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お局の多い生涯を送って来ました。

 おつぼねっていますよね。あなたの職場にもいますか? お局。


 隣にいるんですか? 今まさに囲まれているんですか?


 仕事しろ。


 もしやあなた自体がお局?


 おお怖い! 悪霊退散!!


 それはさておき、そもそもお局とは何ぞや? について考えてみましょうか。


 私の人生で出会って来た数々のお局を総合すると、マイ定義オブお局は以下の通りになります。


①四十歳以上で、女性である


②自分より若い女をいびる。男はいびらない(ただし、稀に仕事の出来ない男は女以上にいびる場合もある)


③同じ職場に十年以上いる


 恐らく皆さんの考えるお局もおおむねこんな感じではないでしょうか。


 さて、ザックリとマイ定義を発表したところで、まずは私の出会ったお局について具体的に見ていきましょう。




✳︎





 あれは私がまだ二十代の半ばだったので、もう二十年以上も前のことになります。


 私は思うところあって仕事を辞め、失業保険をもらいつつ何とか食っちゃ寝生活を満喫していました。


 そして最高の怠惰生活を極めかけた頃、失業保険として支給された食料が底をつこうとしているのに気づきました。


 今の若い人は御存知ないと思うのですが、昔の失業保険は現物支給だったんです。


 ちなみに次の三つから一ヶ月毎に選択出来ます。


①米プラス鶏肉コース

②米プラス豚肉コース

③米プラス魚肉コース


 私はその頃魚肉にハマっていたので、全て③の米プラス魚肉コースを選びました。


 送られて来たのは、三ヶ月分の米とシーチキン缶詰でした。


 だから私は三ヶ月間、ずっとシーチキンご飯で食い繫いだのです。おやつには二年前の夏の余りの昆虫ゼリーを食していました。


 そしてさすがに長期間のシーチキン生活にも飽きて、久々に鶏肉か豚肉が食べたいと思いました(牛肉は高級なので却下)。謎の湿疹も全身に出来ました。


 しかし先立つ物がありません。


 そのため不本意ながら職を探そうと、やっと重い腰を上げたのです。


 シーチキン缶詰を小脇に抱えて職安に通い、とりあえず私は短期の仕事を見つけました。次に就職する場所は絶対に定年まで勤めたいので、時間を掛けてじっくり選びたかったからです。


 見つけた仕事は軽作業でした。一言で言うと「選別作業」です。


「ゴテハンダー」と言う特殊な器具を用いて、赤グリドンと青グリドンと黄グリドンのごちゃ混ぜにミックスされたのを、色別に仕分けるのです。


 今の若い人は御存知ないと思うのですが、昔はグリドンを人の手で分けていたんです。現在は機械で選り分けているようですね。全く技術の進歩には驚かされます。


 皆さんも恐らく大好きなグリドンは秋に収穫されるので、秋に選別作業所は繁忙期を迎えます。だから、その時期だけ短期のバイトを雇うのですね。


 初日、出勤して私は驚きました。短期のバイトは私一人だったからです。求人票には「若干名」と記されていたので、てっきり数名採用するのだと思っていました。


 出来れば私は同年代の人と一緒に入りたかった。その方が心強いからです。「グリドンの仕分け、楽しみですね」とか、「赤グリドンと青グリドンと黄グリドン、どれが一番好き?」とか、初めて同士語り合いたかったのです。


 しかし仕事というものは仲良しサークルではありませんから、我が儘を言う訳にもいきません。


 まず社員の男性に更衣室など作業所の建物のあちこちを案内してもらって、私はやっとグリドンを仕分ける部屋に入りました。


 そこは小学校の教室くらいの広さで、四人がけの作業台が五つほど設置されていました。コンクリート打ちっぱなしの床が寒々しさを感じさせます。壁際には作業に使われるらしい器具のごちゃごちゃ並んだ棚があったり、グリドンが沢山入れられた網が山と積まれていたりと、全体的に雑然としていて埃っぽい部屋でした。


 その日いた作業員は七人、ほとんどが年配の女性でした。割烹着を着て下を向き黙々と作業に取り組んでいます。


 私は作業台の端に座るよう言われ、まずは社員の男性に大まかな作業の手順を教わりました。


 作業台の真ん中にある大き目のカゴには、赤青黄のグリドンが恐らく数百はゴロゴロと入っています。そのグリドンの幾つかを小皿に取り、ゴテハンダーを用いて赤は赤、青は青、黄色は黄色と分けてそれぞれの容器に入れる、そしてそれを繰り返す。それだけでした。


 隣に座る社員の男性に教わった通り、私は実際に選別をやってみます。なかなかに楽しい作業でした。


 作業が一段落した時、私はその男性に言われたのです。


「うんうん、上等上等。若いしなかなか飲み込みが早いねぇ」


 恐らく彼は私のモチベーションを上げるため、お世辞を言ったのでしょう。


 しかしこれがいけなかった。特に「若い」の部分。その場にいた女性たちの目がピカッと光ったのを見た気がしました。



……さぁ地獄のはじまりはじまり〜、です。

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