女三人寄れば華やかで良いよn
西欧歴1046年 4月8日
肇ことのは
「お、ウチ校の白馬の王子、東雲桜真くんと一緒に登校してきた新入生じゃないの」
と、別の女子に声を掛けられた。
今度は、本当に見知らぬ生徒だった。女子にしてはやや背が高い。学年章を見ると、彼女は二年生――上級生。名札には『木立天』。ほっそりとしたうりざねの面立ちに、すっきりとした顔立ち。少し癖がかかった髪を三つ編みのおさげにして、皆とは対照的に、きっちりと制服を着こなしている。でも、その雰囲気も身のこなしも、一昔の前の上品な婦人といった感じで、外連味と優雅さが綯い交ぜにしたようで、大仰にも洒脱にも見えた。
「え、あの転生者と?」
リンダが怪訝そうな顔をする。
「う、うん」
木立先輩が頭を掻いた。
「あ~、ちょっと先越されちゃったなあ。もうね、貴女が東雲君と一緒に登校してるとこを見た子が写メ撮って、SNSにアップした人がいてさ! そりゃもう女子達が上を下への大騒ぎだよ」
「え……?」
耳が澄まされる。つい、無意識的に、辺りの音を探ってしまう。
――ちょっと可愛いからって、なに調子コいてるの、あのチビ。
――やべ、あの新入生、胸デカくね?
――ロリ巨乳じゃん。
――東雲桜真くんに、どんな媚売ったの、あのブサイク。
沢山の声が集音されていく。息が苦しくなる。心臓が俄かに騒ぎだし、意識が朦朧としだす。
三つ編みの上級生の両手が、私の両耳に被された。不思議と、木霊しが凪ぐ。
「あ、ありがとうございます」
あれ、どうしてこの人、私の耳のことを……? 漠然としたままお礼を言ってる私も私だけど。
木立先輩は緩く微笑んだまま、私から手を離す。私が生んだ奇妙な間を、切り替えるように、柏手を打つ。
「いや~私もさ、実は東雲桜真君狙ってんだよね~。
このご時世でしょ? やっぱ結婚すんなら将来有望な転生者かな~、ってね。転生施術だってお金がかかるってことは、ご両親もお金持ちだろうし。
目指せ専業主婦、ってね!」
「へ~、すごいっスね!」
リンダにしては珍しく、酷く雑な相槌を打った。条件反射で上司をヨイショしているサラリーマンみたい。この人とは相性が悪いのかも。木立先輩も馬耳東風とばかりに、気にする風もない。
予鈴のベルが鳴る。
「おっと、引きとめてゴメンね。それじゃ、お互い頑張ろうね肇さん。あ、SNS登録しようよ。情報共有、情報共有っ」
そういって彼女はSNSのIDをメモして手渡し、さっさと去って行った。
マイペース過ぎる先輩、木立天さん。……うん、まあ悪い人ではなさそうだけど。一先ず、彼女のSNSアカウントは登録しておく。そして、木立先輩はヒラヒラと手を振って自分の教室へと向かっていった。
「あの、ことのん」
リンダの、低く暗い声が私を呼ぶ。声マネにしては、誰のものとも似ていない。
「あ、ゴメン、教室行かないとだよね」
「じゃなくて。今日、その、転生者と一緒に学校来たんだって?」
「う、うん……」
陽気なリンダが、珍しく神妙な面持ちで私を見つめた。
「あんまり、転生者と関わらない方が良いと思う。
その、ほら、不祥事だって起こす転生者だっているじゃん?」
リンダの言う通り、転生者とて人の子。全員が良い人とは限らない。本来なら刑事事件として取り扱われるような事をしでかすような人も、中にはいるらしい。
「う、うん。
でも、東雲先輩は、そういう事しそうな感じは無かったよ。
それに、最近はそういうニュースも見かけなくなったし。
きっと、大丈夫だよ」
それに東雲先輩は、今朝は私を痴漢から守ってくれたんだし。
「いや、そりゃハッと見は――」
「君達、予鈴鳴ったぞ! 早く教室に行きなさい! なんだなんだ授業初日から!」
先生に怒鳴られた。
「ともかく、男にゃ気を付けろってこと! ことのんドン臭いし! 教室行こ!」
「ドン臭いって! そうだけど、ひどい!」
私達は、廊下を小走りで走って教室を目指した。
あれ? もしかして、リンダも東雲先輩のことが好きなのかな……?
あとがき
当時、ふて寝していると、筆者の旧知クロスボーン氏が「いいかいオルタ君、小さい娘はね、良いんだよ」とヤマビコみたいに延々と連呼し続ける、お告げめいた酷い夢を見たので、肇ことのはちゃんはロリ系ヒロインになりました。彼氏は今もロリコンのようです。大丈夫かアイツ。




