時には昔の話を
西欧歴1046年 5月11日(土)
逢魔梓(コヨーテあるいは木立天)
「そういえば、アズさんと童子様って、どんな形で知り合ったんですか?」
放課後、カグツチのセーフハウス内。
ことのん《肇ことのは》とお喋りしていた時のこと。最近、ちょくちょく遊びに来るようになった。多分、転生者狩りに加わりたくてアプローチをかけてきてるんだろう。でも、彼女自身も迷っているようで、なかなか切り出してこない。燻っている気持ちは、確かに分かる。あんな事があったワケだし。私としても彼女のコトヅテの力は魅力的なんだけどね。でも、現状はノーとしか言えない。茶飲み友達でいた方が、お互いに良いと思う。
そんな緩くて温い膠着状態を引き伸ばすにゃあ、それはそれは充分な話題がやってきた。
「そりゃあもう、爆発あり、ロマンスあり、ピンチの時に駆けつけてくれるトイレの花子さんあり、カーチェイスありの濃密な邂逅でしたよ。
ねえ、童子様?」
童子様は、アクションフィギュア用の湯呑みに注がれたお茶を啜ってから、かぶりを振った。
「そこまで派手じゃない」
ことのん、呆れ顔。
「アズさん、またデタラメですか?」
「ホラ話が大好きなの」
ことのん、視線を天に向けて一思案。
「もしかして、話したくないことでした?」
「ううん、別に?
……まあ、特別楽しい話ってほどでもないけどね。
普通だよ。普通」
「はあ」
「今さらだ。別に話してもよかろう」
「いや、そうなんですけどね、アレですよ。
番外編なんて、別にあっても無くてもそこまで困らないじゃないですか。
そんなの蛇足を、今からやって良いモンなのかな、と思ってですね。
私ゃ、そういう読者の皆さんへの気配りをですね」
童子様の眉間に皺が三割増える。
「また、よく分からないことを言う病気がはじまった」
「人を煙に撒くのも大好きなんです」
さて、どの辺りから話したら良いかな? みんなのお茶が冷めきらないように。
あとがき
サブタイトルは、加藤登紀子の「時には昔の話を」より。
紅の豚のエンディングソング。




