしい!

きの子さん、本当にありがとうございました!

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