表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
二.五話 ドージ ミーツ コヨーテ
97/488

夜更かしスニークスキル

 西欧歴1045年 3月22日

 逢魔梓(コヨーテあるいは木立天)



「逢魔梓、お望み通りの場所まで運んだわよ」


 目を開けて、扉を開く。


 すると巫女の間とは全く違う――二階居住区の女子トイレまで『転送』されていた。個室トイレが四つ。最奥には掃除道具箱があった。


 トイレの花子さんは、女子トイレならどこでも現れる。現れることができる。多分、宇宙ステーションにだって進出できる。時代の最先端に行ける女。そういう現象を利用させてもらった形。


「貴女なら大丈夫だと思うけれど、気を付けなさいよね。毎度アテにされても辛いし」


「ありがとう、花子パイセン」


 トイレから出る。幸い居住区は寝静まっている。


 足音を消しながら三階の宗主の部屋へ。忍び足は、逢魔一族に伝わる鍛錬では、すり足と共に教わる。初歩の初歩。オリンピックで種目認定されたら、最低でも銅メダルはいける。


 部屋の出入り口の前で、毒溜みの剃刀を構える。……あれ、気配がない。出入り口も鍵がかかっている。


 ベッドのマットレスから取った針金は、運よく鍵穴に入った。


 ピッキングして開錠。何度も固い針金を曲げたから、指が痛い。扉が開く。


 案の定、宗主の間には静寂以外に何も無かった。かすかにカビた臭い。この臭い、嗅いだことがあるな。


 さて、気になってた戸棚だ。クソ、こいつの戸にもご丁寧に鍵がかかっている。今度は鍵穴に針金が入らない、しゃらくさ。毒溜みの剃刀を蝶番がある側の隙間に差し込み、テコの要領でこじ開ける。


 御開帳。中にはたっぷりと紙幣。別にこれは予想どおり。逃亡資金用に一〇〇〇万銭分をちょろまかす。おさわり代、迷惑代、巫女コス代も込み込みということで。これだけあれば、美国の端から端まで移動できる。おっと、リューバ産の葉巻と灰皿、シガーカッターもある。ハン、獣の血を捨てましょう、ね。この部屋にあるカビの臭い、葉巻の煙のものか。



 歯巻の吸い口をシガーカッターで落とし、マッチで先端を炙る。それからちょっと吸って吐くと、葉巻の先端はにわかに燃え上がる。吐き出された芳醇な紫煙が宗主の間に広がる。あ~、たまんないね、こりゃ。流石はリューバ産、煙がクリームみたいにまろやか。


 葉巻を咥えて、さてと次はオカモト宗主の力の正体を探さないと。超力オカモト、強力わかもと。最低でも、オカモト宗主の情報網だけは把握して、赤土財閥に報告しておかないと、今後の私達の活動に響く。


 戸棚の中身を漁っていると、三角に折り込まれた羊皮紙を見つける。広げると、なにやら魔法陣めいたものが、血で描かれていた。



 この魔法陣は――なるほど、上早御うわさご様ね。



 葉巻に点いた火で、魔法陣が描かれた羊皮紙を焼く。それを灰皿に置いた。まさか、まだこんなものが出回っていたなんて。ちょっと面倒なことになった。


 一階に戻る。こりゃあ、準備が必要だ。


 厨房に忍び込む。オレンジとシナモンパウダーをガメて、オレンジを半分に切って潰し、飛沫と果汁を全身にかけ、シナモンパウダーを服に擦り込む。包丁を取り出し、萎びたオレンジに残った果汁を擦り込んだ。


 注文の多い料理屋さんごっこ?

 いやいや、コックは私の方。得意料理はカレーライスと回鍋肉。


 切り刻むは、上早御様を騙る何か、だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ