漫才「サンタクロース一家の年の瀬」
漫才23作目です。どうぞよろしくお願いいたします。
ラッピング作業中のサンタクロースに、子供が話しかける。
子供 「お父ちゃん、クリスマスプレゼントを頂戴」
サンタ「プレゼント? あっ」
子供 「あっ、て・・・どうしたの?」
サンタ「ごめん。買うの忘れてた」
子供 「そこにいっぱいあるじゃない。一つ頂戴」
サンタ「これはだめ。世界中の子供たちが、このプレゼントが届くのを首を長―くして待っているんだからね。お父ちゃんの自由にはできないんだよ」
子供 「僕だって子供のうちのひとりだよ。プレゼントを頂戴」
サンタ「全て届け先が決まっちゃっているんだよ、ごめんね」
子供 「だったら、買って」
サンタ「クリスマスが済んだら一緒に買いにいこうね」
子供 「今日じゃなきゃクリスマスプレゼントにならないよ」
サンタ「忙しいから行けないんだよ・・・そうだ、お母ちゃんに頼みなさい」
子供 「両方からもらうつもりだったから先に行ってきたよ。そうしたら、台所にお歳暮がたくさん届いているから、勝手に好きなものを持っていきなさいって言われた」
サンタ「よかったじゃないか。欲しいものを選べるなんてラッキーだったね」
子供 「よくなんかないよ。おもちゃが一つもないんだもの。だだをこねてやったら、お年玉を貰ってから自分で買いなさいだって」
サンタ「なんだ、解決したんじゃないか。そりゃ良かった良かった」
子供 「いいわけないでしょ、ごまかそうったってそうはいかないんだから。クリスマスプレゼントとお年玉は別でしょ。お父ちゃんはサンタなんだから、子供の願いを叶えるのがお仕事なんでしょ。だからプレゼント頂戴」
サンタ「今日は無理なんだ、諦めておくれよ」
子供 「そうか、解ったよ。うちにサンタさんは来てくれないんだね」
サンタ「ここにちゃんといるじゃないか」
子供 「うちにクリスマスは来ないんだ。えーん」
サンタ「サンタがいるんだから、クリスマスは来ているでしょ」
子供 「子供心が深く傷つけられたあ」
サンタ「辛抱しておくれよ。お父ちゃんからの一生のお願いだ。プレゼント二割増しにするから」
子供 「一生のお願い? だったらしょうがないか。プレゼントは今度でいいよ、我慢する」
サンタ「すまないね」
子供 「あとはケーキだね。ケーキはどうなっているの? ケーキが食べたい。ケーキが欲しい」
サンタ「ケーキね、そうだね、クリスマスにはケーキだよね」
子供 「そうだよ。ケーキがなきゃ、クリスマスは始まらないよ」
サンタ「善は急げだ、さっそくお母ちゃんのところに行って頼んでみなさい」
子供 「お母ちゃんは無理」
サンタ「なんで?」
子供 「忙しいんだってさ。今は町内会の人たちと獅子舞いの練習中だし、そのあとは餅つきをするんだって」
サンタ「餅つき? だったらちょうどいいじゃないか。餅の上にろうそくを立ててもらえば立派なケーキの出来上がりだよ」
子供 「そんなケーキは見たことも聞いたことも食べたこともないよ」
サンタ「世界でたった一つのケーキだぞ、いいなあ、うらやましいなあ、幸せ者だなあ」
子供 「調子のいいこと言って」
サンタ「よし、解決だな、さあ、行った行った、良いメリークリスマスをね」
子供 「ほかにも用があるんだけど」
サンタ「なんだ? お父ちゃんにプレゼントでもくれるのか?」
子供 「違うよ、クリスマスツリーの話だよ! ツリーはどうなっているの?」
サンタ「クリスマスツリーねえ・・・お母ちゃんはなんか言ってなかった?」
子供 「話にならないんだよ。門松で代用しなさいって言うんだもの。豆電球で飾れば立派にツリーになるからそれでいいだろうって」
サンタ「さすがうちのお母ちゃん」
子供 「なんか、いろいろまぜこぜでいやだなあ」
サンタ「しょうがないよ。年の瀬はいろいろあって大忙しだからね。分っておくれよ。プレゼント三割増しでどうだろう」
子供 「分かったよ、大人は大変なんだね。そこへいくと僕ら子供は宿題さえやっておけばいいから楽なもんだなあ・・・あっ、いけね、年賀状書くの忘れてた」
サンタ「おお、いいことに気が付いたね。すぐ取り掛かりなさい。さあ早く部屋に戻った戻った、急いで書かなきゃね」
子供 「うん、そうする。お父ちゃん、年賀状を頂戴」
サンタ「たしかそこの引き出しに入っていたはずだよ。持っていきなさい」
子供 「ありがとう・・・あ・・お父ちゃん、クリスマスカードしか入ってないよ」
サンタ「そうだったか。すまないが郵便局に行って買ってきてもらえないかな」
子供 「うん、そうするよ」
サンタ「あ、そうだ。お父ちゃん、今年は結構いっぱいいっぱいでね。プレゼントの配達を手伝ってもらえないかどうかも、ついでに聞いてきておくれ」
読んでいただき、ありがとうございます。