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賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
二.五話 ドージ ミーツ コヨーテ
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巫女デビュー

 西欧歴1045年 3月21日

 逢魔梓(コヨーテあるいは木立天)



 私を攫ったワゴンのエンジンが切られた時、私は拘束されたまま、外に出される。


 目の前には、純白の施設があった。愛素マナで汚染された曇天を掃うかのように鎮座した、歪なキャンパスのような外壁。支柱はイーゼルで出来ているのかもしれない。「こちらです」という声と共に、両腕をギッチリと掴まれたまま、入口まで連れて行かれる。


 入口の前に、一人の男が待っていた。禿頭に福耳、二重アゴにぽっこりと出た腹。白いローブに身を包んでいる。この闇堕ちした恵比寿様みたいな男、見覚えがある。


 新興宗教『上早御の会』のオカモト宗主だ。本当によくある怪しげな宗教だよ。神のご加護で、たんまりお布施を払った信者の病を治しただとか、信用ならない奇跡を演じてみせたりとか。


「ようこそ、おいでくださいました」


「随分と手荒い歓迎を受けたのですが? オカモト宗主」


 こんなありふれた、チンケな新興宗教団体が、私になんの用なんだか。


「我々は暴力は好みません。が、貴方に憑りついていた悪魔を追い払う為に、必要な洗礼だったのです。

 やはり逢魔一族の末裔は、感受性が強い」


 なんでこいつ、私のことを知っている? 私はポーカーフェイスは取り繕っていたけど、心の臓は正直で、ズキリと高鳴る。


 問わず語りにオカモトは応える。


「貴方のお父上とは面識がありましてね。あの事故は本当に残念でした。

 しかし、貴方が生きているとは、これぞ上早御様の奇跡。

 いや、お美しくなられた」


 オカモトは微笑む。その目は鈍と脂ぎっていた。ロリコンめ。


「どうして私の居場所が分かったんです?」


「私は、神から告知を頂くことができるのです。

 ビフォア・センチュリーにおいて、私と貴方は夫婦の間柄にありました。

 赤い糸は、世界再誕を経ても、不滅なのですよ」


 神からの告知、ね――厄介なヤツに捕まってしまった。


「私にどうしろと?」


「貴方は、この世界をどう思います?」


「渡る世間はゼニ次第。どこもかしこも超資本主義」


 オカモトは、ずっしり頷く。


「左様、この世界は、我欲、物欲、自己陶酔の欲に乱れ、荒いでいます。

 貴女は巫女として、我々と人類を導く手助けをしていただくのです。

 それが、貴女の運命です」


 巫女だって? ハッ、そりゃいい。コイツ等を利用して、ナイアル・ルシフェラートの行方を負わせるのも一興かもしれない。


 オカモトは続ける。



「そして、ゆくゆくは私の御子を生んでいただきたい」



 人生はじめてのプロポーズが、こんな最低なものになるなんて、夢にも思わなかった。クソったれめ。


 一刻も早く、ここから抜け出さないと。

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