表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
二話「明るい復讐計画」
79/488

ヒモ無しバンジーブライダル

 西欧歴1046年 4月28日(日)

 コヨーテ(逢魔梓、あるいは木立天)


 息が切れる。


 『毒溜みの巫子』の『中陰』の形態は、一気に体力を消耗する。オイそれと変態させられない。だから毎度毎度、手の平から飛び出るチンケなブレードでチマチマやっているのよ。格ゲーのようにはいかない。


 休む暇はない。さっさとズラからないと、今度は警察と大立ち回りするハメになる。私の血がついた部分のカーペットをバタフライナイフで斬り取り、更に床を袖で拭い、ハバキを拾う。


「俺が警察を引っ掻き回す。嬢ちゃんはその内に逃げろ」


 私の纏っているコートは、札の浮できる力を利用して落下速度を抑制したり、グライドスーツのように滑空することも出来る。


 本来の計画なら、スカイラウンジから滑空して、ブルースホテルから離れるつもりだった。


 けど、このゲスブラザースが予定外だった。札は一度クマバチに成ってしまうと、大分血の力が落ちてしまう。


 試しに札に念じる。まだなんとか動く。まだ力は無くなりきってはいない。


「いえ、一緒に逃げる方法があります」


「本当か。どうやって?」


「この札を足場代わりに宙にばら撒いて、それから落下スピードを落としつつ降りるんです」


 童子様憮然。困った顔がチャーミングだぜ。


「たった今、高い所がイヤになった」


「イヤよイヤよも好きのうちですよ」


 クマバチ形態を解いた札をばら撒く。その札に念じて、水平に敷き詰めて足場を作る。


 地面を見下ろす。人の上に立つというのはおっかないもんだね。眼下は果てしなく遠く、人の灯火は数知れず。だから私達も紛れて、隠れよう。


 虚空へ向けて一歩踏む出す。


「いくぞ……いくぞいくぞ……」


「嬢ちゃん、待て。本当に待て――」





 そして、中空へ身を投げた。





「あああああああああああああ!」


 叫び、童子様を掬い上げて、札の足場、宙を浮かぶ呪いの絨毯モドキへ飛び降りる。


 着地。念を込めて札にふんばりを入れる。札の地面が揺れるけど、形は崩れない。


「あわわ!? あわわわわ!

 ……ふう」


 よし、このままエレベーターの要領で、無理の無い速度で地面まで降りれば――



 急降下。風も空気も穿ち、臓腑が地面に引っ張られるような錯覚。


「ひえええええええ!」


「うおおおおおお!?」


 無理の無い速度で降下しよう?

 無理に決まってんじゃん。


 重力に導かれる。やっぱり、札の呪いの力が落ちていた! 一応、落下速度は落としてはいるけれど、それでも気が遠くなる。気圧差のせいか耳鳴りがする。走馬灯も見える。風が冷たい。肉体は落ちていっても、対照的に意識は天まで昇っていく。一種の恍惚感。硬直しているようでたわんだ筋肉が緩み、何かが抜け出るような感覚。


「地面だ!」


 童子様の声で、心と体がくっつく。


 二人とも地面に着地し、受け身を取る。そのままゴロゴロ延々と地面と転げる。こうしないと、着地の衝撃を殺しきれない。


 埃まみれになり、なんとか下界に降りることができた。流石に目まいを覚える。私と童子様は、互いに息を切らし、見合った。顔が青白いのは、夜の帳が顔にかかったからだけではなかった。


「い、生きてますよね?」


「……死んでなければ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ