表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
二.五話 ドージ ミーツ コヨーテ
92/488

グラグラグランギニョル

 西欧歴1045年 3月22日

 逢魔梓(コヨーテあるいは木立天)



 荷車が檀上に揚げられる。オカモト宗主の表情は険しくなり、周囲の気配が強張る。


 皆が固唾を飲んで、ベールに覆われたものを見つめる。


 信者二人が、恐る恐るそのボロ布を取り去る。



 それは、胡坐をかいた人型のミイラ。



 骨格を見るに、多分男のホトケさん。それにしてもひどく大柄で、身長は二メートル以上ある。


 目を惹くは、額に生えた一対の白い角。牙のよう。その突起は、時間と彼の軌跡が染み込み、微かに黄ばんでいるけれど、ようやく生きた色にまみえたのが有り難い。


 ミイラの腰から生えた大きな黒い羽が生えている。それらが下半身を覆うように広がり、腰布の代わりになっている。


「悍ましいでしょう。あれが憑代の間に封印されている、悪魔のミイラです」


 ミチルさんが震えながら私に耳打ちする。


「悪魔のミイラぁ? なんでそんなものをお目見えに? これから湯船にでも漬けてふやかすの? カップ麺みたいに」


 ミチルさんは私の手の甲を叩き、そして痛そうに手を振った。逢魔一族は徒手空拳も修める。当然逢魔の女は、手の甲の骨とてなよやかではない。ジェンダーフリーナックル。


「この悪魔は、普段は我々の邪気や穢れを吸い取っています。

 しかし、我々の堕落が一定に達すると復活します」


 悪魔の干物を見る。悪魔は、滅多なことじゃ実体化しないし、用が済めばその肉はあっという間に朽ちて塩になる。それに、このミイラの気配は、鉛の膜のような威圧感はあっても、邪気を感じない。単純なミイラとしては、確かにオゾいけど。


「でも、その度に必ず宗主様が上早御うわさごの加護のもと、払ってくださるのです。


 その復活に恥じ、宗主と我々の新たな自律の戒めとなります」


「つまり、コイツは我々の信仰と清廉のバロメーターになっていて。


 コイツの復活の頻度が少なくなればなるほど、教えを厳守していることになる、と?」


「はい。この悪魔は、我々の戒めそのものであるので――」



 ミイラは、荷台から立ち上がりはじめた。糸の貼られたマリオネットのよう。ぎこちない、というより筋肉の働きをまるで無視した、異様な起立。


 オカモト宗主アノヤロウ、一体どんな傀儡師を侍らしている?


 当の御大尽は、真剣な、そして自信にあふれた威厳を醸しながら干物と相対する。


 信者たちの懺悔の言葉がさざめく。


「お許しください。我らの罪を。

 我らの悪行を」


 オカモト宗主は、手のひらをミイラにかざす。得体の知れない波動が宗主の手を通して、出所のしれぬミイラに殺到、吹き飛んだ巨体が壁に激突する。そのまま、糸の切れた操り人形のごとく、板張りの床に崩れ落ちる。埃と信者達が色めきだつ。


 あの力は、一体なんだ?


「此度も、上早御様のご加護によって、皆さまの淀みを掃うことができました!」


 オカモト宗主は朗々と告げる。彼を崇める信者達。すすり泣きすら聞こえてくる。


 悔しいけど、こんなの誰だって信じる。


 間違いなく奇跡の類い。


 そして、こんなあからさまに、科学的に起こり得ないのもまた奇跡だ。


 つまり、これはまじないの類。


 オカモト宗主、一体どんなカラクリで、あんな術を作っている?


「それでは、次は巫女様のお癒しの時間です。


 あの、忌まわしき神詰パワープラント事故の一件で、世相に愛素は溢れ、人々は荒廃しました。


 しかし巫女様は、上早御さまのお導きと加護により、我々に救う愛素を取り除く秘儀を賜れたのです。どうか、喜捨のほどを!


 我々は、富という獣の血を拭い、清廉潔白とならねばなりません!」



 だってさ。私は皆の手拭いかよ。こいつらチンポいじった後、手とかちゃんと洗ってるか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ