顔を洗って
あゆむことを忘れた放浪者は
今いる場所の価値を夢想し
見えない鎖を磨き出す
老いたものを笑う若年者は
時の瞬間を捉え損ねて
自身の井戸にふたをする
財宝さがしに夢中な冒険家は
他人のむくろを土足で乗り越え
臭いをまとって悦にいる
自分を哀れむ道化師は
大木の影を独り占めして
他人の汗には見てみぬふり
世界は広く世界は狭く
世界は異なり世界は同じ
だから周りをのぞき見すれば
飽いた自分の顔がにやり
泣くなら泣けばいい好きなだけ
それから背筋を伸ばして立ち上がり
まずは顔を洗って出直してきやがれ