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05 見えてきた陰り、裏で進む計画

その後も俺は、一般兵たちの痛い視線にさらされながらも、特になにもされなかった。


戦時中はそんなことをやっている場合ではない。そんな思考が皆統一意思としてあるのであろう。


そんな状況に、あるが王国軍は順調に皇国内へと足を踏み入れていった。


やはり、俺の一人よがりだたのだろか。


俺は、あの日、王国軍、ましてや、民意一致の考え方を否定した。


俺にそのつもりがなかったとしても、王国民であれば、俺の発言に異を呈していたであろう。


俺は、そんな王国民の民意を踏みにじった。今思えば、同じ王国民としても最悪、と言っても変わらない。


結局俺の独りよがりだったみたいだ。


「皆の者、全速前進!今こそ忌まわしき皇国軍をせん滅するぞ!」

「「「おおおーーー!」」」


そんなブライタリー伯爵の発言とともに、王国軍は今日も前進していく。


皇国に足をつく。着実に。


そんなことを繰り返しながら、わが王国軍は、順調というほど、進軍を進めていったのである。


そう、順調に。…。


★☆★


順調に進軍していっていた、王国軍の快進撃にも曇りが見え始めてきていた。


皇国軍に援軍が入ったからである。


さすがに、王国軍も数の暴力の前では、快進撃を続けることさえできない。


それでも、王国軍は星であるコルトールがいるからなのか、はたまた、皇国軍に連敗してきた恨みが強いのかわからないが、士気は全くと言っていいほど、下がっていない。


むしろ、右肩上がりに上がり続ける。


「お前ら、皇国軍が増援を呼んできたからなんだ!これまでの恨み、晴らそうではないか!全速前進!前に進め!」

「「「おおおーーー!」」」


ブライタリー伯爵の何度目かわからない叫びに呼応するようにして叫ぶ王国軍の一般兵士たち。


ブライタリー伯爵が同じことを繰り返し、繰り返し述べたとしても、今の彼らでは、まるで麻薬のようなものでしかない。


一般兵士たちの士気をあげるためのある意味一種の薬となりかけいる。


そうこうしているうちに、さらに皇国軍を押していく。


だが、皇国軍も負けじとこちらを押し返してくる。雄たけびを上げながら。


何が皇国軍の士気を上げているのかわからないが、皇国軍は増援が来てから、士気がとても上がっている。


そんな状況のためか、両者拮抗しており、戦争は、泥沼化していった。


★☆★


「王国軍の状況はどうだ?」


そう聞くのは、筋骨隆々とした体つきのせいか、服がきつく、髪は青色で目は金色。

ギラギラと光るその目は野心にあふれており、見たものを怖気づかせるには、十分なほどの迫力がある眼であった。


「はっ、現在王国軍と我が皇国軍は増援がありながら、王国軍兵士どもの上がり続ける、士気のせいもあってか拮抗状態にあります。ですが、王国軍もそう長くはもたないでしょう。」

「…そうか。」


筋骨隆々の男は煙草に火を噴かせながら、淡々とつぶやく。

戦時中であるというのに王国との戦果がまるで興味がないように。


「今、待機している、はどうしている。」

「はっ、本人・・曰く今すぐにでも、殺しに回りたいと。」

「…そうか。」


筋骨隆々の男は煙草の蒸かした煙を吸って、吐きながらつぶやく。


窓の外に写る光景は、現在戦果の真っ最中である王国軍と皇国軍が戦っている様子が遠く見て取れる。そして、近くでは、慌ただしく動き回る皇国兵士たち。


そんな光景を筋骨隆々の男はスッと目を細めた。


「…これ以上死者を増やせば、皇帝陛下に何を言われる固まったもんじゃない。大体、この作戦を考えたのは、兵器だ。いくら立場が偉いからと言って、こんな作戦を考え付くとは…。」

「あの、失礼ながら、その兵器様が考えられた、作戦とは…?」

「ああ、君たちは、そういえば知らされてなかったかね。」

「はっ、軍曹。」


筋骨隆々男、もとい、軍曹と呼ばれた皇国軍の軍曹は煙草を灰皿にこすりつける。


「あいつが考えた作戦は、こうだ。まず、王国軍に皇国軍が負けたように、見せる。そして、勝ちつつづけさせていって、皇国領内に王国軍を引き入れる。皇国領内に引き入れたら、兵器が一気にせん滅して王国軍を皆殺しにする。」

「それは…」


軍曹の近くにいる伝令兵が息をのむ。


「…あいつは、王国軍の絶望する顔が見たいってことらしい。」

「なっ!」


伝令兵の顔が一気にこわばる。


「そのためだけに、皇国軍兵たちが、わたくしの同僚たちが、命を散らしていったというのですか!」

「ああ、そうだ。あいつは絶望するやつの顔を見ることがすきなとんだくそ野郎だ。そのためなら、手段を択ばない。それがあいつ、グラントヒール・グレパス。火星の星の選ばれし者だ。」


伝令兵は、そこでさらに顔をこわばらせる。


「それじゃ…」

「ああ、言いたいことはわかる。だが、やめておけ。あいつにかなう奴なんて皇国軍にいるはずがないんだから。皇国軍が束になっても勝てないぞ、あの化け物には。

「…。」

伝令兵は言葉を失う。それもそうだ。

皇帝陛下でさえも、持て余す存在。それが、グラントヒール・グレパス。

火星の星の選ばれし者の一人であって、戦鬼と呼ばれるほど、戦狂であり、強力な存在。

戦場にいれば、連勝無敗を誇る皇国の最強兵器でもあり、最終兵器でもある。


「だが、今回はあいつの目的とは別にある。」

「別の目的…?」

「そうだ、今までは、王国に恐れていた我々であった。それも星の力を持つ存在。コルトールだ。」

「まさか…!」

「そのまさかだ。皇帝陛下は持て余していた、火星を使うとともに、王国軍の星を排除しようと、計画なさった。」

「てことは、火星の好きにさせたのも…?」

「そうだ、皇帝陛下にしてみれば、現在領土拡大を続ける我が皇国において邪魔でしかない、星をつぶせるのだ。わずかな期間であるが、持て余していた火星を、使うことができ、そして王国の星をつぶすことができる。一石二鳥だ。王国の馬鹿どもが、王国の星の能力を外国までわざわざ披露してくれているおかげでいくらでも作戦が立て放題だ。いくらでも正気なんてある。」


そうつぶやいた、軍曹は煙草に再度火をふかし、吸って吐く。


「この戦、勝ち戦だ。王国が占領できれば、皇国もこの大陸を統一したも同然。残っている国なんて、小国の連合体くらいだ。あいつらなんて内側から打ち壊せば、瓦解させることも容易い。」


外では喧騒が鳴り響く。

裏で行われている作戦なんて知る由もないように。

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